『アーテ』……それは彼女の名前、彼女はヘスティア、ヘファイストス、アルテミスをはじめたオリュンポスの神々とは同郷の女神の一人。
大理石の様な真っ白な肌に背中が隠れる程美しく長い黒い髪、そして宝石の様に輝く紫の瞳を持つそんな彼女は美の化身であるフレイヤやイシュタルにも負けない程の美しい容姿に備わっていた。
だがそんな女神の性格は一筋縄にはいかなかった、何故ならそんな美しい女神の本性は———
『狂気』に満ちていたからだ。
☆
ヘルメスの問い掛けを聞いたアーテはクスクスと楽しそうに笑っていた。
「ふふっ、ヘルメスもヘスティアみたいに変な事を聞くのね、貴方もそう思わない?」
アーテは『神』を引き摺っていたローブの人物にそう問い掛けたがその人物は彼女の質問に答える事なく、ゆっくりとアンタレスに近づく。
「ムッ……無視されちゃった……」
無視されたアーテは不満な表情を浮かべながら頬を膨らませた。
「いいから答えろ! 貴様はその神に何をするつもりだ!?」
そんな態度を見せたアーテに怒鳴ったアルテミス、それを聞いたアーテは笑顔を浮かべた。
「ふふん、アイツはね……
楽しそうに語ったアーテの横目にローブの人物は『神』をアンタレスの口の中に放り投げた。
『ッッ!?』
狂信者達と戦っていたベル達は言葉を失った。
「止めるんだ、アーテッ!!」
それを遠くから見たヘスティアは思い切り叫けんだ。
アルテミスは弓矢で止めようとしたが、彼女が放った矢は狂信者の一人に叩き落とされたのだ。
そして、アンタレスは放り投げられたその『神』を躊躇なく『喰った』のだ。
「さあ、アンタレス。ヘスティア達との遊びを続きましょう」
無邪気な子供の様に彼女は楽しそうに笑ったのだ。
☆
突然と現れた
嫌でもわかる……
そしてそんな神様を『喰べた』アンタレスからは今までとは比べ物にならない程の威圧が一気に溢れ出た。
「……嘘……でしょ」
すると———。
———キィィイインッッ!
そんな音と共に僕は右腕に違和感を覚えた。
「え?」
右腕に視線を移すと、焼けた後の血の臭いともに僕の腕がポトっと地面に落ちた。
「へ?」
何が起きたかを理解出来ない僕に凄まじい激痛が襲った。
「クッッ!?」
「ベル!?」
「ベル様!?」
「クラネルさん!?」
一瞬の出来事に驚くヴェルフ達はすぐ僕に駆け寄ろうとした、だがあの嫌な音が再び聞こえていた。
———キィィイインッ!
今度は音の正体がハッキリと見えていた。
音の正体はアンタレスの尻尾から放たれたあの熱線だった、それが再び僕らを襲ったのだ。
「アァァッ!!」
僕は僅かに残った体力を振り絞って身体を無理矢理動かした結果、どうにか攻撃から逃れることに成功したが……。
「メリル君、しっかりするんだ!!」
背後からはそんな神様の叫び声が聞こえていた。
痛みを耐えながら振り向くとそこには両足を失ったメリルさんの姿が居た。
☆
アルテミスは目の前に倒れている
「……何故……私を庇った」
アルテミスの問い掛けに少女はただニッコリと笑うだけだった。
あの攻撃に襲われた時、この少女は咄嗟にアルテミスの身代わりになったのだ。
「メリル!? 『
倒れたメリルを見て、ネリーは万が一の為に渡されたスクロールを即座に発動させた。
「このポーションを飲むんだ、メリル君!」
ヘスティアはメリルにエリクサーを飲ませようとしたが、彼女はそれを拒んだ。
だが彼女の主神であるヘルメスは無理矢理そのポーションを彼女の口に突っ込んだ。
エリクサーを飲み干し、メリルの顔色が少し良くなったを確認した一同に———。
「……何故……私なんかを」
アルテミスの呟きは届かなかった。
ここまで読んで頂きありがとうございます。
アーテ(アーテー):
彼女を登場をさせるのは別に深い意味はない、本作を書く為にギリシャ神話を調べていたら。破滅、愚行、妄想、不善の神格化である彼女が偶々目に入っただけなんです。
そういえばまったく関係ない話なんですが。
女神アーテーがディオニュソスの恋人を唆して、そしてその結果その恋人が死んだと言う話があります。
ちなみにこの恋人は男です、さすがギリシャ神話!
あとアーテーにアイデアを与えたのはヘラ様です、流石ヘラ様!