デート・ア・ライブ~二天龍を従えし者~   作:眠らずの夜想曲

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第4話~精霊の少女との初デート~

「うむ、早くデェトをしよう!!」

 

 

そう言われたのはいいが……

 

 

「十香その服だと目立つから―――この服に着替えてくれ。ほら、この中で」

「む、そうか。なら仕方ないな」

 

 

そう言いながら、俺が創造した洋服を持って、創造した簡易更衣室の中に入っていく。

もちろん、周りに人がいないのは確認済みだ。

 

 

「どうだ、ヤイバ」

「おぉ!!すごく似合ってるぞ!!」

「そうか、ありがとう」

 

 

俺が十香に渡した服は赤のチェックのミニスカート、白のブラウス、赤のネクタイだ。白のブラウスは七分丈だ。そして極めつけは黒ニーソ!!

俺の目を引くのはミニスカートと黒ニーソの間から見える数センチのエリア。

 

絶対領域

 

最高!!

もう、涙が出そうだ。

 

 

「さぁ、デートに行こうか」

「うむ、デェトに行こう!!」

 

 

俺は十香に左手を差し出す。

 

 

「む、なんだ?」

「手をつなごう。デートだしな」

「そういうものなのか?」

「そういうものだ」

「ふーん……」

 

 

十香は俺の左手を取る。

久しぶりだな、手をつなぐのも。

もう腕を組んでばっかりだったからな。

 

 

「そうだ、十香。人間がたくさんいるけど攻撃するなよ」

 

 

視線を鋭くしていた十香に声をかける。

 

 

「む……あいつらは敵か?」

「敵じゃない。敵なのは……メカメカ団だ」

 

 

対話で解決しようとしている俺たちからしてみれば戦闘で解決しようとするASTは敵だからな。

 

 

「やはりそうか……」

「あぁ、まぁこの街中にはいないから安心しろ」

「わかった」

 

 

ゆっくり歩きながら話をする。

 

 

「そう言えば今日はどうやって来たんだ?前みたいに空間震がなかったが」

「いつもは勝手に、不定期に存在がこちらに引き寄せられる。まぁ強制的にたたき起こされているような感覚だ。それで今日は………………っ!!」

 

 

十香は頬をぴくりと動かすと、口をへの字に曲げて視線を斜め上にやる。

 

 

「ふん、し、知るか」

 

 

十香は頬をほんのり桜色に染めた。

あぁ……なるほど、自分から来たと。

 

 

「そうか、どこか行きたいはあるか?」

 

 

十香に訊くが、十香は別のことで頭がいっぱいだったらしい。

 

 

「……っ、な、なんだこの人間の数は。総力戦か!?」

 

 

先ほどまでとは桁違いの人と車の量に驚いたらしい。

十香が全方位に注意を払いながら忌々しげな声を発した。

ついでに両手の指合計十本

に、それぞれ小さな光球を出現させていた。

っておいおい。

 

 

「いやいや、違うぞ。さっきも言っただろ。メカメカ団以外は安全だ。ほら、やめろって」

「……本当か?」

「本当だ」

 

 

俺がそう言うと、十香は油断なくあたりを見回しながらも、とりあえず光球を消した。

と―――不意に、警戒に染まっていた十香の顔から力が抜ける。

 

 

「ん……?おいヤイバ。この香りはなんだ」

「……香りねぇ」

 

 

あぁ……この香ばしい香りか。

 

 

「多分あれじゃないか」

 

 

そう言って、右手にあったパン屋を指す。

 

 

「ほほう」

 

 

十香じゃ短く言うと、その方向をジッと見つめた。

 

 

「入ろうか」

「うむ、そうだな!!」

 

 

十香は元気よくそう言うと、大手を振ってパン屋の扉を開いた。

 

パン屋の品物をざっと見る。

なかなか種類が多かった。

十香はある一品で止まっていた。

 

きなこパン

 

確かに俺も好きだぞ、きなこパン。

 

 

「それが欲しいのか?」

「うむ!!」

「よし、おっちゃんきなこパンあるだけくれ」

「あいよー」

 

 

おっちゃんが紙袋にテンポよくつめていく。

それを受け取り、店から出ていく。

 

俺はきなこパンのサイズに合わせて紙袋を創造する。

そしてそこに一つとって入れる。

それを十香に渡す。

 

 

「ほら」

「すまんな」

 

 

十香はきなこパンを受け取り、すぐに食べ始める。

 

 

「おぉ!!うまいぞ!!」

「そうか、よかったな……あそこにベンチがあるからあそこに座って食べよう」

「うむ♪」

 

 

嬉しそうで何よりだ。

 

俺と十香はベンチに座り、きなこパンを食べる。

おぉ、おいしいな。

 

すべてを食べ終わると、再び歩き始めた。

 

 

「今度は何処に行きたい?」

「むー……あそこだ!!あそこからいい匂いが……」

 

 

十香が指さしたのは喫茶店だった。

どれだけ食べるんだ……

まるで腹ペコ王だな。

 

そして喫茶店に入った。

 

席に着くとすぐさま十香がメニューを取って訊いてきた。

 

 

「この本はなんだ?」

「それはメニューって言ってな。その中から食べたいものを選ぶんだ」

「おぉ……」

 

 

そして視線をしばしの間メニューに向ける。

それから口を開ける。

何だ?

一体何を選んだんだッ!!

 

 

「きなこパンは。きなこパンはないのか」

「……さすがにないな。最初のパン屋で食いまくったじゃねぇか」

「また食べたくなったのだ。一体なんだあの粉は……あの強烈な習慣性……あれが無闇に世に放たれれば大変なことになるぞ……人々は禁断症状に震え、きなこを求めて戦が起こるに違いない」

「さすがにねぇよ」

「むぅ、まぁいい。新たな味を開拓するとしよう」

「そうだな、それがいいと思うぞ」

 

 

そう言うと、十香は再びメニューに視線を戻した。

そして店員を呼びものすごい頼み方をした。

 

 

「ここからここまでくれ」

 

 

そう言ってメニューの端から端までを指さした。

簡単に言えば全部だ。

 

料理は運ばれたものから次々に十香の口に運ばれていく。

 

 

「うまい、うまいぞー!!」

「そ、そりゃよかった」

 

 

そして渡された伝票を見た。

け、桁が……二つ違うぞ。

二人で来た時で払う値段の桁ではない。

十万の桁にに行くとは……

 

俺は財布から福沢さんを何十人も財布から出して準備をする。

カードが使えないんだから仕方がないだろ。

 

 

「ほら、行くぞ十香」

「ん、もうか?」

 

 

もうって……

もう腹ペコ王なんて目じゃないんじゃないか?

 

 

「会計頼む」

 

 

そう言ってレジに立っていた店員に声をかけ―――

 

 

「なぜここにいる?」

 

 

そう言ってしまった。

なぜならそこに立っていた店員が、

 

 

「……はい、お預かりします」

 

 

令音だったからだ。

 

とりあえず、代金を渡す。

すると少し驚いた表情になるが、すぐにもどしてお釣りとレシートを渡してくる。

 

 

「……こちら、お釣りとレシートでございます」

 

 

俺はお釣りだけ財布にしまい、レシートをゴミ箱に捨てる。

そのときに「……あ」と聞こえたが無視をしておこう。

 

令音はレジの下の引き出しからカラフルな紙を一枚取り出すと、俺に手渡してきた。

 

 

「……こちら、商店街の福引き券となっております。この店から出て、右手道路沿いに行った場所に福引き所がありますので、よろしければご利用ください」

 

 

行けってことだな。

そうだろう?

場所を詳しく説明した上に後半をやけにはっきり言ってくる。

使うわけがない……と言いたい所だったが、そうもいかない。

 

 

「ヤイバ、なんだそれは」

 

 

なぜなら十香が、福引き券をものすごく興味深く見つめていたのだから。

 

 

「行ってみるか?」

「ヤイバは行きたいのか?」

「……行くか」

「では行くか」

 

 

十香は大股で元気よく店を出ていく。

はぁ……あんな笑顔向けられたら断れねぇ……

 

店を出てから道なりに進むと、赤いクロスを敷いた長机の上に、大きな抽選器(ガラポン)が置かれたスペースが見えてきた。

ハッピを羽織った男が、抽選器のところに一人、商品渡し口に一人おり、その後方に、商品と思しき自転車やら米やらが並べられていた。既に数名、人が並んでいる。

そしてその全員がフラクシナスで感じた気の持ち主だ。

大体最初のパン屋で福引き券がもらえなくて喫茶店でもらえるところからおかしい。

 

 

「おぉ!!」

 

 

だがそんなもの十香に関係あるわけがない。

俺が渡した福引き券を握りしめ、目を輝かせた。

 

 

「とりあえず、並ぼうか」

「ん」

 

 

十香がうなずき、列の最後尾につく。

前に並んだ客が抽選器を回すのを見ながら、首と目をぐるぐる動かしていた。

 

何この可愛い子……

 

すぐに十香の番がくる。

十香は前の客に倣って件を係員に手渡し、抽選器に手に掛けた。

 

 

「これを回せばいいのだな?」

 

 

そう言って、ぐるぐると抽選器を回す。

数秒後、抽選器から赤いハズレ玉が飛び出した。

 

 

「赤はポケットティ―――」

 

 

最後までは言えなかった。

鐘がガランガランと高らかに鳴ったからだ。

 

 

「大当たり!!」

「おぉ!!」

「なんでもありだな……」

 

 

だが俺はそんなことより、後ろに張ってあった賞品ボード『一位』のところに書いてある金色の玉を、赤いマジックペンで塗りつぶしているのを目撃した。

 

 

「おめでとうございます!!一位はなんと、ドリームランド完全無料ペアチケット!!」

「おぉ、なんだこれはヤイバ!!」

「……そんなところ聞いたことないぞ」

 

 

一体どこにそんなのがあったっけ?

聞いたことのない場所だ。

 

 

「裏に地図が書いてありますので、是非!!これからすぐにでも!!」

 

 

俺はチケットの裏を見る。

確かに地図が書いてあった。

すげぇ近いな……

 

 

「こんなところにテーマパークはないぞ……」

 

 

俺は頭をひねる。

何やら怪しいぞ……

 

 

「……行ってみたいか?十香」

「うむ!!」

 

 

十香はえらい乗り気だ。

とりあえず足を運んでみることにした。

 

場所は本当に近かった。

この福引き所から路地に入って数100m。

まだ両側には雑居ビルが並んでおり、とてもではないがテーマパークがあるようには思えない。

だが―――

 

 

「おぉ!!ヤイバ!!城があるぞ!!あそこに行くのか!?」

 

 

十香が今までになく興奮しながら、前方を指さす。

そんな馬鹿なと思いつつチケットの裏麺から視線を外して顔を前に向ける。

 

 

「……おいおい」

 

 

確かに小さいながらも、西洋風の城である。

看板にドリームランドともかいてある。

……ついでにその下に『ご休憩・二時間四○○○円~ ご宿泊・八○○○円~』という文字も書いてあった。

ラブホですか!?

この城、ラブホテルですか!?

えぇ!?

 

もったいねー……

技術力の無駄遣いだ。

 

 

「十香……ここはだめだ」

「ぬ?あそこではないのか?」

「あそこだがあそこはだめだ」

「でも入ってみたいぞ」

「いや……もう少し時間がたってからだな。そしたらいいぞ」

「むぅ……そうか」

 

 

残念そうに言う十香には悪いがさすがに初デートでラブホは厳しい。

 

 

「さぁ、行こうか」

「どこに行くのだ?」

「そうだな……公園なんてどうだ」

「む?コーエン?なんだそれは」

「ついてからのお楽しみだ」

「むぅ……そうか」

 

 

俺は十香の手を引きながら歩き出した。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

時刻は十八時。

天宮駅前のビル群に、オレンジ色の夕日が染み渡る。

そんな最高の絶景を一望できる高台の小さな公園を俺と十香が手をついて歩いていた。

 

この公園には俺と十香以外の人影は見受けられなかった。

 

 

「おぉ、絶景だな!!」

 

 

十香は先ほどから、落下防止用の柵から身を乗り出しながら、黄昏の天宮の街並みを眺めている。

 

 

「ヤイバ!!あれはどう変形するのだ!?」

 

 

十香が走る電車を指さし、目を輝かせながら言ってくる。

 

 

「残念ながら変形はしない」

「何、合体タイプか?」

「まぁ、連結はする」

「おぉ」

 

 

十香は妙に納得した調子でうなずくと、くるりと身体を回転させ、てすりに体重を預けながら向き直った。

夕焼けを背景に佇む十香はとても美しかった。

 

 

「―――それにしても」

 

 

十香が話題を変えるように、んー、と伸びをした。

しすて、にぃッ、と屈託のない笑みを浮かべてくる。

 

 

「いいものだな、デェトというのは。実にその、なんだ、楽しい」

「そうか……俺も楽しかった」

 

 

俺の顔は少し赤くなっているだろう。

なぜだろう、慣れているはずなんだけどな。

 

 

「どうした、顔が赤いぞヤイバ」

「……夕日だ」

 

 

俺は顔をそらす。

 

 

「そうか?」

 

 

すると十香が俺のもとに寄り、俺の顔を覗き込んできた。

 

 

「やはり赤いではないか。何かの疾患か?」

 

 

吐息の触れるくらいの距離で、十香が言う。

ははは、無知ってのはいいな。

 

 

「―――どうだ?おまえを殺そうとする奴なんていなかっただろう?」

「……ん、皆優しかった。正直に言えば、まだ信じられないくらいに」

「ふぅん……」

「あんなに多くもの人間が、私を拒絶しないなんて。私を否定しないなんて。―――あのメカメカ団……えぇと、なんといったか。エイ……?」

「ASTか?」

「そう、それだ。街の人間すべてが奴らの手の者で、私を欺こうとしていたと言われた方が真実味がある」

「おいおい……」

 

 

さすがに発想が飛躍しすぎだ……だが笑えなかった。

だって十香にはそれが普通だったから。

否定されるのが、続けるのが普通。

 

 

「それじゃあ俺もASTの手先ってことか?」

 

 

十香はぶんぶんと首を横に振って否定した。

 

 

「いや、ヤイバはあれだ。きっと親兄弟を人質に取られて、脅されているのだ」

「なんだそれ」

「……おまえが敵とか、そんなのは考えさせるな」

「俺は絶対に敵にはならないさ」

「そうか……」

 

 

十香は嬉しそうに笑う。

 

 

「―――でも本当に、今日はそれくらい、有意義な一日だった。世界がこんなにやさしいだなんて、こんあなに楽しいだなんて、こんなに綺麗だなんて……思いもしなかった」

「そうか……」

 

 

十香は眉を八の字に歪めて苦笑いを浮かべた。

 

 

「あいつら―――ASTとやらの考えも、少しだけわかったしな」

 

 

何がわかったんだ?

ASTの何を教えたんだ?

 

 

「私は……いつも現界するたびに、こんなにも素晴らしいものを壊していたんだな」

「でもそれはおまえの意思とは関係ない」

「……ん。現界も、その現象も、私にはどうにもならない」

「そうかもな……」

「だがこの世界の住人にしてみれば、破壊という結果は変わらない。ASTが私を殺そうとする道理が、ようやく……知れた。ヤイバ。やはり私は―――いない方がいいな」

 

 

十香が笑う。

だが昼間見せてくれた無邪気な笑みではない。

まるで自分の死期を悟った病人のような―――弱々しく、痛々しい笑顔だった。

 

 

「そんなことはない!!現に今日、空間震は起きていない!!」

「この方法は私にもあまりわかるものではない。それに不定期にこちらに固着するのは止められない。現界の数は減らないだろう」

「なら俺がどうにかしよう!!いや、どうにかしてみせる!!」

「そんなことが―――可能なはずは……」

「安心しろ!!俺はただ万能なだけな人外だ!!」

 

 

十香が唇をかんで黙り込む。

 

 

「で、でもあれだぞ。私は知らないことが多すぎるぞ?」

「俺が全部教えてやる!!」

「寝床や、食べるものだって必要になる」

「うちに来ればいい!!」

「予想外の事態が起こるかもしれない」

「言っただろ、俺は万能なだけの人外だ。そんなものいくらでも対処してやる!!」

 

 

十香は少しの間黙り込んでから、小さく唇を開く。

 

 

「……本当に、私は生きていてもいいのか?」

「あぁ!!」

「この世界にいてもいいのか?」

「もちろん!!」

「……そんなこと言ってくれるのはきっとヤイバだけだぞ。ASTはもちろん、他の人間たちだって、こんな危険な存在が、自分たちの生活空間にいたら嫌に決まっている」

「安心しろ!!他の奴がどれだけ否定しようと、俺は……俺だけは、お前を肯定するッ!!」

 

 

俺は叫ぶ。

そして十香に向かって手を差し出す。

十香の肩が、小さく震える。

 

 

「掴め、そして切り開け」

 

 

十香は顔をうつむかせ、数瞬の間思案するように沈黙したあと、ゆっくり顔を上げ、そろそろと手を伸ばしてきた。

 

 

「ヤイバ―――」

 

 

と。

だが俺と十香の手が触れ合う瞬間だ。

ゾクリと俺の勘が警告をしてきた。

 

 

「十香!!」

 

 

俺はとっさに十香を突き飛ばす。

細見の身体は突然の衝撃に耐えられず、漫画みたいにごろんと後ろに転がった。

 

 

「あーあ……」

 

 

俺は胸と腹の間に凄まじい衝を感じた。

ATフィールドはわざと展開しなかった。

ASTが監視しているの気づいたからだ。

それにどうせ俺は死ななから、攻撃を受けてもいいと思っていた。

だけどこれは……ぶっ飛びすぎだろ。

 

 

「な―――何をする!!」

 

 

砂まみれになった十香が、非難の声を上げてくるが、肺が消し飛んで声が出せない。

 

 

「―――ヤイバ?」

 

 

十香が呆然と言ってくる。

俺は右手を脇腹に持ってくる。

そこには手ごたえがなかった。

マジで腹が消し飛んだらしい。

 

 

「ヤイバ……?」

 

 

十香が呼んでくるが返事ができない。

 

 

 

「ヤ―――、イバ」

 

 

十香は俺の頭の隣に膝を折ると、俺の頬をつついた。

だが反応できない。

 

 

「ぅ、ぁ、あ、あ―――」

 

 

十香が状況を掴み始めたらしい。

そして叫んだ。

 

 

「―――〈神威霊装・十番(アドナイ・メレク)〉……ッ!!」

 

 

それはのどの奥から、絞り出したような叫びだった。

それを見た俺の感想は―――

 

美しい

 

この一言に限る。

瞬間、世界が啼いた。

周囲の景色がぐにゃりと歪み、十香の身体に絡み付いて、荘厳な霊装の形を取る。

そして光輝く膜がその内部やスカートを彩り―――災厄は、降臨した。

 

十香は地面に踵を突き立てる。

瞬間、そこから巨大な玉座が出現した。

トン、と地を蹴ると、玉座の肘掛に足をかけ、背もたれから剣を引き抜いた。

そして―――

 

 

「あぁ」

 

 

のどを震わせる。

 

 

「ああああああああああああああああ」

 

 

それはまるで天に響かせるようだった。

 

 

「ああああああああああああああああああああああああ―――――ッ!!」

 

 

そして言葉を紡ぐ。

 

 

「よくも」

 

 

十香が言う。

 

 

「よくもよくもよくもよくもよくもよくもよくもよくもよくもよくもよくもよくもよくもよくもよくもよくもよくもよくもよくもよくも」

 

 

そこまで聞くと、十香は俺の目の前からいなくなっていた。

それを確認して俺は腹に穴が開いたまま立ち上がる。

そしてシャツなど上に着ていたものを全て脱ぐ。

そして一言。

 

 

「―――始めるか」

 

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