私が妖精になるのは絶対間違ってる   作:ZeroRain

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なんか気づいたら出来たので投稿します。


早朝の出来事

 ———早朝

 まだ人混みが少ない時間帯にオラリオの隅にある廃教会の裏庭にベルとレフィーヤが模擬戦を行なっている。

 レフィーヤは魔法の矢をリズム良く次々と撃ち込み、ベルはそれを避けながら彼女に近づこうとしている。しばらく姉が放った弾幕の数々を凌ぎ切った彼は手にあるヘスティア・ナイフを握り締め、姉に向けて突き刺した。レフィーヤがそんな彼の手を掴みとると同時に地面から土の壁を召喚しベルの腹を狙っている。それに気づいたベルは直ぐさま掴まれた手を振り解きながら身体を軽く捻りだし、姉の攻撃を回避し、そして間を入れずに次の攻撃を繰り出す。レフィーヤはそんなベルの行動を読んだかの様に、己の身体にそよ風を纏い、風の鎧を作り出した。そんな姉の行動を見たベルは直ぐに距離を取った。だがその顔には悔しい表情など無く、むしろ満点の笑顔だった。一方レフィーヤの方は悔しそうにしながら風の鎧を解除したと同時にその場を守る防音の結界を解除した。

 

「今のは僕の一本勝ちでいいよね!?」

 

 嬉しそうな声でベルは姉に喋りかけた。

 

「……そうだね、ベルの勝ちよ。それとこの縛り、流石にもうキツいね」

「やった!! じゃあ、次は魔法の種類を増やしながら模擬戦をお願い!」

 

 彼女は模擬戦で壊された地面を直しつつ「はいはい」と軽く返事した。

 

「でもこんなにも魔法使ったのに精神疲弊(マインドダウン)の気配がないんだね」

「しない様に管理してるの、ここで精神疲弊(マインドダウン)を起こしたら本末転倒でしょ?」

「……まあ、そうなんだけど。手加減されまくった感がね」

「そんな事ないよ、確かに使った魔法は威力が低いものだけにしているけど、素でベルの動きについていくのはそろそろ限界なんだよね」

「それって別に魔法を使えば補えるって事でしょ? ……やっぱズルいよ」

「そう言われても仕方ないじゃない。それにダンジョンにだってベルに補助魔法を掛けまくったでしょ?」

「うーん、そう言われると何も言えない……」

「それに私が今欲しいのは範囲型殲滅魔法なんだよね」

「……それは後回しにするって言ってなかった?」

「今までは魔法の矢シリーズの数の暴力でゴリ押ししてたんだけど、将来的に複数の敵と対面している場合、威力がちょっと足りないの」

「ちょっとなんだ……」

「うん、今は敵が100人いる場合一人当たり魔法の矢十本ぐらいぶっ放せるけどやっぱり足りないの」

「それって十分じゃない?」

「相手がレベル1の敵ならね? もし格上の場合は十本じゃ圧倒的に火力不足」

「えぇ……レフィ姉って一体何と想定してソレを考えたの?」

「え? 他のファミリアなんだけど?」

「……うわぁ」

「今回は良かったのよ、ロキ様がいい神で。それにあの人も言ってたでしょ? 無理矢理で眷属にする方法はいくらでもあるって、私はその可能性の一つに戦争遊戯(ウォーゲーム)を仕掛けられるかも知れないていう想定をしたわけ」

戦争遊戯(ウォーゲーム)って?」

「ファミリア対ファミリアの戦いよ、一対一で戦う場合もあれば全面戦争する可能性もある」

「……もし挑まれて、そして対戦方法が全面戦争の場合のために範囲型殲滅魔法が必要って事?」

「そういう事」

「うん、まあ……僕もそれ嫌だからその時はお願いね」

「任せて♪」

 

 二人はそんな話をおえて、教会の中に入るとそこにはスヤスヤと眠る女神が居る。彼らはそんな女神を優しく起こし、3人で朝食を食べながらそれぞれの予定を話す。

 

「ボクは今日へファイストスの所にバイトしに行くから、急用があればそこに居るからね」

「私は【ゴブニュ・ファミリア】にリフォームの依頼をしに行ってから質屋で必要な家具やらを買いに行きますね」

「そうなると僕は今日ソロで探索ですね」

「いい、ベル? 無理はダメだからね? 約束だよ?」

「う、うん! 約束だよ!」

「それにレフィ君。質屋で古い家具を買うよりやっぱ新しいのがいいんじゃないかい?」

「生憎私たちにはそういう余裕はないので、節約できる所はとことん節約すべきと私は思います、なのでベッド以外は質屋で買いますよ。それに今日行く予定の店は冒険者になる前にお世話になった人の紹介なのでいい物を期待できるって言ってましたよ」

「キミがそう言うならボクは何も言えないよ……」

「予算はあんまりないけど、そこは【ゴブニュ・ファミリア】の方々と要相談ですね」

「わかった、リフォーム関連はキミに任せたから頼むよ」

「任せてください」

 

 それぞれの予定を報告し終えた3人は、同じ時間に出発し、途中で別々の方向へ分かれる。

 

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 ダンジョンに向かおうとしたベルだが、後ろから急に声をかけられたため振り返った。

 

「———冒険者様、サポーターはいかがですか?」

 

 英雄未満の少年と灰かぶりの少女が出会った。

 

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 ———【ゴブニュ・ファミリア】の工房にて。

 

「こんなにも割引して貰ってありがとうございます!」

「うちの新人どもの練習にもなるから気にするな」

「それでもありがとうございます!」

「やれやれだ……。それでリフォーム後の部屋だが、こういう風でいいのか?」

「はい! 教会の部分は完全にリフォームして二階建てにし、玄関やリビングとキッチンだけにして寝室などは二階にして貰って欲しいです。地下は倉庫とかにすればいいので……」

「うむ、わかった……本当にうちの若い連中に好きに任せればいいのだな?」

「あ、あんまり突飛なリフォームにしないでくれると嬉しいんですけど?」

「そこは任せとけ。あとは支払いだな」

「えっと、全部で500万ヴァリスでいいんですよね?」

「本当は1000万ヴァリスでも安いと思うのだが、まあ、主神様がいいって言ってたなのでな」

「本当にありがとうございます! こ、これお金です」

「ひぃふぅみぃ……うむ、確かに貰った。完成は大体二週間だな」

「そ、そんなに早くていいんですか?」

「本当はもっと早くできるのだが、火事で壊れた北西区の依頼が来ていてな、時間が延びる事になった」

「いいえ、十分に早いです!」

「むっ? そうか?」

 

 レフィーヤはリフォームの支払いを終えてから、【ゴブニュ・ファミリア】のホームを後にし。紹介された質屋で買い物をしている。買った物の送料を無料にしてくれたり、値引きされたりもするので少し困ったが、喜んで受け入れる事にした。

 ちなみに買った物はリフォームが終わるまで預けてくれるそうなのでとっても助かりました。





ここまで読んで頂きありがとうございます。

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