私が妖精になるのは絶対間違ってる   作:ZeroRain

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短いです


疑ってる妖精

 ———翌朝。

 僕、ベル・クラネルはすっかり日常と化した姉との朝練を終えて、今日も変わらずダンジョンに向う。けど昨日までとは違うところがある、それは僕が真新しい装備を身につけている事だ。姉が昨日質屋に行くついでに買ってくれた自分の新しい装備。

 姉からのプレゼントとの事で僕はこの装備を大変気に入っている、姉曰く自分の戦闘スタイルに合いそうな鎧だったので買っておいたとの事だ。渡された時思わず抱きしめたぐらい嬉しかった、途中から神様も混ざり二人で姉を抱きしめた。姉は贔屓目無しでも言える、勿体無いぐらい可愛い人だ、村に居た時も定期的に求婚や縁談がよく来るぐらいだった。礼儀正しくて料理も上手で家庭的な可愛い姉に男が出来たら、見極めないといけないというのは祖父との間に固く誓ったもう一つの約束だ。

 話が逸れた、今日はこの新しい装備を着けてリリとダンジョン探索を行う予定だ。そう、彼女と二人だけ。姉はリフォームの時に泊まる宿を決めないといけないため、今日も別行動。早めに終わると軽く探索するって本人は言ってたので、もし途中で会ったら合流しよう。え? そういうのは団長の僕の仕事じゃないかって? 最初はそのつもりだったけど、姉に任せた方が安心だと神様が断言したから何も言えない。

 集合場所に着くと、そこには”犬人“のリリが僕を待っている。

 

「お待たせ、リリ」

「……おはようございます、ベル様。装備を新調したのですね」

「うん、姉が僕のために買ってくれたんだ」

「……またお姉様ですか。ベル様ってもしかして神々がよく言う“しすこん“っていう者でしょうか?」

「え!? なにそれ!?」

「神々が言うには姉の事が大好き過ぎる人の通称らしいですよ?」

「……僕はそこまでじゃない気がする」

「どうでしょ? 気づいてないだけかも知れないですよ?」

「え、えぇ…………。そ、そんな事より早く行こう!」

「あ、待ってください!!」

 

 早足でその場から離れた僕とリリが向かう先は勿論、ダンジョン。

 

 ➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖

 

「その装備凄いですね」

 

 ダンジョンに潜り、ある程度敵を倒したから少し休憩を挟んでいると僕にリリはそう言ってきた。

 

「そう! 凄く軽くて戦闘の邪魔にもならないいいものだよ! ただ……」

「ただ?」

「名前がちょっと独特って言うか……」

「独特……ですか?」

「うん、この鎧の名前って兎鎧(ピョンキチ)って言うんだけど……」

「そ、それは確かに独特な名前ですね」

「良いものなのは間違い無いし、レフィ姉に至っては可愛い名前だと思うで片付けるしね」

「もしかして、ベル様のお姉様はその鎧を作った人と同類なのでは?」

「……無いと思いたい」

 

 魔石の回収と装備のチェックを終えたリリは僕に「終わりました!」と声をかけてきたので、僕らは再び探索をつづける。しばらくすると、後ろから僕らに声をかけてくる人物がいた。

 

「おまたせ? 用事、予定より早く終わっちゃった」

「レフィ姉、どうやって僕がここにいるってわかったの?」

「お姉ちゃん探索機にベルはここに居るとビビっと来たから?」

「……なにその高性能な探索機」

「そんな事より私をその子に紹介してね?」

「あぁ! リリ、この人は僕の義理の姉、レフィーヤ・ウィリディスって言うんだ。……リリ?」

 

 レフィ姉の顔を見てなぜかしばらく固まっていたリリだが、ようやく返事をした。

 

「…………リリルカ・アーデです。見ての通り犬人です」

「へぇー見ての通りね……えっと、レフィーヤ・ウィリディスです、弟がお世話になりました。みんな私の事レフィって呼んでるよ」

「……何故苗字が違うのですか?」

「うーん、特に深い意味はないかな? 唯一覚えてるのはこの名前だけだからそのままにしただけ。レフィーヤ・クラネルも捨てがたいけどね」

「……そうでしたか。———選べるなんて羨ましいです……」

「うん? リリなんか言ったの?」

「なんでもないですよ、ベル様」

 

 一方姉は姉でずっとリリをみつめていた。

 

「レフィ姉、リリになにか気になる事でもあったの?」

「…………ううん、なんでもない。気にしないで」

「そ、そう? え、えっと、それじゃ、探索を再開しょう」

「……はい、ベル様」

「うん、わかった」

 

 こうして僕ら3人パーティーの探索が始まるのだった。





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