私が妖精になるのは絶対間違ってる   作:ZeroRain

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書いてる途中で寝落ちをし、書き直すハメになった。


怪物祭の前夜

 ヘスティア様が留守にすると言ってから数日が過ぎ、彼女が居ない中、ベルと私は日常を緩やかに過ごしていた。

 ヘスティア様が出た後、ベルはすぐに『豊饒の女主人』へ行き、ミアさん達に謝りに行った。ミアさんはそんなベルの謝罪を受け入れるがその代わりに何故か、毎日シルさんのお弁当を食べる羽目になった。正直、私としてはあの弁当をベルに食べさせるのは少し抵抗がある……だって真っ黒だもん。それでも平気な顔で食べる我が弟は勇敢な男なのか? それともただのバカ舌? 

 

 だが、「レフィ姉も食べる?」と笑顔で言った時、思わず顔が引きつった。

 

 そんな日々を過ごしながらもダンジョン探索をし、そして、本日の探索を終えた私たちは現在、地上への階段を登っている。けれど今日はいつもと少し違う、何故なら——

 

「あぁ、今年もこの時期がやって来たのか」

「【ガネーシャ・ファミリア】主催の怪物祭(モンスターフィリア)だっけ?」

「そそ、モンスターを観光客の前でテイムし、見世物にする祭りだったな」

「【ガネーシャ・ファミリア】も変な祭を開催したもんだな。まあ、あそこの主神は元々変わってるからなんも言えねえけどよ」

「はは、ちげぇねぇ」

 

 そんな声を聞きながら、ベルと私は次々と運ばれていくモンスターを見ている。

 

「レフィ姉、お祭りだって」

「お爺ちゃんが好きそうなイベントだね」

「お爺ちゃん、村の祭の時も一番張り切っているからね」

「酔っ払い過ぎて、怒られるまでがワンセットだけどね」

「お爺ちゃんは直ぐ女の人に声をかけちゃうからね……」

「毎回、その苦情が私に来てるから、勘弁して欲しいけどね」

「あははは……」

 

 ベルは知らないが、実際は酔っ払うとハメを外しすぎて、ただ女性に声をかけただけではなく、夜這いまで仕掛けようとした為。尚更、たちが悪い祖父である。そんなお爺ちゃんへの苦情は当たり前のように私のところに来る。

 まあ、そんな祖父だが、普段は頼もしいから私や他の村人たちはあんまり強く言えないのだけどね。

 

「ねえ、レフィ姉……」

「……どうしたの?」

「僕たち、神様と一緒に祭り見て回れるのかな……」

 

 ベルの表情は少し曇っている。

 

「そんな悲しそうな顔をしないの! きっとできるんだから」

「そう……だよね……。うん! ありがとう!」

「ほら、早くギルドに行って魔石も換金しなきゃ、ついでにエイナさんにも報告をしないとね」

「うん!」

 

 そう言ってベルと私はギルドへと足を運んだ。ギルドにはダンジョンから戻ってきた冒険者で溢れ、エイナさんを含めたギルド職員たちは慌ただしくあっちこっちで走り回っている。私たちは二手に分かれ、ベルはエイナさんに報告、一方私は魔石を換金する。一通りギルドでの用事が終わり、ホームへ向かおうとした私たちの前に予想外の人物が居た———

 

「……へ?」

「レフィ姉?」

 

 そこにはオラリオの頂点で名高い男が私たちをいや、私を見つめていた。まるで何かを見極めるように冷たい瞳で私を見た彼は、そのまま私たちの横を通り、彼はすれ違う際に———

 

「……我が女神の期待を裏切らずに精々その少年の成長に役立て」

「ッ!?」

 

 そう言った彼は私に恐怖を残し、そのまま人混みに消えていった。

 

「レフィ姉!? 顔色が悪いよ!? だ、大丈夫?」

「……え? え、ええ、平気よ」

 

(なぜ!? 何故彼がここに!? どういう意味? 何が目的? ベルの成長? わかんない! わかんないよ!)

 

「レフィ姉、今日はミアお母さんの所に行くのやめてそのまま帰ろう? 顔色が凄く悪いよ?」

「私は平気だから、気にしないで。だから——」

「ダメだよ! そんな真っ青な顔をしてる人の大丈夫なんて信じられるわけないよ! それにいつも僕が無理すると怒るくせに自分が無理するのはいいなんて言わないよね?」

「……そうね、あなたの言う通りよね。ホームに帰りましょう……」

「うん、それでいいんだよ。ほら!」

 

 ベルは私に右手を差し出し、こう言った。

 

「手を繋いだらきっと少しは楽になるからね」

「……ええ、そうね」

「じゃあ、ゆっくり帰ろう」

 

 差し出されたベルの手を握り、私たちはホームに帰った。

 

 ➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖

 

 レフィ姉と一緒にホームに着いた僕はレフィ姉を置いてまたすぐに出かけた。

 向かった先はもちろん、最近お世話になった『豊饒の女主人』。

 

「ごめんください!」

「おや、坊主。1人でどうしたんだい? 予約は2人じゃないのかい?」

 

 僕を迎え入れたのは店主であるミアお母さんであった。

 

「それの事なんですが、ダンジョンから帰った姉が少し体調が優れなくて。そのままホームに送りました。なので今日の予約をキャンセルしたくて」

「そうかい、そう言う事ならしょうがないな、キャンセル料は要らないから、今日はもう帰りな」

「それなんですが」

「なんだい?」

「何か軽いモノを姉のために作ってくれませんか? 本人はすごく楽しみにしていたので……」

 

 僕の台詞を聞いたミアお母さんは少し驚いた表情をしたが直ぐにその表情を笑顔に変えた。

 

「ハハハハ、あたしに任せな! 旨いもんを作ってやるからな」

「お願いします!」

 

 ミアお母さんと入れ替わる形でシルさんが僕に話しかけた。

 

「こんばんは、ベルさん。あれ? 今日はお一人ですか?」

「こんばんはシルさん、レフィ姉が体調優れなくて、予約のキャンセルしに来ただけですよ、直ぐ帰ります」

「そうなんですか!? その、大丈夫でしたか?」

「今日休んだら直ぐに良くなりますって本人が言ってましたので」

「そうでしたか……早く治るといいですね」

「ありがとうございます」

 

 しばらくシルさんと喋っていたら、ミアお母さんが台所から戻ってきた。

 

「シル、あんたまた仕事をほったらかして……」

「待っているベルさんをもてなすのも立派なお仕事です! それに私の仕事はリューたちがやるって言ってました」

 

 そんなシルさんの台詞に反応したかのように、後ろから「言ってないニャ!!」「嘘ばっかりミャ!!」「覚えてなさいよ!!」などなどが聞こえた。

 ミアお母さんはそんなシルさんを細目で見て、シルさんはその視線から逃げるように僕に話かける。

 

「そうだベルさん、明日の怪物祭(モンスターフィリア)よかったら一緒に行きませんか?」

「……レフィ姉の調子が良くなったら行くつもりですが一緒に行く約束は出来ません。申し訳ないです……」

「それなら仕方ないですね、では——」

「いつまで油を売るつもりだい! 早く仕事に戻りなこのバカ娘」

「ご、ごめんなさい! で、ではベルさん。私はこれで!」

「アッハイ……」

 

 そう言い仕事に戻るシルさんを見送り。ミアお母さんは僕に料理が入っている2つの容器を渡すと同時に喋りかけた。

 

「上はあんたの姉ちゃんに渡す料理で、下はあんたの分だよ。冷めても旨いもんを作ってあげたから明日の朝に食べても問題ないよ」

「ありがとうございました! それに僕の分まで作ってくれて……」

「いいって事よ、お代は後日でいいから、今日はもう帰りな」

「はい! では失礼します!」

 

 僕は『豊饒の女主人』を後にし、ホームに再び戻った。

 

「ただいま……」

 

 けどレフィ姉の返事は無く、地下の寝室を覗くとそこには眠っているレフィ姉が居た。眠る姉を起こさないように僕は、寝室を後にした。

 

「おやすみ、レフィ姉」

 

 明日、きっと良くなりますように。





ここまで読んで頂きありがとうございます。

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