貞操観念逆転世界で勘違いから主人公を振った幼馴染みがヤンデレ過保護になってしまったっていう話。   作:詞瀀

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第三話

 入学式が終わり、教科書も配られて今日は解散ということになった。あ、なった、というか元々そういう予定だったんだけどね。

 

 午前で学校が終わり、教室もガヤガヤとして少し騒がしい。周りの人たちを見てみると、もう仲良くなって友達とご飯に行く約束をしている人や、いかにもオタクっぽい眼鏡を女の子がチラチラこっちをみていたりと人それぞれで面白い。

 こっちを見ている女の子に手を振ってみる。

 

 「…!?」

 

 一瞬ビクッとしたあと、赤くなって俯いてしまった彼女。ちょっとだけ可愛らしい。

 

 「近くにーーが、できてさぁ、一緒にーーー」

 

 「ーーーあ、LINE交換しーー」

 

 「ーぇ、ねぇ、ーーーやさんってーーはーーーーーらしいーー」

 

 「ほーー?でもきれーーひとだーー!」

 

 「あーーやさん誘わない?」

 

 「あー、いーー!」

 

 「隣のクラーー、ーわいいこ多いってー」

 

 「ーーーー」

 

 「ーーーー!ーーーーー?」

 

 「ーー」

 

 

  ………

 

 

 

 

 

 「ーー! ーぇ、ーーーや! ーーーーん?」

 

 周りの人たちの声を聞いて楽しんでいると、ふと後ろから声が聞こえてきた。

 

 「雨宮さん!」

 

 後ろを振り向こうとすると、その直前に僕の肩を持って強引に後ろを向かせてくる。

 少しびっくりしながら相手をみると、驚いた、というか変な様子で僕の方を見ながら硬直している、茶髪っぽい明るめの髪色をした、セミロングのいかにも明るそうな美人さんがいた。

 

 ーーー誰だろう、この人…

 

 そう思った直後に、このクラスにいるんだから新しい同級生に決まってるということに気がついてちょっと反省。

 

 ーーーいきなりのことで動揺してたのかな?

 

 そんなことを考えつつ、彼女の名前を思い出す。

 たしか、名前は…

 

 「…えっと、坂崎さん? 坂崎美晴さん、かな?」

 

 行動が怖かったから、少し下から上目遣いに話しかける。

 

 「ーーーぇっ! あっ、いや、あの、そう! 坂崎! 坂崎美晴って言います! 優希君、だよね? よろしくね」

 

 慌てたように手を顔の前でわちゃわちゃと振りながら喋る美晴さんにホッと一安心。

 ホント、急に肩を掴むからどんな人かと思った…。

 

 「うん、よろしくお願いします。それで、僕に何か用?」

 

 ーーーあれ? でもいきなり下の名前を君付けで呼ぶなんて凄いな。慣れてるのかな?

 

 「うん、よろしくお願いしますー。それでさ、今からみんなでカラオケ行かないって話になってるんだけど、優希君もどう? 一緒にいかない?」

 

 「んー、僕はいいかなぁ。歌下手だし」

 

 イケメンな感じで誘ってくる美晴さんに、慣れてそうだしグイグイ来るなぁ、と思いつつ断りの返事を入れる。

 そもそも今日は病院なのだ。僕の歌が下手なのは純然たる事実ではあるが、それとは関係なしに行けない理由がある。

 

 昨年と同じ学校だし、噂が広がったりもしているだろうから別に隠している訳ではないけれど、自分で吹聴するのもなんか変な感じだから病院のことは伏せておく。

 

 「えー、いーじゃん! 優希君が歌下手ならむしろイイしね。クラスのみんなも誘うつもりだしさー、一緒に行かない?」

 

 えぇ? イイってどう言うことだろう。しかもクラスのみんなも来るのかぁ。

 じゃあ行かなかったら高校デビュー失敗したぼっちみたいになっちゃうかな?

 

 ーーーまあでも、別にいっか。

 

 「うん、誘ってくれてありがとね。でも、ごめんね? また今度誘ってよ。この後用事あるから帰るね。じゃあ、また明日、坂崎さん」

 

 「ーーえっ? あ、いや、うん、また明日…」

 

 坂崎さんに軽く手を振って、荷物をまとめて席を立つとこっちをじっと見つめる二つの瞳が…。

 

 「じゃあね、小春さん」

 

 二つの瞳の持ち主、子犬さんにも軽く手を振るとびっくりしたような顔をした後、嬉しそうに笑ってブンブンと手を振ってくる。

 

 「はいっ、また明日、雨宮さん!」

 

 ーーーほんとに子犬みたい。

 

 ちょっとほっこりした気持ちになりながら教室のドアを開けて靴箱に向かう。

 

 ーーと、目の前を同じクラスのオタクっぽい感じの女の子が歩いている。

 

 ーーー話しかけよっかな? いや、まぁいっかな。

 

 そんなことを思いつつも病院へと向かいながら、ずっと僕の前を歩いている彼女に少し驚く。

 

 

 もしかしたらこの人も病院かな? なんて妄想しつつも病院へと歩いていく。

 

 

 ーーーいや、ほんとにいつまで一緒の道なんだろう?

 


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