デート・ア・ライブ~二天龍を従えし者~   作:眠らずの夜想曲

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第2話~ラタトスクとの出会い~

「―――そんなものは、ない」

 

 

悲しげに十香は言った。

俺と十香の視線が初めて合う。

その目からはひどく憂鬱そうな―――まるで、今にも泣き出してしまいそうな表情だった。

そしてその表情のまま、カチャリという音を鳴らして剣を握りなおした。

 

 

「何をするつもりだ?」

「それはもちろん―――早めに殺しておこうかと」

「なんでだ?」

「なんで……?当然ではないか」

 

 

十香は物憂げな顔を作りながら続けた。

 

 

「―――だっておまえも、私を殺しに来たんだろう?」

「何言ってんだおまえ……」

「―――何?」

「俺はおまえを救いに来ただけだ」

 

 

そう言うと、十香は猜疑と困惑の入り交ったような目を向けてきた。

だが、十香はすぐに眉をひそめると、俺から視線を外し、空に顔を向けた。

俺も空に視線を移動させる。

そこにはASTの少女たちが数名飛んでいた。

 

俺は顔が割れるとまずいので狐の面をつける。

そして制服の上から暁のコートを創造して羽織る。

 

ASTの集団は手に持っていた武器から、俺と十香目がけてミサイルをいくつも発射してきた。

俺は十香とミサイルの間に神速で移動する。

 

 

「何をやっている!!そこをどけ!!」

 

 

十香が叫んでくるが俺は気にせず行動を開始する。

俺はただそこに立っているだけ。

だがミサイルは不可視の壁にぶつかり、こちらには被弾せずに爆発する。

 

 

「なっ!?」

 

 

後ろでは十香ば驚いている。

そんなことは気にしていられない。

すぐさま次の行動に出る。

 

 

「モード・天使(エンジェル)」

 

 

俺の背中からATフィールドでできた翼が三対六枚出現する。

頭上にはATフィールドでできた天使の輪みたいのが出現している。

その容姿を表現するなら―――

 

天使

 

これが一番近いだろう。

だから『モード・天使』だ。

 

俺の姿を見てASTの集団は驚愕を現した。

大方、新たな精霊の出現だとでも思っているのだろう。

 

 

「貴様は一体何なんだ?」

 

 

十香が警戒心を示しながら俺に尋ねる。

俺はいつも通り返すだけだ。

 

 

「ただ万能なだけの人外、神浄刃。今は五河刃。おまえを救いに来た者だ」

 

 

だがその返しに十香は首をかしげた。

 

 

「ジンガイとは何だ?」

 

 

俺はひざから崩れ落ちそうになった。

そこからか!!

そう突っ込みたくなった。

 

 

「人ではないということだ」

「おぉ、なるほど。ということは貴様も私と同じなのだな」

「まぁそんな感じだな」

 

 

本当は神様だけどね。

それにしてもさっきからミサイルがうっとおしい。

意味ないのにな……税金の無駄遣いだ。

 

 

「―――最大の拒絶」

 

 

俺と十香を囲むように立方体状で円の形をかたどったATフィールドが展開される。

数は―――数えるのが面倒だ。

とにかくたくさんだ。

それが立方体が外に回転する。

すると周りにいたASTが吹き飛んでいく。

相変らず便利な力だ。

 

 

「さて、ASTども。俺の邪魔をしたことを全力で後悔させてやろう」

 

 

俺は一振りの大剣を出現させる。

 

 

「―――アスカロン」

 

 

大剣の名を呟く。

 

アスカロン

 

形状は全長3.5m、総重量200kgの鋼の塊。

十六世紀末にとある作家が勝手に作った『聖剣の物語』に基づいて本物の魔術師が手掛けた霊装である。

『作中に登場する全長50フィートの悪竜が実在するものとして、その悪竜を切り殺すために必要な剣の理論値とは何か』を徹底的に計算し尽くして作り上げられた怪物兵器だ。

これは魔術師ではなく俺―――神様特製だ。

本物より破壊力、耐久力、切れ味などは格段にいい。

 

アスカロンに魔力を流し込む。

すると、刀身がプリズムのように様々な色に輝き始める。

いいねぇ……

かっこいいねぇ……

 

そしてアスカロンを横なぎに振るう。

それだけで剣圧が衝撃波となってASTに向かう。

ASTはそれをもろに喰らってさらに吹き飛ぶ。

 

 

「よし、これで静かに話ができるなッ!?」

 

 

俺はとっさにアスカロンで防ぐ。

まだ残っていたか……

だが襲ってきた少女の顔を見て納得する。

 

 

「―――鳶一折紙」

 

 

こいつだけは他のASTとは別格だったか。

だが関係な―――くはなかった。

十香が折紙と交戦を始めたのだ。

俺に脅威がないと考えてくれたのか?

ならこれは共闘の提案か?

それにしても戦い慣れているな二人とも。

とりあえずアスカロンを消し、もう一度状況を整理しようとした。

 

だがそんなことを考えていられるのも少しの間だけだった。

 

 

「やべっ!?」

 

 

十香と折紙の攻撃が交わった一点から、衝撃波が発せられた。

瓦礫の上に胡坐をかいて二人の戦いを見ていた俺は簡単に吹き飛ばされた。

 

しかも吹き飛ばされた場所が悪すぎる。

二人の間だ。

俺を挟んで、十香と折紙が鋭い視線を混じらせる。

 

一色触発

 

それが今の状況を表すのに一番当てはまる言葉だ。

何か小さなきっかけですぐに戦闘が再開されてしまいそうだ。

 

 

「はぁ……」

 

 

俺は思わずため息を吐いてしまった。

だがそのとき、俺のポケットに収まっているスマホから着信音が鳴り響く。

 

 

「―――!!」

「―――!!」

 

 

それが合図だった。

十香と折紙がほとんど同時に地を蹴り、俺の真ん中で激突する。

あとは分りますよね?

俺は胡坐をかいて座っている。

ということは―――

 

 

「のおぉぉぉぉぉぉぉっ!!」

 

 

吹き飛ばされます。

俺は宙を舞う。

そしてそのまま浮遊感が続く。

俺は思い出す。

 

確かこの上空にいは〈フラクシナス〉が待機しているんだっけか。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

俺の目の前には女が立っていた。

ものすごく眠そうだ。

 

 

「―――誰だ?」

 

 

俺はとりあえず言っておく。

俺自身は女の名前を知っているが、こうでもしておかないと「なんで知っている?」とかなりそうだからな。

 

女の全貌を見取る。

 

軍服らしき服を纏い、年齢は二十歳くらいだ。

髪は無造作に纏められていて、分厚い隈に飾られた目、そしてなぜか軍服のポケットに傷だらけのクマのぬいぐるみがいた。

 

 

「……ここで解析官をやっている、村雨令音だ」

 

 

そう女の名は―――

 

村雨令音

 

なんだかんだ言って大事なときに役に立ってくれるいい人だ。

 

 

「……ついてきたまえ。君に紹介したい人がいる。……気になることはいろいろあるだろうが、どうも私は説明下手でね。詳しい話はその人から聞くといい」

 

 

そう言って部屋の出入り口と思しき方向にむかって、ふらふらと歩いていく。

が、すぐに足をもつれさせると、ガン!!と音を立てて頭を壁に打ちつけた。

 

 

「おいおい……大丈夫か?」

「……むぅ」

 

 

倒れはしなかった。

令音は壁にもたれかかるようにしながらうめく。

 

 

「……あぁ、すまんね。最近少し寝不足なんだ」

「どれくらい寝ていないんだ?」

 

 

令音は少し考えるような仕草を見せる。

それだけ寝ていないということか。

そして指を三本立ててきた。

 

 

「三日?それとも三週間?そりゃ眠いだろう」

「……三十年、かな」

「あんたが本当に人間か疑わしくなってきたぞ」

 

 

三十年はありえないだろう……

さすがの俺でも死にかけるぞ。

まぁ死にはしないけど。

 

 

「……まぁ、最後に睡眠を取った日が思い出せないのは本当だ。どうも不眠症気味でね」

「そうか……」

「……と。あぁ、失礼、薬の時間だ」

 

 

すると令音は突然懐を探ると、錠剤の入ったピルケースを取り出した。

ピルケースを開けると、錠剤をラッパ飲み!?

おいおい……

さすがに死ぬんじゃないか?

 

 

「……こっちだ。ついてきたまえ」

 

 

令音が空になったピルケースを懐に戻してから、また危なっかしい足取りで歩き出す。

 

部屋の外は狭い廊下のような作りになっていた。

淡色で構成されたなんの面白味もない機械的な壁に床。

 

そしてしばらく歩き続ける。

 

 

「……ここだ」

 

 

通路の突き当り、横に小さな電子パネルが付いた扉の前で足を止め、令音が言った。

次の瞬間、電子パネルが軽快な音を鳴らし、滑らかに扉がスライドする。

 

 

「……さ、入りたまえ」

 

 

令音が中に入っていく。

俺もそのあとに続いた。

 

 

「ふぅん……なかなかじゃないか」

 

 

扉の向こうにある光景に俺は素直に感想を呟いた。

扉から、半楕円状の形に床が広がり、その中心に艦長席と思しき椅子があった。

さらにさ左右両側になだらかな階段が延びていた。

そこから下りた下段には無駄に複雑そうなコンソールを操作するクルーがいる。

全体的に薄暗くて、あちらこちらにあるモニターの光が存在感を主張しまくっている。

 

 

「……連れてきたよ」

 

 

令音がふらふらと頭を揺らしながら言う。

 

 

「ご苦労様です」

 

 

艦長席の横に立った長身の男が、執事のような調子で軽く礼をする。

 

 

「初めまして。私はここの副司令、神無月恭平と申します。以後お見知りおきを」

「ん、覚えておくよ」

 

 

こいつには要注意だ。

俺の可愛い琴里になにをするか分からないからな。

 

 

「司令、村雨解析官が戻りました」

 

 

神無月が声をかけると、こちらに背を向けていた艦長席が、低いうなりを挙げながらゆっくりと回転した。

 

 

「―――歓迎するわ。ようこそ〈ラタトスク〉へ」

 

 

『司令』と呼ばれるには可愛いすぎる声だ。

大きな黒いリボンで二つに括られた髪。

小柄な体。

丸っこくておおきな目。

そして口にくわえたチュッパチャップス。

 

 

「琴里か……」

 

 

普段とは様々なものが違ったが、そこにいたのは間違いなく俺の可愛い妹の琴里だった。

 

そのまま琴里は何もこっちの言葉には反応せずに説明を始めた。

 

 

「―――で、これが精霊って呼ばれる怪物で、こっちがAST。陸自の対精霊部隊よ。厄介なものに巻き込まれてくれたわね。私達が回収してなかったら、今頃二、三回ぐらい死んでは―――いないわね。さっきミサイル防いでたし。その力についてはあとで訊くわ。で、次に行くけど―――」

「まて、説明が無駄に長くてほとんど聞き流すだけだ。さっさと本題に入れ」

「聞き流すだけって……まずこっから理解してもらわないと説明のしようがないのよ」

「理解はすでにしてる。出なければこんなに落ち着いている訳がないだろ」

「どこで知ったのかは聞かせてくれないのかしら?」

 

 

俺はこの一言に考え込んだ。

なんて答えればいい?

転生者―――神だってことはまだ伏せておきたい。

適当にはぐらかすのは無理そうだ。

ならさっきの戦闘を見ていただろうからそれを利用させてもらう。

 

 

「さっきの戦闘見てただろ」

「えぇ……なんで刃があんなことができるのかがわからなかったけどね」

「あの力を手に入れた時に全て情報が流れ込んできた」

「な!?一体どこで手に入れたのよ!!」

 

 

急に食いついてきたな。

どこで手に入れたかね……

自分で創造したなんて言えない。

 

 

「気づいたら使えていたからな……情報については初めてあの大剣を使ったときに流れこんできた」

「本当でしょうね……まぁいいわ。あの大剣に名前とかあるのかしら?」

「あぁ……大剣の名前はアスカロンだ」

「「「「「アスカロン!?」」」」」

 

 

さすがにこの言葉には部屋にいる全員が驚いた。

 

 

「アスカロンって『聖剣の物語』の?」

「あぁそうだ。このアスカロンは『全長50フィートの悪竜が実在するものとして、その悪竜を切り殺すために必要な剣の理論値とは何か』というのを徹底的に計算し尽くして作り上げられた怪物兵器だ」

「確かに大きかったわね……大きさはどれくらいあるのかしら?」

「全長3.5m、総重量200kgの鋼の塊だ」

「3.5m!?それに200kgですって!?なんで刃がそんなもの持てるのよ!?」

 

 

確かによく考えてみると普通の人間が片腕はおろか、両腕でも振り回せる代物ではないな。

 

 

「使い手が使うと重さを感じなくなるんだ。だが使い手以外が手にすると重さを感じる」

「なるほどね……そういう仕組みになってるのね」

 

 

嘘です。

普通に重いですよ。

まぁ俺の身体スペックからしてみればペン程度の重さだけど。

 

 

「話を戻すわね。精霊の対処方法には二つあるの」

「ふぅん……」

「一つは、ASTのやり方。戦力をぶつけてこれを殲滅する方法。もう一つは、精霊と対話する方法。私たち〈ラタトスク〉ね。対話によって、精霊を殺さず空間震を解決するために結成された組織よ」

 

 

知ってたけどね。

 

 

「で、なんで俺にその説明をした?」

「この〈ラタトスク〉っていうのは、刃のために作られた組織だからなのよ」

「なんで俺のために?」

「んー、まぁ、刃は特別なのよ。さっきのアスカロンの件を含めなくても」

 

 

やっぱりキスして精霊の力をGet!!って展開ですか?

そのまま『神使』にするのもいいな。

まぁ本人が望んだらだけど。

 

 

「で、その対話ってのは?」

 

 

琴里は小さく笑みを浮かべた。

 

 

「それはね……精霊に―――恋をさせるの」

 

 

ふふんと得意げに、そう言った。

 

 

「わかった。それで?その理由は?」

「あら、意外にすんなり受け入れたわね。武力以外で空間震を解決しようとしたら、要は精霊を説得しなかやならないわけでしょ?」

「そうだな」

「そのためにはまず、精霊に世界を好きになってもらうのが手っ取り早いじゃない。世界がこんなに素晴らしいモノなんだー、ってわかれば、精霊だってむやみやたらに暴れたりしないでしょうし」

「そうだな」

「で、ほら、よく言うじゃない。恋をすると世界が美しく見えるって。―――と言うわけでデートして、精霊をデレさせなさい!!」

「OK全て理解した」

「「「「「マジで!?」」」」」

 

 

琴里はおろか、この部屋にいる全員が驚いた。

 

 

「―――よろしい。今までのデータから見て、精霊が現界するのは最短でも一週間後。早速明日から訓練よ」

「訓練?何の?」

「デートのに決まってるじゃない!!刃は今まで一度もデートしたことないでしょう?そんなことでは精霊の機嫌をそこねて、最悪日本沈没なんてことになったらたまったもんじゃないから」

「琴里……俺でもデートくらいしたことあるぞ」

「え……?」

 

 

琴里は口にくわえていたチュッパチャップスを落とした。

その顔からは驚愕の表情が見て取れた。

 

 

「や、刃……デ、デートしたことあるの?」

「あぁあるぞ」

「な、何回?」

「そうだな―――」

 

 

俺は指を折りながら数えていく。

すると両方の指を折り、開こうとした時だった。

 

 

「そ、そんなに!?てっきり一、二回かと思ったわよ!!」

 

 

琴里が叫ぶ。

俺はお構いなしに数え続ける。

色々な世界を周ってそして『神使』を増やしてその時に最低でも一回はデートするからな。

そのあとかならずそれがバレてすでに『神使』だった者からデートしようって言われるから……

それにレティシアとは『箱庭』でたくさんデートしたし……

 

 

「百回はくだらないと思う」

「「「「「百回!?」」」」

 

 

またまた全員が反応する。

そんなにすごいことか?

あぁそうか、ここにいる人は俺が何万年も生きていることを知らないんだったな。

でも百回ぐらいならバカップルはすると思うぞ?

本当に。

 

 

「そ、それなら大丈夫そうね……」

「まぁな。それにいろいろなタイプの女の子とデートしたし、どんなタイプの子でも大丈夫だ」

「「「「プ、プレーボーイ!?」」」」」

 

 

なんでそうなる。

全員愛してますよ。

あぁ……早く会いたいなぁ……

 

 

「い、いろいろなタイプって?」

 

 

琴里がおそるおそる訊いてきた。

 

 

「んー……聞きたい?」

「や、やめておくわ」

「うん、それがいいと思うよ」

 

 

正直多すぎてわからない。

微妙なのもあるし。

 

 

「というわけで訓練の話はなしで」

「「「「「異議なし!!」」」」」

 

 

ありがたい。

失敗するたびに俺の黒歴史が流れるなんてたまったもんじゃねぇ……

 

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