デート・ア・ライブ~二天龍を従えし者~   作:眠らずの夜想曲

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第3話~実行~

特攻宣言をしてから数分。

月とまばらな星の下、俺、フラン、狂三は目の前に聳えたビル群を睨みつけていた。

 

 

「ここだ。ここ十香がいる」

 

 

フランに言いながら、辺りに視線を巡らす。

 

今俺たちがいるのは、天宮市とお方に位置する鏡山市のオフィス街の一角だ。

上空には、俺たちが立っている通りから先に、特に大きなビルが固まっていることが見て取れた。

 

 

「気付かれまして?」

 

 

フランを撫でて和んでいた俺に、狂三が話しかけてきた。

 

 

「ここから先一帯は、DEMの関連施設ばかりですわ。見えるビル群は、全て系列会社や事務所、研究施設などですわ」

「あぁ……どこも真っ黒だ」

 

 

色ではない。

色ではないからな。

 

 

「あそこが第一社屋か……」

「えぇ、その中ののどこにいるかまでは、残念ながら探れませんでしたけれど」

「それについてはいい。向こうに特攻して、暴れながら探すから」

「そ、そうですか」

 

 

そう答えて、狂三は兵を背にするようにくるりとターンをし、俺に顔を向けてきた。

 

 

「目的のビルに到着次第、敷地内に狂三の分身を呼んで、俺の分身を他の施設を襲撃してくれ。異論は?」

「ありませんわ」

「フランは外でDEMの人間と思いっきり遊んでいいからな」

 

 

俺はイイ笑顔でフラン言う。

 

 

「ホント!?やった♪ありがとうおにーちゃん!!」

「おっふ……」

「あらあら、人気ですわね、刃さん」

 

 

フランがだいしゅきホールドしてきた。

それを見て狂三は笑っている。

 

 

「まったく……それでは―――行こうか」

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

DEMの敷地内に直接転移して、転移しきった瞬間だった。

妙な感触―――魔術師の随意領域に入ったときの感触に似ている。

  

ということは……

 

 

―――ウウウウウウウウウウウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ―――――

 

 

辺りから甲高い音が鳴り響いた。

 

空間震警報に似ている、というよりもそのものかもしれない。

多分、DEMは目撃者を極力減らして大暴れしようとしているのだろう。

 

俺達侵入者相手に。

 

 

「刃さん、上を見てくださいまし」

 

 

狂三は言って、上空を指さした。

 

すでに上空からは光の奔流が―――

 

 

「危ないな……」

 

 

すかさず、《重力を操る程度の能力》でブラックホールをつくって俺達に向かって来た光を吸収させる。

 

襲撃者の方を見る。

そこには複数の〈バンダースナッチ〉が浮遊していた。

軽くホラーである。

 

 

「狂三、頼んだ」

「承りましたわ、『わたくしたち』!!」

 

 

狂三がそう叫ぶと、瞬時に狂三の足下から影が広がった。

そしてその中から一〇〇人近い狂三が現れた。

そして次の瞬間には浮遊した〈バンダースナッチ〉目がけて跳躍した。

 

 

「「「「「きひ、ひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひひッ!!」」」」」

 

 

うむ、少しばかり気持ちが悪いな。

だって、同じ顔が「きひひ」叫びながら特攻するとか……

 

狂三だけに負担はかけられない。

 

 

「多重影分身の術」

 

 

ボボボン、と俺の前に数千身体の分身が出現する。

 

 

「行け、俺達!!十香を助け出すための糧となれ!!」

「「「「「応よ!!」」」」」

 

 

そう返し、分身たちは一斉に浮遊している〈バンダースナッチ〉に特攻をかましながら、周りのビルなども破壊し始めた。

 

 

「狂三、このままだと面倒事が増えそうだ。一気に防衛ラインを抜ける―――ほら」

 

 

そう言い、狂三に手を差し出す。

 

 

「あらあら、エスコートしてくださるんですの?」

「そうだ。だから早くしろ」

 

 

そして狂三が俺の手を握ったのを確認し、一気に地面を踏み抜く。

もちろん地面にはクレーターができた。

狂三を見ると、少し顔を歪ませていた。

かかったGが凄まじかったのだろう。

 

しばらくして、防衛線を抜けた俺は足をを踏み出し勢いを止める。

 

 

「よし、時間が惜しい。早く行こうか」

「えぇ。第一社屋はこちらで―――」

 

 

と、狂三が人差し指で前方を指し示そうとした瞬間だった。

 

 

「おっと」

 

 

狂三を目がけて攻撃が飛んできたので、手を魔力でコーティングし、手刀で全て叩き落とす。

 

 

「あ、ありがとうございます」

 

 

狂三は唖然としながらも、礼を言ってくれた。

 

まったく……急な攻撃だったから叩き落とすことしかできなかったではないか。

少しなまってっしまったか?

 

 

「やれやれ―――ようやく見つけましたよ」

 

 

声のした方を向く。

 

そこには、青と黒でカラーリングされた、見覚えのないCR-ユニットを装着していた真那を確認した。

 

一つに括られた髪に、気の強そうな双眸。

そして、左目の下の泣き黒子。

 

普通に可愛いぞ。

 

突然この戦場に出てきたのにいは少し驚いたが、まぁ納得だ。

 

 

「兄様……!!どいてください、そいつ殺せない」

「いやいや、いいから。今は協力してるから」

 

 

少しヤンデレっている真那に戸惑いを覚える。

あまりヤンデレの相手はしたことがないからな。

 

 

「それより、怪我は?」

「全力全快でやがりますよっ!!」

 

 

どこの魔砲少女だ。

 

 

「今お前はどういう立場なんだ?DEMの手先なのか?」

「いいえ。細けー話はあとでしますが、私、DEMを辞めまして」

「そうか。ならいいんだ」

 

 

俺は真那から視線を狂三に移す。

 

 

「狂三、手筈通りに頼んだぞ」

「きひ、ひひひ。わァかりましたわ」

 

 

そう言って、狂三は影に沈んでいった。

 

 

「兄様……?」

「ん?あぁすまない。どうした?」

 

 

真那に呼ばれて視線を真那に戻す。

 

真那は俺に向かって何かを差し出した。

何かとは―――インカムのようだ。

ふむ、ここから察するに、〈フラクシナス〉の機能は回復したようだ。

 

 

「インカムか」

「えぇ。どうぞ。回線は繋がっています」

 

 

真那からインカムを受け取り、右耳に装着する。

相変らず、慣れない感触だ。

といっても余りつけていないが。

 

 

『……刃、聞こえる?』

「聞こえているぞ。ようやく戻ったか」

 

 

琴里だ。

 

 

『えぇ、まぁ、なんとかね』

「それは何よりで。さっさと誘導してくれ」

『わかったわ』

 

 

意外に聞き分けがいいな。

信頼されているのか?

それは嬉しいが。

 

 

『さぁ―――私たちの戦争(デート)を始めましょう』

 

 

琴里がインカムを通して俺に言ってくる。

そうだな、始めようか。

 

 

「始めようか、戦争を」

 

 

そう、文字通りの、デートではなく、戦争を。

 

辺りを閃光が包み込む。

時間にして一瞬。

 

俺は創造神の姿になる。

 

 

「待ってろ、十香」

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

第一社屋に転移した俺は、十香の気配を探りながら移動をしている。

二階、三階、四階、五階と階段を駆け上がる。

そしてしばらく階段を上った時だった。

 

廊下の先に二人の男女の姿を確認した。

しかも二人ともワイヤリングスーツを装着済みだ。

屋内だからだろうか、手にしていたのはハンドガンらしきものと、小ぶりなレイザーエッジのみだった。

だがまぎれもなく魔術師だ。

 

 

「侵入者!?」

「おい貴様、何者だ!!一体どこから―――」

「あばよ」

 

 

そう言い放ち、魔力の塊を放って二人を吹き飛ばす。

そして二人を吹き飛ばすのと同時に新たな魔術師が邪魔をしてきた。

 

その時だった。

 

 

「ふん、いい気味ですねー」

 

 

窓が砕け、そこから煌びやかな霊装を纏った美九が現れた。

そして廊下に降り立つのと同時にタン、タンと静かにステップを踏んだ。

 

 

「〈破軍歌姫〉―――【独奏】!!」

 

 

するとそこから銀色の細長い円筒が現れた。

巨大なパイプオルガンの一部だろう。

そしてその銀筒の先端部が、美九の方に向かって折れ曲がる。

まるでライブなどで使うマイクスタンドみたいだ。

 

 

「―――――――――――――――っ!!」

 

 

美九がそれに向かって、美声を響かせる。

それは円筒の内側を通って幾重にも反響し、周囲にあまねなく広がった。

次の瞬間には、美九の歌を聞いた魔術師たちが皆一斉に武装を解除して壁際に整列した。

 

 

「―――美九」

 

 

俺が呼ぶと、美九は不機嫌そうにフンと視線を逸らした。

 

 

「気軽に呼ばないでもらえますぅ?あなたののどから発せられた声で舌で発音された音で呼ばれると、それだけで私の可愛い名前に拭いようのない穢れが蓄積するんですよぉ」

 

 

相変らずの毒舌だ。

 

窓の外を見やると、美九をこの階まで運んできたのだろう、天使を顕現させた四糸乃と八舞姉妹の姿が見受けられた。

 

 

「お姉様……私たちはどうしましょうか」

 

 

巨大なウサギの人形の背にしがみついた四糸乃が言う。

すると美九が四糸乃と八舞姉妹に指示を出した。

どうやら全員、外で敵の撃墜らしい。

 

 

「美九、約束を守りに来てくれたのか?」

「……っ」

 

 

俺の言葉に、美九が不快そうに顔を歪めた。

 

 

「勘違いしないでもらえますぅ?私、どこかの不愉快な自殺志望者が勝手にぺらぺら垂れ流していた妄言にも満たない聞き苦しい奇声なんて、これっっっっっっっっっっっぽちも気にしてませんしぃ。ここに来たのは、もう一人の精霊さんを私のコレクションに加えようと思ったからですしー」

 

 

ツンデレなのか?

 

言うことだけ言って、美九は俺を一瞥してからツカツカと廊下を歩いて行った。

俺もそれに合わせるように、美九の後ろからついていく。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

「―――それで、十香さんはどこにいるんですかぁ?こんな広い建物を無闇に歩き回っても時間の無駄ですよー」

「一八階の隔離エリアだ。このIDを使えば入れるらしい」

 

 

そう言いながら、DEMの魔術師から奪ったIDを見せる。

 

と、この瞬間にも魔術師が攻撃を仕掛けてきた。

 

 

「うっとおしいぞ!!」

 

 

そう言い放ち、神力で弾幕を張って魔術師を吹き飛ばしていく。

 

 

「嗚呼、嗚呼、嗚呼―――もうやめだ」

「あらー?あきらめちゃうんですかー?」

 

 

美九がイイ顔をしながら、なおかつ挑発的に、そして落胆したような声音で言ってきた。

 

 

「違う。こんな遠回りはやめる」

「遠回り?何をいっているんですかー?この方法しかないからこんなことをしていたんでしょぉ?」

 

 

違うぜ、違うぜ美九。

今までは周りに気を配ってまったく力を使わないで捜していた。

だがもうやめだ。

こんなことをしていても十香が苦しむ時間が増えるだけだ。

 

 

「力を加減して十香が苦しむ時間が延びるくらいなら―――俺は今からでも本気で行く。なんせ、十香は俺のことを信じてくれているからな」

「そんなわけないじゃないですかー。十香さんだってもう、あきらめてますよー」

「……なぜお前は信じるという心を知らない?いや、否定するのだ?」

「信じても裏切られるだけなんですー。―――頼ったら騙される。託したら、見限られる。みんな、みんなそうなんです!!」

 

 

美九は何かを思い出すように、絞り出すようにして声を上げた。

 

 

「だから、私は男が大っ嫌いなんですよ!!下劣で、汚くて、醜くて―――見ているだけで吐き気してます!!」

 

 

さらに吐き出すように続ける。

 

 

「女の子だってそうです!私の言うことを聞く、可愛い子がいればあとは必要ありません!!他の人間なんてみんな、みんな死んじゃえばいいんです!!」

 

 

やはりアレを引きずっているらしい。

いや、引きずるなという方が無理であろう。

根本的に人間が嫌いになっている。

 

 

「それは違うであろう。確かにお前の境遇は気の毒だと思う。プロデューサーや記事を書いた記者は殺してやりたいほど頭にくる。手の平を返したファンには地獄を見せたい。でもな、だからといって他の人間たとまで一緒くたに嫌うことはないんじゃないか?」

「何を……!!黙ってください!!男なんてみんな同じなんです!!」

「そもそも本当に歌を聴いてくれる人は一人もいなかったのか?スキャンダルに惑わされず、お前の歌を楽しみにしていた人だっていたはずだ!!」

「そ、そんな人―――!!」

 

 

と、その瞬間、廊下の前方から幾人もの足音が響いてきた。

すぐに小銃を構えた魔術師たちが、幾人も姿を現した。

 

 

「いたぞ!!侵入者だ!!」

「気を付けろ!!片方は精霊だ!!」

 

 

うっとおしい。

今いいところだったのに……

なぜ、こうタイミングが悪いのだ。

 

魔術師たちは一斉に弾丸を放ってくるが、美九の発した声の壁ですべて弾き飛ばされた。

 

 

「美九―――お前は自分の中で恐ろしい人間の幻想を作り上げている。お前のその『声』でみんな言うことを聞いてくれるから、それが膨れ上がって―――余計に本当の人間と話すのが怖くなっているのだ!!」

 

 

俺がそう言い放つと、美九は「はぁ!?」と信じられないような声を発した。

 

 

「怖い……!?言うことに欠いて、私が、人間を恐れているっていうんですか!?ていうか今は戦闘中でしょう!!何を余計な―――ァァァァァァァァッ!!」

 

 

美九の言葉の途中でまたも魔術師たちの放った弾丸が迫ってきた。

美九は声を張り上げ、再び声の壁を作ってそれを防いだ。

 

 

「人間を拒絶していても、心のどこかでは、しっかりと話をしたいと思っていたんじゃないか?」

「何を適当な……!!あなたなんかに何がわかるんっていうんですか!!」

 

 

美九が声を上げ、俺は神力で弾幕を張る。

俺たちは言い合いながら、時折出てくる魔術師を得散らしながら、廊下を進んでいく。

 

 

「わかるさ。だからこそおまえは自分の『声』で操れなかった人間―――吸血鬼だが、レティシアが欲しかったんじゃないか?」

「……ッ!!」

 

 

美九が息を詰まらせ、表情を歪めた。

 

 

「そ、そんなこと―――」

「ならなぜ『声』を手に入れたお前は『宵待月乃』ではなく、新しい芸名でもなく、『誘宵美九』という本名を使ってデビューをした?お前は知ってもらいたかったのだろう?―――自分はここにいると!!認めてもらいたかったのだろう!?他でもない―――人間にな」

 

 

美九破うぐぐ……と顔を赤く染めると、廊下を全身しながらヒステリックな声を上げた。

 

 

「う、る、さぁぁぁぁぁぁぁぁいッ!!黙れ黙れ黙れぇぇぇっ!!知った風な口を利いてぇ!!バカー!!アホー!!間抜けぇぇぇっ!!」

 

 

幼児退行した……?

でも可愛いと思うよ?うん。

 

だがその声に霊力を乗せたのはまずいだろう。

前方にいた魔術師が吹き飛んで行ったぞ。

 

 

 

「図星か?」

「図星じゃねぇですもん!!違いますもん!!あなたがバカなだけですし!!バーカ!!バーカ!!バーカ!!!」

「やはりお前の霊力は封印してやる」

 

 

俺がそう言うと、美九がビクッと肩を震わせた。

 

 

「そんなこと……させないんんですからっ!!この『声』を封印されたら、私は、また―――」

 

 

美九が歯を噛み締めるようにしてから、言葉を継いできた。

 

 

「あなたは……また、なれっていうんですか!?歌のない私に……無価値な私に……ッ!!」

「そんなわけがない!!」

 

 

弾幕を濃くしながら叫ぶ。

 

 

「俺は本当の声でお前に歌ってもらいたいだけだ」

 

 

そう、一度でいいから何の力もこもっていない美九自身の歌が聴いてみたいのだ。

CDではなく、本人の口から発せられた、生の声で!!

 

だが美九は忌々しげに顔を歪めた。

 

 

「知った風な口を利かないでください……!!この『声』があれば、私は最高のアイドルでいられるんです!!この『声』を失った私の歌なんて、一体誰が聴いてくれるっていうんでうすかぁっ!!」

「俺がいるッ!!」

 

 

俺が叫ぶと、美九が目を見開き、全身を微かに震わせる。

 

 

「な、何を……適当なことを!!私の歌なんて聴いたこともないくせに!!」

「一曲だけだが聴いた。ひたむきで、一生懸命で、格好が良かった!!今の歌にはない、いいものがそこにはあった!!誰も聴いてくれないか……それあありえない。俺は少なくとも、例え死にかけていたとしても、お前のファンであることを誓おうッ!!」

「な……」

「霊力?『声』?ハッ!!それがどうした。そんなものが無くなったからといってお前が無価値になるはずがない!!」

「……っ!!」

 

 

美九は今にも泣いてしまいそうだった。

だが顔をブンブンと振って、

 

 

「そんな……言葉―――信じないんですからぁっ!!そう言っていたファンは、みんな私のことを信じてくれなかった!!私がつらいとき……誰も手を差し伸べてくれなかった!!」

「例えそうだとしてもだ!!その時は俺が絶対に手を差し伸べよう!!」

「都合のいいことを……!!じゃあなんですか。私がもし十香さんと同じようにピンチになったら、あなた、命を懸けて助けてくれるとでもいうんですかぁ!?」

 

 

美九は俺を睨みつけながら叫んできた。

 

 

「たとえ四肢がもぎ取られようと助けに行くッ!!」

「………!!」

 

 

俺の返答に、美九が一瞬足を止めた。

だがすぐに顔を不愉快そうに歪めた。

俺の後を追ってきた。

 

 

「信じませんッ!!どうせ嘘です……!!嘘に決まっています!!」

「はぁ……いい加減―――」

 

 

このタイミングで魔術師か……

 

階段を上って次の階に突立つした俺達の前に、一人の魔術師が現れた。

かなりの重装備だ。

だが関係ない。

 

 

「止まれぇい!!さんz「失せろ!!」…」

 

 

《境界を操る程度の能力》で、死界と現世の境界をいじり、繋げ、そこに魔術師を落とす。

 

 

「大体ですね、なんで私があなたに助けられなきゃいけないんですかぁ!!身の程を知ってくださいよねぇ!!」

「お前が言ったんだろうが!!」

「ふーん!!そんなの知りませんよーだ!!」

 

 

美九がつーんと顔を背けた。

俺は溜息をつきながら、辺りを見回す。

 

今までの階層とは明らかに違う、頑丈そうな壁が連なり、窓が一つもなかった。

まるで隔離施設のようだ。

 

ここだ。

ここに十香がいる。

 

長く続いている壁の先に扉を見つけた。

 

IDを使い、扉を開ける。

 

美九も後をついてくる。

隔壁の内部には、〈フラクシナス〉の隔離エリアによく似た構造になっていた。

広くほの暗い研究区画の中に、強化ガラスで囲われた空間が設えられていた。

そしてその中には―――

 

十香の姿があった。

 

椅子に手足を拘束され、顔をうつむかせていた。

 

俺は強化ガラスを壊すために、手刀を構える。

と、その時だった。

 

 

「―――やぁ、待っていたよ。〈プリンセス〉の友人……でいいのかな?」

 

 

男―――ウェスコットが静かな声を響かせ、椅子から立ち上がる。

そしてゆっくりとした動作で俺達の方に振り向いてきた。

 

 

「な―――失礼。お初にお目にかかるね。DEMインダストリー社のアイザック・ウェスコットだ」

 

 

言って、その鋭い双眸を細めてきた。

 

 

「よく来てくれたね。〈ディーヴァ」に―――」

 

 

と、ウェスコットが美九に視線をやり、次いで俺に目を向けた瞬間、言葉を止めた。

一瞬呆けたような顔を作ったのち、訝しげに眉をひそめてくる。

 

 

「君は……何者だ?まさか……いや、そんなはずは……」

 

 

ウェスコットが何やら思案するように、口元に手を当てた。

 

素直に答えてやろう。

何者かは半分くらいだが。

 

俺は《人類最終死剣(ラスト・エンブリオ)》の切っ先をウェスコットに向けながら言い放つ。

 

 

「初めまして。神をも浄化する刃、神浄刃だ。―――見ての通りの神様だよ。そして―――十香を助けに来た」

 




《人類最終死剣(ラスト・エンブリオ)》については次回説明します。
まぁ、バグ武器ですね。
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