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「さあ、勇気ある男達よ! 今こそ楽園に至る時だ!」
夜になるとヘルメス様が急に演説をし始めた。
嫌な予感を感じた僕はコッソリとその場から離れた。
「この森の向こうに、俺達が求めていた楽園がある!」
『オオォッ!!』
一体何言ってるんですか!? その森の向こう側にはリリ達が入浴して居る川しかないんだから!!
「あの楽園には果てし無い夢と希望がある!」
『ウォオオ!!』
「お前達は王家が誇る姫君の身体は見たいかッッ!!」
『見たいッ!』
やっぱヘルメス様達は覗く気満々だ!?
「お前達は母性に溢れるネリーの生まれたままの姿は見たいかッ!!」
『見たい!』
母性が溢れるネリーさんと話すとお母さんが居たらこんな感じだろうなぁって思っちゃうんだよね……って違う!?
「タバサの魅惑なボディを見たいか!!」
『見たいッ!』
「お前達はルルネの裸はみたいかッ!?」
「ルルネはちょっと……」「身体が貧相過ぎる……」「ルルネだったらパスだわー」「なんか急にやる気が無くなったー」
ルルネさんは泣いていいと思うんだ。
「だったらメリルの未熟なボディが見たいかッ!?」
『流石にそれはちょっと……』「見たいッ
ッ!!」
『…………』
…………。
「ファルガー、ソイツを木に縛っておけ」
「ハッ!!」
「ま、待ってくれ!? ご、誤解だ!」
そのままヤバい人はファルガーさんに連行された。
あの人は今後絶対、リリに近づかせないようにしなきゃ。
「……コホンッ、では気を取り直して」
『はい!』
あっ、仕切り直すんだ……。
「……だがそれらは前菜に過ぎないッ!」
『ゴクリッ』
「オリュンポスが誇る処女神の一柱……アルテミスの布を纏わぬ姿をこの目に焼き付ける……それこそは我々の真の目的だッッ!!」
『ウォオッッ!!』
「さあ! 共にヴァルハラを目指そうじゃないか!」
『ウォォオオッ!!』
…………。
よし、忘れよう!
これから彼らが地獄を見ていても僕は知らない! うん、そうしよう!
「うわぁああああッッ!!」
あっ……ヴェルフが巻き込まれた。
本当に……ごめん。
☆
ヘルメス様達が行った集団覗きに巻き込まれない様に、僕は暫く森の中で彷徨った。
「あっ、開けた場所だ!」
森から開けた場所へ移動すると、そこには美しい泉が有った。
「……綺麗」
その泉の水面には夜空が綺麗に映っていた。
「こういうのは見ると村の近くにあった湖を思い出すなぁ……」
よくお爺ちゃんが僕とレフィ姉を連れて行った湖を思い出す。
あの湖にもこの様に大きな月や星空が映ったり青髪の女性が水浴びして居る姿が見れたりする……うん?
「何者だッ!」
違和感を気づいた瞬間、僕の顔ギリギリな所に一本の矢が通り過ぎて行った。
「ヒィイィィイイ!?!?」
「手を上げたまま顔を背けろ! 一瞬でも此方を見るとその瞬間から命はないと思えッ!」
次に聞こえたのは激怒していたアルテミス様の声だった。
「ムッ!? お前は……ベル?」
「すみません! すみません! わざとじゃないんです! 本当なんです! 信じてください!」
「なら何故お前は此処に?」
「さ、散歩していたらたまたま此処に来ただけなんです!!」
僕は必死に弁明をした。
「今回は事故だったから大目に見よう。だがもしまた覗いたら次はない」
「は、はい! ありがとうございます!」
———シュッ!
するともう一本矢がちょうど僕の前に落ちていた。
その矢には一枚の布が巻かれていた。
「だがちょうどよかった、私はお前と一度ゆっくりと話したかった。すまないが暫くの間はその布で目を隠し、この私と話さないか?」
背を向けたままなのでアルテミス様がどんな表情をしているか、僕にはわからない。
だがその声には先ほどの様な覇気は無かった。
まるでアルテミス様自身が迷っている様だ。
「僕と……ですか?」
「嫌なら、いいんだ」
その声は悲しそうな声だった。
その声を聞いた僕は一回深呼吸をして、矢に巻かれた布で目を隠した。
「……僕で良ければ」
☆
意識が覚醒すると暖かい何かが私を包み込んでいた。
だがいくら頑張っても目を開ける事は出来なかった。
私の身体に何が起きたって言うの?
———「ごめんね、私のせいでこんなに大怪我しちゃって……」
聞こえたのは間違いない、お姉ちゃんと名乗った怪しい人の声だった。
———「怪しい人じゃなくてお姉ちゃんだってば」
うん、ごめん……ただの冗談だから……って!? なんで私の思考が読めるの!?
———「会話を円滑に進めるための必要な処置だから気にしないで」
いや、普通は気にするでしょ!?
って言うか当分会えないって言ってたよねッ!?
———「細かい事を気にし過ぎると良くないよ?」
いやいや、全然細かい事じゃないでしょ!?
って言うかそもそもここどこ!?
目が開けられないですけど!?
———「うんうん、元気にはなったっと」
ハァ……もういいです……とりあえず状況の説明をして下さい。
———「貴女はどこまで覚えてる?」
えっと……何かで肩が貫かれて、その後は急に魔法が上手く使え無くなって、その上に身体の奥底から痛みが湧いて来た所までです。
———「その理由は精霊の最上級の魔法のせいだね」
なる……ほど?
———「その魔法はかつて魔導士殺しって言われてね、とっても強力な呪いの効果を持っているの」
のろい?
———「本来は一度喰らったら二度と魔法が使えない身体になる筈だけど、まあ貴女だからそこまで大事にはならなかったって所ね」
ま、待って!
———「うん、どうしたの?」
私の無効化スキルは!?
それがあれば呪いなんて効く筈ないじゃないですか!?
———「それが今回私が謝りたい事なの……貴女が呪い受けたのは私のせいなのよ」
へっ?
———「13階層の時の事覚えてる?」
はい、覚えています。
お姉ちゃんが私を守ってくれましたってイフリート達から聞きました。
そのせいで力を使い過ぎたってのも言ってました。
———「うん、まあ大体それで合ってる」
それが?
———「予定ではね、力が戻るまでにずっと寝てるつもりだったのよ、まあ……”何故か“貴女のスキル“寵愛”のリソースが私に振り分けられちゃってね。まあそのお陰で今こうやって貴女と話せる状態まで回復して居るってわけだけど」
……そんな事ってありえるんですか?
———「……本来は有り得ないね」
……お姉ちゃんって何か隠してますよね?
———「そりゃもう!」
隠している事を隠す気ないよこの人!?
———「私の秘密は……まあ直にわかるでしょ。今は貴女の回復が最優先よ!」
そんな簡単に治るモノじゃないって自分で言ったのに?
———「いやいや、貴女の中にいる過保護な連中がそんな呪いを許すわけ無いでしょ? 彼らは総員で解呪を進めてるのよ」
……何それ怖い。
———「まあここに居る貴女だって魂の治療を行われてる最中なのよ。それと今後はこの様な事が起きない様に調整を行う予定だから、もうスキルの不備は心配しなくて良いからね」
スキルってそんな簡単に弄れるものなのかなぁ……。
———「……彼ら全員の力があればそれぐらいは余裕じゃ無いかな?」
……そっか。
———「なんか他に気になる事はある? と言っても貴女がここで意識を保てる時間はそんなにないけど」
本当は、精霊達の事や貴女の事や……そして私自身の事が聞きたいけど……。
今、私が聞きたいのはアンタレス討伐戦までに回復は間に合いますか?
———「……ふふっ」
なんですか?
———「なんでもないよ? それで回復が間に合うかについてだね? ハッキリ言って間に合う……ただ間に合ったとしても戦力になれるとは言えない状態」
じゃあ、私がサポートに回ったらアンタレスは倒せますか?
———「……あの“矢”があれば倒せるよ」
“それだけ”はダメです。
———「それじゃあ勝率は1割未満になるね」
……0じゃないですね。
———「まあ負ける事はないだろうけど……十中八九女神アルテミスは“矢”を強制発動させるのでしょう。もしそれが起きたら、貴女が求めた“喜劇”は達成できないね」
……じゃあ私が無理に動けばいいですよね?
———「……もっといい方法があるよ?」
えっ!?
———「私が出ればいい」
は……い?
ここまで読んで頂きありがとうございます。