私が妖精になるのは絶対間違ってる   作:ZeroRain

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引き続き短い話です。


最下級精霊って便利ね

 ———ミアさんの店で朝食を食べ、リリルカと合流した私たちはいつもの様にダンジョンへ向かった。

 

 今日も今日とて彼女の行動を監視している私と私の動向を気にしている彼女。こっちは彼女の“狙い”を知っているが彼女は恐らく私が彼女の正体を知っているとは思いもしないだろう。

 

 最初はヘスティア様やエイナさんと一緒に彼女の事を注意した方がいいと話したが、ベルはベルでリリルカから何かを感じていたらしい。恐らく彼は彼女を拒絶せずに受け入れるのでしょうね。弟のお人好しと言う持病は一生治らないだろうなと改めて確信した。

 

 そしてこの数日はエイナさんと一緒に出来るだけリリルカ・アーデについて調べる事にしたが手に入れた情報は大した物じゃ無かった。だから私は最下級精霊を使い、直接【ソーマ・ファミリア】に探りを入れた。調べれば調べる程集まる彼女の罪の証拠と同時に調べれば調べる程リリルカ・アーデと言う彼女の人生が見えてきた。確かに彼女の行為は決して許せないがそれでもまだ同情の余地があると思ってしまった。

 

 勿論、その情報をヘスティア様やロキ様そしてフィンさんに伝えてみたがここで意見が二つに分かれた。彼女に無条件で手を差し出そうとしているヘスティア様と手を差し出そうとしたが彼女に一回全ての罪を償って貰うべきと考えたロキ様とフィンさん。リリルカ、彼女は確かにベルのナイフを狙っている……いや、一回は盗んだ。そのナイフを持った彼女と出会った時は思わず彼女に殺意をぶつける程に嫌いだった。そう……“だった”……。彼女の事を調べれば調べる程に彼女に情が移ってしまった……、我ながら単純な人だなぁ。まあ、これだからベルの事を馬鹿に出来ないのよね……。

 

 結局【ソーマ・ファミリア】の悪事の証拠は全部は探しきれていないがそれでも訴えるには十分すぎる。フィンさんと細かく作戦を調整し、残るは動くタイミングだけだ。

 

 そこで私は別の情報を手に入れた。どうやらベルとリリルカを狙っている冒険者がいるという情報。その情報を聞いた二柱の顔はとっても恐ろしかった。私? 勿論、怒ってるよ? ただ今は冷静に動くべきとフィンさんに釘を刺された、何故ならば上手くいけばリリルカへの罰が最低限で済むから……。私としてはベルを囮にする事にとっても心苦しいのだけど、これは必要な事だよと苦い顔をしている二柱に説得された。

 

「レフィ姉?」

「ん?」

「ずっと黙っていたけどなんか考えてたの?」

「……ちょっと料理の事をね」

「あぁ、そうなんだ。出来たら食べさせてね? あっ、リリもどう?」

「へっ? リリですか?」

「うん、リリにもさ、レフィ姉の料理を食べて欲しいんだ、すっごく美味しいんだよ?」

「……か、考えておきます」

 

 勿論、ベルには彼女の事を教えない事にした。何故ならそっちの方がベルらしさがあるから。純粋な彼にはリリルカを欺く程の実力があるとは思えないからね。

 

 準備は整った、後は【ソーマ・ファミリア】が動けば作戦開始だからね。

 

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 ———人通りの少ない路地裏にて、数人の男が密会を行っていた。

 

「んでお前ら、あのクソッタレの小人族(パルゥム)を嵌める準備は出来てんのか?」

「ハハハ、安心しな旦那。アーデを襲う準備はもう出来てる。あとは実行のみだぜ……なんなら今すぐ襲うか?」

「まあ、待ってくれ。明日にしよう、明日、あいつが騙そうとしているガキにも声をかけてやろうじゃねえか、乗ってくれる筈だ」

「おっ、いいね旦那。じゃあ、明日、オレらは一回アーデの気をそらすからその間に白髪のガキに声でもかけてやってくれ」

「おう、任せろ! ……んじゃあ、オレはもう行くわ」

 

 そのうちの一人が離れ、残った男達は引き続き計画の話をしていた。先程離れた男が全く知らない“計画”の話を。その真実を知るのは彼らだけ——————。

 

 ———男達は知らない、気付くはずがない。ずっと彼らを監視している、何者かの視線を。

 

 





ここまで読んで頂きありがとうございます。

調べ切れない情報は“異端児”関連です。

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