デート・ア・ライブ~二天龍を従えし者~   作:眠らずの夜想曲

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第3話~役得ではないよな~

「……この場合はどういう反応をしたらいいのかね」

 

 

令音の部屋に瞬間移動した俺はちょっとした危機に陥っていた。

当然、令音の気を辿って瞬間移動をしたわけだ。

もちろん、自室にいてくれたおかげで騒ぎにはならなかった。

だが、瞬間移動した際、俺は何も身に纏っていなかったのだ。

だから俺は真っ裸だ。

もちろん、例のアレももろに出ちゃっている訳です。

 

 

「すまん、今着る」

 

 

浴衣を創造して着る。

もちろん、パンツもはきましたよ。

 

これで、一安心。

 

着替えをしている間に令音はお茶を入れていてくれた。

そのお茶をすすって一言。

 

 

「突然すまなかった。助かったぜ……」

「……いや。災難だったようだね」

 

 

そう言って、令音が小さく肩をすくめた。

 

それにしても眼福だ。

令音は備え付けの浴衣を着ている。

帯の締め方がぞんざいなのだろう、動くたびに胸元がちらちらを覗いている。

 

 

「〈フラクシナス〉との通信は回復したのか?」

「……いや、駄目だ」

「そうか……」

 

 

ということは、上空にDEMの奴らがいると考えていいな。

しかもステレスを効かせたまま。

 

 

「耶倶矢と夕弦は?」

 

 

令音が小さく首肯して、テーブルの上に置かれた小型のノートパソコンを操作し始める。

画面に、望遠で撮影された、風の中に踊る二つの人影の姿と、細かな数値や文字列が表示される。

 

 

「……実は、彼女らは我々の間ではちょっとした有名人でね。風の中で二人組の精霊を見たと聞いた瞬間から、なんとなく目星はついていたんだ」

「なるほどね。あぁ、彼女たちについても説明はいいや」

「……どうしてだい?」

「ん、なんとなくね」

 

 

なんとなく、聞いても無駄だと思った。

なんとなく。

なんとなくだけど。

 

 

「今回の封印は難しそうだな。たぶん一人一人別々にキスしても封印できないだろうからな。二人同時にキスするなんて経験は今まで一度も―――なくなかったな……」

「……ヤイバ、君は一体何を経験したんだい?」

「……それについてはノーコメントで」

 

 

テスタロッサ姉妹は凄まじかった。

初めてだったよ……

二人同時にキスされたのは。

 

 

「……今日の昼間、話をした際に、彼女らと一つ取り決めを交わしたのだ。修学旅行最終日―――つまり明後日の朝までに、君に必ずどちらかが魅力的かを選択させると」

「明後日か……」

「……あぁ。二日後に必ず成果を得られるとあれば、彼女らもそう簡単に意趣で返したりはしないだろう?少なくとも、一日の猶予を稼ぐことができる。我々にとっては何より貴重な―――デートの時間を」

「つまり明日一日で、耶倶矢と夕弦をデレさせろと

「……いや、少し違う」

 

 

何が違うのだろうか?

デレさせないと封印ができないのに。

 

 

「……今回、私は、君をデレさせる」

「……………はぁ?」

「……だから君は、その上で二人をデレさせてくれ」

 

 

何を言っているのだこいつは。

なぜ俺をデレさせる必要があるのだ。

まったくもって意味が解らない。

 

思考を巡らせていると、令音が静かに続けた。

 

 

「……私は耶倶矢と夕弦にインカムを渡し、ヤイバ、君を攻略する手助けを行うつもりです。君は私が指示した彼女らの行動に対し、色好い反応を示してくれればいい。―――私のサポートが信頼できるものである、と、彼女らに思わせるようにね」

「あぁ……なるほど」

 

 

それで、ふたり同時にキスさせると。

苦肉の策すぎるだろ。

無理やりにもほどがあるが……

 

 

「やってみようか」

「……すまない。助かるよ」

 

 

令音がふっと視線を俺から外し、軽く頭を下げた。

それにしても、

 

 

「眠ぃ……」

「……ならここで寝ていくかい?」

「そりゃいい。男共と同じ部屋にいたら質問されまくって眠れそうにないからな」

 

 

ここはお言葉に甘えよう。

そそくさと押入れから布団を出して、セッティング。

そしてすぐに布団に入り、横になる。

が、すぐに寝れるわけもない。

 

気になることが一つ。

 

令音がいない。

先ほどまでこの部屋にいたのだが……

俺が布団を出してるときにどこかに行ったのだろう。

 

それから何分経っただろうか?

なかなか眠れずに、何度も寝返りをうっていると、部屋の外に気配が二つ。

二つ?

しかも、かなり似ている。

あぁ、なるほど。

八舞姉妹ですか。

 

だから令音は出て行ったのか。

 

 

「くく……邪魔するぞ」

「失礼。上がらせていただきます」

 

 

扉を開けたと思ったら、すぐにそう言ってきた。

 

二人はスリッパを脱ぎ、部屋に上がってくると、俺を挟むように左右に正座した。

そして、ジッと俺の顔を見下ろしてきた。

 

 

「……どうした?」

 

 

俺が言うと、耶倶矢と夕弦はふっと顔を上げて視線を交わらせた。

 

 

「くく……夕弦よ。先に言っておくが、我を今までの八舞耶倶矢と思うていては怪我をするぞ。我は優秀なる眷属を得、新たなる我へと生まれ変わったのだ」

「溜息。また耶倶矢のハッタリが始まりました」

 

 

耶倶矢の言葉に、夕弦がやれやれと肩をすくめた。

あからさまな挑発だな。

でもそれに耶倶矢は乗らなかった。

口元を歪めて不敵な笑みを漏らすのみだった。

夕弦も、そんな耶倶矢の余裕を感じ取ったらしい。

微かに目を細めた。

 

 

「驚嘆。どうやらあながち嘘でもないようですね。―――ですが、それは夕弦も同じです。夕弦は素晴らしい師を得ました。今の夕弦に敵はありません」

「ほぅ……?面白い。では尋常に勝負!!」

 

 

そう言って、耶倶矢は再び俺に視線を落としてきた。

そして、軽く頬を染めてから、意を決するように頬を張り、そのままいそいそと俺の入っている布団に入りこもうとした。

 

 

「……何がしたいんだ?」

「くく……我が添い寝してやる。喜べ」

 

 

案外まともだった。

まともすぎて反応ができない。

 

 

「そして刃、御主聞くよるとこによると、おなごと同衾するのが大好き出そうではないか」

「なんだそれ……」

 

 

何処情報だよ……

 

 

「違うのか?我が眷属は、ある朝起きたら御主がいつの間にか布団にいたと……」

「……あぁなるほど」

 

 

眷属とは十香のことか。

そして十香に聞いたと。

 

 

「だから?」

「わ、私じゃ……駄目?」

 

 

おいおい……

涙目で上目遣いはずるいだろ……

 

 

「Welcome」

「くく……ごくろう」

 

 

無駄にいい発音で言っちまった。

 

しかし、忘れていたことがあった。

ここには耶倶矢意外にももう一人いたのだ。

 

夕弦が、ゆったりとっした動作で一歩近づいてきた。

そして、バサッと布団を剥ぎ取ってくる。

 

 

「何をするんだ夕弦」

「っ!!そうだぞ貴様、我の添い寝の邪魔をするとは卑怯なり!!」

 

 

やっと眠れると思ったのに……

夕弦はそしてさして気にも留めていない様子で、ひくひくと小さく鼻を動かしてきた。

 

 

「確認。発汗が見られます」

「そりゃあ、暑いしな」

 

 

耶倶矢が布団に入ったからな。

そのせいでさらに暑くなった。

 

 

「指摘。汗は放っておくと気化熱で体温を奪います。すぐに拭わねばなりません」

「そうかもしれないな」

 

 

でもまだいいだろう。

そう考えているときだった。

 

夕弦が突然俺の浴衣の合わせを掴んで、ガバッと胸元をはだけさせた。

タオルかなにかで拭くのだろう。

そう思っていた。

だが、外れた。

 

夕弦は俺に覆いかぶさり、舌をのばして俺の胸元をぺろぺろと舐めてきた。

舐めてきたね。

 

え……?

 

柔らくて温かいな……

だがしかし、止めなければ。

俺の理性が壊れる前に。

 

 

「やめなさい」

「な、なななななにしてんのよ夕弦ぅぅッ!!」

 

 

俺に合わせて耶倶矢が叫び、夕弦の頭をがっしと掴んで俺から引き剝がす。

すると夕弦はぺろりと唇を舐めてから、不思議そうな顔を作った。

 

 

「疑問。なぜ止めるのですか?」

「なッ、なぜってあんた、一体何してんのよ!?」

「汗をぬぐうにはこの方法が一番と、師に教わりました」

 

 

なぜだろう。

たった一人だけ該当しそうな人物が脳裏に浮かんだ。

 

とりあえず、浴衣を直して奪われた布団を被りなおす。

だが、そのまま眠ることを許す二人ではなかった。

 

それを待っていましたとばかりに、耶倶矢が四つん這いになりながら、布団をまくり上げてきた。

 

 

「くく……どうやら刃は我の添い寝の方がいいようだな」

「否定。添い寝テクでも夕弦は耶倶矢を凌駕します」

 

 

もう、いい加減寝させてほしい。

 

 

「もういい加減寝させてくれ……眠くて堪らない」

 

 

この一言でまた二人が言い争う。

もう放っておこう。

そう思い、俺は瞼を閉じた。

 

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