私が妖精になるのは絶対間違ってる   作:ZeroRain

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本当に気付けばもうこんなにも続いた本作………。不束者ですがこれからも付き合ってくれると嬉しいです。

いつも誤字脱字報告ありがとうございます。


食人花(ヴィオラス)

 防壁を突破した食人花(ヴィオラス)はすぐ様に私に飛びかかった。

 私は『敏捷上昇(アジリティブースト)』を駆使して、出来るだけ距離を保つ。

 一瞬の油断も許されないこの戦闘に置いて一番重要なのは私自身の魔力残量だ。

 ポーションホルダーにはマジックポーションが残り2本あるがそれでも即時回復は不可能……つまり今持っている魔力が尽きたその瞬間こそが私の敗北となる…………。

 どれだけ魔力の温存や効率化出来るかが鍵となる。

 

「最悪に近い……よ……ねッ!!」

 

 こちらは必死に走っているのにも関わらず食人花(ヴィオラス)は更にその上を行った。

 

《キシャアアアアア!!》

 

 食人花(ヴィオラス)はそのまま私を先回り、その花で隠された凶暴な口で私を噛みつこうとした。

 魔力を温存しながら戦う事を強いられたこの現状では、下手に数でゴリ押しするのは不可能…………だったらどうすればいい? 

 

 —————『土霊の城壁(ノーム・カスティル)』×10

 

 それを更に!! 

 

 —————『圧縮(コンプレス)

 

《ドガン!》

 

 圧縮した『土霊の城壁(ノーム・カスティル)』は更に強度を上げ、まるで重複発動が倍の時の効果を発揮した。

 

「まだまだ!!」

 

 —————『フレイム・アロー』×100

 

 持っている魔法の中で一番魔力消費が少ないこの魔法を手の周りに集中させ。

 

 —————『圧縮(コンプレス)

 

 ダメ押しで!! 

 

「ハァアアアアア!!!」

 

《ズドン!》

 

 あの日のベートさんにやったかの様に、自分の貧弱な拳に『フレイム・アロー』の威力を上乗せした一撃を食人花(ヴィオラス)に叩き込んだ。

 

《グルッ!?》

 

 今の一撃で奴を倒す事は出来なかった…………流石と言うべきか。

 けど今ので食人花(ヴィオラス)の動きが一瞬止まり、その隙に私はまた再び走り出した。

 

「ハァハァハァ…………ッ!?」

 

 だがそれも長くは続かなかった。

 食人花(ヴィオラス)は再び私に追いつき、今度はその触手で私に絡み付こうとした。

 

 —————全身に風の魔力を薄く纏わせて…………『浮遊(フライ)』!! 

 

 触手が私の足を捕らえようとした瞬間に。

 

 —————足にだけ火の魔力を集中させ…………よし! 『噴射(ジェット)』!! 

 

 急加速で触手の攻撃を避け、距離を取った後数発の『フレイム・ランス』を撃ち放つ。

 

《ドンドンドンドン!!》

 

 先から連続でずっと繊細なイメージが必要な魔法ばっかりで、正直キツイ…………。

 

《キシャアアアァアア!!》

 

 魔法を喰らった食人花(ヴィオラス)が更に凶暴さを増しその速度を上げた。

 コイツは私を逃がす気が全くないとはっきり言える。

 この戦いの先はまだ長い…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ…………」

 

浮遊(フライ)』と『噴射(ジェット)』で逃げつつもマジックポーションを飲み干した。

 効かない効かない効かない…………。

 自分が次々と放った魔法がこれと言って良いほど効果がない。

 本当に精々奴の動きを一瞬だけ止める事が精一杯なのが悔しい。

 マジックポーションは先程で最後の一本が無くなった。

 魔力回復が全く追いつけていないこの状況の中でどうすればコイツをぶっ倒せるかを試行錯誤をしてる暇もない。

 ”とっておき“はあるにはあるのだが、失敗したら”死“…………いや、捕獲されて再び狂った精霊の器にされるのがオチなのだろうね…………。

 だからと言って、”ソレ“以外の方法が全く思い付かない……。

 

「おい、なんだアレは?」

「あれって【理外姫(アンリアル)】じゃないの?」

「マジでか!?」

「その後ろに何か追いかけてない?」

 

 しまった!? ここに来て、他の冒険者と鉢合わせするなんて!? 

 でも、今から方向転換は間に合わない!! 

 

「皆さん、この場から逃げて下さい!!!」

「はぁ?」

「何言ってるんだ?」

「さぁ?」

「アイツ、なんか必死そうだな」

 

 警告はしたものの冒険者達はその場から離れる事はなかった。

 このままではダメ! 彼らが死んでしまう!? 

 けど、私が再度警告を叫ぶ前に、食人花(ヴィオラス)の方が彼らに気づいてしまった。

 その瞬間、食人花(ヴィオラス)は他の冒険者に向かって触手攻撃を仕掛けた。

 

「ぐあぁああああ!!!」

「な、なんなんだ!?」

「なんだコイツは!?」

「く、くそ!!! 俺はレベル2になったばっかりだぞ!?」

 

 —————重複発動! 『業火の戦斧』『圧縮(コンプレス)』! 更に追加で『土霊の城壁(ノーム・カスティル)』×20を『圧縮(コンプレス)』! 

 

 圧縮した魔法で触手を切り落とし、その一瞬で防壁を張る。

 

「大丈夫ですか!?」

「うぅ…………いてぇよ……」

「こ、こいつ以外だ、大丈夫だ」

「た、助かった……」

「お、おい。アレは一体なんなんだ!?」

 

 完全にパニック状態の冒険者達。

 彼らの中の一人は傷ついた者の手当をしている。

 

「正直言って、わかりません。私もいきなり襲われたので…………」

「そ、そんな馬鹿な!?」

「ど、どうすればいいんだ!?」

「…………皆さんは他に上がる道を知っているのならばそこから逃げて欲しい」

「お、お前はどうするんだ!?」

「このままコイツを惹きつけます」

「死ぬぞ!?」

「いいえ、死にません。だってまだまだ死ねないのですから……」

 

《ミシミシミシ》

 

 防壁がひび割れ始めた。

 

「くっ…………わかった」

「その前に傷ついた者は見せてください」

 

 傷ついた冒険者に『回復(ヒール)』を掛けた。

 

「お、お前……こんな物まで出来るのか!?」

「…………さあ、逃げて下さい」

「お、おう」

 

 彼らは反対路へ走り出した。

 だが一人だけ立ち止まった。

 

「…………伝言はあるか?」

「ッ!! ……あります。女神ヘスティアに”ベルたちは18階層を目指します“と伝えてくれますか?」

「…………ああ、必ず伝える」

 

 彼は再び走り出した。

 

《パリィイイイイイイイン!!》

 

 今日だけでもう何度目かわからない、自慢の防壁が砕け散る音。

 

「…………まったく…………自信を無くしちゃいますよ?」

 

《ギシャアアアアア!!》

 

 繰り出された触手での攻撃を再び敏捷上昇(アジリティブースト)を使ってギリギリ避ける事は出来たが…………。

 

「ハァ……ハァ……ハァ……」

 

 どうやら魔力限界より体力の限界の方が先に来たみたい。

 

「…………最悪」

 

 かなり重くなった足取りで食人花(ヴィオラス)から必死に逃げている。

 

「…………一か八か…………か」

 

 使わないと言いつつも結局使うしかないか…………。

 そもそも馬鹿みたいに魔力を使う魔法だから失敗(イコール)敗北と見做してもいい。

 

 —————まずは右手に火の魔力を集中させて、純度の高い魔力の塊を作る。

 

 —————更にその上に大地の魔力を重ねる。二つの魔力が混ぜ合わせない様に注意しつつ、更にその上に水の魔力を。その上にも風の魔力を重ねた。

 

 混ざり合わない様に魔力を積み重ねる。

 二つや三つの属性は混ざり合っても平気なのに、何故か四つの属性は混ざり合うとお互いが反発するかの様に暴走する。

 

 —————完成した四重構造の魔力を圧縮…………この時も下手をして混ぜ合わせない様に…………。

 

 けどこの魔法はこの程度で完成する魔法ではない…………。

 

 —————その過程を何度も繰り返し、最後は拳ぐらいまでの高圧力の魔力の塊が完成。

 

 ほとんどと言っていいぐらい魔力がこの魔法に込められた。

 だからお願い…………倒れて欲しい!! 

 私は振り返り、魔法を飛びかかる食人花(ヴィオラス)に投げ出す。

 

 —————『混ざり合え! 世界の理を作り出す四大元素達よ!』

 

 食人花(ヴィオラス)はそのまま魔法を飲み込み…………。

 そして最後に私は自分で決めたキーワードを叫んだ。

 

 

 

 

 

 

 

四大元素の渦(テトラ・ボルテックス)!!!』

 

 

 

 

 

 

 

 刹那に特大爆発の音と共に通路が崩落し、私の意識が闇の中に飲まれた。




ここまで読んで頂きありがとうございます。

最後の魔法は某MMORPGの魔法から名前を借りました。

リリルカの戦闘スタイルはどれがいいですか?

  • 剣で近接スタイル
  • スクロールやクロスボウで遠距離
  • 精霊やモンスター契約して召喚士かテイマー

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