ヘスティア様達と合流してから一晩が経ちました。
「いやぁ〜〜まさかダンジョン内で水浴び出来るなんて思っても見なかったよ」
現在、私たちは野営地の近くにある川に来ている、目的はヘスティア様が言ったように水浴びです。
「いいですか? あんまりはしゃぐのはダメですよ? ただでさえヘスティア様はルール違反を犯しているのですから……」
リリちゃんはヘスティア様に何度目かわからない注意をした。
「勿論、嫌と言う程理解しているよ……ただそう思うと……はぁ……罰金が重いなぁ……」
今回、強引に連れてこられたとは言えギルドへの罰金支払いは確定である。
「ですね……まあリリ達が小規模だからそこまで痛くはない筈ですが……」
「それでもいくらになるかわからないじゃないか!」
聞いた話だと、最低でも半分は持ってかれる。
初の借金返済が今月末なので現状だと【ヘスティア・ファミリア】の資産から2000万ヴァリス以上が持ってかれる事になる、そんなの認める筈がない。
「レフィ様が今朝、話し合いを行うと仰っていましたが?」
「そうだ! その話し合いはどうなったんだい!?」
荒い息でガシッと私の肩を掴んだヘスティア様。
「えっと……大丈夫です、そこはもう交渉済みですから」
勿論、そのまま支払う訳がない。
こちらは完全に被害者である為、罰金の大半はヘルメス様に支払って貰う事になった。
アスフィさんもそれを認めた為コレも確定。
「ですよね?」
チラッと隣に居るアスフィさんに視線を送った。
「……この度は完全にウチのバカ主神がやらかしましたので、罰金の件は6割支払います……そして
最初は2割とふざけた事を言ってたヘルメス様ですが、そんな馬鹿な事を認めるはずも無いのでかなり奮発した。
その結果、完全勝利で10割りを貰う予定だったが、アスフィさんが
「それはどんな
「それは後日、彼女が決めるそうです」
「契約も書かせたしね〜〜」
そう、
今回のペナルティはもし約束を違えた場合にのみ、アスフィさんの持つ“神秘”アビリティが効果を無効にすると言う契約を結ばせた。
そんなの出来るはずがない?
精霊達がクロッゾを呪う事が出来たのなら精霊に深い関係を持つ私に出来ない筈がないでしょ?
そもそも私って家族に害を成した者には遠慮しない主義なので。
「……やや半信半疑ですが、もしあの契約が本当ならばもう凶悪どころじゃありませんよ?」
「なんなら試します?」
「結構ですッ!!」
ため息を吐きながら身体を洗うアスフィさんから目線を逸らし、別のところを見ると涙目で身体を洗っている命さんとそれを慰める千草さんが目に入った。
「どうしたの?」
「あっ、レフィーヤさん。大丈夫です、命がお風呂が恋しいだけなので」
「へぇー命さんってお風呂好きなの?」
「……うん、かなりです」
それは初めて聞いたね、そうなのか……。
「【タケミカヅチ・ファミリア】のホームには無いの?」
「あるにはあるけれど、狭いので命的にはかなり不満なんです」
「なるほどねぇ……」
そうなるとウチはどうなんだろう?
「うちのに入ってみる?」
「「えっ?」」
「交代制ではあるけれど、うちには大きめのお風呂があるよ?」
「ほ、ほんとですかッ!?」
ガシッと強い力で私の両肩を掴んだ命さん。
いきなり顔近い……後息荒いよ?
「……まずは落ち着こうね?」
「命!? ちょっとは落ち着いて!?」
「ハッ!? は、恥ずかしい所を見せてしまった……」
「とりあえず、命さんがお風呂大好きなのは伝わったよ……うん」
「そ、それでレフィーヤ殿のホームには大浴場があると申しましたが?」
「あぁーうん。6人ぐらいは余裕で入れるぐらいのがある……最新式の……」
ガシッと再び肩が掴む命さん。
目がやばい、息もさっきより荒い。
「そそそそその大浴場にわ、我々も入ってよよよろしいのですか!?」
「…………」
ヘスティア様の方を見るとあの人が苦笑いで頷くの確認した、隣のリリちゃんも若干引いていたが同じく頷いた。
「……た、たまにならいいよ?」
「では、戻ったらすぐにでもッ!!」
「命、いい加減に落ち着いてってば!!」
『あの子毎日来そうだね』
『あの反応を見ると来そうって言うか確実に毎日通いますよ』
『ウチは銭湯じゃないんだけどね?』
『でもまあ、【タケミカヅチ・ファミリア】にとって心の安らぎ場にはなりますよ』
『……タケには世話になっているからしょうがないか』
『少しは使用料金設定しますか?』
『それはお互いで決めないとね』
なんかあっちはあっちで相談をしているけど、私を助けてくれる人はいないの!?
命さんが凄く興奮しているので千草さんだけでは止められそうにないですよ!?
☆
そんなこんなで水浴びで時間を潰すと突然に感知魔法が反応を示した。
「……へぇ」
「レフィーヤ殿?」
何となく予想はしたが……本当に来るのか……覗き……それも二人で両者知ってる方々みたいだね……。
「『水の衣』ッ!!」
即座に周りにいる女性達を水から出来たローブを着せた。
「なになに!?」「なにこれ!?」「敵襲!?」「……これはレフィーヤの魔法?」
少し混乱を招いたが……先手必勝!!
「そこだッ!! 『アース・プリズン』ッ!!」
『ちょ!? なんだコレは!?』
『ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!』
出来上がった大地の檻には情けない兎と胡散臭い男神が入っていた。
「……遺言はある?」
「本当にごめんなさい! 許して下さい! お願いしますお姉様! どうか僕に慈悲を下さいッ!!」
お爺ちゃんから習った秘技、土下座を披露しながら謝る我が弟。
まあこんな事を仕出かす子じゃないのは知っているので軽い罰で済ませるけれど。
「……アスフィさん、“ソッチ”は任せますね」
「はい」
アスフィは短く返事をした、多分内心ガチギレ案件じゃないかな?
「ベルは少しのあいだSEIZAね?」
「せ、SEIZA?」
「確かに正座なら慣れない人からすれば地獄ですね……」
命さんはそんな事を言っていたが。
「多分命さんが思う奴とは違うよ?」
「えっ?」
見ないとわからないので、とりあえず見本を見せなきゃ……。
「とりあえず、見本を見せるね?」
「はい!」
「はい、ベル。まずは普通に正座をさせます」
ベルは命令通りに正座をした。
「次は手を拘束します」
風の魔法でベルの両手を縛る。
「ヒィッ!?」
「ん?」
「正座している地面に板挟みのように加工します」
魔法で地面を加工した。
「イッッ!!」
「ん??」
「とどめに膝の上に大きな石を乗せます」
魔法でポンとベルの膝に重めな石を置く。
「ぎゃあああぁああああ!!」
「これがSEIZA」
「それはただの拷問なのでは!?」
まあ実際は拷問術の一つだよねぇ……。
「許して!! お願い!! レフィ姉! 姉さん! 姉様! お姉様ッ!!」
「こうやって叫ぶ声を消す為に、口の中に布を噛ませるといい」
「ムグムグッ!!」
「れ、レフィ君。ベル君は巻き込まれたんだし、許してあげれば? それにほら、みんなもきっと同じ気持ちだよ?」
他の女性陣を見るとみんな一斉に頷く。
ベルは確かに被害者だから最初からこれぐらいで済ませる予定なんだけど。
「まあ、ベルはこれぐらいにして……アスフィさんはどうします?」
「野営地に帰ってからお願い出来ますか?」
「それはもうッ!!」
大歓迎です!!
多分、私は今物凄くいい笑顔を見せているのだろうね。
☆
その後、ベルは現場を見ていない女性陣に誤解された為、森の奥深くに逃げ込んでしまったが、数時間後無事に帰る事が出来ました。
そして戻ってきた早々にティオネさんを始めた女性陣に捕まり何か聞かれた模様。
そして翌日—————
「昨日は物凄く酷い目に遭った……」
やつれた顔で呟いた兎が一匹。
「……リリ達は全体的にあの神の被害に遭ってる様なものですね」
「まったく持ってその通りだよ……」
朝食を持ってやって来たリリちゃんとヘスティア様が反応した。
「クソォ……椿の奴め! 散々俺に自慢した上に秘密まで話しやがって!」
こっちもこっちで何かが起きたみたい。
ヴェルフさんは昨日、ほとんど装備の手入れの為、私達と別行動をした。だがその間にもずっと椿さんに絡まれたらしい。
「それで? 今日で帰るけどみんなどうする?」
「僕、帰る前にリヴェラの街を見に行きたい」
「あっ、リリも!」
「それだったら俺もだな!」
「じゃあボクも行かないとね!」
どうやらみんなで行くつもりらしい。
「それじゃあ私も「すまんがお前には座学がある」……そんなぁ!?」
私の言葉を遮ったリヴェリア様。
「狙われているお前には少しでも知識を蓄えなければならないから、これから私とアリシアと共に座学だ」
「今からはみんなとの親睦を深める為の大事な時間なのにっ!?」
「お前のファミリアはもう十分に親睦が深まっている、悪いとは思っているがこれもお前の為だ」
「鬼ッ! 悪魔ッ! リヴェリア様ッ!」
「……ほぅ」
「しまった!?」
「1時間で済ませるつもりだったが、ベル達が帰るまでやりたいみたいだな」
「ち、ちがっ! やめっ! いやぁあああああああ!!!」
ズルズルとリヴェリア様に引き摺られた私。
「が、頑張って……」
「お土産は……高いので要らないですね」
「まあ、その……ドンマイ?」
「まぁ……大事な事だから仕方ないんだね」
私は苦笑いしている一同に見守られながら連行されていたのでした。
ぐすんっ……。
ここまで読んで頂きありがとうございます。
契約書の事何ですけど、正直ちょっと強すぎるかな?やっぱ弱体すべきかな?
18階層が終わったらどうしますか?
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そのままアポロンとの戦争遊戯
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先にオリオンの矢を挟んでから戦争遊戯