私が妖精になるのは絶対間違ってる   作:ZeroRain

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話を加速させます。


進む者と立ち止まる者

 意識が覚醒し、身体に違和感を感じた。

 口には布が巻かれて喋れない、腕は何かに固定され、目も隠された為真っ暗の闇が広がる。

 もしかしてなくても寝てる間に誰かに捕まった!?

 

「んっ!?」

「れ、レフィ君!! キミは大丈夫なのかい?」

 

 隣からは心配そうな声で私に語りかけたヘスティア様の声が聞こえた。

 声を出せない私は代わりに軽く頷いた。

 

「そうか……なんとも無いならいいんだ……」

 

 私が無事と確認出来たヘスティア様の声色が柔らかくなった、どうやらかなり心配していたみたい。

 どう言う状況なのかって聞きたかったが声が出せないからどうすればいいのか迷っていた。

 

「キミは何故こうなったのか聞きたいだろうね……」

 

 私はヘスティア様の声に頷いた。

 

「ボクらがリヴェラの街から帰った後に帰還の準備をしていた、そこでキミが疲れていて眠っているからボクが代わりにキミの支度をしていると……見えない何者かがボクらを連れ出したんだ」

 

 記憶の中に朧げに覚えてる……その場面を……。

 

「ボクも犯人は誰なのか……見当が付かないんだ……攫われて直ぐに目が隠されたからね……」

 

 犯人が誰なのかは覚えてないけど……この件の“黒幕”は誰なのかは知っている……。

 

「キミは魔法使えるから目以外に口も拘束されちゃったみたいだね……」

「……ン」

「キミが魔法を使えない……それは本当に残念だ……」

 

 私は詠唱が無くても魔法が使えるの知っているヘスティア様が何故こんな事を言っている? 

 恐らくずっと私達を見張っている者がいるからなのだろか……。

 

「……」

 

 周りを探るように感知魔法を発動。

 感知魔法により、周囲の見張りが3人……うん? 近くにリリちゃんの反応がある?! 救助をしに来てくれたのね!! 

 

「きゅー!」

 

 近くにそんな鳴き声が聞こえた。

 

「……な、なんの鳴き声なんだい?」

「ンッ!」

「えっ? 大丈夫なのかい?」

 

 すると私の手を拘束した縄が解かれて、手が自由になった。

 その後きゅきゅきゅと可愛らしい鳴き声が遠のいたの確認してから、私は目隠しと口の拘束を解いた。

 

「おいテメェ!? どうやって拘束を外した!?」

 

 私を見た見張りの一人が声を荒げた。

 

『風の咆哮』(威力弱め)

 

《ズドンッ!!》

 

 かなり威力を弱めに設定したとは言っても、一人をぶっ飛ばすには十分すぎた。

 声を荒げた見張りが風に飛ばされて、最終的に白い目で倒れていた。

 

「何が起きた!?」

「まさか脱走したのか!?」

 

 他の二人も異変に気付いて、私達が拘束された場所までやって来た。

 

『風の咆哮』(威力弱め)×2

 

 やって来た彼らにも同じ魔法を叩き込み、気絶したと確認すると私はヘスティア様の状態を確認した。

 

「ボクは大丈夫だ、心配ないよ」

 

 リリちゃんが縄を解いたおかげで、ヘスティア様も拘束から解放された。

 

「まったく……彼らは一体なんなんだい?」

「恐らくですが、ベル様に嫉妬した冒険者達かと……」

 

 ヘスティア様の疑問に姿を現したリリちゃんがそう答えた。

 嫉妬……まさか椿さんが言っていた事がこんなにも早く起きるなんて。

 

「……なるほどねぇ」

「まあ、彼らの立場からすれば私とベルの存在って全く面白くないからね」

「それにしても何故こんなにも早く捕捉されたんだい? ボクらは街でその一部の冒険者にしか会っていないぞ?」

「……まあ“誰か”が、こちらの情報を流したのでしょうね」

「それは……誰だい?」

「……わかりません?」

 

 私の言葉にヘスティア様はコメカミを押さえた。

 

「いや、まあ……予想はつくけど。彼が何の為にボクらを巻き込んだのかさっぱりだよ」

「実力を確認したかったんだと思います……嫉妬した冒険者達に私達を誘拐させて、ベルを怒らせる。怒ったベルの実力を見るには十分すぎますよ?」

 

 あの神、ヘルメス様が見たかったのはベルの英雄としての素質……。

 けど、こんなのでベルの素質を測れるのかって言われたら私にもわからない……。

 

「…………ッ!!」

 

 一方、ヘスティア様が怒りを我慢する余りに震え出した。

 リリちゃんはそんなヘスティア様を落ち着かせる為に必死に宥めている。

 

 ベル……大丈夫だといいけど。

 

 

 

 

 ☆

 

 

 

 

 迂闊だった、まさか僕が居ない間に眠っているレフィ姉や神様が攫われたなんて……思いもしなかった。

 事の始まりは先にフィンさんを始めた【ロキ・ファミリア】の団員達は地上に向けて出発して、僕らはその1時間後を彼らを追うつもりだった。

 そして出発準備を済ませている間にまさか何者かが二人を誘拐した、一通の手紙……果たし状を残して。

 

「……おぉー、来たか。噂の【未完の少年(リトル・ルーキー)】さんよぉ」

 

 指定された場所にやって来ると、そこには以前酒場そして数時間前にぶつけた一人の冒険者が待っていた。

 

「……神様とレフィ姉はどこだ?」

 

 僕は目の前のこの男に問いかけた。

 

「そこは安心しろ、二人ともは無事だ。女神に手を挙げるなんて、そんな禁忌に触れたくもねえ」

「ならば、あなたは何が目的でこんな事を?」

「目的? んなもんテメェが一番わかってんだろ? なぁ、【世界最速兎(レコードホルダー)】」

「……」

「来いよ、俺とお前の決闘場(ステージ)は直ぐそこだ」

 

 案内された場所にはもう既に他の冒険者達が待っていた。

 

「……この人達は?」

 

 男は周りを見渡した。

 

「ケッ! あの旦那、こんなにも巻き込んだのかよ……こいつらは全員観客だ、手は出さねえと思うぜ」

「観客……」

「おう、俺とお前の決闘のなッ!」

 

 男は凹凸の地面がある場所へ歩き出し、その場で剣を抜いた。

 その凹凸の地面こそが、この巫山戯た茶番の舞台(ステージ)だ。

 

「……わかりました」

 

 僕も男がいる地面に歩き出した、僕がここで頑張っている間にリリ達がきっと神様とレフィ姉を助けてくれるから……僕はここで彼らが望むがままに戦えばいいんだ。

 

「この決闘のルールは簡単だ、それは俺とお前の一騎打ちだ」

「……一騎打ち」

「先に参ったと言った方が負けだ、簡単だろ?」

「……わかりました」

「俺を倒せばお前のとこの女神とエルフは返す、それでいいな?」

「…………」

 

 僕は静かにヘスティア・ナイフを抜いた。

 目の前にいる敵を倒す、ただそれだけの為に……。

 

「だが俺が勝てば……そうだな、お前が持っているソイツを俺によこせ、金にしてやる!」

 

 自信満々に男はそう言った。

 

 

 

 

 ☆

 

 

 

 

 まずは様子見の連撃を叩き込む。

 

「アアァァッ!!」

「チッ!! ガキの癖にやるなッ!!」

 

 だがあっちも伊達に長く冒険者をやっている訳ではない、男……モルドさんって言うらしいは正確に僕の攻撃を全て受け流した。

 

「だが、甘いッ!!」

 

 モルドさんが背に負った大剣を大きく振りかぶった。

 だがその動き先読みして、僕は出来るだけ彼から距離を取った。

 

「まだまだだぜッ!!」

 

 僕が攻撃を避けた事を確認してから素早く大剣を振り下ろした。

 

「ッ!!」

 

 咄嗟に僕はナイフでその攻撃を受け流した。

 

《ドガンッ!!》

 

 モルドさんの一撃で僕らが立っていた地面を割った。

 地面が割れたせいで周りが一気に土煙に覆われた、そのせい視界が悪くなり僕はモルドさんの姿を見失った。

 

「ガッ!?」

 

 攻撃した瞬間を確認出来ないまま、僕は横から攻撃をモロに喰らった。

 攻撃が来た方向を見るとそこには誰もいなかった。

 

「ッ!!」

「こっちだぜ」

 

 今度は反対側から強烈な蹴りが僕の脚に直撃した。

 

「グァッ!?」

 

 蹴りをモロに喰らった僕はその場で膝を突いた。

 

「ヘヘッ」

 

 今度は真正面からモルドさんの笑い声が聞こえた。

 そしてその直後に再び強烈な蹴りが僕を襲った、今度はモルドさんの狙いは僕の顎だった。

 

「アッ!?」

 

 その蹴りが入った途端、僕の身体は宙に舞った。

 モルドさんはそこに居ないんじゃない……多分魔道具(マジックアイテム)を使って僕には見えない様になったんだ……。

 

「ハハッ、どうだ【未完の少年(リトル・ルーキー)】? お前のために俺らが用意した舞台(ステージ)は?」

 

 ベートさんとの稽古で嫌と言う程叩き込まれた空中で受け身を取り、着地した瞬間に再び武器を構えた。

 迂闊だった……頭に血が上りすぎて、ベートさんに教えられた事を忘れる所だった。

 

 —————テメエの目で見えるモノが全てじゃねえ。そもそも深層じゃ見えねえ敵はウジャウジャ居る、階層を打ち抜く奴さえも居る。だから目だけを信じるな、感覚を研ぎ澄ませ。それが出来たら上出来だ。

 

「ハッ!!」

 

 微かに聞こえる風を切る音、僕に向けた殺気、モルドさんの足音……。

 

《ガシッ》

 

 モルドさんの拳が今完全に僕の手の中に収まった。

 

「んな!?」

「捕まえた……」

「何故バレた!? クソっ!? この魔道具(マジックアイテム)は不良品か!?」

「殺気が隠し切れてない、そもそも足音が大きすぎる……なんでこんな大事な事を忘れちゃったんだろう……」

「何一人でブツブツ言ってんだよッ!!」

 

 今度はモルドさんが僕の腹に向けての蹴りを放った。

 今度もその足を捕まえて、その勢いを利用して彼を大きく投げた。

 

「ウワッ!?」

 

 転ばされた事により、モルドさんの姿が見える様になった。

 どうやら見えなくなったのは彼が装備した変な被り物のせいだ。

 

「……続けますか?」

「ア゛ァ゛!? ッたりめえだろ!!」

 

 僕らの戦いはまだ始まったばっかり。

 

 

 

 

 ☆

 

 

 

 

 クソっ! クソッ! クソッ! 

 なんなんだよコイツは!? 

 コイツは本当に二ヶ月前に冒険者成り立てのガキなのか!? 

 コレが才能の差なのか!? 

 俺のこの数年がこんなにも無意味かよ!? 

 

「クソクソクソクソクソッ!!!」

 

 なんでテメエがこんなにも早くこんな場所に来れるんだよ!? 

 なんでテメエが一瞬で現れて俺らを追い抜くんだよ!? 

 

「なんでテメエなんだよッ!!!」

「ッ!?」

 

 俺の攻撃の全てが受け流された、この数年で積んだ経験が無意味と感じた。

 

「俺だって!! 俺らだって!! 【猛者(おうじゃ)】や【勇者(ブレイバー)】みてえになりてぇんだよ!!」

「…………」

「なのにッ……出来なかったんだよッ!! 俺らにはテメエみたいな才能がねえんだよッ!!」

「……だったら!! だったらどうしてこんな事をしているのですか!? どうして弱い者を虐めるのですか!?」

「ッ!?」

 

未完の少年(リトル・ルーキー)】の攻撃が更に早くなった、そして徐々に俺が押されていた。

 

「どうして前を進む事を諦めたんですかァ!!」

「テメエには何がわかるんだよ!!」

「僕は弱いだからわかるッ!! あの人達がどれだけ努力したのかッ!! どれだけ危険な目に遭うのかッ!!」

「うるせえ!!」

「僕は!! 彼らと隣に立ちたい!! だからこんな所で止まらない!! 止まるわけにはいかない!! 僕は約束したんだから!!」

 

未完の少年(リトル・ルーキー)】が真っ直ぐな瞳で俺を見ていた……。

 途中で諦めて腐った俺とは違い……まだ見ぬ境地を目指して……。

 

《ドンッ!!》

 

 その音を最後に気づけば俺は18階層の天井を見上げた。

 

「俺の……負けだ……」

 

 なんでコイツは……こんなにも眩しいんだよ……。




ここまで読んで頂きありがとうございます。

書いている最中に思ったこと……モルドってこんな奴だっけ??
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