徐々に全て直していきます。
内容に変化はないので、気にしなくても大丈夫です。
この世界で初めて禁手した俺は、久しぶりの鎧の感触を確かめいていた。
鎧なのにまったく重さが感じない。
動きやすい。
防御力もある。
よし、今まで通りだ。
「初手だ、くらえ」
『BoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoost』
朱蓮を振りぬき、斬撃を飛ばす。
連続で三回だ。
それに倍化した力を付与して、斬撃の速度と大きさを底上げする。
「うぐぅ!?」
もちろん、折紙の装備程度では防げるわけがない。
折紙は三回すべての斬撃をもろにくらった。
だが、せめてもの抵抗なのか、ミサイルで弾幕を張ってきた。
「ククク、この程度の弾幕ならまだチルノの弾幕のがマシだぞ」
右手を掲げ、魔力を一気に放出して弾幕を全て起爆させる。
もちろん、俺は一撃もくらっていない。
「あっれェ?あんなにいきがってたのにどォしたんだァ?」
「ごほっ……私はあなたと戦うためにここに来たわけではない。五河琴里―――精霊・〈イフリート〉を殺しに来ただけ。だから、邪魔しないで」
「ふざけるのもいい加減にしてくれないか?目の前で我が愛しの妹、琴里を殺そうとしている奴を見逃すほど俺はやさしくないぞ」
妹が殺されそうになっているのに何もしないお兄ちゃんはいないだろう。
そうだろう?
「―――指向性随意領域・展開!!座標固定(二二三・四三九・三六)……ッ!!」
折紙が文言を唱えた。
すると、俺の周囲に球状の結界が形作られた。
「へぇ……」
折紙がミサイルを放った。
それはすべて俺に向かってくる。
結界をすり抜け、そして俺に当たる―――と思った?
だが、爆炎と爆風は結界内で暴れまくっていた。
あっつ……い。
一切爆風が漏れないで結界内で暴れまくるのはちょっとキツいな。
「はぁ……っ、はぁ……っ、はぁ……っ」
よほど脳を酷使しているのだろう、折紙は顔にびっしり汗を浮かべ、肩を揺らしながら呼吸をする。
それと同時に俺の周りに張られていた結界が空気に溶け、中に蟠っていた煙が捕捉たなびいて消えた。
「ハッハー!!まったく、息苦しいんだからさっさと解いてほしかったぜ」
「う、嘘」
珍しく折紙が驚いている。
だが、俺が服をパタパタ叩いているのを確認すると、特攻してきた。
「〈クリーヴリーフ〉―――解除・展開!!」
折紙が叫ぶと同時、レイザーブレイドの刃が本体から射出され、光の帯となって俺の身体に絡み付いた。
「なんだこれ?」
「指向随意領域―――展開!!」
折紙が再びその文言を唱えると、また俺の周囲に球状の結界が生成される。
今度もミサイルだろう。
だが、その予想は外れた。
折紙が身をよじると、ウェポンコンテナの両端に備えられていた巨大な砲門を俺に向け―――
「討伐せよ―――〈ブラスターク〉!!」
俺、討伐されちゃうの(笑)?
その声と同時に、至近距離から、魔力光の奔流が放たれた。
「おっと」
青白い光だ。
現代の兵器にしてはかなりの威力だろう。
だが、神器と比べるとどうも見劣りする。
朱蓮を軽く振り回し、光線を全て霧散させる。
「な―――」
折紙が驚愕に顔を歪める。
「そんな風に驚いていていいのか?」
「え―――」
折紙の背後に移動し、声をかける。
折紙はレイザーブレイドを構え、斬りかかろうとする。
だがもう遅い。
「吹き飛びな!!」
純粋な脚力だけだが、本気で蹴り飛ばす。
「がっ!!」
地面を何回かバウンドしながら、面白いように吹き飛んで行った。
しかし、あんなゴツい装備してるのにたいしたことがなさすぎる。
あれか?
脳のキャパシティが足りませんよーってか?
まさか身体を魔力処理して使うのが前提なのか?
どちらにしろ、ろくでもない装備だ。
「折紙ィ、どうしたんださっきまでの威勢は。その程度か、その程度で俺の可愛い妹を殺そうとしたのか。ん?なんだ、死んじまったのか?」
視線を折紙が吹き飛んで行った方から、琴里に移す。
「うし、さくっとキスするぞ」
「さくっと、てなによ!!」
「まぁまぁ―――」
琴里を守っていた結界を解いた瞬間だった。
「え―――」
俺の背後から光線が放たれ、そのまま琴里に当たる。
折紙はまだ生きてたか……
気絶すらしてなかったんだ。
「やっと隙ができた。五年前、今から五年前。天宮市南甲町に住んでいた私の両親は、炎の精霊―――あなたの手で殺された。あなたは、私の目の前で、二人を灼いた……ッ!!忘れるものか。絶対に、忘れるものか。だから殺す……私が殺す。あなたを殺す!!〈イフリート〉ッ!!」
裂帛の気合とともに、琴里の身体が吹き飛ばされる。
わけがないだろう。
琴里は今の話を聞いて、力が抜けきっていた。
さすがの精霊モードでも、くらったら痛いだろう。
だったら、くらうまえに、俺が反撃すればいいじゃない。
「させるわけないだろ」
「う―――」
今度は殴る。
純粋な腕力だけで、殴り飛ばす。
またもや、面白いように吹き飛んでいく。
「はぁ……何言ってんだか。炎の精霊が琴里だけなわけがないだろうに」
「え……?」
琴里が反応した。
顔を上げ、俺を見上げている。
目には涙が少しだけ見て取れた。
「そりゃそうだろ。炎の精霊なんてありふれているぞ。まぁ琴里はその中でもかなり特殊だろうけど。再生能力があるところから見ると、俺は不死鳥(フェニックス)じゃないかって疑ったぞ」
「不死鳥……?そんなわけないないよ。それに空想の生物はこの世にいるわけがないし」
琴里の言葉使いが乱れてるな。
よほど気にしているのだろう。
「精霊も空想の生物じゃないのか?」
「あ―――」
「だろ?だからな、この世界にはいるかもしれない。精霊以外の空想の生物が。まぁ可能性の話だ」
琴里は下にうつむいて考え込んだ。
「今度は、外さない。―――指向性随意領域・展開!!」
復活したのか、折紙が再び結界を発動させた。
対象を守るためではなく、閉じ込め、致命的な攻撃を加えるための殺意の檻。
だがまぁ、この程度ならどうにでもなる。
「随意領域凝縮……〈ホワイト・リコリス〉、臨界駆動……!!」
折紙が巨砲を俺たちに向ける。
だが、チャージに数秒かかるようだ。
今のうちに済ませるか。
「―――琴里」
「え―――」
琴里の顔を両手で俺の顔に向ける。
「キス、いいか?」
「ふぇ!?い、今!?」
「そうだ、今だ」
「ちょ、ちょっと待って!!こ、心の準備が―――」
そこから先は聞かない。
琴里の唇の俺の唇を合わせる。
その瞬間、琴里から何かが流れ込んできた。
精霊の力だろう。
そして、それと同時に記憶が流れ込んでくる。
これは……五年前の記憶か。
とりあえず、今はいいだろう。
「好きだぞ、琴里」
「うん、おにーちゃん」
琴里は頬を染めながらうなずいて返してくれた。
折紙に視線を移す。
「さて、琴里はこれで人間に戻ったぞ折紙―――」
一度そこで切り、甲種言霊を使い、発言する。
「『攻撃をやめろ』、そして―――『跪け』」
「ぐ―――」
〈ホワイト・リコリス〉にチャージされていた光がすべて霧散する。
そして、折紙がその場に跪いた。
「一つ、面白いことを教えてやろう。琴里は元々は人間だ。精霊によって精霊にされた。それがちょうど五年前だ」
「それがなに?」
抑揚のない声で訊き返してくる。
「それでな、琴里が精霊の力を手に入れて、封印するまでは―――近くには俺ともう一人いなかったんだよ」
「そんなわけ―――」
「ないはずないだろ。火災の中に誰が好んで入る?あとな、そのもう一人は―――精霊だよ。琴里だまして精霊にした者。そうだよ、琴里を苦しめた忌々しい精霊がな!!」
「そんな言葉を……信じろというの?」
「信じる信じないはおまえの自由だが……どうなっても知らないぞ?」
「……っ」
殺気を乗せながら言う。
そして、その瞬間だった。
折紙が顔を苦悶の表情に歪めた。
そして、光の刃にノイズが走り、背負っていたウェポンコンテナや砲門が、重さを取り戻したように地面に落ちようとしている。
甲種言霊のせいで無理やり折紙が背負っている状態だな。
「く……活動……限界?そんな。こんなところで―――」
折紙はもがく。
もがいてもがいてもがき続ける。
だが、そんなもの甲種言霊で縛り上げたのだから意味をなさない。
「折紙、あと一つ。あまり力を求め過ぎるな。身を滅ぼすぞ。人の身で使っていい力は限られている。それを超えると―――人ではなくなるぞ」
「う……」
俺の言葉を最後まで聞き、折紙は気絶した。
甲種言霊を解き、折紙を寝かせる。
後はしらん。
「さぁ、帰ろうか。琴里」
「うん、おにーちゃん」
黒いリボンのままだが、俺のことをお兄ちゃんと呼んでくれた。
☆☆☆
「令音、琴里の様子は?」
〈フラクシナス〉の医務室から艦橋に戻ってきた令音に声をかけると、令音は小さく首肯をしてきた。
「……あぁ、心配ないよ。すぐに目覚めるだろう」
「そうか……」
俺は安堵の域を吐き出す。
あのあとすぐ、〈フラクシナス〉に転移した。
すぐに、令音が琴里を医務室に連れて行ったのだが、どうやら異常はないらしい。
「あぁ、それと、折紙はどうなるんだ?」
結局、あのあとすぐに他のAST隊員が飛んできて、折紙を拘束、回収していった。
折紙、ザマァ(笑)
「……ん、まぁ、あれだけのことをしでかしたんだ。いのちまで取られはしないだろうが……退役させられ、二度と顕現装置を触れることができなるかもしれないな」
「だといいのだがな」
「……どういうことだい?」
「いやなに、DEMのお偉いさんが目をつけないかなと。なんせ、〈ホワイト・リコリス〉を魔力処理せずにあそこまで扱ったんだ。お偉いさんが目をつけて、スカウトしないかな、と」
「……あり得ない話ではないね」
令音は物わかりがいいな。
「んじゃ、俺はそろそろ帰る。十香と四糸乃も腹を空かせてるだろうし」
十香と四糸乃は五河家で待機してもらっていた。
どうせ夕飯は俺が作るからな。
「……ん、そうだね。彼女らも琴里の心配をしているだろうし、安心させてやりたまえ」
令音も依存ないといった調子でゆっくりと首を縦に振った。
「琴里のこと、頼むぞ」
「……あぁ、任せておいてくれ。―――と、そうだ、ヤイバ」
俺が艦橋を出ようとしたところで、令音が背に声をかけてきた。
そのまま、深く頭を下げてきた。
何事?
「……すまなかった」
「一体何のことだ?」
またくわからない。
今日は琴里とデートできてものすごく楽しかったのだが。
「……今日のけんに関しては、完全に私の判断ミスだ。要らぬ気を回し、結果君たちを危険に晒してしまった。……本当にすまない」
一体何の判断をミスしたんだ?
あ、もしかして……
「十香と四糸乃を連れていかせたことか?」
俺がそう言うと、令音はふっと顔を上げて首を横に振った。
「……確かにそれもある。―――が、私が致命的に読み違えたのは、もっと前のことだ」
「え?」
予想外だ。
「それじゃあ、一体に何をミスしたんだ?」
怪訝そうに訊く。
すると、令音はゆっくりとした足取りで自分の席に腰掛け、慣れた手つきで手元のコンソールを操作し始めた。
「……本当なら、そもそも狂のデート自体をするべきではなかったんだ。一昨日―――キスしてしまった方が、安全に琴里の力を封印することができた。……ただ、あまりにも琴里が今日のデートを楽しみにしていたものだから、言いだすことができなかったんだ。……本当に、すまない」
「いやいや、俺も琴里とデートしたかったし。それに好感度もあるんじゃないか?」
令音や琴里がキスによって精霊の力を封印するには、一定以上の好感度が必要だと言っていた。
と、そこでモニタに、奇妙な画面が表示された。
見覚えのある画面だ。
確か、精霊の好感度を時間ごとに表した折れ線グラフだ。
だが、すごいことに気づいた。
画面の 一番上の枠に沿うように、真っ直ぐに伸びていたのだ。
「うれしいな」
「……琴里の、君に対する好感度の推移さ」
言って、令音が椅子の向きを俺の方に変えながら、モニタを示してくる。
「……琴里のモニタリングを初めてから二日間。その間、好感度数値はまったく変化していなかったんだ。最初からマックス状態で……一度もね」
「ははは、うれしい限りだ」
令音が、こくんとうなずく。
「……最後に言っていたじゃないか。ヤイバが「好きだぞ、琴里」と言ったのに対して、「うん、おにーちゃん」とね」
「うれしいぜ、まったく」
俺がうんうん、とうなずいているときだった。
「う……ッ、うがあああああああああああああああああああああッ!!」
こうしたところで、背後から何者かに蹴りを入れられた。
そしてそのまま慣性に従ったところ、令音の胸元に顔からダイブした。
「……ん?」
令音が視線を下に落とし、不思議そうに言ってくる。
「おっと、なかなかで。お邪魔したな」
「……ん、また来たまえ」
また言っていいんですか!?
ぜひお願いしたいですね。
後方に振り向く。
すると、そこには病衣の上に軍服のジャケットを羽織った琴里が、顔を真っ赤にしながら立っていた。
「おぅ、目が覚めたか」
「そんなのいいから今のを忘れなさい!!そんな数値ミスに決まっているんだから!!」
「……そんなことはないぞ。装置にも問題はなかったし、私の「『ラ・プュセル』限定のミルクシュークリーム十個!!」…すまないヤイバ、計器の故障だったかもしれない」
琴里が叫ぶと、令音は一瞬で前言を翻して俺の方に目を向けてきた。
変わり身早いな。
「そんなことより、身体は大丈夫か?まだ寝てた方がいいんじゃないか?」
「ふん、そんな暇はないわ。すぐに資料を作成しないと」
「資料か……でもそんなことより、琴里の体調のが心配だぞ」
「それでもよ」
琴里はキッと視線を鋭くすると、ジャケットの内ポケットからチュッパチャプスを取り出し、口に放り込んだ。
そしてその棒をピンを立てながら続けた。
「ようやく―――思い出したんだもの。五年前、私に精霊の力を与えた存在のことを。明日また目覚めた時、再び記憶が消されてる可能性がゼロでない以上、私と刃の頭の中意外に記録しておく必要があるわ」
「そか、頑張れよ。だが、あまり無理はするなよ」
「善処するわ」
琴里はひらひらと手を振って艦長席に歩いていくと、そこのコンソールから小さな記録媒体を取り出し、入ってきた扉の方に足を向けた。
だが、その途中で歩みが止まった。
そして、首を少しだけ―――俺の位置からでは表情がギリギリ窺えないくらいまで回すと、小さな声を発してきた。
「ねぇ、刃。……私の霊力を封印した後に言ったこと……本当?」
ちょっとイジってやるか。
「いや、嘘だ」
「そう、よね。ごめんなさい、変なこと聞いたわね」
少し、いや、かなりがっかりしたように肩を落とした。
「愛してるぞ、琴里」
「にゃっ!?」
変な声を出して、肩を震わせ、落ち着かない様子で指をわきわきと動かす。
「え、あ、そ、その……わ、私―――」
「もちろん、女としてもだが」
「きゅぅ……」
「お、おい。琴里?」
琴里がそのばに崩れ落ちそうになるのを抱きかかえて防ぐ。
「気絶してる……はぁ、やれやれだぜ」
琴里って、意外に初心?
今回で4章は終了です。