私が妖精になるのは絶対間違ってる   作:ZeroRain

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こんなにも戦闘を書いたのは久しぶりな気がする。


激突

 再び舞い上がる私は遠くに居た食人花(ヴィオラス)の居る場所まで全速力で向かった。

 だが先程とは違い、ゴライアスが乱入したせいか周辺には怪我していた他の冒険者達が複数人横たわった。

 そして———

 

《ギシャアアアッッ!!》

 

『……先からちょこまかとッ!』

 

 食人花(ヴィオラス)の上にいつの間にか居たローブの人物とそんな彼らとの戦闘を繰り広げたリューさんが居ました。

 

「イフリート、ノーム。行くよ?」

 

 ———ああッ! 

 ———承知した。

 

 私は『噴射』に寄る超加速を利用して、食人花(ヴィオラス)との距離を縮める事にした。

 

「ッ!! ウィリディスさん!?」

「このまま加勢します!!」

 

 私はそのままイフリートが制御した(オーブ)から展開された複数の『フレイム・ランス』とノームの(オーブ)から展開された常時防御魔法を駆使しながら、戦闘に加わった。

 

 二大精霊のお陰で牽制や自衛が出来た為、私はすぐ様に別の魔法を構築した。

 このままでは『四大元素の渦(テトラ・ボルテックス)』を放っても避けられる可能性が大いにある為、今は低消費高威力の魔法を利用しながら戦闘に集中する事にした。

 

『今一度、貴様らを叩き落としてそしてあのお方の前に献上するッ!!』

 

 何故か怒りに狂ったローブの人物は更なる猛烈な攻撃を繰り広げた。

 その次々と繰り出された攻撃を二人でいなしながら、少しでも相手との距離を縮めた。

 距離を縮められたローブの人物はそのまま大振りな攻撃で私達を無理矢理下がらせた。

 だがその隙を利用して———

 

「喰らいなさい! 『暴風の鉄槌ッ!!』」

 

『暴風の鉄槌』……高圧力の風に寄る超高速の打撃で無理矢理ローブの人物を食人花(ヴィオラス)の上から叩き落とした。

 

『貴様ァッ!!』

 

 ローブの人はこれとは言わんばかりに叫び出した。

 

 ———《ズドンッ!!》

 

 轟音と共に舞い上がる煙と木の破片。

 

「リューさん、私はあのローブの人を相手にしますッ!」

「一人で大丈夫なのですか!?」

「無理と判断したらすぐに撤退します! それに……私は一人じゃないからッ!」

 

 

 

 

 ☆

 

 

 

 

 私はすぐ様にローブの人物が落ちたであろう場所までに降りて来た。

 すると森の奥からゆっくりと現れたローブの人物……。

 

『……良くもやってくれたな』

 

 ローブのフードから見えたその顔は例え仮面に隠されてもわかる程怒りに震えていた。

 

「なんでそんなに私に拘るのかな?」

 

 怒りに震えたローブの人物に疑問を投げかけた。

 

『あのお方に気に入られた貴様だから……だッ!!』

 

 次の瞬間、ローブの人物は私の目の前まで距離を縮めて、その拳は私の腹部を狙っていた。

 ノームに寄る常時防衛魔法のお陰でなんともないが、それと引き換えにその魔法が砕け散った。

 

 ———チッ、やはりぶっつけ本番では強度は足りんな、復元までに少し時間をくれ。

 

 ノームがそう吐き捨てたが、私からすれば十分にありがたい。

 

『……防御類の魔法か、貴様は厄介な物ばっかり持っているな』

「……そりゃどうも」

 

 私とローブの人物が同時に動き出した。

 その人物は魔剣類の剣を振りかざし、その魔剣からかなり大きな火の球が私を襲った。

 

 ———「イフリートお願い!!」

 ———おう、任された!! 

 

 イフリートが制御している『フレイム・ランス』で繰り広げられた一閃で敵の魔法を切ったがそこにはローブの人物の姿は無かった。

 

 ———後ろだッ! 

 

「ッッ!!」

 

 ノームの警告ですぐ様に『噴射』に寄る加速で逃げる事に成功したが、それでもローブの人物は今の一瞬で私に確かなダメージを与える事に成功した。

 

『……チッ、浅いか』

 

 軽く殴られただけなのにこの威力って……。

 もしモロに喰らったらひとたまりも無いね……。

 こっちには回復手段を持っているからと言っても一撃で沈められたら意味がない。

 

 ———『回復(ヒール)

 

 回復魔法を即座に使用して、スーッと痛みが引いたの感じた。

 

『……回復まで出来るのか? ……貴様は一体何個魔法を持っているんだ?』

「さぁ? 数えた事がないですね」

『……厄介だが、貴様の精神力(マインド)を空にすればいいだけの話だ!』

「……出来る物ならやってみれば?」

 

 この人の言う通り、スキルと発展アビリティのお陰で膨大な精神力(マインド)を持ったとしてもそれは決して無限では無い。

 今だって、体感で3割ぐらいの精神力(マインド)リソースを消費したのだから。

 幸い精霊達の(オーブ)は自力で魔力発生出来る為、多少は楽になった。

 それでも13階層の時と同等の『四大元素の渦(テトラ・ボルテックス)』を撃つには最低でも5割以上の精神力(マインド)が必要な為、自由に使えるのは精々3割……。

 

 ———「かなりジリ貧だね」

 ———最悪の場合我々のリソースを使っても良いぞ。

 ———「そんなの出来るの!?」

 ———出来るが圧倒的に効率は悪いのだがな。

 ———ああ、だが無いよりはマシだ。

 ———「もしも必要な時はお願いします」

 ———任されよう。

 ———泥人形より我の方が上手いぞ? 

 ———汝は雑だから余計に回収率が低い。ここは我がやるべきだ。

 ———なんだと!? 

 

 何やら喧嘩をし始めている二大精霊なのだが、流石だけあって、喧嘩しても魔法は問題なく発動されている。

 それでもなお目の前にいるローブの人物が鬱陶しいそうに私を見つめた。

 

 私たちは再び同時に動き出した、純粋な身体能力(?)で戦うローブの人物に対して私は遠慮なく『上昇(ブースト)』山盛りバフで対処した。

 それでも身体能力とは別に埋まる事のない程大きな差があった、それは純粋な経験の差だ。

 目の前にいるこの人は何年も掛けてこの領域までたどり着いたに対して私は若干二ヶ月の経験しかない新人冒険者だ、魔法で身体能力の差を埋める事が出来てもこの差は決して埋まる事ない。

 

『……落ちろッ!!』

「くっ!! 『土霊の城壁(ノーム・カスティル)』ッ!!』

 

 拳が自分に叩き込まれる直前に無理矢理魔法を展開した。

 直接ダメージを喰らう事は無かったが、衝撃で私は反対方向に吹っ飛ばされた。

 

「グゥッ!!」

 

 ———させんッ! 

 

 イフリートが『浮遊』と『噴射』を駆使したお陰でなんとか受け身を取る事は出来たが、それでもあっちは私の受け身を待たずにすかさず追撃を行った。

 

 ———チッ!! 

 

 幸い、ノームに寄る防御魔法が既に復活しており、又もやクリーンヒットを免れる事は出来た。

 それと更に強度が上がったせいなのか、今の攻撃で魔法は砕け散る事は無かった。

 

 ———今回はかなり力技で強度を上げた。我々が地上に戻っていたら練習が必須だな。

 

 ノームの言葉には同意したい所だけど、目の前にいるこの人はそう簡単に諦めはしないのでしょうね……。

 

『先までの威勢はどうした?』

「……もう勝った気なのですか?」

『フッ、私の勝利は既に見えている』

「それはどうでしょうね?」

 

《ゴーンゴーンゴーンッッ!!》

 

 何処からとなく大きな鐘の音が鳴り響いた。

 これは知っている……これは弟の……ベルの最大の攻撃の合図だ。

 ならば、姉として、私も応えなければならない!! 

 

 ———「二人共、牽制と防御は完全に任せるよッ!」

 ———あの穢された妖精に特大のお見舞いする為に集中しろ。

 ———ああ、だが撃った後の事も考えろ。

 ———「うん、お願いねッ!!」

 

 何やら引っかかる言葉があったのだが、今はそんな事より魔法の構築に集中する必要があるんだから。

 

『ッ!! 何をするつもりだ!?』

「……さあね?」

『そんな物はさせんッ!!』

 

 凄まじい速度で私に襲い掛かるローブの人物。

 だが、その拳は私に届く事はなかった、何故ならノームが私の代わりに『浮遊』を駆使しながらその攻撃を避け続けたのだから。

 

 ———それはこっちの台詞だッ!! 

 

 そして避ける度にイフリートが次々と『フレイム・ランス』を放出し続けた。

 

『……厄介な奴ッ!』

「それはこっちの台詞です!!」

 

 魔法の制御や回避を全て精霊達に任せているので私はひたすらに魔法を重ね続けた。

 放出、固定、圧縮、制御、更にその上に放出、固定、圧縮、制御、更にそれを何度も重ねた。

 暴力の塊が少しずつ形を成した、徐々にその凶暴さや破壊力を蓄えながら大きくなった。

 鳴り響いた鐘の音の祝福に護られたかの様に、魔法は完成に近づいた。

 

『チッ!!』

 

 魔法が大きくなるに連れて、ローブの人物の動きが更に鋭さを増した。

 魔法が完成する前に私を落とす気満々の猛攻が休む暇を与えずに繰り出された。

 

「……グッ!?」

 

 その猛烈な攻撃はたとえ魔法に護られている私にもそれなりな衝撃を与える事が出来た。

 けど、その程度で魔法の構築を止める事なんてあり得ないし、そもそも止めるつもりも無い。

 冷静さや集中力を保ちながら私は衝撃を耐え続けた。

 そして、それは完成した。

 

『……クッ!』

 

 魔法が完成したと感じたローブの人物はすぐ様に撤退を開始した。

 レベル3? いや、もっと上なのかも知れないその脚力で全力で逃げ始めた。

 

「逃がさないッ!!」

 

 イフリートとノームが全力で加速に力を入れて、その人物に追う事にした。

 

 そして抜けた先には、全速力で駆け出したベルが今にもその手に握られた大きな黄金の大剣を振りかざす瞬間だった。

 

「ハァアアアアアアアアアッッ!!」

 

 純白な情熱と共に鳴り響いたベルの雄叫び。

 

 そして———。

 

 —————『混ざり合え! 世界の理を作り出す四大元素達よ!』

 

 全身全霊の魔法を奴に叩き込む。

 

 ———『四大元素の渦(テトラ・ボルテックス)ッッ!!』

 

『グッ!? グァァアアアアアッ!!』

 

 その色鮮やかな魔法がローブの人物を飲み込んだ。

 

 

 

 

 ☆

 

 

 

 

 それは純粋な暴力だった。

 その暴力が空中に渦巻き、周辺に一つの魔法からもたらした破壊の形を見せつけた。

 その魔法は以前レフィーヤが13階層に使用した時とは比べ物にならない程の破壊力を持って、周囲の冒険者を黙らせた。

 

「……あんなのがレベル2なんて……そんなのありえないですぅ……」

 

【ヘルメス•ファミリア】所属の小人族(パルゥム)の魔導士であるメリルは震えた声でそう呟いた。

 

「回復、防御、攻撃が出来る上に空まで飛べるって……んなもんありぁよ!」

「……弟の方も十分頭おかしいよ? なんであの黒いゴライアスを魔石ごと真っ二つに切れるのかな?」

「……そりゃ女王陛下に気に入られるわけだ」

 

 同じく【ヘルメス•ファミリア】所属の小人族(パルゥム)の双子やエルフの青年もまた言葉を失った。

 

「は……ははは……これは凄いや……ああ……ゼウス……全知全能の神よ! 貴方の孫達はこんなにも素晴らしいんだ!! これぞオレが求めた英雄の逸材だッ!! アスフィ、キミもそう思わないか!?」

 

 ヘルメスはこれぞと言わんばかりに大はしゃぎをしていた、【ヘスティア・ファミリア】所属の姉弟は彼の予想を遥かに超えていた。

 

 一方、アスフィは深いため息を吐いた。

 この戦闘が始まる前に女神ヘスティアとレフィーヤが言っていた言葉は恐らく彼女らは拉致の黒幕がヘルメスである事を既に気づいているから言っていた言葉だ。

 

「……魔道具(マジックアイテム)やお金を搾り取られそうですね……これは暫く金策する必要が出てきましたか」

 

 彼女は何度かわからないため息を吐いた。

 

 一方、一足先に食人花(ヴィオラス)を倒したリューは遠くから地上に降りたレフィーヤを見守っていた。

 

「クラネルさんもそうなのですが、あの魔法……純粋な威力ではレベル4……いえ、レベル5を匹敵するほどの威力を持っていたなんて……ヴィルディスさん、貴方はやはりビックリ箱の類です……」

 

 彼女はそのまま次々とみんなに抱きつかれた姉弟を嬉しそうに見守っていた。

 

 

 

 

 ☆

 

 

 

 

 ———都市(オラリオ)の何処か……。

 

 何故かレフィーヤの魔法を喰らっても無事なローブの人物。

 そんな彼女は今、とある神の前に跪いた。

 

『……申し訳ございません』

「いいや、お前はよくやったよ。ただあのエルフが我々の予想を遥かに超えていただけだ」

『次こそは……奴を貴方の前に引きづります……』

「いや、もうあの子を狙うのは辞めた方がいい、この段階に【勇者(ブレイバー)】達に気づかれたら面倒だからね」

『では、予定通りに計画を進めると?』

「ああ、そうだ。だからタナトス達にもそう伝えておいてくれ」

 

 神だけを残し、ローブの人物はそのまま部屋を後にした。

 一瞬だが、その姿が二つに見えるかの様にも思えた。

 

「……強力な魔法を持ったとしても計画の邪魔にはならん、なんせただのレベル2の小娘だ……もうすぐ……もうすぐだ……もうすぐで私の願いが叶うッ!!」

 

 神は一人で狂う様に笑っていた。




ここまで読んで頂きありがとうございます。

ローブの人物:
一体何ヴィスなんだ!?

神:
この男神は一体何者なんだッ!?

四大元素の渦(テトラ・ボルテックス)』:
更に強力になって帰ってきた。

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