私が妖精になるのは絶対間違ってる   作:ZeroRain

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すごい悩みました………。


絶望

突如と現れた食人花(ヴィオラス)にみんなは戸惑いを隠せなかった。

 

「何だコイツは!?」

 

と狼狽えたヴェルフさん。

 

「わかりません!こんな魔物(モンスター)は中層のデータにないです!」

 

少しでも冷静さを保ちつつ持ち前の情報を照らし合わせているリリちゃん。

 

「今度は何だ!?」

「こんな蛇?型の魔物(モンスター)は聞いた事ないです!」

「まさか、新種!?」

「だとしたら俺たちだけで対処出来ねぇぞ!?」

「クソ!ここには怪我している千草が居るのに!」

 

ヴェルフさんと同じく襲撃に狼狽えている【タケミカヅチ・ファミリア】の団員達。

 

私はと言うと食人花(ヴィオラス)の予想外の登場に思わず言葉を失った。

こいつらは一体どうやってここまで来たって言うの!?

 

「———ね姉!」

 

どうしょう………どうすればいいの!?

私達だけじゃ手も足も出ない相手なんだよ!?

 

「———フィ姉!!」

 

ふと身体が浮遊感を覚えた。

 

《ズドォオオオオオン!!》

 

轟音と共に意識が現実に引き戻された。

ふっと周りを見渡すと必死な顔で私を抱き抱えたベルや他のみんなが目に入った。

 

「レフィ姉、しっかりして!!」

「………ごめんね、でもアレは………」

「アレはなんなのかわかるの!?」

「うん、以前24階層で見たことがあるんだ……」

「にっ、24!?」

「うん………それにアイツらはレベル4でも苦戦する相手だよ……」

 

それを聞いた周りのみんなの顔色が更に悪くなった………【タケミカヅチ・ファミリア】の何人かは諦めた顔すら思い浮かべた。

みんな理解しているのだろう、今はそれだけ絶望的な状況である事を。

けどその中でもベルだけは諦めていなかった。

彼はこの状況の中でも少しでもみんなを助ける方法を探っている。

 

 

 

 

 

 

 

 

その時だった。

 

《ドカァァアアアアアン!!!》

 

12階層に続いた通路が崩落し、結果私達は地上へ逃げると言う選択がなくなった。

 

「う、嘘だろ………」

「そんな上に行く道が………」

「悪夢かよ………」

「我々はここで死ぬって言うのですか!?」

 

《キシャアアアアア!!!》

 

食人花(ヴィオラス)は雄叫びと共に蛇の様な鞭で攻撃を繰り出した。

 

「くっ!」

 

—————『土霊の城壁(ノーム・カスティル)×30

 

咄嗟にみんなを守る防壁魔法を張ることに成功した。

 

《ダンダンダンダン》

 

けれど魔法に阻まれても食人花(ヴィオラス)は止まらなかった。

アイツらは無理矢理でも魔法を突破しようとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

けど、前だけに気を捉えられ過ぎたからか。

 

 

 

 

 

 

 

 

奴らの足元からの攻撃に気づくことが遅れていた。

 

「しまっ!?」

 

咄嗟に自分を抱き抱えたベルを押し出し、自分だけその攻撃をもろに喰らった。

 

《グシャッ》

 

その瞬間、激痛が私を襲った。

痛みに耐えながら身体を見てみると私のお腹に奴の鞭が刺さっていた。

常に結界を身体に纏わせたお陰で致命傷を免れたものの食人花(ヴィオラス)はそのまま私の身体を拘束した。

 

「………ッ!」

 

刹那に私は全てを察した。

コイツは私を捉える為だけにここに来た、私がこの場にいるからこいつが現れたと。

 

「レフィ姉!!」

 

ベルは即座にナイフに魔法を纏わせ、そしてその黄金の剣で敵の鞭を叩き斬ろうとした。

 

「くっ!断ちにくい!」

 

いくらベルの魔法でも鞭を斬ることは叶わなかったが、それでも食人花(ヴィオラス)の動きを止めるには十分だった。

そのチャンスを見逃さずに私は『業火の戦斧』を何重も掛けて鞭を断ち切る事に成功した。

 

「ゲホ……ゲホッ………」

「レフィ姉!」

 

拘束から逃げ出した私を見たベルはそのまま剣だけではなく身体にも不滅の雷(ユピテル)を纏いながら私の隣に駆けつけた。

後ろの方にみると【タケミカヅチ・ファミリア】を庇いながら武器を構えたリリちゃんとヴェルフさんの姿がある。

けれどコイツの相手に戦う事はあんまりにも非現実的だった、いくら私とベルでもコイツと戦って勝つ勝率が1割もない。

だからと言って逃げても恐らくコイツは追いかけて来るでしょう………私を捕まえるまでは………。

咄嗟に私達と奴の間に何重複の『土霊の城壁(ノーム・カスティル)を発動させ、私はベルと向き合う。

 

「ベル……」

「ダメです」

「まだ何も言ってないよ?」

「レフィ姉が何が言いたいのかわかってるから………」

「だったら—————」

「だからこそダメなんだ!!」

「でもこのままだとジリ貧だよ?」

「他に方法が—————」

「ない!!」

「………ッ!?」

「ベル自身はそれをわかっている筈だよ?アイツは私達が逃げても逃げても絶対追いかけて来るから」

「…………」

「だって、アイツの目的は私なんだから………」

「………ッ」ギリッ

 

リリちゃんは信じられない顔を浮かべた、ヴェルフさんは冗談だろ!?と声を荒げた、【タケミカヅチ・ファミリア】の団員達もまた同じような反応をした。

ベルは悔しそうに涙を浮かべながら私を見つめる。

そんなベルに私は優しく彼の頬を撫でた。

 

「私は一人でここに残る、ベルはみんなを連れて逃げるのよ?」

「………僕は」

「上に続く道は途絶えた今、残された選択はアイツを倒して別ルートを探すか……下へ逃げるか……そのどっちかだね」

「………」

「アイツを倒せる確信がない以上、ベルはこれからみんなを連れて下へ………18階層へ向かうといいよ。あそこなら助けてくれる人がいる筈だから」

「…………」

「側に居てあげられないけど、他のみんなと力を合わせればきっと大丈夫!だから………泣かないで?」

 

気づけばベルだけでは無く、他のみんなも泣いていた………私を含めてだけど。

 

「それに私はここで死ぬつもりないから」

 

これは偽りのない気持ち、私はまだまだ他のみんなと一緒に居たいからね。

 

「ッ!!やっぱり僕も残るよ!」

「じゃあ、他のみんなはどうするの?」

「それ……は……」

「ベルが居ないと18階層に逃げる事は不可能だからね、それに私は奥の手があるもん!」

「………」

 

《ミシミシミシッ》

 

防壁から嫌な音が聞こえ始めた。

 

「そろそろ限界だから!!さあみんな、早く行って!!」

「…………ッ!!」ギリッ

「おい!ベル!早く行くぞ!」

 

ヴェルフさんそう叫んだ、彼の方をみると彼は暴れ出すリリちゃんを脇に抱えていった。

 

「離してください!!リリも残ります!!」

「ダメだ!………いいかリリ助、例え俺らが残っても俺らはレフィーヤの足手まといにしかなれねぇよ!!」

「ですが!!」

「俺だって悔しいよ!けどな!この状況から脱するにはこの方法しか思いつかねえだろ!?」

「うっ………うわぁあああああああん!!!」

 

抱き抱えられたリリちゃんは突然と泣き出した。

 

「………レフィ姉」

「うん?」

「これ………」

 

ベルはやや強引に何かを渡す。

 

「これって………」

「エリクサー………万が一の為に持って行って欲しい………」

「貴重な物だよ?」

「知ってる、けど持って欲しい………」

「………わかった」

 

ベルが私は受け取ったエリクサーをそのまま指輪に収納した、この中だったら割れる心配ないからね……。

ベルは重い足取りでみんながいる方向に走りだしたが、彼はその途中で止まり、振り返る。

 

「………レフィ姉………僕らは待ってるから」

「うん、すぐ追いつくから」

 

ベルは軽く頷き、そして再び走り始めた。

未だに暴れ出しているリリちゃん、その彼女を抱えたヴェルフさん、申し訳なさそうな顔を浮かべた命さん達。

彼らの背中を見送った後、腰にあるポーションホルダーから一本のマジックポーションを取り出した。

気休め程度しか回復しないけれど、ないよりはマシだ………。

 

「ふぅ………」

 

《パリィイイイイイイイン!!》

 

ベル達がもう見えない所で私を守った防壁が砕け散った。

さて、みんなと合流する為、一頑張りしなきゃだね……。




ここまで読んで頂きありがとうございます。

主人公が居れば18階層を目指す自体は全く難しくないので………。
別行動をさせます。

ベル君がお姉ちゃんを置いて行く理由が正直不安なんですけどね……。

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