私が妖精になるのは絶対間違ってる   作:ZeroRain

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気づいたら書けたので投稿します。


今日も竈の女神が泣いてる

 ———廃教会の裏庭。

 いつもなら私は弟と共に模擬戦をやっているのだが、今日はいつもと少し違い弟は少し離れている所から自分を見守っている。見守られている中、私の頭の中はひたすらに魔法のイメージを繰り返し、現在自分の単発魔法の中で高威力を持つ“業火の戦斧”を超える広範囲の殲滅魔法を作るために試行錯誤を行なっている。これまでには様々なパターンを試したが、自分のイメージが足りないせいか未だに成功出来ずに居た。主神であるヘスティア様曰くこの魔法は自分が出来ると信じ切る事が必要であるため、中途半端なイメージでは実現出来ないのではないかと推測した。実際、今では当たり前にやっている複数の魔法発動も最初は全く使用出来なかった。だから恐らく自分が出来ると信じて疑わない心が必要であると思われる。

 

 以前風の魔法から雷を発生させてみたが、雷に触れる=感電のイメージが混ざったせいで、自分の腕ごと焼かれそうになった。だから魔法に関しては常識を捨てるべきとヘスティア様に言われた。でも言うだけなら簡単だが、実際にやろうとすると恐ろしくて踏み出せないのが本音。だって下手すると感電死だよ? そんなの怖くて無理無理。だから今回は水の魔法から氷の魔法を発生させようと考えている。氷ならそんなに怖くないしね? 

 

「……行きます!」

 

 イメージしたのは取り敢えずいつもの魔法の矢、だが今回は水のじゃなく氷の矢。少し寒く感じるが、大した事ではない。

 

「……出来た」

「おぉ!! 凄い!!! 凄いよレフィ姉!!」

「……色々覚悟したのにあっさり出来たのはちょっと不満かな?」

「問題ないなら別になんでもいいよ! 火、水、風、土の他に氷まで出来たなんて凄いよ!」

「さ、流石にみんなの前では見せられないけどね?」

「……仕方ないけどやっぱ勿体無いよねぇ」

「しょうがないでしょ?」

「うん、まあね……。って事は広範囲の殲滅魔法は氷ベースにするつもり?」

「最初は炎かな? あとは氷。他にも高威力な属性が欲しいけどね……」

「あのねレフィ姉、雷は……」

「わかってるよ……、やらないよ? 約束したしね」

 

 雷魔法をやらないもう一つの理由はベルである。前回雷を出そうと無茶をしたせいで私の右手が焼かれそうになったのがトラウマになったらしく私が雷を出すことに猛反対している、勿論ヘスティア様もそうだった。まあ先ほど言った様に自分も雷を出すのは嫌である……。

 

 結局この日は圧縮された炎の魔法の他に一つの魔法しか完成していなかった。炎の方は名前はまだない魔法だが威力は十分に強いと感じる、連発はできないが。もう一つは風の鎧を更に強くした魔法、直接見たことないけどアイズさんのエアリアルに近い魔法として出来上がっている、そして似ていると言うなら付ける名前は『そよ風(アウラ)』でいいや。うん、誰も怒らないでしょ。

 

 攻撃魔法や付加魔法の練習が終わると次は飛行魔法の練習。昨晩は杖に乗りながら飛ぶことが出来た。そして昨日より安定した感覚で空を飛べた。

 

「ねえ、レフィ姉」

「なぁに?」

「さっきの魔法を使ったら別に杖を使わずにそのまま飛ぶことが出来るんじゃない?」

「え?」

「だから、さっきレフィ姉が作った付加魔法? だっけ? あれを使えば杖なしでも飛べるんじゃないの?」

「……盲点だった。試してみるね」

 

 ベルのアイデアを聞いて、早速『そよ風(アウラ)』を纏ってみた。そしてベルの予想通り空を飛ぶ事ができた……。

 

「出来ちゃったね……」

「……神様が見るとまた発狂しそうだね」

「……燃費的には杖の方が軽いからそっちをメインに使うつもりだよ」

「……外で使うのはやめてあげて」

「あーうん。そうだね、バレると大変だしね。自分が認識されない魔法も使う必要があるからダンジョンの外ではあんまり使えないしね」

「そう思うとあんまり夢のない話だよね」

「バレたらお姉ちゃんが神々の玩具にされちゃうからヤダよ?」

「確かにそうだね……」

「まあ、ベルもバレると玩具コースだけどね?」

「え? 僕は普通だよ!?」

「……どうだか」

「所でレフィ姉」

「なぁに?」

「杖がずっと隣でふわふわと浮いてるんだけど……」

「あぁ、これね? 浮遊魔法だよ? ほら今日荷物多いでしょ? それを少しでも軽くする為に作ってみたの」

 

 ベルの言う通り、私の杖は私同様にずっと浮いたままの状態になっており、そして私が動いてみると杖も私に着いてくる便利仕様になっている。

 

「それ、杖の効果あるの?」

「うん、ちゃんと能力が反映されてるね」

「ズルくない?」

「これが私の魔法だから仕方ないでしょ?」

「そんなのズルいよ! 僕も魔法欲しい!」

「きっとベルにも魔法が発現するよ、まだそんな時期じゃないだけだから」

「うぅ……」

「そんな顔をしないの……。ほら、ダンジョンに行く前に宿に荷物を持ってかないといけないでしょ? 早めに朝食を食べないとダンジョンに行く時間が遅れるよ?」

「……はーい」

 

 少し不満気なベルの手を引いて、私はホームに戻るのであった。





ここまで読んで頂きありがとうございます。

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