しばらくは不定期更新になりますがよろしくお願いします。
ベルが周りを見渡した後、ゆっくりと口を開けた。
「……リューさんとレフィ姉は他のみんなを連れて撤退して下さい」
リューさんを真っ直ぐに見つめながらベルは立ち上がる。
「あなたは一体なにを考えているのですか!?」
「ベル……」
「ごめんね、だけど僕は他の人達が完全に撤収終わるまでここに残る事にするよ」
ベルはそのままヘスティア様を隣に居たリリちゃんに任せた後、彼は私を見た。
「二人には悪いと思うけどみんなをよろしくね」
「ベルには悪いけど、そう言うのは認めないからね?」
「えぇー、レフィ姉だって自分の時は無理矢理通させた癖に……」
「ソレはソレ、コレはコレ」
「ウィルディスさんの言う通りです! あなたは我々と撤退するべきです!」
リューさんはベルの提案を全力で拒否した、他のみんなも彼女の意見に賛成の様だ。
「それも考えたけど、でも僕はやっぱり彼らを助けたいんだ、だって……僕が目指す“英雄”は彼らを見捨てたりなんてしないから……」
「ッ!!」
ベルの答えに面食らったリューさん。
でもまあそうだよね、ベルは昔からそんな子だったんだもんね。
「理由はベルらしいなんだけど、だからといって残るのは自殺行為だよ?」
「大丈夫、死ぬつもりなんてないから、そうでしょ?」
「はいそこ、人の台詞をパクるな」
「あははは……聞こえないなぁー」
「もう……」
「神様や他のみんなは二人に任せるとして……ヘルメス様達の事も心配なんだよね。さっきからずっと見てなかったし」
ポツリと呟いたベル。
けどそのベルの心配を裏切る様に先程の騒動の主犯である神は眷族達を連れてその姿を表した。
「いやぁーベル君、俺の心配は要らないさ、ほら見ての通り元気だろ?」
「ヘルメス様!? 今までどこに行ったのですか!?」
胡散臭い神、ヘルメス様の登場に驚いたベル。
「な〜に、ちょっとした野暮用さ…………それにしてもたった一瞬の弱々しい神威でバレるものなのか? ……おいおい、ウラノス……この話は聞いてないぞ……」
ベルの質問に対してかの神は戯けたかの様に笑ったがその後なにやらブツブツと呟いたのだ。
けれど—————。
「「ヘルメス(ヘルメス様)」」
私とヘスティア様が声を揃えながらヘルメス様の名を呼んだ。
「……ど、どうしたんだい、二人とも?」
「「地上に帰ったら覚えておけよ?」」
「い、いやぁ〜なんの話かなぁ〜」
ヘルメス様は目を泳がせながらそう惚けた。
「……レフィ君、ヘルメスの事は後でいい……これからの話をしなければ」
「はい、ヘスティア様」
「その事なんだけどさ、おそらくだけど17階層に上がる為の通路が完全に塞がれたんだと思う……」
ヘルメス様は申し訳なさそうにその事実を我々に伝えた。
『なっ!?』
みんなは一斉に声をあげた。
「ダンジョンはオレ達を逃がすつもりなんてないみたいだからね」
「そ、そんな」
誰かがそう呟いた。
「アレをなんとかしない限りオレ達には
「そうですか……」
ベルは少し考える素振りを見せた後、私の方を見た。
「……レフィ姉だったら塞がれた道を何とか出来たりはしないの?」
「う──ん……たぶん出来なくはないけど……時間が掛かるね、その間にあの変な奴が私を見逃してくれるとは思わないし?」
そう、あの変な
「おいおい、結局あのバケモノ達を先に何とかしないといけない……って事か?」
「うん、そういう事になるね」
ヴェルフさんが私にそう確認していた。
一方、我々がこの話をしている間に黒いゴライアスが雄叫びを挙げながら次々とありとあらゆる物を壊していった、
「時間があんまりないみたいだね……」
「どうするの?」
「……レフィ姉が道を何とかしている間、僕がアレらの注意を引けばいいかな?」
『!?』
「待ちなさいクラネルさん、あなたは一人でアレらと戦うつもりなのですか!?」
ベルの言葉にリューさんが反応した。
「どの道、僕は残るつもりだったから、それにその役は他のみんなにやらせる事は出来ないでしょ?」
「行けばあなたは死にます、それをわかってますか?」
遠くから次々と冒険者の叫び声が聞こえた。
「うん、わかってる……それでもやっぱり僕はやるよ……」
優しく笑いながらベルはそう答えた。
「……ならば非力ながら私があなたに手を貸しましょう」
「えっ!? リューさんが!?」
「私はあなたを地上に連れて帰るってシルに約束しましたから」
「……ありがとうございます」
ベルは嬉しそうにリューさんを見つめた。
「おいおい、俺らは守られているだけの存在じゃないんだぞ!」
「ええ、その通りです! リリ達も手伝います!」
するとヴェルフさんとリリちゃんが名乗りを上げた、この二人もこのまま撤退をしたくない様だ。
「ああ、このまま逃げるなんて冒険者じゃねえ!!」
「非力ながら我々もベル殿に手を貸します! そうですよね? 千草殿?」
「うん!」
「俺たちもだ!」
「ええ!」
「その通りだ!」
そして【タケミカヅチ・ファミリア】のメンバー達も同様に力を貸すと言った。
「やれやれ……彼らはベル君に感化され過ぎてないか?」
困った表情でみんなを見守っているヘスティア様はそう零した。
「さて、レフィ君。キミはどうするんだい?」
ヘスティア様の問いかけにみんなの視線が一斉に私に集まる。
「……中途半端に戦力を割るのは良くないので私もこのまま参戦します」
「レフィ姉!!」
「ウィリディスさん……」
私の答えに嬉しそうに笑うベルと呆れた顔を浮かべたリューさん。
正直、リューさんとアスフィさんを除いたらこの中で間違いなく一番高火力を叩き出せるのは私だもの。
その私が参戦せずに退路を一人でちまちまやるよりみんなで一斉にアレらを叩くのが最善の選択……だと思いたい。
なら参戦すると決まればやらないといけない事は一つある……。
「そうと決まれば、このヘルメスはリヴェラの冒険者達に協力要請しに行くよ。さて、みんな行こうか」
そう言ってヘルメス様は自分の眷族を連れて、リヴェラの街へ向かった。
恐らく彼方も戦闘の準備を進めている筈だから、共闘を持ち掛けるのがベストだろう……それにあの神が居ないのが一番好都合だもの。
感知魔法を巡らせて、私はヘルメスやその眷族達が離れているの確認した。
「ヘスティア様、お願いがあります」
「ん? なんだい?」
「この場で私の
☆
ベルを除いたメンバーは全員言葉を失った、ベルは何となく私が
一方、私の言葉に驚いた表情を浮かべたヘスティア様、だが彼女は直ぐに我に返った。
「……今ここでかい?」
「はい!」
「……確かにキミがレベル3に成れば大幅な戦力アップにはなるけれど、感覚を掴めるまで本領発揮は出来ないぞ? そのリスクを考えるならやっぱりやめた方がいい」
「……リスクも十分に分かっています、ですがここでやらないと私は絶対に後悔すると思います……」
「そうかい……わかったよ……」
「お願いします」
「ならば、女性陣はボクとレフィ君を誰にも見られないように囲んでくれ! 男性陣は絶対に覗くなよ!?」
ヘスティア様の指示にリリちゃんを始めた女の子達は私の周りに立っていた。
ベルやヴェルフさん達は背を向けて、待機している。
「……始めるよ?」
「……はい」
「本当はこう言うのテントでやりたい所なんだよね……」
「申し訳ないです……」
「別に怒っているわけじゃないんだ……」
スーッと背中に冷たい何かが落ちた感覚を覚えた、恐らくだけどヘスティア様の血なのだろう。
「……これはまた」
私のステイタスを見たヘスティア様はポツリとそう呟いた。
「そんなに酷いですか?」
「いい意味で酷いね……ボクの胃に穴が開くぐらいにね?」
「あ、あははは」
ヘスティア様は優しく私の背中をなぞった。
「……発展アビリティの希望はあるかい?」
「何がありますか?」
「以前から有った耐異常と魔導に加えて精癒に頑強……精癒はまあわかるよ? リヴェリア君と剣姫が持っているレアアビリティの一つ……徐々に
「……精癒で」
「こら!! ボクを無視するなぁ!!」
「精癒で……」
「ああ!! もう!! わかったよ!!」
頑強……十中八九、度重なる重症のせいで発現可能となった発展アビリティなんでしょうね……けど私なんかよりヴェルフさん辺りの方が役に立ちそうだよね。
魔導は相変わらず存在感が薄いからここは精癒で少しでも回転率を上げた方が私のスタイルに合う、それにリヴェリア様からも発現可能ならば迷い無く取れって言われたしね?
「…………これはまだ無しだね」
「へっ? 何か言いました?」
「……いや、なんでもないよ? さあ、終わったよ!」
何か誤魔化された様な気がするけれど、いまはそんな事よりあの黒いゴライアスと
私は脱いだ上着を着直して、ゆっくりと立ち上がる。
「レフィ様」
そのままリリちゃんから杖を受け取り、即座に全員に各『
「僕、レフィ姉そしてリューさんは遊撃メインで動くからヴェルフとリリは残っているスクロールを使い周りの援護をやって欲しい! 桜花さん達には神様を守る事を最優先で動いて欲しいけど怪我人へのサポートを頼みます!」
みんなを見渡した後、ベルは力強くそう言った。
『了解ッ!!』
私達もまたそのベルの声に応えた。
さあ、英雄譚の様にバケモノを討伐しましょうか!
☆
「おい、ベル」
「??」
ヴェルフさんが出発しようとしたベルに数本のナイフを手渡した。
「悪いが2本しかない、その内1本はもうガタガタだから期待するな」
「……じゃあ10分持つかわからないね」
「それでコイツだ」
「えぇ!? コレってリリのじゃないの!?」
「リリ助は最前線には出ないからお前が使えってさ」
ベルは思わず私の隣に立っているリリちゃんを見ていた。
見つめられたリリちゃんはただ小さく頷くだけ。
「……ありがたく使うよ」
「おう……」
「所で背中のソレは何?」
ヴェルフさんの背中には布に覆われた何かが有った、質問された彼はただ困ったそうに頭をかく。
「あーコレは……アレだ……万が一の保険だ……」
「そっか」
「ああ、もし必要な時が来れば……使うつもりだ……」
「わかった、ヴェルフを信じるよ」
「おう!」
そう言ってベルはゴライアスがいる方向に走り出した。
『轟け!
彼がそう唱えた瞬間、雷の如くベルの姿がもうそこに居なかった。
そしてリューさんはすぐさまベルを追う様に駆け出した。
「それじゃあ、私も行くね?」
「はいッ!」
「おうッ!」
「気をつけるんだよ!」
みんなに見送られながら、私は『浮遊』と『噴射』を同時に発動させた。
轟音と共に私は加速した。
ここまで読んで頂きありがとうございます。
ふっとオリジナルも書きたいなと思っていますが果たして二つ掛け持ちは安定するのだろうか?