私が妖精になるのは絶対間違ってる   作:ZeroRain

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思ったより進まない……。


妖精と火と……

 全速力で加速している中で私は精神の中にいるイフリートに問い掛けた。

 

「ねえ、このまま精霊との契約は可能?」

 

 ———少し時間が必要だが可能だ。

 

「じゃあ、このまま大地のと契約して欲しいの! 時間があんまりないから儀式は省略でお願い!」

 

 ———わかった、我に任せよう。

 

「うん、よろしくね?」

 

 食人花(ヴィオラス)が暴れている場所に着いた私は横目でゴライアスの方を見た、ゴライアスの周りにアスフィさんとリューさんが飛び回っているのも確認できた、恐らくあっちはもう戦闘が始まっているのだろう。

 

「私も頑張らないとね……」

 

 ポツリ呟いた後、私は目の前にいるバケモノに集中する事にした。

 目の前にいる食人花(ヴィオラス)は13階層で遭遇した時よりも一回り……いやそれ以上に大きかった。

 だが今回は以前とは違い、私自身がレベル3になっていた事は勿論だがここでは空中で逃げ回る事が出来るだけの空間がある。

 

「……あははは、お手柔らかに?」

 

《ギシャアアアアアアッッ!!》

 

 食人花(ヴィオラス)は地面から複数の触手を生やし、私を拘束しようとしている。

 私は更に加速に力を入れ、次々と襲い掛かる触手を『フレイム・ランス』で退治した。

 

「レベルが上がったせいなのかも知れないけど、威力が凄いね……」

 

『圧縮』無しで触手を倒せる程の威力がこんなにも容易く出す事が出来た、コレは昇格(ランクアップ)だけではなくステイタス更新の効果なのかも知れない……だからと言って、このバケモノを倒せる威力じゃないのが悔やまれる。

 

「……やっぱり『四大元素の渦(テトラ・ボルテックス)』並の威力じゃないと厳しいかぁ」

 

 だけど『四大元素の渦(テトラ・ボルテックス)』も簡単に撃てる魔法では無い、13階層の時と比べ物にならない触手の猛攻を避けながらあの魔法を作るのはあんまりにも厳しい……。

 

 13階層では地上で使ったので問題はなかったが冷静に考えて、『浮遊』『噴射』そして『 四大元素の渦(テトラ・ボルテックス)』の制御を同時にやる必要がある。

 どれもが繊細な調整が必要な魔法ばっかりで、失敗したら一直線であの世行きだ。

 

「……本当にままならない……ねッ!!」

 

 限界までに『圧縮』された『アース・ランス』を本体の方に撃ってみたが、効果はイマイチで大したダメージを与える事は出来ない様だ。

 

「……硬っ……ッ!?」

 

 すると違う方向から強烈な攻撃が私を襲う。

 即座に加速をした為傷なきに終えたが、攻撃が飛ぶ方向を覗くとそこには24階層に現れたローブの人物が居た。

 

「ここに来て……真打ち登場かな……」

 

 あんなのが相手とか勘弁して欲しいよねぇ……いや、本当、マジで。

 

 

 

 

 ☆

 

 

 

 

 精神力(マインド)の消費を抑えながらも一匹と一人? のバケモノと戦う羽目になった私なんですが、正直言って油断も隙もない相手に精神がゴリゴリ削られる。ただでさえ回避するに手一杯な私が逃げ回るしか出来なくなっている。

 

『ちょこまかと……』

 

 ローブの人物は何処となく凛とした声で呟いた。

 なんだろう……聞いた事ある様な……そんな声……。

 

《オォォオオオオオオオッッ!!》

 

 ん? ゴライアスの雄叫び? 

 その雄叫びが何故か徐々に私に近づいて来るの見てしまった。

 

「なんでっ!?」

 

 気づいた瞬間に真正面から強烈なパンチが私を襲った。

 

「ぐっ!?」

 

 即座に防御魔法を展開出来たものの、私はそのまま違う方向にぶっ飛ばされた。

 その勢いのまま身体が地面に叩き落とされた。

 

「ッッッ!!!」

 

 思わず自分の口から声にならない悲鳴をあげた。

 最低でもレベル5の拳をほぼモロに喰らった私は意識を手放しそうになったが根性で何とか耐える事が出来た。

 それにしてもモロに喰らったのによく生きてるね……。

 

 ———それは我のお陰だ、愛しい子よ。

 

「こ、この声は!? 大地の精霊!!」

 

 ———如何にも、我は大地の化身(ノーム)。これより汝と共に二人で戦おう。

 

 

 威厳に満ちた声で大地の精霊……ノームが名乗りを上げた。

 

「はい!! とっても頼もしいです!!」

 

 ———何が共に二人で戦おうだ! この泥人形! 我もいる事を忘れるなッ!! 

 

 ———なんだ居たのか。

 

「あっイフリート居たのね」

 

 ———貴様らァ!! 

 

 イフリートがギャギャと喚くが、ここは敢えて無視する事にした。

 

 そこで私は一つのアイデアに思い付いた。

 

「ねぇ、二人共……」

 

 ———なんだ? 

 ———おっ、我に頼み事か? 

 ———駄竜に頼みより我一人に任せた方が良かろう。

 ———うるせえぞ、この泥人形め!! 

 

「はいはい、静かに。以前イフリートが精霊を使って私の魔力を操った事あったよね?」

 

 ———ウムッ! 

 ———少しは反省しろ。

 

「そこで二人にはこれから私の魔力の制御を頼みたいの、主に『四大元素の渦(テトラ・ボルテックス)』の制御なのかも知れないけど」

 

 ———ほう、面白そうだなッ! けどなぁ、泥人形。

 ———ああ、だが、愛しい子よ。汝でなければあの4属性の魔法の制御は難しいぞ? 

 

「そうなの?」

 

 ———我々が制御を行う場合無条件で自分の属性が強化されてしまうんだ。

 ———故にあの魔法は汝自身が制御しなければならないのだ。

 

「……そっか」

 

 ———だがそれ以外なら可能だ。

 ———ああ、我が汝を守り、駄竜が汝の代わりに攻撃を繰り出す。

 

「その間に『四大元素の渦(テトラ・ボルテックス)』を構築して制御しろって事だね」

 

 ———その通りだ。

 

「そうするにはどうすればいい?」

 

 ———まずは我々が自由に使える魔力の領域を確保しろ。

 

「ど、どうやって?」

 

 ———そうだな、手取り早いのは高純度の魔力の塊を出すといい、我々はそこから介入する。

 

 言われた通りに高純度の魔力の塊を作った、すると白かった魔力の塊が徐々に紅くなり、そのまま私の周りに浮かんだ。

 

「こ、これは?」

 

 ———そこに駄竜……イフリートが介入している、もう一つを頼むぞ。

 

「う、うん!」

 

 もう一つの魔力の塊は優しい茶色に輝き。紅いのと同様に私の周りに浮かび始めた。

 

 ———あとは我々が汝の思考を読み、汝が必要とする魔法を使い分ける。

 

「魔力はその程度で大丈夫なの?」

 

 ———ああ、基本は自然の中にある魔力を使っているから問題はない。

 

「べ、便利だね」

 

 ———ウムッ、もっと我々を頼るといいぞ! 

 ———だが今回はぶっつけ本番の為精度には期待をするな

 

「うん、それでも十分です!」

 

 軽く深呼吸をして再び飛び立とうとすると。

 

「レフィ様!!」

 

 遠くからリリちゃんが私を呼ぶ声が聞こえる、姿を表したリリちゃんの手には恐らく回復(ヒール)スクロールが握られている。

 

「思ったより元気ですね……リリ達はすごく心配しましたよ?」

「うん、ごめんね?」

「そんなのは後でいいですから、今はとりあえず、回復(ヒール)!!」

 

 真っ白な炎がスクロールを燃やし、そしてそのまま優しい光が私の怪我を癒してくれた。

 

「あくまで応急処置ですから、無理をなさらないでくださいね?」

「わかってる、それじゃあベルの方もお願いね?」

「はい、任されました!」

 

 元気に笑うリリちゃんに見送られながら、私は再び駆け抜けた。

 

 

 

 

 ☆

 

 

 

 

 ボクは今にも自由に飛び回る己の眷族の一人の姿を見て、なんとも言えない気持ちだった。

 ボクの隣に立っている英雄好きのヘルメスは言わずともそりゃもう大騒ぎだった。

 彼は先程からベル君とレフィ君を交互に見ながら「素晴らしい素晴らしいよ!!」と高らかに笑った。

 

 けれどボクはやはりなんとも言えない気持ちだったんだ。

 理由は勿論知っている……彼女の……レフィ君の『神の恩恵(ファルナ)』に発現可能となった魔法のせいだと思う。

 

妖精の聖杯(フェアリー・グレイル)

 ・■跡の■法。

 ・■■を代償に■■を起■す。

 ・封印■式: 火・■・■・■

 ・詠唱術式: 【■界を見■る精霊達よ、我が■い、我が■■に■■■■、嘆きなど要らない、悲劇など望んでいない、我が■■はただ一つ、■■が溢れる喜劇、■に、故■、どうか■■■■を叶えて欲しい】

 

 発現前にも関わらず既に読む事が出来る異質な魔法、けどボクはこの魔法を発現させなかった……。

 もし彼女がこの魔法を使ったら、彼女の身には何が起きるのか……怖くて仕方がなかったんだ……。

 

 ねえ、レフィ君……キミはボク達を残して何処かに消えたりはしないよね?




ここまで読んで頂きありがとうございます。

強化に強化を重ねるスタイル……でも決して俺TUEにならない様に努力します。

あと息抜き(?)でオリジナル作品を書いてみましたが、二次創作とは違う難しさがあって中々面白いですね。

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