私が妖精になるのは絶対間違ってる   作:ZeroRain

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今回は短いです。


小人族(パルゥム)の少女

 ———人は決して平等なんてない、むしろ不平等だ……。才能の有無、貧富の差、種族の違いなど色々ある。

 

 私、リリ……、リリルカ・アーデはそう考えている。もし小人族(パルゥム)として生まれなければ……、もし両親が【ソーマ・ファミリア】に入らずに別のファミリアに入れば……、もし自分で主神を選べるとしたら……そんな夢を何度見たものか。

 

 けど、リリがリリとして生まれた時点でそれが自分の運命だと感じざるをえない……。【神酒(ソーマ)】に溺れた両親が幼い自分に自分たちのために金を稼ぐようにと命令した。一度も親らしい事をせずに、毎日ただひたすら【神酒(ソーマ)】を求めた。

 

 いくら頑張っても、いくらやっても、いくら稼いでも、両親は一度もリリを撫でる事すら無かった。そして、勝手に死んだ……、【神酒(ソーマ)】を求めるあまりに実力に合わない階層に潜り、呆気なく死んだ。両親を失ったリリは家族(ファミリア)の中で当たり前の様に孤独になった。

 

 ただでさえ幼い自分は全種族最弱と言われている小人族(パルゥム)と言うハンデを背負わなければならない。昔、一回だけ名を轟かせた同族が所属しているファミリアに助けを求めた事があった、「どうかリリを助けて欲しい!」「あそこ(ソーマ)に居るの嫌です!」と。けれど、彼らにはリリなど眼中に無かった。

 

「お前を助けると我が女神になんの利益があるって言うんだ?」と一人が言った。

「同族だからって助けるほど俺らは暇じゃない」ともう一人が続けた。

「あのお方にお前みたいな薄汚い奴を連れていくわけねえだろ」と一人が貶す。

「女神に魅入られた俺たちと無能なお前は天と地の差だ。それぐらい自覚しろ」と最後の一人がリリを追い出しながら言った。

 

 もう一つのファミリアなんて門前払いだった。団長は忙しいからお前などに構う暇なんてないと。

 

 自覚している、他力本願だなんてわかっている。けど幼いリリにはそれしか出来なかった。

 

 だからリリは逃げた、逃げた先にリリを受け入れてくれたのは花屋を経営している老夫婦だった、彼らに拾われたその時がリリにとって心から幸せと感じた初めての瞬間だった。

 

 けれど【ソーマ・ファミリア】はそれを許さなかった、リリを取り戻す為に、彼らは老夫婦が経営した店に火を放った。そしてそれは自業自得、リリを隠したせいと言い放った。その台詞を聞いた老夫婦はリリを見つめた、その瞳から逃げる為に、リリは再び逃げ出した。だが【ソーマ・ファミリア(外道共)】はリリを逃がしてはくれなかった。

 

 結局捕まったリリに残された選択肢はただ一つ、高額な脱退金を支払う事だった。けど冒険者など出来るわけないリリに残された道はサポーターになる事しかない。だがサポーターの報酬など微々たるモノでその上にホームに帰ると他の眷属達にその報酬も力ずくで奪われる日々。けどそれにめげずに少しずつ、ほんの少しずつお金を貯める事に成功した。魔石や消耗品をちょろまかし時には装備を盗む事さえもした。

 

 もちろんこれは褒められるべきものじゃない、むしろ捕まるべきだと自覚している。けどこの方法しか見つからなかった。こうやって、他人から盗む事でしかこの生き地獄からは抜け出す事が出来ない…………。

 

 ———目標金額まで後260万ヴァリス。





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