いつもより短めな気がする。
祭りで賑わっているオラリオ。そんな街の一角にある喫茶店に【ロキ・ファミリア】の主神たるロキがとある神物と話すためにこの店に来ている。彼女の付き添いという形で【剣姫】ことアイズ・ヴァレンシュタインも来ている。
案内された席には既に件の神物が来て、彼女を待っているとの事。
「待たしてもうたな、フレイヤ」
「大して待ってないわ、気にしないで頂戴」
「へいへい」
美の女神、フレイヤ。彼女のファミリアは【ロキ・ファミリア】と共にオラリオ二大ファミリアとして君臨した名高いファミリアである。かつて、かの大神と女神たるゼウスとヘラがオラリオから去った後にオラリオのトップに君臨した二つのファミリアの主神が今、対面している。
「あら、その子も連れてきたのね」
「せや、こうやって無理矢理連れてかないとすぐダンジョンに篭るからな」
「ふふっ、大変ね」
他愛のない話をした二柱の女神、しばらくするとロキは切り出した。
「それで、何を企んでるんや?」
「企むなんて人聞き悪いわね。ただ、気になっている子を見つけてね」
「やっぱり男かいな! 今度はどこのファミリアや!」
「秘密よ、ただね……強くはなかったわ」
「なんやと?」
「綺麗だったのよ、彼の魂が……透明で純粋なそれでも優しく燃えている彼の魂が、凄く綺麗だったの」
「お、おう……自分をそこまで魅了したその子はちょっと気になるな」
「悪いけど、貴方にはあげないわ、もしそうするなら、私のファミリアと全面戦争よ」
その台詞を聞いたロキは思わず顔が引きつった。
「そこまでかいな!? 自分、愛が重いって言われん?」
「ふふふ、何言ってるのよロキ、神の愛なんてこんなモノよ、それに———」
話しているフレイヤがふっと外を見たあと彼女の言葉は続かなかった。
「……急用を思い出したわ、先に失礼するわね」
「ちょっ!? まちぃや!? 自分から誘っておいてお勘定はうちか!?」
自分の言葉に振り向かずにそのまま去るフレイヤを見た後ロキはアイズの方に振り向いた。そのアイズは先程のフレイヤと同様に外に何かを見つけたかのように固まった。
「アイズたん、大丈夫かいな?」
「……平気、ロキの方は大丈夫?」
「フレイヤのやつが何をやらかすかと思うと頭が痛くてしゃあないわ! でもまあ、わからんでもないわな」
「……ロキも気になっている子が居るの?」
「いるで! ほんま勿体ない事をしたわ!」
「勿体ない?」
「聞いたやろ? あの子、レフィーヤ・ウィリディスがうちのファミリアから門前払いされた事。あれはほんまに勿体ない! リヴェリアもすごい怒っとったわ」
「なら、彼女を勧誘するの?」
「出来るならやるけど、多分無理やな。なんせ彼女たちはほとんどのファミリアから門前払いされたんやからな。今更勧誘するとか虫のいい話すぎる」
「……他の神だったら無理矢理勧誘してるのに?」
「うちは一番望むのがその子の幸せや、だって無理にファミリアに入れたらそこに幸せを感じるとは思わんからな」
「……やっぱりロキは優しいね」
「せやろ! せやからアイズたんがうちにキスしてもええんちゃうかな!?」
「しないよ」
「そんな!! アイズたん!! 一回でええんや!」
「やらない」
「グハッ!?」
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闘技場のモンスター保管庫にて、幸せに倒れる【ガネーシャ・ファミリア】団員たちがそこに居た。まるで何かに骨抜きにされたかのように——
「……貴方がいいわ、ええ。そう、小さな私を追いかけて。そして私に彼の輝きを見せて頂戴。あぁ……でもアレに邪魔されたら嫌だわ。だから貴方はこの子が輝きを見せる前にアレを彼から引き離して頂戴ね」
女神は優しく笑った、その笑顔の先には静かに彼女の命令を聞いていた二匹の“バケモノ”が解き放された。
ここまで読んで頂きありがとうございます。
ロキを喋らせるのって大変ですね…ただでさえ標準語で苦労してるのに