私が妖精になるのは絶対間違ってる   作:ZeroRain

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なんかアイデア湧いてこないですね……。


黒き悪夢

 ベルが居る場所に到着すると、ちょうど決闘が終わった所だった。

 

「俺の……負けだ……」

 

 地面に横たわった男はそういった。

 

「……僕の勝ちだね」

 

 凛々しい表情をしていたベルは彼に手を差し伸ばした。

 あれ? 君、本当にうちのベルなの? 

 

「……ケッ」

 

 そう吐き捨てながらも男はベルの手を取り、ゆっくりと立ち上がった。

 

「女神とエルフの居場所だったな……案内してやる……」

「ううん、大丈夫ですよ」

「ああ、ボクらは見ての通りここに居るさ」

 

 私がその声に反応するとベルを含めた冒険者達は一斉に此方に視線を向けた。

 

「神様! レフィ姉!」

 

 さっきまでの凛々しい顔がどこかへ消えたのやら、ベルはいつもの可愛らしいベルに戻った。

 ああ、アレはやっぱりうちのベルでした。

 

「ベル君、心配をかけてごめんよ!」

「ううん、神様達が無事なら大丈夫だから!」

「ベル君……」

 

 ニッコリと笑うベルと嬉しそうにベルを見つめたヘスティア様。

 

「はいはい、悪いんだけどそういうのは帰った後だよ? ……あなた達もそれでいいよね?」

 

 決闘場に集まっている冒険者達にそう質問した。

 彼らはお互いの顔を確認し、最終的に全員が頷いた。

 

「……ああ、お前らの勝ちだからこっちは文句言わねえよ」

 

 ベルに倒された男は居心地悪そうに此方を見ている。

 

「じゃあ、地上へ向けて帰ろうか?」

『おおー!!』

 

 ベルやヘスティア様を始めた私たちのパーティーメンバーが一斉に返事をした、勿論【タケミカヅチ・ファミリア】の方々も。

 

 けど私たちを見逃すつもりない連中も居た。

 

 

 

 

 ☆

 

 

 

 

 アア、そうだ……コレは……我が神の為にッ!! 

 

 

 

 

 ☆

 

 

 

 

「ッ!?」

 

 突然、悪寒に襲われた私は即座に全方位に感知魔法を張り巡らせた。

 

「まさか!? 足元ッ!?」

 

 私達の足元から一匹の食人花(ヴィオラス)が真っ白なローブの男を咥えながら現れた。

 

「全ては我が神の為にッ!!」

 

 白いローブの男はそう叫びながら自爆し始めた。

 

 爆風が私達を襲う前に私は全力で結界魔法を張った。

 

 —————『土霊の城壁(ノーム・カスティル)』×50を『圧縮《コンプレス》』!! 

 

 一方、ベルは即座にヘスティア様を庇う為に飛び出したのだった。

 

《ドガァアアアアアアンッ!!》

 

 結界を張る事に成功したお陰で私達は軽傷で済んだ。

 けれど……状況は決して甘くはなかった……。

 白いローブの狂人が自爆した後も食人花(ヴィオラス)は未だに大暴れをしていた。

 

《ガンガンガンガンッ!!》

 

「ま、またコイツかよ!?」

「本当にコイツは一体なんなんだ!?」

「桜花殿、他のみんなは無事です!」

「ベル様、ヘスティア様、大丈夫ですか!?」

 

 食人花(ヴィオラス)が周辺に大暴れして、周りが混沌と化した。

 周りに居た冒険者達は立ち向かう者もいれば逃げ惑う者もいた。

 けれど、一番の問題はそこでは無かった。

 

「ベル、ヘスティア様は!?」

「神様大丈夫ですか?」

「み、みんな……ご……ごめんよ……」

『!?』

 

 下界に降りて初めて命の危機を感じたヘスティア様が無意識に神威を解放しそうに……いや、その神威が少し溢れ出ていた……。

 

「まさか!? 天界に送還されるのですか!?」

「い、いや、コレぐらいは平気だよ……ただ……」

 

《ウォオオオオオオオオオオオオオン!!》

 

 一瞬とは言え、異物である女神の神威を感じたダンジョンが……異変を示した。

 

 18階層全体が震え出した、その天井にあった結晶が一斉に砕け散り、その砕け散った結晶から不気味と言うほど無数の目が此方を覗いたかの様な感覚を感じさせた。

 

《ヴォォォオオオオオオオンンッッ!!!》

 

 それから何度もその悲痛な叫び声が響き渡った。

 

「何が……起きたのでしょうか?」

 

 リリちゃんがやや震えた声で私に質問した。

 

「私も……さっぱり……」

 

《アオォォォオオオオオオオンッッ!!!》

 

「なんなんだよ……コレ……」

「知らん……こんなの聞いた事がない……」

 

 ヴェルフさんと桜花さんも同じ反応だった。

 

「命、私、怖いよ……」

「だ、大丈夫です、千草殿……一緒にいますから」

 

 命さんは震え出している千草さんを必死に抱きしめていて。他の【タケミカヅチ・ファミリア】の方々もまた同じ様に震えている。

 

「……どうやら遅かったの様ですね」

 

 そこに現れたのは覆面のエルフ……リューさんでした。

 

「リューさん!?」

「クラネルさん、ウィリディスさん、この状況はあんまりよろしくないのです、今すぐ撤退しましょう」

「えっ? でも……」

 

《ズドン!!》

 

 —————《ヴオォオオォォォオオオンッッ!!!》

 

 轟音と共に現れた怪物……真っ黒なゴライアスが雄叫びを挙げた。

 ダンジョンは明確な殺意を持って私達を排除しようとしている。

 

 

 

 

 ☆

 

 

 

 

 黒いゴライアスの出現は周りを混乱させた。

 本来、この階層では産まれるはずのない魔物(モンスター)がこの階層に突然と生まれていった、そしてそれもまさかの階層主の亜種だった。

 

「なんなんだよコレッ!?」

「ヒィイイイイイ!!」

「【ロキ】の連中は!?」

「アイツらはもう居ねえよ!!」

「た、助けてくれええ!!」

 

 パニックになっている冒険者達はちらほら見えている。

 それは当然と言える、亜種は基本的にその魔物(モンスター)の適性レベルから一つ上の立場にあると言われている。

 ゴライアスの適性レベルは【4】……つまり今この階層に現れた怪物の適性レベルは最低でも【5】の化け物である。

 

「お、おい、どうするんだ!?」

 

 焦りを隠せないヴェルフさんは此方に問い掛けた。

 

「即時撤退をお勧めします……」

 

 冷静に状況を分析したリューさんは撤退を勧めた。

 

「荷物は全部持って来てます! ですので、いつでも行けます!」

 

 リリちゃんはいつでも撤退出来ると報告した。

 

「みんな……ごめんよ……」

 

 申し訳なさそうに謝るヘスティア様。

 そもそも彼女は何も悪くないので別に謝る必要なんてない。

 

「……レフィ姉、退路の確保は出来そう?」

 

 ヘスティア様を支えているベルは私に確認して来た。

 

「……出来ると言いたい所だけど……そう甘くないみたいだね」

 

 黒いゴライアスの方を見るとちょうどその怪物が大きな岩を投げ出した瞬間だった。

 

 —————『土霊の城壁(ノーム・カスティル)』×20更に『圧縮(コンプレス)』ッ!! 

 

《ドォオオオオン!!》

 

 —————《オォォォオオオオオオオッッ!!》

 

 なんとか岩からみんなを守る事は出来たが、やっぱりと言うべきなのか、あの化け物の狙いはヘスティア様に間違いはない。

 

「アイツ、完全にこっちを狙いやがったなッ!?」

「狙いは俺らって訳か!」

「そ、そんなぁ……」

「だとすればこのままでは撤退が難しいかと……」

「ベル様、如何なさいますか!?」

 

 みんなが一斉にベルを見た。

 生憎今この場に用意された選択はゴライアスの攻撃を耐えながら17階層を目指すか、この目の前の化け物を倒すかのどっちかだ……。

 けどベルがどちらを選んでもみんなは従うのだろう。

 

「ベル……」

 

 ベルは、静かに周りを見渡す。




ここまで読んで頂きありがとうございます。

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