私が妖精になるのは絶対間違ってる   作:ZeroRain

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今回も短いです。
何度書き直しても同じ流れになってしまう為、これで納得する事にしました。

不愉快になる方がいるかも知れないので先に謝ります。
ごめんなさい……。


月の女神と一匹の兎

 アルテミス様の言われるがままに、ベルは歩き出した。

 

「今のお前の前に岩がある、そこで座るといい」

 

 そう告げられたベルはそのまま目の前にあった岩の上に座った。

 

「……お前って奴は」

 

 ベルの行動の何処かに納得いかない所がある様で、突然とアルテミスが呆れた声でそう言った。

 

「ど、どうしましたか?」

「何故私の指示を疑わない?」

「えっと?」

「もし、万が一私が偽物の場合。お前は確実に死んだぞ?」

「ご、ごめんなさい……」

 

 しょんぼりした表情のまま謝ったベルを見て女神は思わずため息を吐いた。

 

「少しは人を疑う事を覚えろ」

「……うぅ」

「この世の中にはどうする事も出来ない悪がある事を覚えておけ」

「……はい」

 

 アルテミスに指摘されたベルは明らかに落ち込んでいた。

 それを見た彼女は困った顔で言葉を続けた。

 

「だが、それはお前のいい所でもある」

「———え?」

「だから……見極めろ、これから先にきっとそれが必要になる」

「ッ!!」

 

 そう言われた途端、ベルは息を呑み込んだ。

 

「……見極めろ」

 

 ベルの呟きを聞いて、アルテミスは満足そうに笑った。

 

「そうだ……これからそれを心掛けるべきだ」

 

 その言葉を聞いてベルは小さく頷いた。

 

「……じゃあ僕自身は一つ聞きたい事があるのですがよろしいですか?」

「なんだ?」

 

 優しい風が月の光に照らされた女神の髪をなびかせた。

 

「———どうすれば僕達はアルテミス様の怒りを鎮める事が出来るのですか?」

 

 ———ゾワッ

 

 すると次の瞬間、ベルは目の前に居る超越存在から凄まじい殺気を感じた。

 

「ッッ!?」

 

 その殺気に晒されたベルはある事に気づいた。

 アルテミスはただ殺気を飛ばすだけではなく微力ながらも彼女は神威を解放している事に。

 

「……それはお前に関係ない話だ」

 

 そんな言葉がアルテミスの口から放たれた。

 そう言った後、彼女はゆっくりとベルから距離を取った。

 

「……か、関係あります!!」

 

 ベルは滝の様な汗を流しながらも震えた声でアルテミスに向かって叫んだ。

 

「……」

 

 不愉快そうにベルを睨んだアルテミス。

 

「か、神様にとって……ヘスティア様にとってアルテミス様は掛け替えのない神友です! そんなアルテミス様に何かがあったらヘスティア様がきっと悲しみます! そんな悲しい事が絶対に嫌です!」

「私の事を知った風に話すなッ!」

 

 苛立ちを隠せないアルテミスは更に神威を強めた。

 

「ッ!?」

 

 その神威を晒されたベルは思わず膝をついた。

 だがそれでも彼は震えた身体を抑えながらも立ち上がろうとしていた。

 

「お前には眷族(かぞく)を失った私の気持ちなどわかるか? ……わからないだろッッ!?」

「……!」

「楽しそうなやりとりをしているお前たちを見ている私の苦しみは……お前は理解出来るか!?」

「……グッ」

 

 アルテミスが放った神威が更に増していく。

 

「……わ、わかりません」

「……何?」

「た、確かに僕はアルテミス様の気持ちは理解出来ません」

「だったらッ!」

「で、でもアルテミス様だって……僕たちの気持ちはわからないじゃないですか!?」

 

 震えた足を抑えながらベルは立ち上がる。

 

「……黙れ」

「アルテミス様の眷族達だってこんな貴女を見たくない筈です!」

「黙れッ!」

 

 怒りに呑まれたアルテミスはそのままベルを押し倒した。

 その過程でベルの目を隠した布が解かれた。

 

「アンタレスを殺す為ならこの身はどうなってもいい!! 私が下界に残る意味など最早それしかないッッ!!」

 

 女神の悲痛の叫びが響き渡る。

 それを見た少年はただ悲しそうな顔を浮かべるだけだった。

 

「……貴女の眷族はそれを望んでいたのですか?」

「黙れッ!!」

「……貴女は彼女達の願いを否定するつもり何ですか?」

「その口を閉じろッッ!!」

「貴女に生きて欲しいと願う彼女達の犠牲を無駄にするつもりですか!?」

「……クッ」

 

 己の眷族の事を持ち出されると徐々にアルテミスの神威が弱まった。

 

「……僕はアンタレスを倒します。ですが……僕はあの“槍”を使うつもりはないです……あんな武器なんて僕はごめんです!」

「……どうやってあの“槍”の正体に気づいた? ……いや、愚問だったな」

 

 アルテミスの脳裏には一人の少女の顔が浮かんだ。

 今現在、呪いと戦っているエルフの少女の顔だ。

 

「……はい、レフィ姉が言ってました……あの“槍”の正体の事を……」

「…………」

「アルテミス様はそこまでしてアンタレスに復讐したいのですか?」

「……ああ」

「……例え“槍”が放たれた瞬間に自分自身が死んでもですか?」

「……その通りだ」

 

 ベルが見たアルテミスの瞳にはその全てを受け入れる覚悟が写っていた。




ここまで読んで頂きありがとうございます。
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