ふっと目を開けると、幸せそうに眠るリリちゃんの寝顔がそこにあった。
身体を起こし、周りを見渡すと、横になっているヴェルフさんと真っ赤な顔で震えてるベルがいた。
「…………何かあった?」
「……き、キカナイデー」
「えっ? ああ、うん。わかった」
どうやら心に傷を負ったようだ、そっとしておこう。
「……うぅ〜ん」
ようやくリリちゃんが目を覚ました。
「…………」
目を覚ましても彼女は私の顔を見ながらずっとぼーっとしていた。
「……おはよう?」
「……おふぁよぅ」
「はい、リリ。暖かいスープだよ」
「ありがとぅごじゃいますぅ…………」
いつの間に復活したベルはマグカップ一杯をリリちゃんに渡した。
「いつ作ったの?」
「保存食のスープだからお湯を使えばすぐ作れるよ」
ちらっと彼の背後を見ると
「そんなのがあるの?」
「うん、さっきアキさんから貰ったよ」
こんな所だから貴重じゃないの?
「貴重だけど、身体弱っている内は栄養が沢山必要でしょ? アキさんと物々交換したんだ」
「何と交換したの?」
「コレを10食分と
「安いのか高いのか、さっぱりわからないね」
「僕達からすれば安いだろうけど、他のファミリアからすれば十分高級品だからね」
詳しく聞いたらアキさんは何も要らないと言ってたらしいがそれでもベルは彼女に
私達からすれば紙があればいくらでも作れるモノだったけど、この“遠征”でスクロールの真価を見たアキさんを始めた【ロキ・ファミリア】の団員達はハイポーション同等で複数人を治せる貴重な
「ラウルさん曰く、スクロールが無かったら59階層攻略時に犠牲者は間違いなく出るって言ってた」
「それはよかった……どのスクロールが残ってるのは聞いた?」
「聞いた話だと、
「攻撃系の方は?」
「そっちは全部使ったみたいだね」
「へぇーそれで?」
「えっと…………深層ではアビリティ関係もあるから使う人によって威力の差が激しいそうで」
「うんうん…………」
「出来れば威力を事前に調整して貰った方が助かるって言ってた」
攻撃魔法のスクロールは最低限しか魔力込めてないから、魔力アビリティの差で違いが出るのは想定していたが……深層だとそれがあんまり意味を成さないみたいだ。
「となるとやっぱり早めにブレスレット版の試作を完成させないとね…………」
「出発前日に作っていた新しい
「そうそう」
「やっぱり苦戦してる?」
ハッキリ言って物凄く苦戦しています。
「まあ……紙とは勝手が違うからね……」
「なんか大変そうだね」
「大変だよ? 紙なら直接書けばいいのに、ブレスレットだとそんなのが出来ないからね」
「ブレスレットも直接書ければいいのにね」
「まあ、そう上手く行かないのが現実だよ? やっぱり試行錯誤あるのみだね……」
まあ、今それの事は置いとくとして。
「僕らはこれからどうすればいいの?」
「とりあえずみんなからは夕飯までゆっくりと休むようにって言われたよ」
「そっかぁ……じゃあお言葉に甘えてそうして貰おうかなぁ……」
「もう十分してると思うけどね……」
「あははは、さて僕は【タケミカヅチ・ファミリア】の団員達の様子見てくるよ」
「うん、行ってらっしゃい」
ベルを見送って、私はずっと静かにしていたリリちゃんに視線を向けた。
スープはとっくに無くなり、彼女はただただじっとその空のマグカップを見つめた。
「大丈夫?」
「……はい」
リリちゃんから短い返事を貰い、けどそれからは沈黙が続いた。ヴェルフさんの寝息が煩く感じるほどの沈黙。
「リリは……これからもっともっと……強く成りたいです……もう二度と置いてかれない様に……二度と家族を見捨てない様に……」
「そっか……」
小さな彼女の背中は僅かに震えた。
今、私が出来るのは優しく彼女を抱きしめるだけ。
☆
実は途中で起きてしまった鍛治士は語った。
あの雰囲気の中で起きる勇気は俺にはないっと。
☆
しばらくするとリリちゃんがようやく落ち着き、私は彼女を連れて外に出た、そして同じタイミングでベルも隣のテントから出てきた。
「命さん達は大丈夫だった?」
「まだ寝てる人も居るけど、みんな大丈夫だったよ」
「それは良かった」
「所で二人ともはこれからどこかに行くの?」
「周りを探索するつもりよ、せっかく来ているからね。ベルも行く?」
「いや、ヴェルフと一緒にここで待つよ。でもあんまり無茶しないでよ?」
「しないしない、って言っても信用されなさそう」
「リリ、レフィ姉の事はお願いね?」
「はい! 任せてください!」
「本当に信用されないね……」
「「だってレフィ姉(レフィ様)の事だから」」
解せぬ……。
周りの探索をしていると私達は知識に有った様々な果物を試食していた。
「噂通り胸焼けするぐらい甘いです…………」
この階層固有の果物の一つ、
「これは流石にね……まあでも貴重な糖分だからね……」
この果物はとにかく甘くて仕方がない、糖尿病になりそうなぐらいに……。
「ですがジャムとかに使えますね」
「でもわざわざここまで取りに行くのはやだなぁ」
「それもそうですね……」
「まあ地上で買えるならいいんだけどね……」
「それは難しいじゃないですか?」
「だよねぇ……」
「ですです…………あっ!」
リリちゃんは何かを見つけた様だ。
「レフィ様! 来て下さい! これが噂の!!」
興奮気味で私を呼ぶリリちゃん。
「なにかな?」
彼女の手には美しい水晶の欠片が二つ。
「えっと……これは?」
「
「話には聞いたことがあるけど……これがそうなのね」
「リリも直接見るのが今日が初めてです」
「どんな味なんだろう?」
「話によると程よい甘さと冷たさが口の中で広がるそうです」
「ほぇー」
ちょっと食べたいかも……。
「食べたいのですが、二つしかないので……」
リリちゃんも同じ気持ちの様だ。
「ちょっと貸して」
「へっ?」
しばらくすると次々と生えている場所が判明した。
「リリちゃん、あ──ん」
「あ──ん…………むっ!?」
そのままリリちゃんの開いた口に飴を入れ、食べた本人は驚いた表情を浮かべながら固まった。
「!?!?!?!?」
「大丈夫大丈夫、今から新しいの取りに行くからね」
「!?」
「それにしても……やっぱり18階層でもそこそこ
「……ッ!」コクコク
18階層では
「それじゃ、気を引き締めて。
「!!」コクコク
「…………本当にじっくり味わってるのね」
「ッ!!」
力一杯頷くリリちゃんでした。
☆
果物集めと言う
「ここって…………」
「お墓……ですかね?」
リリちゃんがお墓と呼んだ場所は目の前に盛り上がっている土の上に何本も武器が刺さっている場所の事だ。
ここは亡くなった先人達のお墓なのだろう。
そんな彼ら彼女らは一体どういう冒険者なのだろうか?
どういう想いで戦っている者なのだろうか?
その死に悔いはないのだろうか?
問い出しても答えはない…………。
冒険者にとってこれはある意味、明日の自分なのかも知れないなんだから。
そもそも冒険者と言う職業に憧れて富や名誉を求める者は少なくはない、だがそれらを手に入れたのは僅かな一握りでしかなかった、残りの大半の冒険者は死んで行くのだ……それだけ冒険者にとって“死”と言うのは常に隣り合わせしている存在なのだから。
彼ら彼女らの安らかな眠りの為、祈りを捧げた。
「…………帰りましょう」
「…………はい」
お邪魔しちゃってごめんなさい、どうかゆっくりと休んでください。
リリちゃんを抱き抱えながら私は野営地に向かって飛ぶのでした。
ここまで読んで頂きありがとうございます。
最後のシーンは要るかなって思ったけど、敢えて載せました。
そしてなぜこんなにも話が進まないんだ!?
18階層が終わったらどうしますか?
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そのままアポロンとの戦争遊戯
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先にオリオンの矢を挟んでから戦争遊戯