私が妖精になるのは絶対間違ってる   作:ZeroRain

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こんな駄文にお気に入り200件以上ある事に私は驚きを隠せない。


じゃが丸くんは小豆クリーム味に限る

 目の前のミノタウロスがバラバラになり、その血を浴びた私たちの前には美しく儚げそうな少女が居た……。

 曰く、神すら羨む美貌を持った少女にして神ロキのお気に入り。

 曰く、その剣技はオラリオの中でもトップクラスの実力者。

 曰く、剣技だけではなく彼女の魔法も凄まじいとの事。

 曰く、甘過ぎてあんまり誰も買わないジャガ丸くん小豆クリーム味の愛好家。

 彼女の名は『剣姫』アイズ・ヴァレンシュタイン、ロキ・ファミリアに所属のレベル5冒険者。そして本来、レフィーヤ・ウィリディスの憧れの人でもある。そんな彼女の姿は噂通りと言うべきかそれとも噂以上と言うべきか……。

 

「……あの、大丈夫ですか?」

 無言で彼女を見つめた私たちに彼女は声を掛けた。彼女の問いに答えようとした瞬間、隣に居たベルは予想外……いや、ある意味予想通りの行動を起こした。

 

「だ」

「だ?」不思議そうに彼女はベルの言葉を繰り返した。

「だああぁああああぁあああああああああぁあああああ!!!!!!!!!!!!!!!」

 

 ベルは私を抱き上げ、凄まじい速さでその場から逃げて行ったのであった……。ベルに抱き上げられてその場から離れた私が見たのは面喰らった少女と大笑いする犬耳の青年の姿でした。

 

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 ずっと私を抱き上げながら走ったベルでしたが、2階層に着いてすぐ、息切れし始めた。アドレナリン効果が切れたみたいだ。

 

「ベル、大丈夫?」

「だ、大丈夫……大丈夫だから……」

「そろそろ恥ずかしいから降ろして欲しいんだけど?」

「あっ……ご、ごめんレフィ姉」

「これの事は謝らなくていいよ」

「うぐっ……あの……その……ごめんなさい……」申し訳なさそうな兎の顔を見て、思わずため息が出た。

「お説教はギルドに帰ってからにする。その前にまずはこの返り血を綺麗に流さないといけないよ?」

「ギ、ギルドでって?」

「エイナさんも混ぜてお説教してあげる♡」

「アッハイ……」

 

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 ギルドに着いた途端、ベルの防具がボロボロになっていたのに気づいたエイナさんはすぐに私たちの所に駆け寄った。

「二人ともどうしたの!? 大丈夫!?」

異常事態(イレギュラー)に巻き込まれたのですがとりあえず大丈夫です」

異常事態(イレギュラー)!? 4階層で!? 「いえ、5階層です」ごーかいそー!? レフィちゃん!? 今、5階層って言った!? なんで!?」

 隣に震えるベルを見ながら、私は事の説明をした。そして勿論、エイナさんの雷がベルに落ちた。弟よ、どうか反省して欲しい……。ちなみに、ベルを一人で行かせた私も怒られた、実際私も悪かったから甘んじて受け入れよう。

 そんなこんなでお説教が終わったのは約1時間後。

 

「ねえ、ベル君。もう二度とこんな事をしないって約束出来る?」

「…………はい」

 

 そんなベルの様子を見てエイナさんはため息を吐き、今度は隣にいる私を見た。その目はまるで“あなたもだよ? ”って言いたいのがビシビシ伝わる、はい先生、反省します。

 お説教が終わり、今度は恥ずかそうにベルはエイナさんに声を掛けた。

 

「そ、それであの……エイナさん……」

「モジモジしてどうしたの?」

「あ、アイズ・ヴァレンシュタインさんの事を教えて欲しいなぁって……なんて」

「ベル、あなたってもしかして……アイズさんに助けられてそれで好きになっちゃったの?」

「えぇ!? ほ、本当なの、ベル君!?」

「え、エヘヘヘヘ……」

「そっか……でもベル君とヴァレンシュタイン氏が結ばれるの凄く難しいと思うよ?」

 

 そんなエイナさんの言葉を聞いたベルは先程の笑顔が消え、代わりにこの世の終わりだと言わんばかりの表情をした。

 

「だって、君はもうヘスティア・ファミリアの一員だし、まずはファミリアが違うだけで可能性が相当低いよ? それにヴァレンシュタイン氏は神ロキのお気に入りでもある。だから、凄く難しいんだ」

「そ、そんな……」エイナさんの言葉を聞いたベルは泣きそうになっていた。

「でも可能性が低いだけであって、ゼロってわけじゃないですよね?」

 

 私が言った台詞を聞いたベルとエイナさんは目を見開いた。

 

「可能性がある限り、ベルにはチャンスがあるの。それに英雄なら目の前に巨大な壁が立ち塞がる程燃えるってお爺ちゃんがよく言ってたでしょ?」

「そう言われると確かにそうね、ごめんねベル君」

「そう……そうですよね! 可能性があれば僕にだってチャンスがある! レフィ姉! エイナさん! ありがとう! 大好き!!」

「うぇっ!? も……もう! ベル君ったら!」「はいはい、私も大好きだよ」

 

 そんなやり取りを終えた私たちは魔石の換金を終わらせ、ホームに帰ろうとした時、ベルは後ろから声を掛けられた。それはなんと5階層ですれ違った冒険者たちだった。彼らはベルに何度も感謝の言葉を送り、ベルを少し困らせた。そんなやり取りを見た私は思った……ベル・クラネルはきっと少なからず彼らの英雄になったのだろう、ベルが気づいてないうちに彼はもう最初の一歩を踏み出したのだから。





ここまで読んで頂いてありがとうございます。

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