—————そろそろ起きて。
まるで自分を呼んだ優しい声によって意識が戻って行く。
一体どれ程眠ったのかさっぱりわからない。
「うぅ…………」
痛い…………。
全身が痛い…………。
意識を取り戻した私が最初に感じたのは痛みだった。
その痛みを消す為に自分に
「ケホケホッ」
周りを見渡すと落石だらけで、自分が何処にいるかわからない…………。
「うぁ゛!?」
身体を起こそうとしたが、右手には激痛が走った。
よく見ると手が可笑しいな方向に曲がっている。
「折れた……」
私の
けどそう遠く離れていない場所には不気味な色をした魔石があったのは私がアレを倒せた証でもあるのだろう。
「…………強敵を倒せたのって何気に初めてなんだよねぇ」
重い身体を無理矢理引き起こして、落ちている不気味な魔石を拾った。
ベルは
ヘスティア様やリリちゃん曰くベルが可笑しいだけであって、私が負けるのは当たり前だと言っていたが、姉の威厳を保つにはせめて格上に一度ぐらい勝たないと気が済まないというか何というか。
え? そんなものはない? またまた〜。
「あたた…………」
そんな考えに浸かるとまたも痛みが私を襲う。
一回思考を落ち着かせて、状況整理をしてみる。
まずはそもそもここは一体何階層?
それを確認すべく最下級精霊を飛ばすが、めぼしいものはない。
周囲警戒を怠らぬ様に感知魔法も最低限に張る事にする。
「…………っていうか普通に魔力が回復しているし」
全快とは言えないが改めて自分の異常な魔力回復速度に呆れた。
「回復したのは……精々1割か……
そもそもなんで倒れたのに無事なのか?
倒れた時こそ私を確保出来る絶好のチャンスにも関わらず私はこうやって無事であった。
それをしなかったのは私を捕まえるにはあの一匹だけしか送られていないからなのか?
24階層で見た時は物凄く数が多いのに私を攫うには一匹だけというのは可笑しい…………他の派閥の目を気にしているから少数で動いてるにしても一匹だけなのは可笑しい。
そしてもっとも可笑しいなのが…………。
「…………なんで私は無防備に倒れているのに他の
そもそもここはセーフティゾーンではあるまいし、襲われるのが普通だ…………それなのに自分はこうやって生きている。
「まるで誰かに守られているかの様に…………」
けど周りにはそんな反応なんてなかった。
そう考えている内に飛ばした精霊達から情報が届いた。
「
つまり私は今は最低でも15階層辺りに居る事になる。
「ベルを探しても見つからないっと…………もう下に行ってる可能性が高いね」
ならば私もベル達との合流を目標に下へ…………18階層へ向かわなければならない。
それならまずは…………。
「…………骨ってエリクサーで治るかな?」
指輪からエリクサーを取り出し、じーっと見つめる。
貴重品で高価な物で使うのが勿体無いと言うべきなのかも知れない。
「でもここで迷ったらベルに怒らせちゃうな…………」
私はエリクサーの蓋を開け、そのまま飲み干した。
するとあっという間に右手が元通りに戻った。
「凄っ!? もう痛みが全く感じれない…………」
治った右手をマジマジ見ながらそう呟いた。
将来は
「けどそう言うのは、帰ってからする事にして。今はベル達に追いつく事に専念しよう…………」
18階層を目指して、私は再び歩き出す。
—————地上、【ヘスティア・ファミリア】のホーム。
「…………そうか」
目の前にいる冒険者達にボクはそれしか言えなかった。
「助けられずに…………本当に申し訳ございません」
冒険者達のリーダーである男はそう言い、頭を下げた。
彼の後ろに立っていた者達も同じように頭を下げる。
「…………キミたちが謝る必要はない。それにあの子も言っているだろ? 18階層へ目指すと」
「ですが…………」
不安そうにこちらを見つめる冒険者達。
「大丈夫…………ボクにはわかるんだ。ボクが授けた
そう、あの子達とボクとの繋がりは何一つも欠けていなかった。
だから大丈夫…………。
その後ボクはやってきた冒険者達を見送り、静かに扉を閉めた。
「ヘスティア…………」
後ろにはあの子達と同じパーティーを組んでる青年の主神、ボクの神友のへファイストスもいる。
あの子達の帰りが予想よりも遥かに遅く心配したボクらはこうやって集まった。
そして集まる所にレフィからの伝言を持ってきた冒険者が現れたのだった。
「へファイストス…………ごめん。キミの子まで巻き込んでしまって…………」
「それはお互い様でしょ? それにあなたも言ってたでしょ、まだ繋がってるって…………」
「……うん、そうだね」
更に奥を見るとミアハや同じく
ロキにも知らせを送りたかったが、黄昏の館を訪ねてもちょうど彼女が居なかった。
門番達に聞くと急用があった為外出しているとの事だ。
それ以外にも館全体がドタバタしているのを見てボクは一旦ホームに帰ったのだ。
「して、これからはどうするのかは決まっているのか?」
「俺としては桜花達も探したい所だが…………」
「なら依頼を出すしかないわね」
「ああ、探索依頼を出そう。お金はボクが用意するよ!」
「…………すまないなヘスティア。私とナァーザは力に成れない…………」
申し訳なさそうにミアハが頭を下げた。
「事情があるから仕方ないさ! 気持ちだけで充分だよ!」
「私の高レベルの
「そうか…………ロキの所もなんだかドタバタしているから今すぐ行ける人が居ないのは痛いね…………」
「ヘスティア、俺も」
「タケはボクと同じ立場だから仕方がないさ!」
「すまん」
悔しそうに頭を下げたタケミカヅチ。
「となるとギルド経緯で依頼を出すしかないわね」
顎に手を当てながらへファイストスが呟く。
「ギルドか…………」
「莫大な依頼費を取られそうだな」
「ヴェルフの事もあるし、私も金を出すわ」
「なら…………決まりだね」
バーンと音と共に玄関の扉が開かれた。
「話は聞かせて貰った! 大丈夫さ、このヘルメスに任せてくれ!」
すると胡散臭い同郷神がその姿を表した。
「それで? キミは一体何が目的なんだい?」
この胡散臭い男神はなんの理由もなくこうやって現れるのはあり得ないからだ。
「心外だな、ヘスティア。俺と君の仲じゃないか!」
「ハッ! ボクが地上に降りてから一度も顔見せた事ない癖に! デメテル達は一度ぐらい顔を見せたぞ!」
「それは申し訳ない! なんせ俺は都市にいる事自体が珍しいからね! 帰って来たのも最近なんだ」
「言い訳ばっかり…………」
本当、よく口が回る奴だよ。
それにレフィ君の件もあるし、本当に面倒な奴だよ。
「そんな事より! このヘルメスが君の
「キミが?」
「そう! 俺と君で数人の団員を連れて一緒に君の
「はぁ!?」
「待ちなさい! ヘルメス! あなたはダンジョンに潜るつもりなの!?」
へファイストスはまるで信じられないモノを見るようヘルメスをみた。
「その通りだ! 俺とヘスティアがね!」
「ボクも!?」
「勿論だ、君も心配で仕方がないだろ?」
「それはそうだけど…………」
けどギルドが決めたルールもある、それにへファイストスの反応からするにボクら神がダンジョンへ行くと良くない事が起きる筈だ。
「ならば問題ない! さぁ、善は急げ! 行こうじゃないか!」
ヘルメスはそのままボクを引っ張り出して、無理矢理連れ出した。
「ヘスティア! これを持ちなさい!」
へファイストスはボクに何かを渡した。
渡されたそれはかなり重いものだ。
ってちょっと待って!? コイツを止めて欲しいんだけど!?
「やめろおおお!! ヘルメスゥ!!」
「さあ! まずは助っ人を呼ぼうじゃないか!」
「人の話を聞けぇえええ!!」
ヘルメスの後ろに控えてた青髪の子は何度もボクに向けて頭を下げた。
そんな事よりボクを助けて欲しいだけど!?
かなり強引にだったがこうやってボクは初めてダンジョンへ向かうのだった。
ここまで読んで頂きありがとうございます。
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