デート・ア・ライブ~二天龍を従えし者~   作:眠らずの夜想曲

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第2章 四糸乃パペット
第1話~雨の少女~


―――来禅高校、教室。

 

 

「ヤイバ!!クッキィというのを作ったぞ!!」

 

 

腰まである夜色の髪をたなびかせ、水晶の如き瞳をキラキラと輝かせながら、冗談のように美しい十香が、興奮気味にそう言って、手にしていた容器を俺の目の前にずいっと突き出してくる。

 

 

「十香……ありがとう!!」

「うむ!!」

 

 

ものすごく可愛い笑みで、十香が言う。

 

 

「ヤイバ、これを見てくれ!!」

 

 

そこには、形が歪だったり、ところどころ焦げていたりはするものの、クッキーといえるものが入っていた。

俺と十香は同じクラスだが、なんでも、個々人の作業量が充実するように……とかなんとかという理由で、実験的に、調理実習を少人数に分けて行ったのだった。

つまり、今日は女子だけが調理実習だったということだ。

 

 

「おぉ……」

「うむ、皆に教えてもらいながら、私がこねたのだ!!食べてみてくれ!!」

 

 

そう言って、十香が満面の笑みを作る。

俺には、男子からの怨嗟に満ちた視線が注がれているが―――十香の手作りクッキー前にはそんなもの、無意味だ!!

 

フハハハハハ!!俺、勝ち組!!

 

 

「どうしたヤイバ。食べないのか?」

「あぁ、すまん。ぼーっとしてた。じゃ、いただきまーす」

 

 

俺は一つクッキーを口に運ぶ。

……決しておいしいとは言えないが、気持ちのこもった最高の手作りクッキーだった。

 

折紙が遠くからこっちを睨んでいるのは気にしないでおこう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――下校。

 

 

「あ゛ー……学校に行くのがダルい……」

 

 

正直に言えば学校に通わなくてもいいと思っている。

だって音楽活動だけでもうかなり稼げているし、金ならいくらでも創造できるし、学校で学ぶことなんてもうない。

二回目だぞ?

駒王学園に続き、二回目の高校だぞ?

しかも駒王学園はかなり頭がいい学校だったし……

ぶっちゃけ、来禅高校のテストなんて十分あればすべて解ける。

 

それは置いておこう……

 

不意に、顔を上にやる。

突然、ぽつん、と顔に冷たいものが垂れてきたような気がした。

 

 

「面倒だなぁ……」

 

 

雨かよ……

天気予報でも俺の勘でも今日は晴れだったんだが……

そして、まるでみはからったようなタイミングで、ぽつ、ぽつ、と、大粒の雫がアスファルトの道に染みを作り始めた。

俺は傘を創造し、すぐにさす。

そして歩みを少し早める。

 

T字路を右に曲がったところだった。

 

 

「女の子か……?」

 

 

前方には可愛らしい意匠の施された外套を身を包んだ、小柄な影。

顔は見えない。

理由は簡単だ。

ウサギの耳のような飾りの付いた大きなフードが、彼女の頭をすっぽりと覆い隠していたからだ。

 

そして更に目を引くのは、その左手だ。

いやにコミカルなウサギ形の人形が、そこに装着されていた。

そんな少女が、ひとけのなくなった道路で、楽しげにぴょんぴょんと跳ね回っていた。

 

 

「可愛い……」

 

 

久しぶりの幼女(ドストライク)だった。

 

―――ずるべったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁんッ!!

 

 

「えぇ……」

 

 

……幼女が、コケた。

顔面と腹を盛大に地面に打ち当て、あたりに水しぶきが散る。

ついでに彼女の左手からパペットがすっぽ抜け、前方に飛んでいく。

そして、うつぶせになったまま、動かなくなった。

 

 

「だ、大丈夫か!!」

 

 

俺は駆け寄り、その小さなすばらしい身体を抱きかかえるように仰向けにしてやる。

 

 

「おい、大丈夫か」

 

 

そのタイミングで俺は幼女の顔を見る。

歳は俺の妹の琴里と同じくらいか?

ふわふわの髪は海のような青。柔らかそうな唇は桜色。

まるでフランス人形のようなきれいな幼女だった。

そして予想はしていたが、これで確信を持てた。

幼女の名は―――

 

四糸乃

 

つーか、幼女って言ったけど琴里と同じくらいだしな……

ということは琴里も幼女に入るのか?

むーん……

これは永遠の課題になりそうだ。

 

 

「……!!」

 

 

と、そこで四糸乃が目を開いた。

長い睫に飾られた、サファイアのような瞳が露わになる。

 

 

「怪我はないか?」

 

 

俺がそう言うと、四糸乃は顔を真っ青に染めて目の焦点をぐらぐら揺らし、俺の手から逃れるようにぴょんと跳び上がった。

そして少し距離を取ってから、全身を小刻みにカタカタと震わせ、怖がるような視線を向けてくる。

 

 

「ごめん……」

「……!!こ、ない、で……ください……っ」

 

 

俺が四糸乃に近づこうと足を踏み出すと、怯えた様子でそう言った。

 

 

「いたく、しないで……ください……」

 

 

なぜだろう。

何かやましいことをしたようなこの気持ち。

 

とりあえず、地面に落ちていたパペットを拾い、四糸乃に見せる。

 

 

「ほら、これおまえのだろ」

「……!!」

 

 

すると四糸乃を目をおおきく見開き、俺の方に駆け寄ってこよう―――としたが、やはり足を止めた。

パペットは取り返したいが、俺に近づくのは怖いのか。

俺はゆっくりと近づいていく。

 

 

「……っ!!」

 

 

四糸乃がビクッと肩を揺らすが、俺がパペットを渡そうとしたことがわかったのか、ゆっくりとすり足え近づいてきた。

そして、俺の手からパペットを奪い取るなり、それを左手に装着した。

すると突然四糸乃が、パペットの口をパクパクと動かし始めた。

 

 

『やっはー、悪いねおにーさん。たーすかったよー』

 

 

おぉ、腹話術。

だが妙に甲高いな。

 

 

『―――ぅんでさー、起こしたときに、よしのんのいとんなトコ触ってくれちゃったみたいだけど、どーだったん?正直、どーだったん?』

「うーん……一言で言うなら、最高」

『しょーじきだねー。……まぁ、一応は助け起してくれたわけだし、特別にサービスしといてア・ゲ・ルんっ』

「さんきゅー」

 

 

パペット着けるとよくしゃべるな。

だが、そんな四糸乃も嫌いじゃないぜ。

 

 

『ぅんじゃね。ありがとさん』

 

 

パペットがそう言うと同時に、四糸乃が踵を返して走っていった。

 

 

「また転ぶなよー」

 

 

俺が声をかけても四糸乃は反応を示さない。

まぁいいけど。

さっさと家に帰ろう。

いい加減寒いし。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――家。

 

 

「―――やっと帰ってきたのか琴里」

 

 

玄関ドアに鍵がかかっていない。

ということは琴里がいる。

まったく……〈フラクシナス〉にこもりっぱなしもいい加減にしてほしいな。

 

 

「―――ただいまー」

 

 

とりあえず、リビングにいるであろう琴里に言う。

リビングは素通りして、そのまま脱衣所に行く。

もう靴下がびちょびちょなんだよ。

 

そして俺は脱衣所の扉を開ける。

そこには、素晴らしいものが待ち受けていた。

 

 

「十……香……?」

 

 

脱衣所には、ここにはいるはずがない十香の姿があった。

背を覆い隠す長い闇色の髪に、水晶の如き瞳。

俺の中ではレティシアの次に美しいだろう。

だが、それは問題ではない。

問題だったのは、全裸だということだ。

まぁ見慣れてるけど、結構いいものだ。

 

手の平に収まるくらいのちょうどいい乳房に、きゅっと締まったウエスト、やわらかそうな臀部。

まさに、芸術!!

 

 

「……ッ!!」

 

 

そこでようやく、十香が肩をビクッと震わせ、顔をこちら向けてくる。

 

 

「な……ッ、や、ヤイバ!?」

「おっす。わりぃ、いるの気づかなくて」

「まぁ、ヤイバならいい……」

 

 

顔を赤らめて十香は言う。

マジで!?

いいんですか!?

あざっす!!

 

 

「とりあえず、俺は出ていくな」

「うむ、そうしてくれ」

 

 

そしてしばらくすると、扉が開けられた。

もちろん、十香は服を着ていた。

だが、いつも着ている制服ではない。

琴里が貸し出したのだろう、俺がいつも着ていた部屋着だった。

だが一回りサイズが大きいため、襟元からかすかに鎖骨が覗いていて、そりゃもうたまらない。

 

 

「どうしてここにいるんだ?」

 

 

俺がそう訊くと、十香は俺が何を言っているかわからないといった感じでくびを傾げた。

 

 

「何?妹から聞いてないのか?なにやら、ナントカ訓練だとかで、しばらくの間ここに厄介になれと言われたのだ」

「本当か!?よっしゃぁ!!」

 

 

十香と暮らせることを素直に喜んだ。

そして俺は確認のために琴里のいるリビングに向かう。

 

あ、その前に着替えねば。

いつもの服に着替える。

いつもの服とは、サルエルにタンクトップだ。色は両方とも黒。

 

 

「琴里、訓練とはどういうことだ?」

「んーとね」

 

 

琴里が、指で頬をぷにっ、と持ち上げた。

可愛いじゃねぇか。

 

 

「今日からしばらくの間、十香がうちに住むことになったのだ!!」

 

 

えっへんと胸をそらすようにしながら、無邪気な笑顔を作る。

 

 

「しばらくだと?なんで永遠じゃないんだ!!」

「……まぁ落ち着いてくれ、やいやい」

 

 

落ち着いていられるか!!

折角、十香と一緒に暮らせるのにしばらくだと?

ナメとんのかボケぇ!!

そして、やいやい、とは何事だ!!

なんか、ねぇ……

 

 

「やいやいじゃなくて刃だ」

「……あぁ、そうだった。訂正しよう。悪いね、ヤイバ」

「……はぁ」

 

 

わざとやってるとしか思えない。

だってヤイバって言っているんだぞ?

あとは刃に直すだけなのに……

 

 

「……理由は大きく分けて二つある」

 

 

俺は思考をやめて、耳を傾ける。

 

 

「……一つは―――十香のアフターケアのためさ」

「で?」

「……ヤイバ。君は先月、口づけによって十香の力を封印したね?」

「あぁ、そうだが」

「……まぁ、そこまではいいのだが、一つ問題があってね。……今、ヤイバと十香の間には、目に見えない経路のようなものが通っている状態なんだ」

 

 

なるほど、これで力が流れてきた訳がわかった。

 

 

「……簡単に言うと、十香の精神状態が不安定になると、君の身体に封印してある精霊の力が逆流してしまう恐れがあるということさ」

「あぁ、なんだそんなことか」

「……そんなことだと?」

 

 

まぁ、これもある程度予想していたからな。

ちょうどいい、十香に訊いてみるか。

 

 

「十香、少しいいか?」

 

 

十香はすぐにリビングに入ってきた。

 

 

「何事だ、ヤイバ」

「あのさ、十香……『神使』になる気はあるか?」

「シンシ?それ何だ?」

「んー、簡単に言えば、一生俺のそばにいられる状態になるってことだな」

「おぉ!!それはいいではないか!!なら、シンシとやらになるぞ!!」

 

 

決断が早いな……

まぁそれはいいことだ。

 

 

「本当にいいのか?」

「うむ!!」

「そうか……なら十香、キスしてくれ」

「うむ」

 

 

そう言って、十香は俺に近づいてくる。

そして、キスまであと一歩の所で―――

 

 

「ちょ、ちょっとまちなさい、刃!!」

「なんだよ……今いいところだったのに」

「そうだぞ、琴里。よし、では行くぞヤイバ」

「よし、きた」

「だからまちな―――」

 

 

まっていられないので、俺は十香とキスをする。

しばらくして、唇を放す。

そして、十香の左手の薬指に例の指輪をつける。

 

 

「よし、これでいいぞ」

「むぅ……何が変わったのだ?」

「んー?まず種族が、精霊から『神使』に変わった。そんで、十香、ちょっと〈神威霊装・十番〉出してみ」

「何を言っているのだヤイバ。私の力は九割封印されたと言っただろう」

「そうよ刃。十香の精霊の力は刃が封印したのよ」

「まぁまぁ、ほれ、やってみろ」

「ヤイバがそう言うならやってみよう。〈神威霊装・十番〉!!」

 

 

そう言うと、十香の服装が変わる。

俺の部屋着から十香の霊装、〈神威霊装・十番〉に変わったのだ。

 

 

「おぉ!!」

「な!?そんなバカなことあってたまるもんですか!!」

「……ほぉ」

 

 

十香は素直に喜んでいるのか?

琴里は現実を受け止めたくないのか、叫んでいた。

令音は驚いているのかわからない微妙な反応だ。

 

 

「よし、もういいぞ十香」

「うむ、確かに出せたぞ!!」

「どういうことか説明してくれるわよね?」

 

 

琴里がものすごく迫ってきた。

 

 

「まぁ簡単に言えば、十香が望んだ時だけ俺から力を引き出せるようにしただけだ。それで、俺も許可しないと十香は力が引き出せない」

「……もう、考えたくないわ」

 

 

 

琴里は思考を放棄したようだ。

 

 

「話を戻そうか。もう一つの理由は?」

「……精霊用の特設住居ができるまでの間、十香をこの家に住まわせることになったんだ」

「なるほど、理解した」

 

 

精霊用の住居ができたら俺もそっちに住もうかな。

 

 

「そう言えばさ、〈ラタトスク〉ってのは、一体なんだ?おまえが組織に入った理由は―――いいや。何となくわかるから」

「〈ラタトスク〉は、融資により結成された……まぁ、いうなれば一種の自然保護団体みたいなものよ。―――もちろん、その存在は公表されていないけれど」

「ふぅん……」

 

 

何か引っかかるな……

 

 

「そして。〈ラタトスク〉の結成の理由ににして、最大の目的、それは―――精霊を保護し、幸福な生活を送らせることよ。……ま、最高幹部連である円卓会議の中には、精霊の強大な力を得てどうこうしようとって助平心を持っている奴もいるみたいだけど」

「へぇ……そいつはよっぽど俺に殺されたいようだな」

「あ、あはははは……はぁ……」

 

 

そんな奴、見つけたらすぐに、きゅっとしてドカーンでぶち殺してやる。

 

 

「なぁ、空間震を防ぐことが目的じゃないのか?」

「ま、それももちろんあるのだけれど。それはあくまで副次的なものよ。そこだけ見るなら、私たちもASTも変わらないわ」

「そうか……で、司令官の件は―――いいや。興味ない」

「あ、そう……」

 

 

少しがっかりしたようにうなだれる琴里。

だが俺には関係な―――いわけないじゃないか!!

俺の可愛い妹だぞ!?

でも、これしか方法が……

まぁいいか。

 

 

「あのさ、刃」

 

 

琴里がぴょん、とソファから立ち上がった。

 

 

「お手洗いに行きたいのだけれど」

「行けば」

「さっき見たところ、電球が切れていたのよ。先に交換してくれないかしら」

「面倒だな……」

 

 

交換するの面倒だ。

よくあることですね。

でも、そんなことはこの能力ですぐに解決します。

『時間を操る程度の能力』で、この家の時間を建てたばかりのころまで戻す。

家具もなくなってしまうんじゃないか?

心配ない。

あくまでも建物自体の時間だけだからな。

そして、時間を固定。

はい、これで完成。

 

 

「琴里、もうOKだ」

「へ?」

 

 

琴里が何言ってんだこいつみたいな目で見てくる。

 

 

「時間を巻き戻したから。あと、その状態で固定したからもう電球が切れる心配はない」

「あ、あはははは……時間を巻き戻すのもアスカロンの恩恵なのかしら?」

「違うよ。でっもこればっかしはまだ言えないなぁ。琴里だって俺に隠し事してるみたいだし」

「う……」

 

 

ふはははは、お兄ちゃんに言い合いで勝とうなんて一万年は早い。

 

 

「刃。お風呂が沸いたみたいだから、先に入っちゃって」

「風呂か……よし。んじゃ、遠慮なく」

 

 

俺は脱衣所に向かう。

まぁ琴里が何かを仕掛けてくるのは確信した。

 

だが関係ない。

 

脱衣所で俺は服を全て脱いで洗濯機に入れる。

そして浴室に入る。

 

頭、身体、顔の順番に洗い、泡を流して湯船につかる。

 

 

「あ゛ー」

 

 

風呂最高……

疲れが取れるわぁ……

ちなみにうちの湯船はものすごく広い。

俺が改造したからな。

温泉なみだ。

 

 

『―――ふーん、ふふふふーん、ふふーん♪』

 

 

まったりしていた俺の耳に、くぐもった鼻歌が聞こえてくる。

この声は―――十香!!

まさか、自分から俺と一緒に入りに来たのか!?

ひゃっほーい♪

 

ガラガラガラっ、という音とともに、十香が入ってきた。

そして―――

 

 

「とうっ!!」

 

 

ざっぱーん!!と、ろくに湯船を確認しないまま、十香が勢いよく湯船に飛び込んできた。

 

 

「十香……飛び込むのはやめなさい」

「す、すまん……ってヤイバ!?な、なぜここにいる!?」

「知ってて来たんじゃないのか?」

「し、知ってたら入るわけないだろう!!」

 

 

がーん……

そ、そんなに嫌がらなくても。

でも真っ赤になってる十香、めちゃくそ可愛い。

 

 

「まぁこの際一緒に入るか?」

「な!?……ま、まぁ刃がどうしてもというならかまわないぞ?」

 

 

さらに顔を赤くしながら言う。

 

 

「入りたい、超入りたいです!!」

「な、なら仕方ないな」

 

 

こうして俺は十香と風呂に入ることに成功したのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――翌日、朝。

 

 

「あぁ……眠ぃ……」

 

 

俺は小さなうめき声を発しながら、ベットの上で軽く背伸びをする。

目には窓から差し込む朝日が、耳には小鳥のさえずりが入り込んでくる。

 

 

「ん……もう朝かよ」

 

 

そして寝返りを打つ。

すると―――

 

 

「なんだこのすばらしい感触は」

 

 

頬に何やら柔らかいものが触れた。

その正体を探るため、のそのそと顔の辺りに手をやり、触れてみる。

 

 

「ん……っ」

 

 

なんとも可愛らしい声が聞こえてくる。

そちらに視界を巡らせると、そこには薄手のフリース生地。そして、天井にはあきらかに、俺の部屋とは違うタイプの電灯が見て取れる。

 

ここは俺の部屋ではない。

 

部屋の内装からすると……この部屋は十香の部屋ですな。

 

 

「……む?」

 

 

そこには十香の美しくて可愛い寝顔があった。

十香と俺の視線が合う。

数秒の間のあと。

 

 

「なんだ?一緒に寝たかったのか?」

 

 

と、大人の態度の十香。

あれぇ?

てっきり叫ばれるのかと思った。

 

 

「まぁそうだな」

「そうか、なら毎日一緒に寝ようではないか!!」

「おぉ!!それはいい!!そうしよう」

 

 

なぜだかわからないが、俺を十香の部屋に運んだ人、ありがとう!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――リビング。

 

 

「なんでそうなるのよ!!」

 

 

琴里がひとり叫んでいた。

 

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