あの光が示した道を進むと、真っ暗闇だった僕の周辺が突然と変わった。
そこにはまるで僕達が戦った遺跡の中心部にそっくりな空間になった。
違いがあるとすれば、そこにアンタレスの姿が無く、代わりに月と弓……【アルテミス・ファミリア】のエンブレムが刻まれた祭壇らしきモノがあった。
「……ここは一体」
ゆっくりと祭壇の方に歩くと、その祭壇の前に【誰か】が居る事がわかった。
だけど不思議な事に、その【誰か】というのはハッキリとわからなかった。
その姿は様々だった、長い髪のヒューマンの女性に見えたり、知性に溢れるエルフの女性に見えたり、勇気に溢れる
「あなたが僕を呼んだのですか?」
祭壇の近くまで来た僕はそう問い掛けた。
『……そう、貴方をここに呼んだのは【私達】だ』
その人物は様々な声が重なり合ったかの様な声で答えた。
「……じゃあ、あの笑い声や幻もあなたが?」
『試す様な真似をして、すまなかった……だが必要だったのだ、曲げる事のない強い意志が、砕ける事のない強い心が……』
ソレは申し訳なさそうに僕に頭を下げた。
「そうですか……ならわかりました」
『許してくれるのか?』
「だって、あなたが必要な事って言いましたから」
『…………』
ソレは一瞬だけ呆れている様な視線で僕を見たが直ぐにいつも通りの様に戻った。
『……貴方に頼みたい事がある』
「はい、こんな僕で良ければ」
『……そんな簡単に受け入れていいのですか?』
「だって、僕はその為に【ここ】に来ましたから」
『……ハァ……少しは疑いなさい』
「アルテミス様にも同じ事言われました……」
僕の即答にソレは若干呆れているみたいだけど、アルテミス様の事を話すと彼女の雰囲気が一気に晴れやかになった。
彼女は【アルテミス・ファミリア】のエンブレムがある装備や服を着ているのだから、やっぱりそういう事だよね?
「でも、僕で良かったですか? 僕よりリューさんやアスフィさんの方が頼りになると思いますけど……」
『……いや、これは貴方ではなくてはならないのです。だってこれは【オリオン】を使える貴方にしか出来ない事なんですから』
【オリオン】……その言葉を聞くと、思わず顔を顰めた。
「ですがそれを使うとアルテミス様は……」
『アルテミス様は天に還る……ではなく、神として【死ぬ】のです……ですが神は甦ります、それには果てしない長い時間が必要になりますが……』
「長い時間……」
『はい、それは短くても数万年……はたまた数億年が必要になるかもしれません……』
ソレは儚く笑った。
「あなたはそれでいいのですかッ!?」
『……神の価値観はヒトとは違います……それをわかっているつもりです……』
「そ、そんな」
『ですが……【私達】はそれを受け入れたくないのです』
「!?」
『故に【私達】は考えた、アルテミス様の負担を減らす為にどうすればいいのかと……』
ソレは真剣な顔で僕を見つめた。
『……そして【私達】は一つの結論に至りました。それはアルテミス様の為に【私達】の魂を捧げる事で実現する事が出来ます』
「……え?」
『全ての準備は既に終わりました、後は貴方経緯で【私達】の魂を【オリオン】に入れて貰うだけです』
そう言われて、頭の中が真っ白になった。
前におじいちゃんやリヴェリアさんから聞いた事がある、魂を捧げる、それはヒトとして消滅を意味する事……それを彼女達がやろうとしている……。
「そんなの———」
『わかっています、ですが貴方が何を言おうとも、これが【私達】が出した結論です』
「ッ! ……で、でも———」
『落ち着いて下さい、貴方は一つ大きな勘違いをしています……いいえ、違いますね……こちらの説明不足でした』
「……え? それってどう言う事ですか?」
『【私達】の魂が1000人集まった所でそれが女神の魂と対等な扱いになるなんて事はあり得ません。だから言いました、【負担を減らす】と』
彼女は祭壇を見つめた、そこには青白く光る結晶が置いてある。
「それは?」
『この結晶は【アルテミス・ファミリア】の歴代の団員達が捧げた魂です』
そう言って彼女は誇らし気に笑った。
「……それが」
『ご安心を、【私達】は魂の全てを捧げてません、ほんの一部だけです。【私達】が消える事はありません、……だって【私達】は生まれ変わって、またもう一度アルテミス様の元に帰りたいのですから』
そう笑った彼女の後ろには数十……数百人の女性が立っていた。
様々な種族、ヒューマン、エルフ、ドワーフ、
『未完の英雄よ……どうか、【私達】の願いを……叶えて欲しい』
そんな彼女達は僕に向かって一斉に頭を下げた。
☆
いきなり数百人以上の人数に頭を下げられた僕は驚きのあまりに言葉を失った。
『……ダメでしょうか?』
我に帰るとそこには泣きそうな顔でこちらを見上げる【アルテミス・ファミリア】の団員達。
「や、やります! やりますが……具体的にアルテミス様の負担はどれぐらい軽減されるのでしょうか?」
『そうですね……具体的には【死】が【数年間、
「ちょっと待って!? それってめっちゃくちゃ軽減されてません!?」
『……精霊達が物凄く頑張りました』
「せ、精霊ってそんな事まで出来るのですね……」
『いいえ、普通は出来ません。彼女らがアルテミス様の眷族でこの場所がアルテミス様の神殿と言うのが理由の一つです』
「他にも理由があるのか……」
『ええ、それは———』
説明しょうとする彼女は突然とその目を大きく開いた。
『……まずいですね』
「まずい?」
『現在、現実では一人のエルフの少女が貴方達を守る為に戦っていますが……その相手がアンタレスだけではなく洒落にならないバケモノも参戦しています』
エルフの少女、それを聞いただけで心臓の鼓動が速くなった。
「そ、そのエルフの髪の色は?」
『鮮やかな黄色? いや、金色かな?』
その色を聞いて、僕は思わず呟いた。
「山吹色……」
『ああ、それです!』
そっか……レフィ姉は来てくれたんだ……。
ドクンドクンと心臓の音が強くなった。
『……エルフの彼女は確かに強い、だけど……彼女が神を喰べたアンタレスを倒せるかとなると……それは【不可能に近い】のです』
「そ、そこは不可能じゃないんだ」
『……言い切れないのですよ、彼女には【あの方々】が居ますから……』
レフィ姉……ここは流石と言うべきか、呆れるべきか……。
『ですが彼女と戦っている人物もまた【バケモノ】なのです……その所為もあってアンタレスに集中出来ていません』
「他のみんなは!?」
『他の方々もだいぶボロボロですね……一番動けそうな弓の
弓の
彼女も頑張ってるんだ……きっともうボロボロなのに……。
「……ならば僕も早く目を覚さないと」
僕は僕に出来る事をしょう。
『……では、結晶を手に取って下さい、後は【オリオン】に流せば完了の筈です』
結晶に触れた途端、【アルテミス・ファミリア】の想いが僕の中に流れた。
想いが———
願いが———
祈りが———
そんな彼女達の想いが……祝福する様に僕を包んだ。
ここまで読んで頂きありがとうございます。