勢い余って書いてます。
———小人族の少女、リリルカ・アーデは自分の目を疑いたい。目の前に起きている光景を見て、これが現実など馬鹿げてる。彼女が狙っていた白髪の少年は確かに言った、自分はまだ冒険者になって二週間しか経っていないと、それなのに目の前にある光景はどう見ても二週間前に冒険者になったばかりの少年の動きじゃない事を誰でもハッキリ言える。
次々と襲う魔物を倒し、レベル1と思えない速さで動き回っている一人の冒険者。魔物の攻撃を恐れる事なく前へ進みながら敵を切り倒すこの少年こそベル・クラネル。最初はレベル1の癖に良い武器を持っている坊ちゃんかと思いきやとんだじゃじゃ馬だった。可愛い顔をしてエゲツない動きをするアルミラージと全く一緒だ。
「べ、ベル様……す、凄いですね……」
戦闘を終えた少年に向けて、リリルカが喋りかけた。
「うん? そうかな? いつもの事だからあんまり気にしてないよ」
「普段からこの様な戦闘を行なっているのですか?」
「うーん、普段はもう少し落ち着いてるかな? 姉が無理しちゃダメってうるさくて。僕、無理なんてしてないのに……」
「で、でもそれでもこれぐらいですよね? 二週間でこんな戦果をあげた人なんてリリ聞いた事ないですよ!」
「えへへ、そっかぁ……照れるなぁ……」
「いえ、別に褒めてませんが……。それにしてもベル様のお姉様はどういうお方なんでしょうか?」
「うん? レフィ姉の事? うーん、綺麗と言うより可愛い人かな、それに本当は戦う事が嫌いなのに僕のために一緒に冒険者をやってくれたりとか、お爺ちゃんと神様関係で苦労してたりとか、なんか苦労を絶えない人のイメージしかないかも。それに多分、僕が冒険者にならなければ村でゆっくりとお爺ちゃんと一緒に畑仕事をするつもりだったと思う」
「なんと言うか……家族に振り回された方の様ですね」
「……そうだね、だからあんまり無理をして欲しくなくて……。宿やレストランでバイトしてる時を見ると凄く楽しそうだったし、行きつけの酒場の店主と話すのも同じく楽しそうだったよ。冒険者なんて辞めて、その店に働いた方がいいんじゃないって思えるぐらい」
「……その想いは伝えないのですか?」
「伝えたよ? でも本人はそんな話をいつも笑いながら冒険者も楽しいから気にしないでと言ったんだ」
「……ベル様の事相当大事に思われてますね」
「そ、そうかな……そうだといいなぁ」
「はい、きっとそうです、———リリと違って」
その言葉はベルに聞こえる事なく彼女の心の奥底に仕舞い込んだ。大事にされた彼と自分は同じ目線で世界を見る事なんてないだろう。そう自分に言い聞かせながら、彼女は魔石を回収した。
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換金を終えて、ギルドの中にある待機場にてベルとリリルカが報酬の配分を行なっている。リリルカはベルの腰にあるナイフとは別に報酬の一割ぐらい貰えればいい方だと思いながら彼からの報酬を待っている。だがそんな彼女の考えを否定するかの様にベルは報酬の半分を彼女に与えた。
「べ、ベル様? こ、こんなに貰っちゃっていいのですか?」
「うん? 勿論いいよ! リリのお陰でこんなに稼げたし! 僕一人で5万ヴァリスを稼ぐなんてまるで夢みたい!」
サラッとそんな事を言っていたが、本来のレベル1パーティの稼ぎを難なく超えた彼の戦果などリリからすれば異常である。更にただアイテムを拾うだけのサポーターに与える報酬も本来、もっと安い。けど彼はそんなの知らないと言わんばかりに今回の稼ぎの半分を彼女に渡した。
「……ベル様がそう言うなら貰います。けどやっぱやめるって文句を言っても返しませんからね!?」
「うん? なんでそんな事を言わないといけないの? それはリリのお金だからリリが貰うのは当たり前でしょ? 僕は自分の分け前を貰ったし、何も文句はないよ?」
そんなベルの言葉を聞いたリリルカは何も言わなかった、言葉を失ったと言うより呆れたの方が強いが。
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ベルはリリと分かれて、いつもの日課であるエイナへの報告を行った。エイナもそんなベルの話を聞き、どこら辺に注意すべきなのかと彼にアドバイスをした。だが突然、エイナがベルの装備を見て違和感を覚えた。
「……所でベル君、ナイフどこに行ったの?」
「え? ここにありますけ……ど? ……あれ? ……ない……ない!?」
「えええ!? お、落としちゃったの!?」
ベルの頭の中が真っ白になった。自分の主神は借金をしてまでそのナイフを依頼していたのにも関わらずたったの数日で無くすなんてどう言う顔をすればいいんだ!? ……それにどんなに怒ってもすぐ自分を許してくれる姉もこればっかりは間違いなくガチギレする!かつて村で姉を襲おうとした行商人の息子が亡くなった事件の再来なんてあってはならない! ベル・クラネルと言う少年が消えてしまう!
「ささささ、探してきますぅうううううう!!!」
「が、頑張ってベル君!」
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現在、レフィーヤは一人の少女と対面している。
買い物帰りに機嫌よく帰った彼女がふっと一人の少女とすれ違い、その少女の手には漆黒のナイフがある事に気付いた。そのナイフには自分が付けた筈の最下級精霊が付いてる事に気づいた彼女はそのナイフは紛れもなく弟の持ち物だと瞬間的に理解していた、刹那に彼女はそのナイフを持った“黒髪の兎人の少女“に声をかけた。
「ねぇ、そこのあなた」
「……はい、なんでしょか?」
「あなたが持ってるそのナイフ、私に見せてくれない?」
「……このナイフは私の物です、すみませんですが他人に触られたくないですのでお断りします」
「……そのナイフは私の知り合いのナイフに似ててね、ちょっと見せて欲しいんだ」
「い……いいえ、これは私がずっと持っているナイフなのできっと見間違いかと……」
「ねえ……」
「……ヒッ!?」
気づけば少女の周囲には数え切れない炎の矢があった、命令一つで自分を殺せるほどの数の魔法の矢が。詠唱をする瞬間も聴こえず、気づけば殺気を当てられながら魔法を突きつけられた。
その状況を見てここで死ぬのか?と自分に問い出した少女だったが、彼女を救う救いの女神が居た。
「……ウィリディスさん?」
「レフィーヤさん、こんにちは」
「あっ、リューさんにシルさん」
声を掛けられたレフィーヤは少女から意識を逸らし、その好機を感じた少女は直ぐ様逃げ出した。
「あっ……」
「……何かあったんですか?」
「……ううん、なんでもない。リューさんはこれからお買い物ですか?」
「はい、そうです。貴方は?」
「今から帰って料理をするんです」
「今日はうちに来ないですね」
「……毎日行くのは流石に財布が厳しいですよ?」
「ふふっ、冗談です。では次の御来店お待ちしております」
「はい、ではまた」
その後、無事にナイフが”見つかり“。泣いて喜んでいたベルがリューに抱きつき、シルが嫉妬したのはまた別の話。
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