私が妖精になるのは絶対間違ってる   作:ZeroRain

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感想を見て、思わず書いたもの…後悔などない。


不変なるモノの可能性

 ———バベルにあるへファイストスの作業場。

 その作業場の主、へファイストスは神友のヘスティアと向き合った。

 

「それで、私に何を作って欲しいの?」

「勿論、武器だ!」

「はぁ、……でしょうね」

「一応聞くけど、あなたの眷属は何を使っているの?」

「ベル君は剣やナイフを使っているよ、だけど彼自身は今身長がそこまで高くないから通常の剣では合わないと本人が言っていたよ」

「ならその彼はナイフね、中途半端な長さの剣よりはマシでしょうね。それで彼女、レフィーヤ・ウィリディスは?」

「レフィ君は魔導師。今まではメイスなんて使っているけどやっぱり彼女には杖が必要だとボクは考えてるんだ。彼女の能力は完全にそっち系だしね」

「…………なるほどね」

「もしかして、何か問題でもあるのかい?」

「……ベル・クラネルの武器は作れるわ。問題は……」

「レフィ君の武器は無理って言うのかい?」

「……そうね、天界に居た頃の私ならともかく、こっちの私は杖や魔法類の装備は作った事ないわ。だってこっちの私はただの人間と何も変わらないのだからね……」

「そ、そんなぁ……」

「悪いけど、私作のレフィーヤ・ウィリディスの武器は諦めなさい」

「本当に……本当にキミは作れないのかい?」

「……作った事ないわ。「なら!」馬鹿なことを言うのはやめて頂戴。いまの私はただの鍛治師に過ぎないのよ。神の力を使わずに神秘の力を引き出す事なんて不可能よ」

「ぐっ……なら別の人を紹介して……」

「それぐらいなら出来るわよ。……それにベル・クラネルの武器は私が責任を持って作るわ」

 

 レフィーヤの武器は作れないと言い放ったへファイストスの言葉にヘスティアは何も言えなかった。ヘスティアは始めて出来た二人の眷属に神友であるへファイストスが手を掛けた武器を贈りたかった。それは叶えられないと言うのならば仕方ないと割り切ろうとしたがやはり心の何処かで、認めたくなかった。だからヘスティアは悔しさで涙を流した。

 

「……はぁ、泣いても作れない物は作れないわよ、わかって頂戴」

「う゛ん゛」

「……あのね、私だって作ってあげたいのよ? あなたが私にあの子を紹介した時の嬉しそうなあなたを見てると、尚更ね。けどわかってて欲しいわ、神の力のない私達は本当に無力よ?」

「わ゛か゛っ゛て゛る゛」

「…………ヘスティア」

 

 ヘスティアは流れた涙を拭き、再びへファイストスの目を見た。

 

「……レフィ君のは諦める、キミの紹介する人物に頼むことにするよ」

 

 そう言いながらもやはり諦め切れないという気持ちがヘスティアから感じ取れるへファイストス。

 

「試作……」

「えっ?」

「私が試作で作ってみるわ」

「ほ、本当かい!?」

「ええ、勿論。けど出来は全く期待しないで頂戴。……だって失敗する可能性しか見えてないんだもの」

「ッ!?」

「はっきり言うわ、私は神としてではなく、一人の職人として。それも初心者魔導具職人として、彼女の杖を作るのよ。出来は最悪に近いでしょう、それでもいいのならば、私は彼女の武器を作るわ」

「いい! それでもいい! キミが! 他の誰でもなくキミが作ってくれると言うのならばボクは何も文句を言わないさ!」

 

 先程までの暗い顔が一瞬で晴れ、嬉しそうに笑ったヘスティア。へファイストスの方は言ったのは良いものの、本当に自分は作れるのだろうかと言う不安しか頭にない。

 その後へファイストスはベルの武器に必要な材料を掻き集め、漆黒のナイフ、ヘスティア・ナイフを鍛え上げた。

 ヘスティア・ナイフにヘスティアの血を流して、その武器は完成した。

 

(問題はここからね)

 

 本来、高レベルの杖や魔導具を作るにはそれ相応の発展アビリティが必要。けれど女神へファイストスにはその力がない。出来上がったとしてもそれは使った材料相応の性能を持つかと言うと、それは否。

 へファイストスの手にはいまヘスティアから貰った宝石、“森の滴”という杖や魔導具の材料にしては結構な高品質の物。こんな材料を初心者の自分が使って良いのか? それすら不安を覚える。

 

「へファイストス、大丈夫かい?」

「え、えぇ……大丈夫よ」

「例え失敗してその宝石を失ったとしてもボクは構わないさ、レフィ君には物凄く怒られるかも知れないけど、ボクは無理を言ってキミに作って欲しいと願っているから、その責任は全部ボクのものさ。キミは失敗しても気にしなくてもいい」

 

 その言葉は、へファイストスの心に響いた。これまでにない想いを彼女の心に灯した。

 

(失敗を恐れる? 誰が? 私が? 鍛治の女神として天界でありとあらゆる神器を作った私が? たかが杖一本に恐れる?)

 

「ふふふ、そうね、失敗なんて気にしなくてもいいわよね、なにせ失敗する事なんてありえないのだもの。ソーマが人の手で神の酒を作れると言うのならば、私は作って見せるわ! えぇ! そうよ! 子供達がいつもやっているように! 私もするわ、私の、私だけの冒険を! 人の手で神秘を、神々の奇跡を私は作って見せるわ!」

「へ、へファイストス!? キミ、本当に大丈夫かい!?」

 

 その日、一人の女神は過去の己を超え。新たなる可能性を見出した。

 

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 炉の女神の心(スタッフ・オブ・ヘスティア)

 

 汝、女神と共に歩み、笑い、苦しみ。総てを見届ける其の日まで。

 汝、主と共に女神を護り、同時に女神と共に主を護る。

 汝、火の女神『へファイストス』が造り、炉の女神『ヘスティア』が創る。

 人や神の可能性を信じ。

 




ここまで読んで頂きありがとうございます。

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