デート・ア・ライブ~二天龍を従えし者~   作:眠らずの夜想曲

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第7章 美九トゥルース
第1話~反撃の準備


「お困りの様子ではありませんの。―――ねぇ、刃さん。少し、お話しをしませんこと?」

 

 

ビルの屋上でか?

場所を考えてほしいな。

 

 

「狂三か……」

 

 

狂三は俺の言葉に、ぴくりと眉を揺らしてから肩をすくめてきた。

 

 

「あら、ちがいましたかしら。―――四糸乃さんと八舞姉妹を精霊に奪われ、十香さんをDEM社に拐かされ……為す術もなく途方に暮れているように見えたのですけれど」

「おまえの目は節穴か」

「あら、違いましたの?」

 

 

少し驚きながらも、狂三はすぐに返してきた。

 

まったく、確かに状況はそうだとしてもある程度までは意図的にだ

それにDEMといっても所詮はCR-ユニットを使わなければただの人間の集まりのはずだ。

そんな奴らに俺が遅れるとでも?

あり得ない。

全く持ってありえない。

 

 

「全然違うね。むしろ予想通りに事が進み過ぎて、唖然としていたのだ。それにDEM程度なら俺一人でも―――いや、俺の妹一人でも片付く」

 

 

俺の言葉に、狂三は目を見開いた。

今度こそ本気で驚いたらしい。

 

 

「あら、刃さんは妹がいらしたの?」

 

 

そこか……

そこが気になるか。

なぜそこに意識が。

 

 

「まぁ義妹だがな。みんないい娘だよ。一番初めに妹になったペストはな―――」

「まぁそれは置いといてですわ」

「……………」

 

 

なんだよ、そっちから聞いてきた癖に。

もっと言わせろ、語らせろ。

 

 

「それで?俺に何の用だ」

「あら、わたくしは刃さんのお力になろうと―――」

「あ、結構です。お帰りください」

「……………」

 

 

反論できないのかい。

それともこう返されるとは予想していなかったのか?

ありえないな。

なぜなら俺は狂三と闘ったんだぞ。

 

 

「お、お話をしませんこと?」

 

 

動揺してるな。

メンタルが豆腐なのか?

それもあり得ない話だ。

 

 

「何の話だ?」

「これからのお話ですわ」

「これから?」

 

 

狂三はトントンとリズミカルに靴底で床を叩き、俺の方に近寄ってきた。

そして耳元に唇を寄せ―――囁くように言ってきた。

 

 

「ねぇ、刃さん。十香さんを助けたくはありませんこと?」

「別に俺一人で助けられるけど?」

「……………」

 

 

また黙ってしまった。

いい加減にしてもらいたい。

そうやって黙るなら口を開かないでもらいたい。

 

 

「そ、それはどうですかしらね」

 

 

動揺してるな。

分かりやすすぎる。

 

DEMに特攻するときは創造神の姿で行こうと考えている。

 

なぜ創造神の姿で行く必要があるか?

 

と、思うだろう。

答えは簡単だ。

 

世界が反転した場合に瞬時に対策するためだ。

 

まぁ反転するかわからないがな。

保険だ保険。

それに創造の練度も上がるしな。

DEMにマークされる確率も格段に上がる。

まぁそれはそれでいいか。

 

なら今、創造神の姿を見せてもいいだろう。

 

辺りを閃光が包む。

一瞬だったが、確かな閃光だった。

 

 

「な、なんですの。その姿は……」

「神の姿だ……俺の元の姿だ」

「神……ですって?刃さんは神様なんですの?冗談はよしてくださいな」

 

 

創造神の姿になったのだがどうやら信じてもらえていないようだ。

まったく、強情だ。

 

 

「精霊が存在するんだぞ?神がいない理由はないだろう」

「……本当に神様ですの?」

「あぁ……ついでに言えば、俺はこの世界を創造した神だ」

「へ―――」

 

 

狂三が固まった。

 

そのうちに俺は人間の姿になる。

 

いちいちフリーズするのはやめてもらいたい。

話が全然進まない。

 

 

「で?何しにきたんだ」

「だから十香さん救出の手伝いを―――」

「いらないと言っているだろう」

「手伝いを―――」

「いらない」

「手伝わさしてください」

「最初からそう言え」

 

 

狂三が頭を下げてきたので、手伝わさせてやることにした。

そこまで手伝いたいとは、俺のことがそんなに好きなのか(笑)

 

 

「十香の居場所は分っている。あとは美九の弱点―――もとい弱みだが……」

「そうですわね。何万という人間と、精霊三人までその軍門に従えて。……間違いありませんわね?」

「あぁ、だが問題はそこではない」

「なぜですの?」

 

 

狂三は何を馬鹿なことを言っているんだといった様子で俺に視線をぶつけてくる。

先ほど理由を見せたはずなだんだがな。

 

 

「すでに霊力の封印してあるあの三人は問題ない。だが美九は違う。封印しないといけないからな」

 

 

そう、これから俺は十香をDEMから救出するだけではなく、美九の霊力を封印しなければならないのだ。

十香の救出より、美九の霊力の封印の方が大変だ。

 

好感度の問題がある。

 

 

「先に美九の問題を片付けよう」

「それについては同意ですわ。彼女は着々と支配領域を広げていますわ。このままでは、十香さんを助けに行くのを邪魔される可能性すらありましてよ。刃さんが彼女に捕まっては―――ありえませんでしたわね」

「そうだな。『声』は俺たちには効かないしな。まぁ狂三に任せてもいいが―――殺すなよ?」

「わかってますわよ。―――こんなわたくしでさえ救おうとした酔狂なお方ですもの」

 

 

言って、狂三がまた笑みを浮かべた。

いままでとは違う笑みだ。

 

 

「さて、どうしようかな。美九と二人きりになってもどうすればいいかまだ分からなからな……」

「刃さん。何か彼女の持ち物が手に入りませんこと?」

「なぜだ?」

「わたくしの予想が正しければ、彼女の泣き所を押さえられるかも押さえられるかもしれませんわ」

「それもそうか……」

 

 

美九の家の場所は分っている。

これはもう行くしかないだろ。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

「ここ……ですの?」

「間違いない」

 

 

時刻は二十一時。

良い子はもう寝る時間だ。

 

現在俺と、狂三は美九の家の前にいる。

中に誰もいないからだろう、窓に明かりはなく、シンとしずまりかえっている。

 

美九に関してのヒントは他の精霊よりも集めやすい。

理由は、この世界に居続けているからだ。

こちらの世界で学校に通っている上に、歌手としても活動している。

簡単に言えば、他の精霊よりこの世界に自分の痕跡を数多く残しているのだ。

 

 

「さ、では早速調べましょう」

 

 

そう言い、狂三は右手をすっと持ち上げる。

するとその動作に合わせて影から古式の短銃が飛び出し、狂三の手に収まった。

そして躊躇いなく引き金を引き、けたたましい音を立てて門の鍵を吹き飛ばす。

 

 

「おいおい、そんなことしなくてもデコピンで壊せるだろうが」

「そんなことできるのは刃さんぐらいですわ」

「いや、俺の奥さんもできるな」

 

 

レティシアもなんだかんだ言って、バグまではいかなくてもチートと呼べるだけの身体スペックはある。

空中を走れるし、拳を振るえば空気との摩擦で音が鳴る。

 

 

「刃さん、結婚してらしたの?」

「あぁ……かれこれ数万年だ」

「……さぁ、参りましょう」

 

 

どうやら思考を放棄したようだ。

 

足早に狂三は家の中に入っていった。

俺もそれに続いて家の中に入る。

 

入るとすぐに電気をつける。

シャンデリア型の電灯に柔らかい明かりが灯る。

 

やはり美九の家だ。

 

靴を脱ぎ、家に上がる。

 

 

「さ、どこを調べますの?」

「そうだな……」

 

 

美九の家に来たものの、当てがあるわけではなかった。

あまり時間を割いてもいられない。

 

 

「応接室には大したものはなかったと思う。何かあるなら寝室だろう」

「そうですの。では参りましょう」

「あぁ」

 

 

そう答え、狂三を従えて階段を上っていく。

 

美九の寝室は簡単に見つかった。

二階に上がって廊下をまっすぐ行ったところに『BEDROOM』のプレートが下がった扉があった。

 

扉のノブを回す。

 

広さは二十畳ほどだ。

部屋の奥に天蓋付きのキングサイズベットが置かれ、壁に沿うように木製のクロゼットや戸棚が置かれていた。

そしてベットの正面に八十インチはありそうな巨大なテレビが備えられていた。

ホテルみたいだ。

 

中に入り、戸棚を順に開けていく。

中を探る。

そこにはアクセサリーや可愛らしい小物が並んでいた。

狂三のご所望は『美九の私物』だったが、こういうのでいいのか?

 

 

「刃さん、刃さん。見てくださいまし」

 

 

背後から狂三が声をかけてきた。

 

 

「どうかしたか?」

「えぇ、凄いものがありましたわ」

 

 

言って、クロゼットの引き出しを指してくる。

 

そちらに移動して狂三の指さす方向に目をやる。

そこには、

 

 

「おぉ……」

 

 

思わず簡単の声が漏れた。

 

何しろそこには、可愛らしいブラジャーやショーツなどの下着類が、ぎっしり詰め込まれていたのである。

 

 

ほら、見てくださいまし。凄いサイズですわよ。私の顔が入ってしまいそうですわ」

 

 

言って、狂三が淡い色のブラを一枚摘み上げ、両手で広げて見せてきた。

なかなかの大きさだった。

 

 

「朱乃やリアスと同じくらいの大きさだな」

「……一体何人の女性と関係があるんですの?」

「二十はくだらない。あと、その二人は悪魔だ」

「……一体どんな経験をなさったんですの?」

「神仏や魔王、神獣や魔獣、天使や悪魔と殺し合いをしていたな」

「……さぁ早く探しましょう」

 

 

どうやら理解の範疇を越えたらしい。

精霊しか知らなかったのだから仕方ないか。

 

と、狂三がこちらに歩いてきた。

だが狂三は床に敷かれていた分厚い絨毯に躓き、不意にバランスを崩して前方に倒れ込んできた。

 

 

「―――あら」

「お?」

 

 

ちょうどのしかかられるような格好になり、俺もその場に転げる。

しかも後方にあった戸棚も巻き込んで。

 

後頭部と背中を強打する。

俺は大丈夫だが、戸棚が心配だ。

 

 

「大丈夫か?狂三」

「えぇ。問題ありませんわ。刃さんが助けてくださいましたし」

 

 

言って、俺の胸に体を預けるようにうつ伏せで倒れ込んだ狂三が妖艶に笑い、ぐぐっと体重をかけてきた。

狂三の華奢で、しかし柔らかい身体が押し付けられ、役得だった。

 

 

「どうした狂三」

「あら、刃さん」

 

 

と、狂三が不意に眉を上げ、俺の顔をジッと見つめてくる。

 

 

「お怪我をなさっていますわ」

「え?あぁ、これか」

 

 

頬に手を触れると、血が付着した。

倒れ込んだ時に何かでひっかいたのだろう。

 

 

「まぁ問題ないだろう。唾でもつけておけば」

「ふぅん……そうですの」

「いいから、早く退いてくれないか?」

 

 

俺が起き上がろうとするが、なぜか狂三がさらに力を入れて、それを阻んできた。

 

 

「……おい」

「少し、じっとしてくださいまし」

 

 

狂三が足を広げ、俺の身体に馬乗りになるような格好になったかと思うと、俺の肩を両手で押さえつけ、ゆっくりと顔を近づけてきた。

 

 

「どうした?」

 

 

俺のの問いに、狂三はふふっと微笑んだ。

小さな吐息が耳と尾行をくすぐり、俺の理性を削っていく。

 

狂三はゆっくりとそのやわらかそうな唇を広げ、そこから濡れた舌先をのぞかせてきた。

そしてそのまま俺の頬の傷に、ぺろりと舌を這わせてくる。

 

 

「何してんだ?」

「うふふ、だって、唾をつけておけば治るのでしょう?」

「言葉のあやだ馬鹿者め。こんな傷、自然治癒する」

 

 

俺がそう言っても、狂三は小さく微笑み、もう一度頬を舐めてから顔を離した。

狂三の舌先と俺の頬の間に唾液のキラキラと光る。

 

やばい、理性、が……

 

狂三が笑いながら、俺の上からどいた。

よし、安定した。

 

後方を見やると、やはり棚の扉が盛大にへこんでいた。

《時間を操る程度の能力》でへこむ前の状態に巻き戻す。

 

と、そこで四角い缶を見つけた。

先ほどまで見つからなかったところから考えると、棚の上にあったのだろう。

 

クッキーなどが入っているような、お菓子の入れ物だ。

なぜそんなものがあるのだろうか。

 

 

「おいおい……」

 

 

勘を開けてみて、俺は思わず声を漏らしてしまった。

 

その中には、CDが入っているようなプラスチックケースが数枚入っていた。

そのすべてに美九の姿が印刷されていた。

美九がリリースしたCDらしい。

 

だが、曲名の下に記されている名前が、美九のものではなかった。

 

宵待 月乃

 

確かにそう記されていた。

美九には芸名はない。

だから違う。

 

美九は女性ファン限定のシークレットライブにしか姿を現せない謎のアイドルのはずだ。

こんなに堂々とCDジャケットを飾っているはずがない。

 

俺はCDをケースから取り出し、近くにあったオーディオコンポで再生させる。

すると、アップテンポのかわいらしい曲とともに、美九の声が流れ始めた。

 

 

「あらあら、可愛らしい曲ですわね」

 

 

言って、狂三が指先で小さくリズムを取る。

 

俺は違和感を覚えた。

 

生歌とCDという違いはあるが、この美九の声は、今の美九の声のように妖しい魅力はない。

だがその代わりに、その歌には一生懸命なひたむきさに溢れていた。

そして聴く者を元気づけてくれるような不思議な魅力があった。

 

再び缶に視線を戻し、中に入っていたCDジャケットを見ていく。

すると、最奥に写真を発見した。

 

綺麗な写真立てに、一枚の写真が飾られていた。

 

俺はそれも見つめていた。

若干の違和感を覚えながら。

 

 

「面白そうなものがありましたわね。少し、お借りしますわ」

 

 

狂三は写真と残っていたCDを一枚重ねて片手で持つと、空いている方の手をバッと掲げる。

すると、狂三の影から古式の短銃が飛び出してきて、狂三の手に収まった。

 

 

「〈刻々帝〉―――【一〇の弾】」

 

 

次いで狂三が言うと、影の一部に『Ⅹ』の紋様が輝き、そこから影が漏れ出すように滲んで、短銃の銃口に吸い込まれた。

 

そうしてkら狂三は、写真とCDを側頭部に触れさせ、それに向かって短銃を構えた。

まるで銃弾を、写真とCDですせ豪としているかのようだ。

そのまま躊躇いなく短銃の引き金を引いた。

銃弾はもちろん写真とCDを貫通し、狂三の頭に突き刺さる。

 

 

「なるほど―――そいういことでしたの。断片的ですけれど、彼女に覚えていた違和感の正体がわかりましたわ」

「あぁ……」

「あぁ、刃さんも何かしたんですの?」

 

 

狂三は俺が見栄を張っていると思っているのだろうか、笑っている。

俺が見栄を張るわけがないだろう。

 

 

「まぁな」

 

 

適当に返す。

本当は、《答えを出す程度の能力》で美九の過去に着いて調べただけだ。

最初からそうすればよかった。

 

そんなことを考えているときだった。

 

窓ガラスが微かに揺れたかと思うと、すぐに外からすさまじい音が流れてきた。

 

だがそれは警報ではなかった。

音楽だ。

パイプオルガンで奏でたような荘厳な音と、聴く者を虜にするであろう美声によって紡がれた歌が街に響き始めた。

これは美九の仕業だ。

それにしても―――

 

うるさい。

 

流石にうるさい。

こんな大音量で流されては、名曲も形無しだ。

 

 

「あらあら、随分と派手にやってくれますわね」

 

 

狂三が可笑しそうに、しかしどこか気にさわるといった様子であごに指を当てる。

 

 

「―――狂三」

「は、はい!!」

 

 

狂三が驚きながらも、返事を返してきた。

どうしたのだろうか?

 

 

「行くぞ。あの歌姫を迎えにな」

「よ、喜んで!!」

 

 

狂三はそう言うと、スカートのすそを摘み上げた。

 

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