Wish on the stars   作:永遠の炎

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あらすじちょっとしっくりこない。変えるかも。


プロローグ

 物心ついた時には……いや、この表現は正確ではないな。日本人であったはずの俺は自分でも気付かない内に全く別の世界で、別の生物として生まれ変わっていた。

 

 

 

 死んだ覚えもなければ神様とやらに会った覚えもない。

 

 

 

 だから何故、俺はドラゴンになってしまったのかが分からない。

 

 

 ドラゴンになってからの数十年はこの身体やドラゴン達の価値観に慣れるのに必死だった。ようやくドラゴンとしての生き方に馴染んでからこの世界というものに興味を惹かれた。

 

 この世界で生きるドラゴンは皆魔法を使える。それは前触れなく人からドラゴンへと転生した俺も例外ではなかった。魔法という超常の力のおかげでドラゴンになった事を受け入れる事ができたと言っても過言じゃない。

 

 

 この世界が『FAIRY TAIL』のアースランドだという事に気付いたのは転生して200年以上経過してからだった。

 事の発端は俺が生きてきたイシュガル大陸と西の大陸とでドラゴン達の意見の食い違いの発生だった。人間と共存して生きる事を選んだドラゴン…共存派と逆に人間を食物として喰らい、ドラゴンこそが至上の生物として王座に君臨する事を望んだドラゴン…反対派に分かれてのドラゴンと人間の戦争。俺は前世が人間である事も影響して人間を食べるという習慣はどうしても受け付けなかった。それ故に共存派として戦った。

 

 その中で生まれたドラゴンを倒す魔法、人間の体質をドラゴンのものに変えて竜狩りに特化させる魔法……滅竜魔法。

 

 この魔法の名を聞いた時、僅かに残っていた…いや、ほとんど消えていた前世の記憶の引き出しが開かれ、原作知識を鮮明に思い出した。とはいえ、途中までしか思い出せなかった……いや、もしかしたら途中までしか読んでいなかったのかもな。

 

 そしてそれを思い出した後、奴が出現した。

 

 竜王アクノロギア。最強最悪の滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)にして、世界を終わらせる者。

 ドラゴンに対して果てしない憎悪を抱くアクノロギアは共存派のドラゴンをも葬ろうと各地で牙を剥いたと聞く。当然俺も標的になっているだろう。

 

 そしてそのアクノロギアは黒き竜の姿となって俺の前で翼を広げて飛んでいた。

 

「我は滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)アクノロギア。これより貴様を滅する。汚らわしいドラゴンめ……!!」

 

「遂に来たか、アクノロギア」

 

 こいつが殺しにくる事は分かっていた。だが俺とて死ぬつもりは無い。俺が生きた証をこの世界に遺すまでは。

 そして始まる死闘。アクノロギアは竜王の称号を得ただけあって、恐ろしく強く、奴の滅竜魔法を前に俺はただただ蹂躙されるだけ。しかし攻撃の最中、アクノロギアは俺と他のドラゴンの違いに気付いた。

 

「……!!この、感覚は……!!」

 

 ……気付かれたか。

 前世の記憶から来る原作知識があってもこいつに関してはあまり覚えていない。というより情報が少な過ぎる。詳細こそ分からないが、奴は魂を抜き取る滅竜魔法を使うはず。ならば俺の正体に気付いても何もおかしくはない。

 

「うぬは……魂が人間のようだなぁ?」

 

「っ!!」

 

「かといって我と同じ滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)ではない。……となると、俄かには信じ難いが、人からドラゴンに転生したか」

 

 短い時間でそこまで推測、理解したのか。ただ強いだけじゃなく頭も良いようだな。物事を受け入れる柔軟性もある。

 こいつが正義の為に戦う滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)ならどれだけ良かったか。そう都合良くはいかないものだな。

 

「……流石は最強の滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)アクノロギアといったところか。だが、それを知ったとして、俺を見逃す訳ではないだろう?その程度の事で見逃すのなら、共存派のドラゴンはまだ仕方ないとしても同じ滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)まで殺したりはすまい」

 

「無論。うぬの前世が人だったとして、今は紛う事なきドラゴン。故に我が敵。この世にドラゴンなど一頭足りとも生かしてはおかぬ。滅竜する」

 

 生粋のドラゴンならばこいつに殺されても仕方ないが、滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)の命まで狙うのは理不尽というものだ。恐らくは滅竜魔法の副作用である竜化とそれに伴う凶暴化を懸念しての事なんだろうがな。奴自身、それを防げなかったしな。

 

「だが俺も黙ってやられてやるつもりは無い。おまえの腕の一つでも刈り取らせて貰うぞ!!殺された滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)達の怨み……思い知れ!!」

 

 俺は口腔に魔力を溜め、口から咆哮(ブレス)を解き放った。

 

「星竜の…咆哮!!!」

 

 先制攻撃として放った咆哮は……アクノロギアに喰われた。

 俺の咆哮がシュルシュルと奴の口に吸い込まれ呑み込まれていくのを茫然と見ている事しかできない。

 

「……は?」

 

「我に魔法は効かぬ。我は全ての魔を喰らいし、終焉の滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)……!!魔竜アクノロギアなり!!」

 

 全ての魔を……!?こいつには属性が無い……というより魔法を喰らって力を高めるだと!?奴には魔法そのものが効かない……!?

 

「滅せよ!人から生まれ変わりし星の竜よ!!」

 

 そうして俺はアクノロギアとの勝ち目の無い死闘に臨み……イグニール達同様にアクノロギアに魂を抜き取られた。

 

 

◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 突如として友人であるイグニールからの念話が頭の中に響く。

 

『スターリットよ、分かっているな?』

 

『よぉ、イグニール。いよいよだな』

 

『ああ。もうじき魂竜の術を発動する。良い加減我々の寿命も、アクノロギアから隠れてナツ達を育てるのも限界になってきた。今宵、扉の前で待つ』

 

 アクノロギアに敗れてから数年、俺はイグニール達同様に人間の子供を育て、息子に滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)としての教育を施していた。

 

 俺にはドラゴンとしての子供はいない。前世が人間故に繁殖期になってもドラゴンとの間に子供を作る気にはなれなかった。逆に今がドラゴン故に魔法で人間に変身して人間との間に子供を作る……なんて気にもなれない。

 

 だからイグニール達同様に人間の子供を育てて滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)にする事にした。

 

 この星竜スターリットの息子だ。

 

 名前はアルト・マーキュリー。

 反対派のドラゴンとゼレフ書の悪魔が争った地で偶然見つけた子供だった。死にかけていたから放ってはおけず、グランディーネに治療を頼む為に拾った。だが親が既に死んで行く宛の無いこの子を放り出す訳にもいかず、気付けば自分の手で育てていた。

 

 そんな折だ。グランディーネを通して話を聞いたイグニールにこの計画を持ちかけられたのは。

 ……イグニール達がナツ達の体内に己を封じていたのは原作知識で知っていたが、まさかこんな秘密がまだあったとは……思わぬ形で原作の核心部を知る事になるなんてな。

 

 この子は言わばイレギュラーだ。この子の存在がプラスになる事もあれば、逆にマイナスになってしまう時もあるだろう。まぁまずあり得ないだろうがなそんな事!!

 まぁ原作の時代に行けば寄って来る女も多いだろうから、心配なのはむしろそういった人間関係だな。親の贔屓目抜きにしてもそれなりに整った顔立ちをしている。周りの男の嫉妬を買わなければ良いが……。

 

 とまぁ、そんな事よりも魂竜の術を使う前にこの子をアクノロギアから守る為にやっておかねばならない事が沢山あった。

 

 まずこの子が己の意思でドラゴンフォースを使えるように俺の魔力を結晶化させ、滅竜魔法の魔水晶(ラクリマ)でネックレスを作った。これを首にかけている時、この子は第三世代の滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)になれる。必要とあらば第二世代の力を他の誰かに貸し出す事も可能だ。当然そのまま第二世代の力を持ち逃げされないように対策済みだ。悪人ならばこぞって滅竜魔法の力を狙ってくるだろうし、第二世代だろうと俺の魔力での滅竜魔法はあくまでアルトの為の力だ。他の見ず知らずの他人にくれてやる義理は無い。完全に譲り受ける事ができるとすればこの子の子供……もしくは伴侶くらいだろうな。

 

 これはゼレフのあの呪いへの対策も兼ねている。確かナツのマフラーが黒い波動を吸収してその命を守っていたはず。聞けばアレはイグニールの鱗でアンナが編んだそうだ。俺は迷わず己の鱗を剥ぎ取り、色素が抜けるのを待った。それを使ってアンナに魔水晶(ラクリマ)のネックレスのチェーン部分を作って貰った。案外何にでも使えるんだな、俺達の鱗。とにかくこれでゼレフと接触しても恐らくは大丈夫だろう。……大丈夫だよな?

 

 俺は腕の上に抱き付いてウトウトする愛しい我が子の頭を優しく撫でて囁く。生きる術を伝える。

 

「アルトよ……」

 

「……ん、なぁに?おとうさん」

 

 寝惚け眼でちゃんと聞けているかかなり怪しいが……まぁ魂竜の術を使えば暫く記憶障害が起きるらしいからな。ナツ達の事も忘れてしまうだろうし、そこまで強く言い聞かせる必要もあるまい。

 

「これからきっとおまえは様々な困難に直面するだろう。でもおまえはこの俺の子だ。何があっても大丈夫。それからスティング達の他にも友達を作れ。大勢じゃなくて良い。本当に信頼できる友達を。数人で良いんだ」

 

「……ん」

 

 最大の問題はこの世界はこの先、三つの未来に分かれる事だ。この時代と歪に繋がり、1万のドラゴンが世界を破壊する未来、それを防ぐもアクノロギアに全てを蹂躙される未来、そしてどちらとも違い、人間の手で切り開いていく未来だ。

 

 どの未来に繋がったとしても、この子が強く生きていけるようにできる限りな事をしてあげたい。

 

「良いかアルト、どうしても……ドラゴンフォースを使ったとしても力が足りない。そんな時には……」

 

 だから俺の知る限りの強くなる術を伝える。滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)としての効率的な修行法、そして己の属性とは別の属性の滅竜魔法を取り込むのだ。

 

 取り込むのであれば一番強く、一番可能性を秘めた者の魔力だ。同じ第三世代のスティングとローグでも力不足だ。ガジルやウェンディでも不安だ。

 

「その時は……ナツの炎を食え」

 

 願わくば、幸せになってくれ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 X777年7月7日

 

 

 

 おとうさんが俺の前からいなくなった。

 

 




星竜スターリット
元日本人の転生者。何故ドラゴンに転生したかは不明。
ドラゴンとしてはイグニールに次ぐくらいにはメチャ強い。月の雌ドラゴンに言い寄られた事があるとかないとか。
結構親バカ。

アルト・マーキュリー
主人公。多分原作の世界線では生まれはしただろうけど、ドラゴンもしくはゼレフ書の悪魔辺りに殺された子供と思われる。
滅竜魔法の魔水晶(ラクリマ)が簡単に取り外し可能なので第一世代であると同時に第三世代でもある。
原作開始時点では14歳。

星の滅竜魔法
属性は光だが、単なる光だけでなく太陽や月、空の星々といったものの光や聖属性なども含まれる。また、星霊の魔力とも相性が良い。

星の滅竜魔法の魔水晶(ラクリマ)
第二世代、第三世代のアレ。スターリットの鱗でチェーンを作ってそれで繋いでネックレスにしてある。首からかけるだけで星の滅竜魔法を使えるというお手軽仕様。アルトがかければ第三世代になれるし、他の誰かがかれば第二世代になれる。アルト自身のパワーアップが必要か、単純に滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)の頭数を増やしたいかで使い道を変えられる。
借りパクされないようにスターリットが何かしらの細工をしているらしいが詳細は不明。

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