時は少し遡る
———「私が出ればいい」
「は……い?」
一瞬、
———「だ・か・ら、私が出て、あのアンタレスって言うヤツを倒すって言うの」
「そんなの出来るって言うのですか!?」
———「出来るけど出来ない」
彼女の主張に思わず言葉を失った。
どう言う!? そこはハッキリして欲しい所なんですけど!?
———「膨大な魔力が有れば出来る……」
魔力だったら私の魔力で代用すればいいよね!?
「で、でしたら私の魔力でお願いします!」
———「……ごめんね? ”それぽっち“じゃ何も出来ない……」
「……へ?」
えっ!? ”それぽっち“!?
私は結構魔力に自信があるのですけど!?
———「……貴女のプライドを傷付けるつもりはないよ? 貴女の魔力は確かに多いよ? っていうか“魔力だけ”ならもう既にレベル5に匹敵してるからね? ただここからあの遺跡までの移動そして戦闘……その全てに必要な魔力が貴女一人で賄えない……」
「じゃ、じゃあどうすればいいのですか?」
———「私からの提案は三つ……一つ、貴女の記憶や思い出を”燃料“にして私を表現させる」
き、記憶!?
「で、でもそれじゃ!?」
———「そう、これをやったら貴女は貴女じゃ無くなるから論外ね……それに記憶や思い出はとっても大切な宝物だからね」
そう言って彼女はクスッと笑った。
———「二つ、眼を”燃料“にして、私を表現させる方法……これも論外ね」
「それって?」
———「”燃料“にした眼は無くなるってわけじゃないけれど、機能は完全に失う形でずっと残るね」
……それぐらいなら———
———「それぐらいなら構わないなんて思わないでね? 大切な人の目が見えなくなるって意外とキツいよ?」
「……はい、ごめんなさい」
———「わかってくれて、嬉しいよ。さてと、三つ目は大本命だよ?」
「先から碌な提案ないですけど……」
———「三つ目はなんと!! 貴女の”魔法“を”燃料“にして私を表現させる!」
「それが一番ダメでしょ!?」
これから戦うだと言うのに何を言ってるのこの人!?
———「落ち着いて、“燃料”にするのは精霊達の魔法の方じゃないよ?」
「何を言ってるの!? 私は『
———「発現はされていないけど、あるにはあるよ」
その言葉に私は目を開く。
何それ!? そんなの聞いたことがないよ!?
もしそうならヘスティア様は私に黙ってそれを隠したって事!?
「……せめて言って欲しかった」
———「この魔法はとっても危険な魔法だからね、貴女の事を大事に想ったからこそ女神ヘスティアがそう判断したじゃないかな?」
ショックを受けた私に彼女は優しく語り掛けた。
「……それはそうだろうけど」
———「だからそんな不安の種である“魔法”を“燃料”にして、ささっとみんなを助けよう!」
なんだかヤケに強引な気もするが……彼女が言ってた通り私にはその選択肢しかなかった。
「……本当にそれでいいのですか?」
———「……貴女が納得出来ない気持ちはわかるけど……今回はこれが最適だからね」
「……ハァ……わかりました……お願いします」
———「じゃあ、準備の為に意識を一旦寝かせるね」
《パチンッ》
彼女が指を鳴らしたと同時に私は突然の眠気に襲われた。
———「……後は私に任せて大丈夫だから」
彼女の優しい声に導かたまま私は再び意識を手放す。
☆
彼女は複雑な表情を浮かべながら消えて行くレフィーヤを静かに見つめる。
———「……あんまりにも強引では無いか?」
突然と現れた炎の竜に彼女は全く驚いてなかった。
「……これでいいのよ」
儚げに笑う彼女に竜は黙って見守った。
「そんな事より、スキル撤去の準備は?」
———「事前準備は既に“水”が終わらせた」
「じゃあ、後は“妹”の魂に処置を施すだけだね」
———「……いいのか?」
「何が?」
———「愛しい子とお前の間には対価など最初から不要の筈だ、それなのにその対価と言う嘘を吐いてまで魔法を消すと言うのはあんまりにも可哀想では無いか?」
「……あの魔法を
———「……酷い詐欺を見た」
「じゃあ、私にどうしろって言うの? あんな危険な魔法を放置しろって言うの? もし万が一あの魔法が発現したらあの子は間違いなくアレを使うよ?」
———「それはそうだが……」
「いいのよこれで。結局な所、私の不注意で現れたあの魔法は誰にも望まれない。それにせっかく助けた魂が消えるなんてそんなの寂しいでしょ?」
すると彼女は一つの扉を召喚した。
「それじゃあ私も調整に入るからもう行くね」
彼女が去ったあの空間には竜が一匹ポツンと残されていた。
———「そうだったな、お前にとってこの時代こそがお前が待ちに待った瞬間だったな……」
悲しみに溢れた竜の呟きは彼女に届く事なく消えた。
兄や姉との“再会”に焦がれたハーフエルフの魂は今も待ち続けていた。
☆
扉の中に入った彼女は目の前に現れた本棚から一冊の本を取り出した。
「……これもいつか貴女に現れるのかな?」
そう呟いた彼女は愛しそうにその本を撫でた。
その本の表紙にはこう書かれていた———
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