あの18階層の激闘から数日が過ぎた。
その後はかなり大変だった、リヴェラの冒険者達は一斉にベルを胴上げをし始めたりとか、ヴェルフさんが使った“クロッゾの魔剣”を欲しがる者が居たりとか、そしてそのドサグサに紛れてリリちゃんにナンパするヒューマンの冒険者が居たりとか……でも何故か私が顔を出すとみんなが一斉に逃げ惑った……アイツらには私がナマハゲかナニカに見えたのかな?
そして現在、私はと言うと———。
「……はぁ」
「何を黄昏ているのですか?」
「なんで私はダンジョンに行く度ここにお世話になるのかなぁって……思ってるだけですよ」
「それは自業自得と言うものです」
今回もアミッドさんのお世話になっています。
何故って?
地上に着いた途端ぶっ倒れたからです。
アミッドさん曰く、倒れた理由は主に疲労のせいだった。
それを知ったみんなは強制的に私を休ませた。
ここで囚われた私とは違い、他のみんなはもう既にいつもの様にダンジョン攻略を再開していた。
そしてあの激闘を潜り抜けただけあって、各自のステイタスが大幅に伸びた。
先陣を切っているベルはあの戦いで【偉業】を成し、いつでもレベル3に成れる状態になった。だが本人自身はもう少しステイタスを伸ばしたいから
ヴェルフさんは漸くレベル2に成り、当初の予定通りに【鍛治】の発展アビリティを取得した。
そしてリリちゃんは———。
と思っていたら彼女がやって来ました。
「お見舞いに来ました……」
「うん、ありがとうね」
彼女もまた
だが即座に発展アビリティを決めたヴェルフさんとは違い、彼女は大いに悩んでいた。
彼女の発現可能な発展アビリティは思ったより多かった。
【調合】【耐異常】【怪力】【魔導】【射手】と5つもの発展アビリティが彼女の小さな背中に現れたのだ。
彼女のこれからの人生の為に、じっくり選んで欲しいとヘスティア様が言っていた。
「……レフィ様」
「なに?」
「リリはどれを選んだ方が良いのでしょうか?」
「何度も同じ事を言うけれど、それはリリちゃん自身が決めないといけないんだよ?」
「……ですが、リリでは……決めれません……」
そう言ってリリは俯いた。
「だからと言って私が決めて良い事じゃないんだよ? これはリリちゃんの一生の話だからね」
「……皆さんと冒険を続けるには、【耐異常】が一番なのですが……
「そうだろうね……」
「【調合】だってそうです」
「選択の幅が広いと難しいね」
「……はい」
あの日から彼女はずっとこうだった、迷いに迷って、自分の目指すべき道を探し続けた。
そして私とベルは彼女がどれを選んでも受け入れるつもりでいた。
その後、軽く相談や雑談をした後に、彼女は病室を後にした。
その顔は未だに迷いの色を見せたが、それでもゆっくりと彼女は“なりたい自分”に近づいて行くのです。
☆
リリちゃんを見送った後、私は窓の外に視線を移す。
何処となく変わらない日々、何処となく変わらない
「また黄昏ていますね」
アミッドさんが薬を持ってやって来た。
「あ、あははは」
「貴女もあの
「…………」
問い掛けられた質問に答えられなかった。
「明日は退院なのに、そのままだとまた怪我をしますよ?」
「……そう……だよね」
私が迷った理由の一つは、それはヘスティア様から告げられた新しい魔法の事だった。
———「紛れもなく強力な魔法ではあるけれど、同時に危険極まりない魔法とボクは見ている」
ヘスティア様が危険と判断しているから今はあの魔法を発現しないまま放置してある。
発現してもいないのにも関わらず効果が既にわかるのはどうやらイフリート達に寄る交渉のせいの様だ。
———アレは汝の魔法であっても汝の魔法ではない。
———
イフリートとノームはそう言った、つまりアレは本来お姉ちゃんの魔法で私の魔法ではないと……見て良いらしい。
もうあの人がなんなのかよくわからなくなったよ……。
そして私が主に黄昏れる理由のもう一つの理由は——————。
➖➖➖➖➖➖➖➖➖
レフィーヤ・ウィリディス
レベル2 → レベル3
力 D 502 → I 0
耐久 B 745 → I 0
器用 B 765 → I 0
敏捷 D 572 → I 0
魔力 SSS 3271 → I 0
発展アビリティ
神秘: H → F
精癒: I
魔法
「
・可能性の魔法
・効果は発動時のイメージ依存」
スキル
「
・魔法効果にプラス補正
・魔力消費軽減
・状態異常無効」
「
・魔力アビリティに成長補正極
・
「
・魔法効果増幅
・実行した全ての魔法に強化補正倍加
「
・魔法術式開発、解読及び刻印能力。
➖➖➖➖➖➖➖➖➖
いや……もう……だいたいこれのせいだよ?
このステイタスを見たらさもう歩く魔導砲って言われても文句言えないし……その上に新しいスキルも訳わからないし……。
「ハァ……」
「とりあえずお薬と水はここに置いておきます、では……」
「あっ、ありがとう」
アミッドさんはやや呆れた顔で私を見ていたが、敢えてスルーしました。
いや……まあ……みんなを助ける為に必要な事ではあるけれど、流石に一ヶ月弱でこれはない……無いったら無い!
厄介ネタが増える一方だよ……。
ヘルメス様とアスフィさんには今回の罰金の全額を支払って貰った上に
どれもが高級品ばっかりを選んだので一部へファイストス様の所に売りました、そしてその売った金額の殆どが借金の返済に使った。
命さん……いや、命ちゃんは千草ちゃんと一緒にほぼ毎日ウチに来ているらしい。
18階層からの帰り道にあんな事が起きているのにも関わらず風呂好きがブレない様です。
そんなこんなもあって、平和な日常が戻って来たって実感が湧いて来ました。
「……でもやっぱり暇だなぁ……
「何馬鹿な事言っているんだキミは」
一人で愚痴っていたら、ヘスティア様が果物を持ってやって来た。
「あーいえ……ちょっと本心が……」
「キミは本当にいつもそうだね」
「え、えへへへ」
呆れた顔でせっせと林檎を剥いてくれたヘスティア様。
「さっきリリ君と会ったけど、なんか話してたのかい? ほら、あ──ん」
「あ──ん……アビリティの話ですよ」
「なるほどねぇ……ベル君にも同じ相談をしまくっているみたいだし、やっぱりまだ決まりそうに無いね、はい、あ──ん」
「ふぁい」
やっぱりベルにも相談しているんだね……でもそれはそれで良いと思っている。
あっ、それと……林檎美味しいです。
☆
一通り果物を食べ終わると、ヘスティア様は話し始めた。
「とりあえず予定通り明日に退院出来そうで安心したよ」
「ご迷惑をお掛けしました……」
「何を言ってるんだい? ボクらは家族だろ? だから普通に甘えてもいいんだ」
「……う、うん」
もう慣れた筈なのに何故か真正面から言われるとむず痒く感じてしまう。
「……そ、そう言えば、お祭りはもうすぐでしたね!」
あんまりの恥ずかしさに耐え切れずに思わず話題を逸らした。
「……キミも意外とそう言う話題に弱いんだね」
「うっ……」
「まあ、いいよ。それでその祭りと言うのは“神月祭”とやらの事かい?」
「はい、そのお祭りです!」
ヘスティア様は窓際の方に移動し、外の様子を覗いた。
外には色々召し物や準備に取り掛かる人が何人か居ました。
「まあ、ここ最近降りたばっかりのボクはその祭りについて詳しくはないんだけどね」
「私も噂程度にしか聞いた事ないですけどね」
「ならボクよりは知っているんだね!」
「誤差じゃないですかぁ」
「いやいや、その誤差は大事だよ!」
そこからはと二人で笑い合いながら時間を過ごした。
”神月祭“とは神達が下界に降りる前から有った古い祭りの事だ、かつての古代の民は月を神と見立てて、祈りを捧げ続けたのが由来らしい。
その祭りが
例え“本物の神”が目の前に居るだとしてもこの祭りは毎年例外なく開催されるからね。
「ハァ……笑った笑った!」
「ふふっ、そうですね」
「あ、そうだ。祭り当日は休み取れたからみんなで周りに行こうよ!」
「お祭りは稼ぎ時なのに本当に大丈夫ですか?」
「キミ達と過ごした方が大事だから大丈夫に決まっているよ」
ヘスティア様は親指を立てながらニカっと笑う。
「嬉しいです」
「いやぁー、当日が楽しみだね」
「ですね」
私達は夕焼けの光が差し込む病室の中で穏やかに過ごすのでした———。
「レフィたん! お見舞いに来たで!!」
「お前はもう少し声を下げれないのか?」
「ママは厳しいー」
と言うわけでも無いようです。
その後は続々とやってくる客人達に振り回されながら私は休日の時間を過ごしたのでした。
☆
その遺跡の中に、次々と悲鳴が鳴り響いた。
「アルテミス様! どうかお逃げ下さい!」
「いいえ! みんなを残して逃げる事なんて出来ません!」
「我が儘な事を言わないで下さい!」
理不尽に尊い命が奪われていた。
「ですが私は!」
「アルテミス様、お願いですから!!」
「クッ!!」
女神アルテミスが悔しい表情でこの場から離れているの確認すると、私は自分を守っている扉に視線を移す。
今こうしている内に仲間が一人ずつ失われていくのを嫌でも感じた。
それから暫くすると最後の扉が破壊され、漆黒の化物がその姿を表した。
「アンタレス……グッ!? あぁああああッ!!」
その長い脚でアンタレスと呼ばれて居た化物は最後の一人である自分の腹を貫いた。
「フッ……私がただで死ぬと思う……なッ!!」
最期の気力を使い、手に持った武器で渾身の一撃を放った。
その一撃がアンタレスの目を貫いた。
目を奪われたアンタレスは悲鳴を上げながら私を壁際に叩きつけた。
「く……くくく……はははッ!! みんな……少しは時間稼いでた……ぞ……」
薄れた記憶の中で……私は見た……純白な英雄が私の女神を救うその姿を……。
☆
必死に逃げている女神は最後の眷族に与えた恩恵が失われたのを嫌でも理解した。
「みんな……ごめんなさい……ごめんなさい……」
それでも彼女は足を止めない、それが己の眷族から彼女に託された最期の願いなのだから。
そして彼女のその手には白銀の槍が確かに握られていた。
☆
化物は痛みに悶えて、大暴れしていた。
狙った
怒り狂った化物は少しずつ再生している目の回復を待つ。
そして今度こそ、あの
ここまで読んで頂きありがとうございます。
矛盾だらけかも知れないけれどこの虫さんはまだ女神取り込んでいないのです。
そして最後の見せ場を見せてくれる【アルテミス】の皆さん……期待している皆さんには申し訳ないけれどこの子達が救われる未来がないんです……。
そしてこれからこの話を書き終えるまでダンまち映画マラソンですよ!
あっ、スキルは某劣等生とは関係ないです。