デート・ア・ライブ~二天龍を従えし者~   作:眠らずの夜想曲

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第8章 七罪サーチ
第1話~一〇月の魔女~


「うふふー。ねぇ、だーりん。もっとこっちに来てもいいんですよぉ?ほぉらぁ」

「そうか?ならお言葉に甘えて―――よっと」

「きゃっ!!もぅ、だーりんったらぁ」

 

 

誘惑もどきをしてきたのでそれに軽く乗っかる。

具体的には美九を俺の膝の上に座らせる。

感触がたまらない……

 

 

「うふふ♪あ、そうだ。この前美味しいイタリアンのお店を見つけたんですよぉ。今晩って何か予定ありますかぁ?よかったら一緒に行きましょうよぉ」

「ごめんな。十香達の晩御飯をつくらないといけないから無理だ」

「なぁんだー、じゃあ十香ちゃんたちも一緒に行きましょうよー。私はそこまで狭量な女じゃありませんよー?もちろん私の奢りですから安心してくださいねぇ」

「可愛い女の子とご飯食べさせてもらえるのに奢ってもらうわけにはいかない。―――ってそうじゃないから」

 

 

無邪気に笑いながら俺にぐいぐい身体を押しつけてきても無駄だからな。

誘惑されないからな。

しかしまぁ、リアスや朱乃に負けないほどの乳だなぁ……

と、ここで視線に気づいた。

 

 

「……………」

 

 

視線の主は向かいに座っている琴里だ。

この琴里―――妹は、司令官モードの時はかなりのツンデレなのだが、妹モードになった瞬間からものすごく甘えて来てくれて、俺のロリ魂(ロリコン)をあおってくるのだ。

手を出さない俺の精神力を褒めてもらいたい。

 

俺達がいるのは、空中艦〈フラクシナス〉の一室だ。

薄暗くて、中央に俺達が座っている椅子が置かれていて、その周りを囲うように長机が並べられている。

あまり気分のいいものではない。

だがまぁ、美九は全く気にしていないようだ。

 

 

「……そろそろいいかしら、美九」

「え?そろそろって、何がですかぁ?」

 

 

美九は悪意の無い顔でそう言うと、琴里はギリッと奥歯を噛みしめて机を叩いた。

 

 

「だ・か・ら!!事情聴取だって言ってるでしょ!!あなたが『だーりんと一緒じゃなきゃ嫌ですぅー』とか言うから特別に同席を許してあげたんじゃない!!」

「あぁ、そういえばそうでしたねー」

 

 

あははと笑って琴里に向き直る。

だが腕は俺の身体に絡んだままだ。

 

そこから琴里による質問攻めが始まる。

 

美九の能力、天使、そして―――人間だった美九を精霊にした存在のこと。

美九を精霊にした存在のことをソレと呼ぶことにしよう。

美九はソレのことの話をするとき、苦しげな表情に変わった。

呼吸も速くなっているような気もした。

そういえば美九が精霊になったのは、人間に失望し、世界に絶望しきっていた頃だったはずだ。

たぶんその頃のことを自分の口から言うのをためらったのだろう。

 

 

「話したくないのなら話さなくてもいいぞ?」

「……いえ、大丈夫ですよー」

 

 

美九は首を横に振って否定をした。

 

 

「私にはだーりんがいます。その過去も全部含めて、前に進むって決めたんですから」

「そうか……」

 

 

美九のメンタルは俺の想像以上に成長したらしい。

 

そこから美九による説明が始まった。

今から数ヶ月前、ファンのみんなに裏切られて、心因性の失声症で声を失ったこと。

そして生きる希望をなくした美九の前に『神様』が現れた。

 

 

『ねぇ、力が欲しくない?世界を変えられるくらいの、大きな力が欲しくはなぁい?』

 

 

そう『神様』に言われたらしい。

それは首を縦に振ってしまうだろうな。

俺もきっと縦にふってしまっていただろう。

その『神様』はキラキラ光る紫色の宝石みたいなものを差し出したらしい。

その宝石が美九の身体に溶け込むように入って―――次の瞬間には精霊になっていた。

美九曰く、その『神様』の姿はノイズみたいに認識できなかったらしい。

存在そのものにモザイクがかかっているという表現が一番当てはまると。

 

次に琴里が質問したのは、衝動についてだ。

琴里は精霊化すると破壊衝動に呑まれていってしまう。

それと同じことが美九にもあるのではないか?

そう思ったらしいが、全くないらしい。

精霊の力によって影響は違うのだろう。

 

まぁその質問が終わった瞬間に、琴里がイイ顔をしていて、それから更なる質問―――検査の内容はあえて言わないでおこう。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

結局美九が解放されたのは、夕方になってからだった。

俺の転移で五河家の前に転移してきた美九が、へろへろとよろめくように俺にもたれかかってきた。

それを腕で支える。

 

 

「大丈夫か?」

「つ、疲れましたぁ……」

 

 

美九は大きなため息を吐いた。

それだけ疲れたのだろう。

 

 

「……なんかもう、今日はまっすぐおうちに帰ってお布団にダイブしたい気分なんですー……だーりん、ごめんなさいなんですけど、例のお店はまた今度でもいいですかぁ?」

「あぁ、しょうがないさ。無理に行って美九に倒れられたら困るからな」

 

 

そう言うと、美九は胸元で手を組んで、ぱぁぁっ、と顔を明るくした。

 

 

「んー、もうっ、だーりんってば本当に優しいんですからぁっ」

 

 

そしてその姿勢のまま、さらにぎゅっと体を押しつけてきた。

そのおかげで美九のふくよかな身体の感触が伝わってきてたまらない。

だがこんなところをパパラッチに見つかったらスキャンダルだ。

俺がいる限りそれは絶対にさせないけどな。

 

 

「じゃあ、今日はそろそろ失礼しますー。また会えるのを楽しみにしてますね、だーりん」

「おぅ、またな」

「はいー。じゃあ……」

 

 

美九が俺の首に両手を巻き付け、「んー」と唇を突き出してきた。

うむ、これはさよならのちゅーというやつだな。

ならば望むところだッ!!

 

 

「むぐぅ……んん……ぷはっ……ありがとうございましたぁ」

 

 

美九は満足したのか、ブンブン腕を振りながら歩いて行った。

なかなか役得だったな。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

一〇月一五日、日曜日。

街の装飾がハロウィンムードに染まりきった。

ハロウィンに関係あるものを見るとジャックを思い出す。

『箱庭』ではなにかと世話になった。

おもにうちのコミュニティーが。

 

今俺は、十香と一緒に夕食の買い物をしに商店街へ来ていた。

 

 

「おぉ……ヤイバ、あれはなんだ?」

 

 

そう言いながら、十かは雑貨屋の軒先に飾ってあるバカデカいカボチャのお化けもどきを指さす。

 

 

「あれはジャック・オー・ランタンだ。カボチャをくり抜いて作るんだ。だけどあれは本物のカボチャじゃなくて、プラスチックだな」

「カボチャ?あのお化けはオレンジ色だぞ?カボチャは緑ではないのか?」

「日本のは緑色なのが多いけど、外国にはあれみたいにオレンジ色のカボチャがあるんだ」

「なんと……あんなに大きいと、煮物に天ぷらとスープにしてもまだ余りそうだな」

 

 

十香よ……何も全て食べなくてもいいのではないか?

というよりも、あのサイズだと絶対においしくないだろ。

 

十香にカボチャを買って、そぼろ煮やコロッケにしようと提案すると、喜んでうなずいてくれな。

特にコロッケの方に。

そして十香が八百屋の方を指さして、歩幅を大きくして歩いて行った。

が、そこで十香は道の脇から出てきた人影にぶつかって、その場に尻餅を突いた。

 

 

「はぁ……ヤレヤレだぜ」

 

 

思わずそう呟いてしまった俺は悪くないだろう。

十香に手を貸そうと差し出した時、ふとぶつかった相手が目に入る。

俺はソイツが目に入った瞬間、驚愕に目を見開く。

 

なぜか?

 

それはソイツが〈ラタトスク〉の重鎮だったからだ。

創始者だったからだ。

ウッドマンだったからだ。

琴里が通信しているときに盗み見て、確かに「ウッドマン卿」と言っていたので間違いはない。

ウッドマンの近くにいる側近らしき女はエレンにものすごく似ている。

多分姉妹だろう。

 

と、そんなことを考えていると―――

 

―――ウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ―――――――

 

空間震警報が辺りに鳴り響いた。

精霊のお出ましだ。

 

 

「おっさん、オネエサン。ここは危険だからさっさと避難したほうがいいぞ?」

「あぁ、そうするとしよう。君は?」

「俺?俺は精霊さんと遊んでくるよ」

 

 

最高にイイ顔で言ったやる。

まったくウッドマンも人が悪いぜ。

俺のことは知っているのに、俺には自分のことを一切説明しない。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

今回の空間震はなかなかの規模だった。

約直径一キロが綺麗に整地されかのように円状に削り取られていた。

だがそれよりも気になるものがあった。

空間震によって消失してしまった土地の外縁南側。

そこに異様な建造物が建ち並んでいた。

 

空中の半ばで途切れたジェットコースターのレールや、馬の首がなくなったメリーゴーラウンド。

ヒビ割れたコヒーカップに、半壊状態になったミラーハウス。

どれも錆び付き苔生していて、さっきの空間震の影響ではない事だけはわかる。

 

俺が転移してきたのは、天宮市の外れに位置する遊園地の跡地だ。

いかにも幽霊などがでそうな場所だ。

 

霊力を探ると、空間震発生ポイントから西に移動していた。

そのうちASTも来てしまうだろう。

なのでさっさと見つけなければ。

 

俺は廃墟を走る。

走って走って走りまくって―――廃墟が崩れた。

巻き込まれないように跳ぶ。

どうにか廃墟の下敷きにはならなかったが……これは後で直しておかなければ。

 

廃墟が崩れ去って気づいたことがあった。

一定の地点から廃墟と化していた遊園地が、ディフォルメされたゴシック建築や、十字の墓標が並ぶホラーなゾーンになった。

 

あー……またまた面倒な予感がする。

重力を操って宙にプカプカ浮いていると、

 

 

「あらぁん?」

 

 

上方から声を掛けられた。

顔を上げると、目の前に聳えていた教会の屋根の上に人影を見つけた。

オレンジ色の夕日を背にしながら、十字架の上に一人の女の子が腰を掛けていた。

 

彼女はつばの広い、先端の折れた円錐の帽子―――いわゆる魔女を思わせる帽子をかぶっていた。

 

 

「うふふ、珍しいわね、こちらに引っ張られたときに、AST以外の人間に会うだなんて」

 

 

女の子がくすくすと笑って、ぴょんと十字架から飛び降りた。

そしてそのままふわふわと空中を漂いながら、俺の目の前に降り立った。

 

夕焼けのような橙色と、夜空のような黒で構成された霊装を纏った長身の女の子だ。

歳は二〇を少し過ぎたくらい―――なのか?

本当にそうなのか?

違うような気がして堪らない。

女の子からする気配はロリなのではないか?

もう一度言おう……ロリではないのか!!

 

それはいとど置いておこう。

 

すらりと伸びた手足に豊満な胸。

うむ、完璧なプロポーションだ。

 

 

「ふぅん……?」

 

 

女の子が俺を見つめて―――顔を近づけてくる。

そして女の子は片手を伸ばして、くい、と俺の顎をも持ち上げてきた。

 

 

「へぇ……なかなかカッコイイじゃない。どうしたの、僕?確か私が限界するときって、こっちの世界には警報が鳴っているんじゃあなかったっけ?」

「まぁな。でもまぁどこに俺がいようと俺の自由だし」

 

 

そう答えると、女の子が目をカッと見開いた。

そしてほんのりと頬をそめながら、ニッと唇の端を上げた。

これは面倒事の予感だ。

 

 

「ふぅん……そうなの。お名前は?」

「五河刃だ」

「刃くんね。うふふ、男らしい名前」

「そういうオネエサンは?」

 

 

女の子はふふっっと可愛らしく微笑んだ。

 

 

「私は七罪。まぁ―――あなたたちには〈ウィッチ〉と呼ばれているみたいだけど。

「七罪か……覚えたぜ」

「そうだ。ふふふ、今度人に会ったら聞いておこうと思ってたんだ」

 

 

その場でくるりと回って見せたかと思うと、踵でカッ、と軽快な音を立てながらポーズを取って、再び俺に視線を向けてきた。

 

 

「ねぇ、刃くん。お姉さん、聞きたいことがあるんだけど、一つ質問してもいいかなぁ?」

「いいけど」

 

 

そう答えると、七罪は片手で色っぽく自分の唇を撫でながら微笑んできた。

 

 

「刃くん、私のこと……綺麗だと思う?」

「まぁ綺麗だな。目は切れ長だし、鼻筋はスッと通っているし、スラッと背は高いし、スタイルもいい。それで、髪もつやつやしていて綺麗だ」

「そう!!わかってる!!刃くんわかってる!!」

 

 

七罪が叫んだかと思うと、俺にがっしりとハグをしてきた。

豊満な胸が身体に押し付けられて役得だ。

七罪は上機嫌そうに鼻歌を歌っている。

鼻歌を歌っているところ悪いが、評価には続きがある。

 

 

「だがまぁ……個人的にはもう少し身体が小さくていて、胸はぺったんこか膨らみかけ、そして寸胴ボディが好ましいな」

「え……?」

 

 

七罪の目が見開かれた。

驚愕―――からなのだろうか?

希望を見つけた―――そんな目のような気がして堪らない。

 

と、そこでASTがご到着してしまったようだ。

 

 

「はぁ……うっとおしいクソアマ共が。―――朱蓮、白。久しぶりに遊んでこい」

『待ってました!!』

『ご配慮、感謝します』

 

 

神器から解放された二天龍は、嬉々としてASTの集団に向かっていった。

『Boost』と『Divide』と言う音声を鳴り響かせながら。

これはAST全滅してしまうか……?

まぁ関係ないけど。

 

二天龍が飛び立つ際に、辺りに砂埃が巻き起こった。

そしてそのせいで、

 

 

「ふぇ……ふぇ、ふえっくしょん!!」

 

 

その砂埃に鼻がくすぐられたせいなのか、七罪が大きなくしゃみをした。

その際、前方―――七罪が光を放った。

砂煙が晴れると、そこには七罪が憎々しげに俺の方を睨みつけていた。

 

 

「……見たわね?」

 

 

七罪は俺に鋭い眼光を送り込みながら、今までのものとは違う、低い声でうめくように言ってきた。

うーむ、特に何をみたわけではないのだがな。

 

 

「特に何も見てないけど?ていうか見えてないけど。砂煙のせいで」

「嘘!!今、私の―――私、の……!!」

 

 

七罪は、言葉も途中でギリッと奥歯を噛み締めると、手にした箒に跨り、そのまま宙に浮いた。

魔女を絵にかいたような光景だ。

 

 

「見られた以上、ただで済ますわけにはいかない……!!覚えてなさい。あんんたの人生、おしまいにしてやるんだから……!!」

「………俺の人としての生は数万年前に終わりを告げたよ」

「はぁ?」

 

 

ビッと指を突きつけ言ってきたので、本当のことを言って返してやった。

だが意味が解らないと言った様子で首を傾げた。

そのまま七罪は結構なスピードで空の彼方に消えていった。

 

そして、このタイミングで二天龍が帰ってきた。

 

 

『久しぶりにいい運動になったぜ!!』

『そうですね。たまにはこういうのもいいんですね』

 

 

二天龍の機嫌が少し良くなってくれてよかった。

だがまぁ―――面倒事の予感はどうやら的中してしまったようだ。




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