会議が終わって、私はリヴェリア様と共に必要な人達に
本来は特効薬や上級回復魔法でしか治せないと言われている猛毒だが、なんとか
一通り治療が終わると、私は当てられたテントに戻る事にした。
テントの中に入ると既にヴェルフさんが起きていた。
「おう、おかえり」
「ただいま戻りました」
軽く挨拶を済ませるとヴェルフさんは手に持ったナイフの点検を行った。
「…………本当にあのバケモノから生きて戻ったな」
「約束ですから」
「ったく、普通はあそこで詰んでるぞ」
「でしょうね」
「まぁ、お前もベルも普通じゃねえからなぁ」
それは地味に傷つくなぁ…………。
「それにしても…………ベルの奴、今回もやったなぁ…………」
「またですか?」
「ああ、強度が前の二倍にも関わらずもうヒビだらけだ…………」
ヴェルフさんはベルの魔法に耐え切れなかったナイフを私に見せた。
「あの魔法は本当に職人泣かせですね…………」
「違いない…………けどそれに応えるのも職人だ」
「そんな物ですかね?」
「おう、そう言うモンだ」
ベルのナイフを一旦元の場所に戻して、彼はリリちゃんの剣を抜いた。
「ベルは魔法による金属疲労だと言うならこっちは純粋にボロボロだな…………っていうかリリ助にこの剣は本当にいるか?」
「近接に対応出来るのは悪い事じゃないですから」
「まあ、それはそうだがなぁ…………」
「今回みたいな事はまた起きるかわからないですしね」
「だが中途半端な感じもあんま良くねぇぞ?」
「それはわかっています、最終的にリリちゃんがどう言う感じになりたいのかを彼女自身が決めますからね」
「それもそうだな」
しばらくすると、ベルが突然と目を覚ました。
「待ってアイズさん!?」
「「あっ、起きた」」
「レフィ姉にヴェルフ!? ってここは!?」
「まあまあ、一旦落ち着け」
「ここはね、【ロキ・ファミリア】の野営地だよ」
「じゃあ、あの時見たアイズさんはホンモノだった!?」
「本人以外いる?」
「え、えっと…………妄想アイズさんとか?」
ナニソレ…………。
「そんな事やってんのかお前…………」
呆れた顔でベルを見つめたヴェルフさん。
「違う! 違う! あの時はしてない!」
なるほど、普段はしてるのね…………。
「たまにはやってるのか」
やっぱり呆れた顔のヴェルフさん。
まあ、仕方ないけどね、だってベルは…………。
「ベルは思春期だもん、仕方ないよ」
「レフィ姉、それは誤解を招く発言だよォッ!!」
「なるほどなぁ…………」
ベルが誤解だ誤解だと騒いでいると今度はリリちゃんが目を覚ました。
目を覚ましたリリちゃんは周りをキョロキョロして、そして隣に座っている私と目が合うとそのまま私を抱き締めた。
「…………ぐぅ」
そしてまた寝た。
「寝ちゃったね」
「寝たな…………」
「リリは最後までずっと頑張ってるからね」
私を抱き締めたまま眠ったリリちゃんを撫でた。
「レフィ姉も休んだ方がいいよ」
「私は平気だよ?」
「いや、どうせお前の事だ、合流してから全く休んでないだろ?」
「い、いやぁ…………や、やる事が多くて…………ね?」
「ほら、やっぱりじゃん」
「無茶をするのはお前ら姉弟は一緒だからな」
「いやいや、僕よりレフィ姉の方が無茶をするから」
おっ? 何言ってるんだこの兎?
「ううん、私よりベルの方が無茶をしているのよ?」
「ははは、何を言ってるの? 僕より圧倒的にレフィ姉じゃん」
「ちーがーうー、ベルの方!」
「レフィ姉の方!」
よろしい、ならば戦争だ。
「うぅ…………」
リリちゃんが苦しそうな寝言を聞いて戦争が終わった。
始まる前だったけど。
「どっちもどっちだからいい加減にしろ」
ヴェルフさんは本日何度目かわからない呆れ顔を見せた。
「レフィーヤ、お前はもう寝ろ! 後はベルに任せれば十分と思うぞ」
「で、でもぉ」
「そもそもお前はその状態で仕事出来るのか?」
リリちゃんにぎゅっと抱き締められた状態で仕事は確かに難しいけど…………。
「えっと…………私は必要な人達に
「はぁ? さっき俺たちの鞄を見たら15束ぐらいはある。ベルに使わせれば十分だろ」
そんなに持ってきたの!?
思わずベルの方を向いた。
「何が起きるかわからなかったから、一応持っていける数だけ持ってきたんだ」
「まあ、そう言う事だ。後の事は俺らに任せてお前はもう休め…………」
納得はいかないけれど、それだけ言われたら仕方ないか…………。
「そこまで言われたら仕方ないな……」
「おう、寝ろ寝ろ」
「おやすみ、レフィ姉」
はいはい、おやすみなさい。
私はリリちゃんを抱き返して、そのまま横になった。
瞳を閉じたら、今まで溜まった疲労感が私の意識を深い眠りに誘った。
☆
「…………こいつ、横になってすぐに寝たな」
「きっとそれだけ疲れているんだよ」
眠っている二人に毛布をかけながらそう答える。
「逆にお前はもう平気か? お前の事だから俺が倒れた後ずっと戦ってるだろ?」
「うん、もうすっかり元気だよ」
もはや元気すぎて自分で困るぐらいだ。
「…………ヴェルフ、あの時はごめん」
「なにが?」
「ヴェルフ達だけで戦わせた事を…………」
「いいんだよ、寧ろあのまま戦わせたら溜まったもんじゃないからな」
ヴェルフは軽く笑った。
「そっか…………」
「おいおい、せっかく無事に18階層に着いたのに湿った話はなしだぜ?」
「あははは、わかった」
笑い合いながら、僕らは雑談を続けた。
ヴェルフがナイフについて愚痴っているけれど、結局最後は自分が未熟だと自己完結してその話題を終わらせた。
その話題が終わるとしばらく僕らの間に沈黙が続いた。
「ヴェルフは…………そんなに魔剣が嫌いなの?」
「またその話か?」
「ごめん、やっぱり気になっているから…………だって僕はよくヴェルフの武器を壊してるから…………」
「
「…………」
「絶対に砕ける武器とか、そんなんじゃダメだろ!? そんなのじゃ武器とは言えねえだろ!? 武器は鍛治士が血と涙の結晶だ!! 俺たちの努力の結晶だ!! それなのに数回振るだけで砕けるとか…………そんなもんは要らん!!」
「ヴェルフ…………」
「けどよ…………あの時…………あのバケモノと遭遇した時…………思ったんだ…………思ってしまった…………このクソみたいな血筋から産み出された魔剣があれば…………みんながこんな風にならないって…………」
ヴェルフは拳を握りしめた…………あんまりにも強く握りすぎて、握った拳から血が出ている。
「ヴェルフは悪くないよ?」
気休めかもしれない…………けど僕は心からそう思った。
「いいや、俺が悪かった…………俺がずっと意地を張ったからだ…………なんども主神に言われている事なのによ…………仲間と意地を天秤にかけるなって…………」
ヴェルフは握った拳で自分の額を殴った。
「…………そう…………なんだ」
言葉は出ない。
「…………わりぃ、湿った話になっちまったな」
「え? ああ、大丈夫。僕こそ、ごめん」
「いや、いいんだ…………そろそろこのくだらない意地にも決着をつけないといけないからな」
「…………そうか」
「おう!」
親指を立てながらニカッと笑うヴェルフ。
その笑顔は強がりなのかも知れないけれど、それでも彼は己の悩みを一所懸命悩んでいる…………。
「さて、装備を一通り見たから、俺も少し寝るわ」
「うん、おやすみ」
「また後でな」
ヴェルフはそのまま僕からを背向けながら寝た。
僕は…………少し散歩でもしょうかな…………フィンさんの所にもお礼したいし。
そう思った僕はゆっくりとテントを後にした。
☆
外を出ると【ロキ・ファミリア】の団員達がゴゾッとやってきた。
みんなは僕や他のみんなの身体の心配をしていて、思わず泣きそうになった。
けど流石に人数は人数な物でラウルさんとアキさんが救助に来るまでもみくちゃされた僕でした。
「ベル君は大丈夫っすか?」
「はいぃ、おかげさまで…………」
「まったく、みんな遠慮がないわね…………」
「ビックリするぐらい質問責めされました…………」
「それはそうっすよ、だってここに来たって言う事はもうレベル2って事じゃないっすか! 姉弟揃って最速っすよ!」
「これだけ無茶な事をやったらそりゃ上がるわよってツッコミたくなるけどね」
二人と軽くお喋りしながらフィンさんが居るテントに向かう。
「団長は今休んでるからあんま邪魔しないで欲しいっす」
「はい、軽く御礼をするだけなので」
「それじゃ、私は料理の方に戻るわね」
「アキさんもありがとうございます」
フィンさんのテントに着くとアキさんが自分の仕事に戻った、今日は料理当番らしい。
「団長、ベル君を連れてきたっすよ」
『…………ああ、入っていいよ』
フィンさんの声には少し覇気が足りない気がするけれど、恐らく疲労のせいだろうね。
「お邪魔します」
テントの中に入ると用意された寝床に横になっているフィンさんが僕を迎えた。
「見苦しい姿ですまないな」
「い、いいえ、気にしないでください…………あの…………大丈夫ですか?」
「ああぁ、薬は飲んだからもうだいぶ軽くなったよ…………ミアハ印の薬は効き目がいいね」
「あっ…………」
それだけで何故この人がこうなったのがわかってしまう。
「えっと…………姉が申し訳ないです」
「はははは…………まあ、こちらも助かっているから気にしなくていいよ…………」
と言っていたがフィンさんは疲労で死にそうな顔だった。
その後、僕は感謝や謝罪を手短に済ませた。
そのままテントに戻ろうとしたが、戻る途中でティオナさんとティオネさんに捕まった。
「ベル、身体はもう大丈夫なの?」
ティオネさんはやや呆れた顔で僕に尋ねた。
「はい……おかげさまでぇ……」
その視線に耐え切れずに、思わず目を逸らす。
「あのさあのさあのさ!」
一方、ティオナさんは何かを我慢している様に見えて、ずっとウズウズしている。
「は、はい?」
「ここに来たって事はアルゴノゥト君はもうレベル2って事だよね!?」
「あ、アルゴノゥト君!?」
なんか急に呼び方が変わっている!?
「この子、あんたとミノタウロスの戦いを見た後ずっとあんたの事アルゴノゥトって呼んでるわよ」
「え、えぇ…………」
「アルゴノゥト君じゃ、ダメなの?」
ティオナさんはうるうるした瞳で僕を見上げる。
「あっ……いやっ……ダメ……じゃないです……はい……その……アルミラージよりは……マシです……はい……」
吃った…………情けない…………。
「本当!? やったっ!!」
その裏腹に僕の答えに喜んだティオナさんは笑顔で僕を抱き締めた。
「えっ!? ちょっ!? まっ!?」
「はいはい、このバカティオナ。少しは落ち着きなさいよ」
「あっ! ごめんねアルゴノゥト君」
「い……いえ……」
ヤバかった…………今きっと僕の顔は真っ赤に違いない……。
「あら、そんな顔を真っ赤にして……勇敢にミノタウロスと戦った割には初心ね」
ニヤッとした表情で僕を揶揄うティオネさん。
「うぅ…………」
だが返す事もありませんでした…………。
「んで、なったわね?」
先程とは違い、ティオネさんは真剣な顔で私に尋ねた。
「はい…………成りました…………」
そんな彼女の質問を真っ直ぐな瞳で返す事にする。
「ふふっ、おめでとう」
「アルゴノゥト君、スゴイ!!」
ティオナさんは再び僕に抱き付き、ティオネさんは僕の頭を撫でた。
「ちょっ!? また!?」
羞恥心で顔が真っ赤になり、僕は思わず周りを見渡す。
そこにはニヤけた顔をしている【ロキ・ファミリア】の方々がこのやり取りを見守っているのだった。
「…………ッ!!」
恥ずかしさのあまりに思わず全力疾走で自分のテントに向かうのだった。
ここまで読んで頂きありがとうございます。
ここ最近、魔王城でおやすみのアニメを何度も見返したせいか、書いてる最中にでびあくまの顔ばっかり浮かんでくる………。
あのふわふわくまさん可愛くてたまらない………。
18階層が終わったらどうしますか?
-
そのままアポロンとの戦争遊戯
-
先にオリオンの矢を挟んでから戦争遊戯