私が妖精になるのは絶対間違ってる   作:ZeroRain

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明日からダンメモ3周年イベントですよ!


ヒロインとの出会い

 僕らの初探索から1週間ぐらい経ちました。

 そして昨日はようやくエイナさんから僕とレフィ姉に4階層までの探索許可が出た。けれど今朝、レフィ姉が消耗品を買いに出掛け、二人での探索は午後からとなった。だから現在僕は3階層を一人で探索中……。けれど敵が弱すぎて物足りないと感じてしまった僕は、好奇心半分で4階層に進んだ……。それでもまだまだ余裕を感じた僕はこれなら5階層まで行けるんじゃないか? と考え始めた。そんな考えを持った僕はエイナさんとレフィ姉の忠告を忘れ、そして合流の約束も忘れて5階層へと足を踏み入れた。……これから起きる事を全く予想出来ずに。

 

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 ポーションの値切りに時間が掛かりすぎて、私はベルとの合流に遅れた。

 

(ナァーザさんは本当に容赦ないなぁ、今回ミアハ様がこっちの味方だから助かったんだけど多分次はないかな。……っていうか早くベルと合流しなきゃ!)

 

 ベルとの待ち合わせ場所にきた私は白い兎どころかモンスターすら見当たらない……。待つ事数分、ベルは未だに姿を現さない。……心配になった私は思わず通りかかった他の冒険者に声を掛けた。

 

「あ、あの……すみません、白髪の少年を見当たりませんでしたか?」

「んぁ? 白髪の? あぁ、さっき見たぜ。5階層の方に降りていったな」

「ッ!? ご、5階層!? 本当ですか!?」

「あぁ! あんな目立つガキ間違えるはずねえからな」

「あ、ありがとうございます! 失礼します!!」

「おう、気をつけろよ」

 

 私は駆け出した、出来るだけ精一杯この足を動かしたが物足りないと思った私は思わず魔法を使い、スピードを上げた。イメージするのは己の体に風の力を纏う事で敏捷を上げる魔法、今パワーは要らない! 早くもっと早く! 一秒でも早くベルの元に! 

 

(最悪! 最悪中の最悪よ! あの子が5階層に行くなんて! 下手すると死んでしまうのに! ……ベルが危ないから早く行かないと! だからもっと早く走らないと!)

 

 そう時間も掛からずに私は5階層に着いたけど、それと同時にある事を思い出す……。ベルが……5階層に……まさか、もうミノタウロスとの遭遇? それにしても早すぎない!? ……って違う! 今はそんな事はどうでもいい! 早く見つけないと! 

 確かにこれは“原作通り“ならベルは確実に助かるでしょう、彼はヒロインと出会って、あのレアスキルを手に入れ、自分がなりたかった英雄への道を進むのでしょう。だけどこの数年一緒に住み、時に笑い時に喧嘩をした私は。どうせこれは物語の世界なんて馬鹿な考えをしたくない! 彼は”物語の登場人物“なんかじゃない! 私の弟だ! 私が守ってあげないと! 

 そんな事を考えても足を止めない、実際何故走れるかすら理解出来ない、とうに限界が過ぎたはず……けど足は止めちゃいけない。ずっと走り続けた私の前に命からがら逃げた数人の冒険者がこちらに走っていた。そんな彼らに私は叫んだ。

 

「白髪の少年を見ませんでしたか!? 知ってたら場所を教えて!」

 

 私の声に気づいた冒険者たちは震える声で「せ、正規ルートB-9に居るはず。け、けどミノタウルスが居るんだ! あいつは俺らを逃がすために一人囮になって……す、すまねぇ……」と言って私とすれ違った。

 それを聞いて、足が更に早くなった。弟はすぐそこに居る! 助けに行かないと! と。

 

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 今、僕の目の前には大きな猛牛ミノタウロスが居る。突然この階層に現れ、冒険者たちを襲ったこの怪物は今、僕に向かってその武器を振り、僕を殺そうとしている。この攻撃が当たれば死ぬ。ミノタウロスの攻撃を僕は必死に避けるしか選択を許されない。逃げようとすれば確実に殺される。四日前に買った短い剣は最初の攻撃を受け流そうする時には砕け散った。今、僕の手にあるのは先程逃げた冒険者が落とした短剣だけ。

 そう考えてるうちにとうとう壁に追い込まれてしまった。ようやく殺せると笑ったそいつの前に僕は成すすべもなく立ち尽くす。……調子に乗ってエイナさんとレフィ姉との約束を破って死ぬとか……カッコ悪いですよね。でも僕が居なければ先程の冒険者が犠牲になるかもしれないと我ながら勝手に決めつけるなんて尚更よくない。彼らは僕より先輩でもっと上手く逃げられるかも知れない。ミノタウロスがその武器を振るった瞬間思わず目を閉じた……が、目を開けた時に僕の前には土の壁が聳え立ち僕を守ってくれていた。そしてミノタウロスの後ろにはそこには僕の自慢の姉が立っていた。

 

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 間に合った! ギリギリ間に合った! 今にも殺されそうなベルを見た瞬間思わず土の壁を二重発動してしまった。重複発動出来るんだね……知らなかったよ。件のミノタウロスは邪魔されたせいなのか今度は私に敵意を向け猛突進し始めた。けど、ここまでに魔力と体力を使い切った私にはもはや避けるすべがない。駆け付けたのはいいが何も出来ないって一番ダメじゃん! 

 そんな考えをしているうちにベルは必死にこちらに駆けて来て私を抱きしめた。だが次の瞬間なんと、ミノタウロスが目の前にバラバラに切りられた。そんなミンチになったミノタウロスの返り血を浴びた私たちの前に人形のよう美しい少女がこちらを見つめていた。

 

 ———これが初めて私たちと『剣姫』が出会った瞬間だった。





ここまで読んで頂いてありがとうございます。

やっぱダンまちのヒロインってミノタウロスだよね!!

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