私が妖精になるのは絶対間違ってる   作:ZeroRain

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本作の主要人物はみんな甘々です(今更)。

そして報告忘れてましたが2話には少し修正をしました。
報告が遅く大変申し訳ないです。


リリルカ・アーデ 前編

 —————これは悪い子であるリリに対して、神様が与えた罰なのかもしれない……。あの人達から……何故か居心地良く優しかったあの人達から盗みを働いたリリへの罰だと……。最初から甘いベル様とは違い……レフィーヤ様は物凄く怖かった、けど何故か途中からリリにお弁当を作ってくれたり美味しいお店へ連れて行ってくれたり(「豊穣の女主人」は即座に拒否したが)など様々な事をしてくれる様になった。

 

 勿論、それはリリを油断をさせる為にやった行動かもしれないと警戒していたが、ベル様曰く、レフィーヤ様は大変リリを気に入ったらしい。いやいや、2回目の探索開始前に突然“程々にね”とリリの耳元に囁いた人ですよ!? あの人はリリが魔石をちょろまかしているのを知ってるのですよ!? それなのにリリを気に入っているってどう言う神経しているのですか!? 

 

 でも……これで……全てが終わる、……これで全てが“リセット“される……それにもしかしたら、生まれ変われる事だって出来るかもしれない……、あぁ……そうしたら……もしそんな事が起きればリリは—————。

 

 ➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖

 

 ———数時間前。

 姉であるレフィーヤ・ウィリディスが急用で来られない為、ベル・クラネルは一人でリリルカ・アーデと合流すべく、いつもの様に彼女を待っていた。だが暫く待つと遠くからリリルカと他の冒険者の言い争いの声が聞こえてきた。

 

『オイ、アーデいい加減に寄越せ! これぽっちな訳ねえだろ!」

『も、もうないです……本当なんです……』

『嘘言うな! てめぇが———』

 

 ベルは直ぐに動き出そうとしていた。けどそんな彼に声をかけた男が居た。その男は路地裏にてベルがとある小人族(パルゥム)を助けた時に出会した男だった。

 

「おい、お前はあの俺を邪魔したガキだな?」

「……だったらどうしたんですか?」

「ふっ、お前はあの時俺が追いかけた小人族(パルゥム)のガキを雇ったみたいだから話したいだけさ」

「……あの子はあなたが追いかけた子じゃないですよ?」

「ハッ! まんまと騙されてるのか。いいか? どうやったのかは知らんが、あいつは自分の姿を変える事が出来る。そうやって今まで様々な連中からモノを盗んだのさ」

「…………それを信じると思うんです?」

「あぁ、何故ならこの情報は【ソーマ・ファミリア】から仕入れた情報だから信憑性が高いぜ?」

「……それで? 僕にそんな事を言って何をするつもりです?」

「簡単だ、俺はあいつに仕返しをしたい、だからお前に手伝って欲しい。なに、たかがサポーター一人が減るぐらいだ。痛くも痒くもねえだろ? なんせ変わりはいくらでもいるからな」

「……嫌です」

「は?」

「絶対に、嫌です!」

「おい、せっかく人が親切に教えてやっているのにそれはないんじゃないか?」

「あなたの警告には感謝します。けど僕は、僕は決してあなたに手を貸すつもりはありません!」

「……チッ、後悔するなよ」

 

 そう言って男は睨みながらベルから離れ。ベルもまた男が見えなくなるまで相手を睨みつけた。その表情は普段の子供らしさからは似ても似つかない雰囲気を漂わせた。

 

「…………ベル様?」

「!!」

 

 ベルが声のする方に振り向くとそこには呆然とベルを見つめたリリルカが居た。最初は驚いたベルだが、リリルカの姿を確認すると先程あった感情が消え、そしていつもの様な笑顔を浮かべた。

 

「おはよう、リリ」

「…………おはようございます」

「あのねリリ、あの人は———」

「それでベル様、レフィーヤ様は?」

 

 ベルの言葉を遮る様にリリルカは声を上げた、この話題を話したくないと言うリリルカの感情がヒシヒシと伝わってくる。それを感じとったベルは一瞬目を瞑るが彼は直ぐにリリルカの質問に答えた。

 

「レフィ姉は今日、用事で来られなくなったから探索は二人で行ってって言ってたよ」

「…………なるほど、そうですか」

「うん、だから今日は久々の二人で探索だね」

「…………はい、わかりました。ではベル様。行きましょうか! レフィーヤ様が居ない分、今日はたくさん稼がないと!」

 

 そう言って早足でダンジョンに向かうリリルカ。ベルは気づいていないが彼女はいつもよりフードを深く被り、その表情はなんとも言えない感情を浮かべ、そして悔しそうに呟いた。

 

「———もう……引き際ですか……」

 

 彼女の耳にはこの魔法の様な時間の終わりを告げる鐘の音が遠くから聞こえた様な気がした。

 

 —————場所は変わってダンジョンの9階層。

 9階層に入って3回目の戦闘を終えたベルにリリルカは声をかけた。

 

「ベル様、今日は少し10階層に挑戦してみませんか?」

「10階層?」

「はい! 先程の戦闘を見て、ベル様はだいぶ余裕を持っているとリリは感じました。幸いまだ着いたばかりで消耗がほとんどありません、なので一度10階層へ挑戦するのいかがでしょうか? 強くなりたいと願っているベル様を考えて安全第一の作戦です」

「…………」

 

 リリルカの提案を聞いたベルは昨日、ギルドの掲示板に貼られた紙を思い出した。その紙に書いてあるのは———

 

『【剣姫】アイズ・ヴァレンシュタイン、レベル6にランクアップ』

 

 それを見たベルは改めて、自分の目標がとっても遠い場所にあると気づかせられた。魔法も覚えて更に強くなったと感じたがそれでも、アイズとの差が縮まる気配なんてなかった、故に彼の心の奥底には焦りという感情が少し燻っていた。リリルカの事は勿論、最優先事項だが少しでもアイズの方へ近づきたいという自分の願いも無視出来ない、だから彼は決めた。

 

「そうだね、一回様子見に降りてみよう」

 

 ベルの答えを聞いたリリルカもまた複雑な気持ちになった。彼女は嘘なんて言っていない、今まで様々な冒険者を見てきた彼女はベルは自分が狙っているナイフが無くとも10階層ぐらいなら余裕で生き抜くことは出来ると判断した。だからこそ10階層に降りたら彼女は計画を実行するつもりで居た、10階層からならいくらベルの脚でも様々なルートを把握している自分に追いつける筈がない。

 

「では、ナイフ以外の武器も必要になるかもしれません。なのでこれを……」

 

 そう言ってリリルカはベルに一振りの剣を渡した。

 

「これは……」

 

 その剣を受け取ったベルはその剣の長さに驚いた。剣の長さは自分の身長に合う様に調整されていたのだ。

 

「…………ナイフだとリーチが不足気味や威力不足になると思っていたので勝手ながら用意させて頂きました。長さはレフィーヤ様に相談しながら調整しました」

「ありがとう! 嬉しいよ! 大事に使うね!」

「…………はい」

 

 本当はその剣はこれから盗むナイフの代わりにする為に用意した物だった、どんな武器でも絶対に釣り合わないだろうと感じたリリルカが5万ヴァリスで頼んだオーダーメイドの剣。一時の夢を見せてくれた二人の姉弟の為に自分が用意できる精一杯の物である。

 

(本当はもっと一緒に冒険したかった……)

 

 そんな考えを振り払う様に頬を叩き。彼女は少年と共に10階層を目指した———。

 

 この長い一日はまだ始まったばかり。




ここまで読んで頂きありがとうございます。

本来貰う筈両刃短剣(バゼラード)は19000ヴァリス(値切り前)なのに対して今作のリリはオーダーメイドのショートソードは50000ヴァリス(値切り後)なんです。
ちなみに彼女はこの一週間40万ヴァリスぐらい稼いでました(約3割はちょろまかせた魔石分)。

取りすぎじゃない?

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