私は今、不思議な体験をしている。
意識がハッキリしているのに身体が言う事を聞かない……。
これはアレね、前に一度体験した遊園地のVRアトラクションみたいな感じだね。
ゆっくり立ち上がる身体は枕元に置いてあるコートに袖を通してる間に私は周りを見渡す。
えっとぉ……どう見てもここは【ヘスティア・ファミリア】のテントじゃないよね? どっちかと言うと【ロキ・ファミリア】のテントとほぼ同じ大きさの物だね。
ふむふむ……と言う事はここは【ヘルメス・ファミリア】の野営地になるのかな?
周りにはヘスティア様が居ないのでやっぱりみんなはもう出発していると考えた方がいいかな?
『……杖よ』
気がついたら口が勝手に動いた。
えっ何これ怖ッ!?
すえうと勢い良く杖が私にやって来る。
……ん? ちょっと待って?
あの杖って私じゃないと使えない筈だよね!?
大丈夫なのかな?
私の心配は杞憂で終わった。
身体が杖を握った途端、杖に付けられた宝石が綺麗に輝いた。
この杖って身体で認識しているの? それとも
……わかんないなぁ。
「……そっか」
迷っている私とは別に杖を握った彼女は一瞬戸惑ったみたいだけど、すぐに嬉しそうに顔を緩めた。
「……ふぅ」
すると彼女は瞼を閉じた。
わあああっ!? な、なにこれぇ!?
何処からとなく徐々に流れて来る魔力を感じる事が出来た……でもそれだけじゃない。
自分の魔力がまるで別物の様に練られていく……
なんだろう……私の時とは全然違う……彼女が練った魔力は綺麗で全く無駄もない……。
あぁ……そうかぁ……これが経験の差かぁ……。
リヴェリア様にも言われたもんね……魔力に物を言わせ過ぎだって……。
よし! だったらこの人から色々学ぼう! 将来はきっと私に役立つんだから!
「……歩く魔力タンクにも程がある」
ちょっと待って!? 今なんかさらっとディスられたんですけど!?
「だ、大丈夫ですか!?」
テントの入口に【ヘルメス・ファミリア】の団員の女の子が立っていた。
見た事ない子なんだけど……この子はアスフィさんが言うサポーター組の一員かな?
【ヘルメス・ファミリア】の団員の呼び掛けにも応じずに、彼女は無言で外に出た。
「……残り時間9分21秒」
そう言い残して彼女は凄じい勢いで空へ駆け抜けた。
☆
遺跡へ向かっている最中では彼女は常に何かの魔法を構築して、蓄積の繰り返しをした。
その蓄積された魔法は何処にあるかと言うと……彼女はその全てを杖の宝石の中に一つ一つ丁寧に収納した。
そんなのまで出来たの!? って驚いたが実際に出来たんだから文句言いようがない。
ただもしも私がそれをやりたい場合、生半可な努力じゃ無理と断言出来る。
———パキッ
「あっ……」
んんんッッ????
ちょっと待とうか!? 大事な杖から物凄く嫌な音がしたよ!?
「……私は何も見ていない」
ちょっとッ!?
さっき思いっきり「あっ……」って言ったでしょ!?
「……絶対に怒られる……どうしッ!?」
すると突然、遺跡の方から嫌な魔力が漂う。
……でもこの嫌な魔力は何処かに感じた事がある様な。
「……これは」
ポツリ呟いた彼女はそのまま更に加速をして行く。
だけど私にはわかる、きっと今の彼女の表情は怒りに満ちている事に。
何故彼女はこんなにも怒っているのだろうか……。
———ズキッ
い、痛ッ!?
なんなのこの痛み!?
☆
———「喜べエルフ達よ! お前達は我が女神に選ばれたのだ!」
ローブにフードを深く被っていた男が私に向かってそう言った……。
ううん、違う……私だけじゃなく、私を含めた少年少女達に言っているんだ。
その背後には彼と同様のローブを着ている人達が数十人いた。
彼らの周りには血だらけの冒険者達が倒れていた。
———「誰一人も耐え切れないとは……ウィーシェの森のエルフと聞いて期待したが……コイツらはあんまりにも期待外れだ」
気がづけば、私の周りには悲痛な表情で息絶えた少年少女の姿が沢山いた……
みんな、友達だった……
一緒にオラリオの学院に行く予定だった……。
それなのに身体が痛い……息が苦しい……
私はこのまま死んじゃうの?
そんなのやだ……
お願い……誰か……
わたしを……たすけて……
———「……ッチ。最後のエルフもダメだ、アーテ様と団長にそう伝えておけ」
その言葉を最後に、わたしの中の何かが砕けた音がした。
☆
———ハッ!? 今の何!?
これが噂に聞いた白昼夢って言う奴!?
いや、夢にしては……あんまりにもリアル過ぎる……。
もしかして今のは……
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