私が妖精になるのは絶対間違ってる   作:ZeroRain

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気づけばこんなにも読まれてる…怖い…


それは美しい究極技法

 ———『神の宴』

 暇を持て余した暇神たちが定期的に開いた宴の事を示す言葉である。定期的とは言っても月一のペースでと言うわけでもなく週に何回も開かれた事もある。何にせよ、神々は暇で娯楽に飢えている。この宴に来ていた神々は交流の他に情報収集を目的としている者も居るがそれは少数派である。ほとんどはただ馬鹿騒ぎをしたいだけが主な理由。

 そんな『神の宴』に滅多に来ない炉の女神ヘスティアが来ており、他の神はかなり珍しがって、何か面白い事が見られるんじゃないかと期待している。一方、そのヘスティアは他神の視線を気にせず用意されたご馳走を次々とタッパーの中に詰めていた。

 

「百歩譲って意地汚く食べるならともかく、ここに来てそれなの?」

「!? へファイストス! 久しぶり!」

「ええ、久しぶりね、元気にしているのかしら?」

「もちろんさ! 何故ならレフィ君はうるさいからね!」

「その彼女が今のあなたを見て、どういう反応するのかしら? 今度会うときに言ってみるわ」

「やめてくれ!? 彼女の説教が怖いんだ、この間じゃが丸くんを深夜に食べようとしたら物凄く怒っていたよ!」

「それは当たり前よ……」

「うぐぐ、そ、そんな事よりボクはキミに大事な話があるんだ!」

「お金なら1ヴァリスも貸さないわよ?」

「違うんだ! ボクは—」

 

 ヘスティアが台詞を言い切る前に、彼女たちに声を掛けた神物が居た。

 

「あら、ヘスティアにへファイストス、久しぶりね」

「うげっ!? ふ、フレイヤ……」

「あら、久しぶりねフレイヤ。今夜も綺麗よ」

「ありがとう、貴方だって今夜とっても素敵よ。ドレスがとっても似合っている。それとヘスティア、そんな事を言わないで……私でも傷つくわ、そんなに私の事嫌いかしら?」

「ボクはキミの事苦手なんだ……知っているだろ?」

「あらら、そうね。気を悪くしちゃってごめんなさいね」

「……いいや、いいんだ」

 

 そんなヘスティアとフレイヤのやりとりを見て、へファイストスはただため息を吐くしかなかった。

 

「そういえば、レフィーヤ・ウィリディスの事はよく聞くけど、もう一人はどうしたかしら?」

「ベル君の事かい?」

 

 その言葉を聞いたフレイヤは誰にも気づかれないように静かに目を細めた、まるでこの情報を待っていたかのように……。

 

「ベル君はとってもいい子さ! 純粋で真っ直ぐな子供だからね! たまにレフィ君に怒られたりする事もあるけど。それでね———」

 

 ベルの事を嬉しそうに語ったヘスティアに微笑ましく笑ったへファイストスとフレイヤ。双方のその笑顔の意味が全く違うが。その時——

 

「ファイたんー! フレイヤー! ……そしてドチビ」

 

 悪戯の神、ロキが彼女達に声を掛けた。

 

「「(あら)こんばんは、ロキ」」

「なんかボクの時だけついでみたいに言ったな!?」

「気のせいや」

「あら、素敵なドレスね。新しく仕立てたのかしら?」

「せや! うちは何処かの貧乏女神と違って、こうやって素敵なドレスを着る事が出来るんやからな!」

 

 そんなロキの台詞を聞き、ヘスティアの機嫌が更に悪くなった。

 

「ふん! いくらドレスが素敵であっても、着る人の体が貧相すぎて、仕立てた人が可哀想だよ」

「なんやと!?」

「やるかい!?」

「はいはい、やめなさいね。みっともないから」

 

 今にも喧嘩しそうなロキとヘスティアをへファイストスが宥めた。ヘスティアとロキの喧嘩に賭け事を始めようとした野次馬共は声を荒らげた。

 

「それでロキ、何か私に用があるのかしら?」

「あるにはあるんやけど、それは後日やな。そんな事よりや、ドチビ」

「……なんだい?」

「レフィーヤ・ウィリディスって子、うちに改宗をさせへんか?」

「……急だね」

「はっきり言うで、あの子の才能は自分らの手に余る。うちだったら間違いなくあの子の才能を伸ばせる」

「……やっぱりキミもそう思うか……」

「せやからうちに「でもダメだ」なんやと!?」

「あの子はボクの大事な眷属だから、確かに手に余るほどの才能を持っているかもしれないがそれでもボクは彼女を守ってそして共に歩みたい」

「自分のその想いがあの子の才能を殺してるとわかっていてもか?」

「そうだ」

「何よりも、あの子は改宗はしたくないと思うよ」

「何故そう言い切れるんや?」

「なんせ彼女とその弟はここにいる神々全員からファミリア入団を断られたからね」

「は!? うちはそんなの聞いてへんよ!?」

「ボクは本人から聞いたし、そして彼女は嘘をついてないのもボクの名にかけて誓う」

「ッ!? ……そうかい。ならうちはもう用はないで……」

「ロキ、ボクからもひとつだけ」

「なんや?」

「これ、返そうか?」

 

 ヘスティアはロキに袋を見せた。その袋を見たロキは目を見開き。

 

「自分、なに言うとるかわかっとんのか?」

「もちろんさ」

「…………うちらには要らんものや。それにもう贈られたものやからな」

「そうかい、ならボクが彼女のために使わせて貰うよ」

「あぁ、そうしぃ。あの子のためやからな」

 

 そう言ってロキはその場から離れた。それに続いてフレイヤも——

 

「私もお暇させて貰うわ」

「あら、もう?」

「えぇ、聞きたい事は聞けたんだもの。それにここに居る男神はもう食べ飽きたんだもの。では御機嫌よう」

「「……」」

 

 フレイヤを見送ったヘスティアとへファイストス。そしてフレイヤが見えなくなった頃にへファイストスはヘスティアに再び声をかけた。

 

「それで、あなたが言っていたお願いっていうのは、もしかしてロキから貰った物で何か作る事かしら?」

「……うん、でもレフィ君のだけじゃない、ベル君のもだ」

「二振りも? あなたはわかるだろうけど、うちは高いわよ?」

「どれだけ掛かっても返すさ! だからお願いだ! どうかこの通り!!」

 

 ヘスティアはへファイストスの前に土下座をした。それを見たへファイストスは勿論、他の神々も驚きを隠せない。

 

「ちょっと!? なにそのポーズ!?」

「これはDO☆GE☆ZA、どんな願いでも必ず叶うと言われてる究極技法(アルティメットアーツ)だ! タケに教えてもらった!」

「タケミカヅチ!? あいつ余計な知識を!?」

 

 ちなみにヘスティアの土下座を見たタケミカヅチは凄くいい笑顔で親指を立てたのはまた別の話。

 

「頼むよへファイストス!」

「……とりあえず、うちに来なさい。ここで話すようなものじゃないわ」

「本当かい!? やったよタケ! やっぱりこの究極技法(アルティメットアーツ)は本物だ!」

「それとタケミカヅチの奴は後で締めるからね」

「ほ、ほどほどにね」

「それはどうでしょうね、まあとにかく、行きましょうか」

「うん、わかったよ!」

 

 そう言ってへファイストスとヘスティアは宴の会場を後にした。一方タケミカヅチは先程の笑顔が消え、顔を真っ青にしているところだった。





ここまで読んで頂きありがとうございます。

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