野営地に着く頃にはすっかり周りが暗くなった。
ダンジョン内なのに昼と夜があるのって本当不思議だよね……。
「あっ! やっと帰って来た!」
「遅くなってすみません!」
「ごめんなさい!」
迎え入れるのはティオナさんでした、彼女に謝りつつみんなが集まる場所に案内された。
「レフィーヤとリリちゃん帰って来たよー」
「随分遅かったわね」
「みんな心配してるよ?」
ティオネさんとアイズさんにも謝り、そのまま席に案内された、私達以外には既にベルとヴェルフさんそして【タケミカヅチ・ファミリア】のメンバー達が座っていた。
「遅かったね」
「ちょっと果物集めが楽しくなっちゃって……」
「一杯取ったの?」
「うん、ヘスティア様のお土産にね」
籠の中に沢山入っていた
「なんかわからないけど凄いね」
「いやいや、マジかお前!? この数はどうやって集めた!?」
「魔法でちょこっと」
「……お前はそう言う奴だったな」
「レフィ様、予定通り皆様にも配ってよろしいのですか?」
心配させたのでお詫びに
「うん、でも配るのは食後になるかな」
「了解です!」
その後、フィンさんが私たちの事を軽く説明して、晩酌が始まった。
「これ、美味しいですね」
「こういう限られた原料で工夫するのって結構楽しいですよねー」
「冒険者じゃないと味わえない味ですから」
「でも甘過ぎて太っちゃうかも」
私とリリちゃんはアリシアさんやアキさんを始めた女性陣と雑談しながら時間を過ごし。
周りには様々なドロップアイテムを自慢されたヴェルフさんやアイズさん達に囲まれたベル、そして黙々とご飯を食べる命さん達も居た。
「見ろ、ヴェルフ吉! これぞゴライアスのドロップアイテムとカドモスのドロップアイテムだ!」
「クソォ!! お前さっきから自慢ばっかりしやがって!」
「はっはっはっ! 良いではないか! ほれほれ、深層のアイテムだぞ? 羨ましいだろ?」
「お前……覚えとけよ……」
☆
「ねぇーねぇーアルゴノゥト君はどうやってあんなアビリティに成れるの? あたしにも教えてよ!」
「私もそれ聞きたいわね」
「…………ッ!!!」
「あっ! また顔を真っ赤になった! おもしろ〜い」
☆
尚この穏やかな時間は長く続かなかった……。
《オォオォオオオオオオオッ!!》
「え?」
「今のは!?」
「また誰か襲われてる!?」
遠くから聞こえて来たのはゴライアスのおたけびだった。
「僕が見てくるよ!」
みんなが驚いている中でベルは真っ先に野営地から飛び出した。
「ベル! 待ちなさいッ!」
私も即座に風を纏い、ベルに追いかけた。
「おい待てよ!?」
「お二人とも!!」
遠くからヴェルフさんやリリちゃんの声が聞こえるが今はそんな事を気にしている場合ではない。
本気ではないとは言え風を纏ってもベルの足に追いつけないと言う事実にかなり驚いたが、追いつく頃には18階層への通路の前に立ち尽くすベルを発見した。
「ベルッ! もう! 何やってるの———「……神様」…………って……エェ──!?」
今、私の目の前にはヘスティア様を始めた数人の冒険者が居た。
「や……やぁ……元気かい?」
「元気かい? じゃないですよ! 何やってるのですか!?」
「神様達ってダンジョンに潜るの禁止じゃないの?」
「……ったりめぇだ! ……ったく、なんでお前のとこの主神がこんなにも自由なんだよ!?」
そしてそこにもかなり苛立っているベートさんが立っていた。
☆
駆け付けたみんながやってくる頃に、ベートさん事情を説明した。
特効薬を買いに出かけた【ロキ・ファミリア】の団員の一人が黄昏の館からヘスティア様が帰って行くのを見て、直ぐ様にベートさんと話し合っているロキ様に報告した。
それと同時に門番がヘスティア様が一人で来館したもののこちらが忙しかったのを見て、直ぐに帰ったのを報告した。
何かが起きたと感づいたロキ様はちょうど手が空いていたヴァインさんとケイさんに詳しい話を聞いて欲しいと命令したが—————。
「————んでお前らのホームに行ったらまさかのお前のとこの主神の姿がない、その代わりに何故か神へファイストスが居た」
「へファイストス様から事情を聞いたと?」
「あぁ、まさか強引に神をダンジョンに連れて行くなんて事もロキも思わなかった」
「あ、あの、特効薬の方は大丈夫でしたか?」
「お前らがこちらを目指してるの聞いた後、神へファイストスからは
「あれ? でもそれって……」
「ああ、【へファイストス・ファミリア】の分だ。後伝言だ、後日止めれなかった事も謝罪と罰金の手助けをするだそうだ。それとこれがお前達宛の手紙だ」
「えっ? あ、ありがとうございます……」
私に手紙を渡した後、ベートさんはまた別の手紙をフィンさんに届けた。
その後、彼はヘスティア様の介護をしていたベルの背中を強く叩き、そのまま野営地に戻った。
「俺はもう寝る! 何があっても起こすなッ!」
叩かれたベルはかなりビックリしているが自分の背中を叩いたのがベートさんとわかった途端、すごく嬉しそうな顔を浮かべた。
「……よかったね」
「エヘヘへ……」
よっぽど嬉しいのか、少しだらし無い顔になっている。
☆
フィンさんとヘルメス様は話があるからと先に戻って欲しいと言い、【ヘスティア・ファミリア】だけで野営地に向かう私達ですが、帰り道に何度か
他の強敵なら兎も角、数で攻めて来る
「スクロールッ! 『ウインド・アロー』×30ッ!!」
本来、私とは違って一発一発威力が低い魔法の矢でも手数で的確に相手の弱点を集中的に狙った戦法を彼女は実現した。
将来は私が目指した
「リリちゃん」
「ほぇ?」
私は指輪に収納した杖を取り出し、そのまま彼女に渡した。
「一回使ってみて」
「は、はいぃ!!」
何回か杖での戦闘を試したが、杖の長さはあんまりにも彼女に合わなかった。
「やりづらいです……」
「
「じゃあ、今度コレだね!」
「えっ!?」
今度はベルがヘスティア・ナイフを彼女に渡した。
「や、やってみますね!」
杖同様に何度か試したが、こちらもあんまり本人に合わなかった。
「ダメですね……」
「リリ助の場合はそこの
「ですが、リリには
「まあ、保険ってのは悪い事じゃねえだろ? なんなら杖に仕込み刃を付けてもいいんじゃねえか?」
「ですがスクロールでは杖の意味がないですよね?」
そう、一般的に威力や効果を高める杖はスクロールの威力には関係がない。
コレがこの2週間で発覚したスクロールの欠点でした。
術式自体変えれば可能になるが、もしも変えた場合その術式に耐えれるだけの原料がない。
「現状で解決方法がないからどうしょうもないけどねぇ……」
「鍛治以外手伝える事が出来ないからなぁ……頑張れとしか言いようがない……」
「僕もそういうのはさっぱりだからねぇ……」
「う──ーん、例えば紙を小さくしたりとか?」
「それじゃ、尚更無理があるよ?」
「ただでさえ、色んな紙で試してもコレだからなぁ」
「僕のナイフやレフィ姉の杖みたいに刻むのはやっぱりダメだった?」
「それも試したけど……ダメだったよねぇ……」
「今の俺らではコレを成していたへファイストス様の実力にまったく届かないって事だ」
何がダメなのかわからなかったけどヘスティア・ナイフを真似して直接魔力を書き足したが成立しなかった……。
「ヘスティア様的にはどうですか?」
ずっと後ろに歩いていたベルの背中に居る女神に質問する。
「……ボク!?」
「はい」
みんなが一斉にヘスティア様に視線を向けた。
「ボクに何を求めるのかなぁ!?」
「アイデアを?」
「そんな事言ったって知らないよ!?」
「なんかこう……小さい突破口があればいいんです」
「うぅ……ない! ないよ!?」
「そんなぁー」
がっかりです……。
「まったく、そう言うのは沢山悩むといいよ」
「それもそうだなぁ……」
「あっ、神様! 地上に戻ったらリリのステイタスを更新して欲しいんだ! 多分
ステイタス更新……私もそろそろ
「おぉーそうかい? ボクに任せたまえ!」
「そもそも此処で更新はどうなんでしょう?」
「何が起きるのかわからないからやめた方がいいと思うぞ?」
例えばこう……望んだアイテムに血を垂らして妖精の恩恵! なんてね?
「レフィ姉?」
「うん?」
「大丈夫? ずっとブツブツ言ってるけど」
「あははは、ごめんごめん。ちょっと考えすぎちゃった」
考え事をしすぎて足が止まっちゃった。
「君達、先に帰ってって言ったのにまだこんな所に居るのかい? ほら、野営地に帰るよ?」
『ごめんなさい!!』
まさかの話し合いが終わったフィンさんとヘルメス様が私たちに追いつき、結局そのままみんなで帰るのでした。
ここまで読んで頂きありがとうございます。
なんかこのベートさんがただ面倒見の良い兄貴になってません?
そしてスクロールの意外な弱点?が発覚した。
ちなみにたぶん登場人物の中だとダントツでリリが一番上手くスクロールを使い込ませている……。
18階層が終わったらどうしますか?
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そのままアポロンとの戦争遊戯
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先にオリオンの矢を挟んでから戦争遊戯