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それはどれだけ科学が発展を遂げていった未来だろうと変わらない。人は、人の丈には見合わない暴力を生み出しては、同じ結末を迎える。力と力の争いによる、無益な戦いによる終末という結末を。
かつて、アメリカ合衆国と言われていた俺の国も核戦争によって滅びた。何もかもが核によって焼却された。人は、学んだはずだ。力など、争いなど、何も生まない事を。
……学んだはずだった。
200年の冷凍保存から目覚めても荒れ果てた世界はまだ、いやそれ前以上に人々の間では苛烈な争いが続いていた。
ボストン郊外──連邦もその例外ではない。
レイダー、ガンナーという連邦の暴力の代名詞を初め、B.O.Sという一方的な科学を保持する集団、本物の人間とそっくりな人造人間をすり替えて新たな世界を作ろうとするインスティチュート、その人造人間の一部と人間との共生を目標にするレールロード。 そして──集められた有志で平和な国を作ろうとするミニッツメン。
他にも様々な組織はあるが、各勢力が各々の目的のためにぶつかり合い、潰し合う。悲しみの連鎖は断ち切られるどころか、後世により太く繋がってしまっていた。
俺も誰かに攫われた息子、ショーンの行方を追いながらその荒廃した世界で戦った。戦って、戦って。
──その戦いが全て無意味だと知った。
ショーンは連邦中で忌み嫌われるインスティチュートの最高責任者、ファーザーと呼ばれる存在だった。そして、凍らされていた200年間の間にショーンは親よりも早く老衰し、そして末期ガンに侵されて残された時間はもうなかった。
全ては今、終わる話だ。そして、この先に何も続かない話でもある。この仲間から手渡されたボタン一つで終わってしまうのだから。
「将軍、押さないのか?」
折れたハットの仲間が急かす。
分かっている。分かっているが、本当にこれが正しいのか。
──人は、過ちを繰り返す。
誰かがこの連鎖を断ち切らねばならないはずだ。終わらない憎し みと虚無を止める終止符によって。
ビルの下のC.I.Tのその更に下の──インスティチュート。やり 方は確かに強引で間違っていた。けれど、彼らは彼らなりに力を制御して平和を求めていた。
B.O.Sも力を集約することで、レールロードも力を合わせることで、ミニッツメンも力を統治することで、各々が平和を求めていたはずなのだ。
思想が違う、信用が出来ない。それで手を取り合えなかっただけで。
もし、その彼等の全員の手を取る事が出来るのだとしたら。
それは──もう、過去を変える事位だろう。
「しょuぐn?」
視界がぐにゃりと曲がって、仲間の声が遠く聞こえる。
疲労、なのかもしれない。けれど、ここで脚を折っては今得ることが出来るものも、得られなくなってしまう。
人というのは、知性がある分本当に残酷で愚かな生き物だ。平和を望んでいるクセに、目先の大事なものを失いたくない故に平和を欲しがらないのだから。
ボタンに手をを乗せる。パワーアーマー越しというのに、その冷たい感触が伝わる。
終わる。一つの戦いが終わる。そして、始まる。次なる戦いが。
その戦いにもきっと、俺は身を投じるのだろう。平和を謳う虐殺者として。
けれど、受け入れる。そして、戦う。ほんの少しだけの残された平和のために。
意を決して、その赤いスイッチを押し込んだ。
「──!」
仲間が何かを叫んでいる。けど、もう聞き取れなかった。意識が遠のいていた。
C.I.Tが眩い閃光と核の炎に消えていく。その余波で体が浮いていくのを感じた。
──まだ、死ねない。
刹那届いた、誰かの願い。幻聴かもしれないその声に手を伸ばして意識は消え去った。
遠い──遠い──彼方に。
鬼滅の刃が劇場版始まるので初投稿です。