私が妖精になるのは絶対間違ってる   作:ZeroRain

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ちまちま書いた物その2です。
ケイの設定を追加したのでリリルカ後編に少し修正しました。
よろしくお願いします。


ソロでそこにいる時点で怪しいと思う

 ——————ダンジョン7階層にて。

 

 リリルカから荷物を奪ったカヌゥ、レンダー、ケイは軽やかな足取りで迷宮の中を歩いていた。

 

「へへっ、このナイフ一本だけで何千万ヴァリスになるんだ? これに加えて魔剣やアーデの貴重品まであるから楽しみで顔がにやつきそうだぜ」

「もうニヤついてるぜ旦那。だが違いない、今度のソーマは俺らが頂きだ!」

「けどよ、よかったのか?」

「「んぁ?」」

「ザニスさん曰くアーデを生きたまま捕まえて欲しいんだろ? よかったのか殺しちゃって?」

「そう言えばそうだったな、まあどうにもなるだろ。アーデが俺らから逃げてる最中に魔物に攻撃されて死んだとか言えば納得するだろ」

「それ良いな! そういう事にしょう!」

「けどよぉ、あのザニスさんがそんな理由で納得するか?」

「ケイ、おめぇは気にしすぎだ! 平気だって言ってるだろ?」

「そ、それもそうか。すまねぇなカヌゥさん」

 

 彼らが地上に向かって歩いていると、一人の少女が彼らに声をかけた。

 

「あのぉ……」

「んぁ? 何だ嬢ちゃん?」

「こんな所でソロかぁ? 死ぬぜ?」

「……(……ん? どっかで見た様な……)」

「私、その、弟を探してるんですけど、見かけてませんか?」

「弟だぁ?」

「しばらく誰も見てねぇな」

「……!? (……ん? こいつは!?)レンダーさんちょっと……」

「あぁ!? すまねえな、カヌゥの旦那ちょっとケイと喋ってくるわ」

「おう」

 

 レンダーとケイは少し離れた場所からカヌゥと少女のやり取りを見た。

 

「それでよぉ、どうしたんだケイ?」

「…………レンダーさん、そいつあの白髪のガキの姉だ。違いねぇ、どうりで見た事あると思った」

「ほぅ……それは良い事を聞いた。ちょっくらカヌゥの旦那にもその話聞かせろ。替わってくるわ」

 

 しばらくするとレンダーと入れ替わりカヌゥがケイの所にやってきた。

 

「それで話はなんだ?」

「……あいつはあの白髪のガキの姉です。調査した時に何度か見た事があります」

「へぇ、じゃああの杖はナイフと同じ物(へファイストス)か」

「恐らくですが、そうかと」

「なら決まりだな! ……誰も居ねえルートに連れて行くぞ」

「……はい」

 

 カヌゥは少女の前に戻ると笑顔で話しかけた。

 

「どうやらあそこに居るうちの斥候は嬢ちゃんの弟を見たことがあるかも知れねえ。嬢ちゃんの弟の特徴を教えてくれ」

「ほ、本当ですか? 白い髪で紅い瞳をした男の子なんですけど……」

「ああ、じゃあ違いねぇ。あいつが見たガキと一緒だ。10階層に見たらしいぜ」

「じゅ、10階層ですか!? そんな所に……」

「なんなら俺らが案内するか? 嬢ちゃんだけじゃ正確な場所はわからないだろ?」

「い、いいのですか! それなら是非!」

「ああ、困ってる時はお互い様だろ?」

 

 少女に気づかれない様にカヌゥは必死にニヤついた顔を隠していた。

 

 少女を連れて、カヌゥ達は再びダンジョンに潜った。

 ➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖

 

「あっさりと喰いついたね、やれやれ」

「レフィーヤちゃんだけで本当に大丈夫ですかね?」

「あんな連中なんてあの子なら余裕で無力化出来るでしょ? ラウルは心配性ね」

「彼女自身を餌にするのは僕もあんまり乗り気じゃないが、彼女が言い出したんだ仕方ない事さ……」

「っていうかこの魔法やばいわね、完全に感知出来ない魔法なんて聞いたことがない……」

「……リヴェリアがまた発狂するだろうね、いやもう発狂しているかもしれない」

 

 そう遠くない場所から見守っている三人もまた歩き出した。

 

 ➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖

 

 ——————ダンジョン9階層

 

 カヌゥ一行は少女を連れてここまで来た、だが不思議な事に魔物に一度も会う事無く彼らはここまで来た。

 

「凄いですね、魔物に会う事なくここまで来られるなんて。もしかしてスキルですか?」

 

 少女は驚きを隠さずにそう言った。

 

「…………詳細は言えないがそうだ。俺のスキルはそういう物だと理解すれば良い」

「なるほど……でもいいなぁ、毎回安全に潜れるんですから。カヌゥさん達が羨ましいです」

「ガハハハ、俺らはケイと組むのは実は今回が初めてでな。こいつはいつもソロなんだよ」

「そうなんですか? ソロは危ないです……と言いたい所なんですけど。ケイさんなら余裕ですね」

「まあケイのやつは昔から変わってるやつでよ、神々のよく使う言葉を頻繁に使うしさ」

「そうだったな、一時期マヨネーズを売って成り上がるぜ! とかデケエ口を叩いてよ。けどマヨネーズなんてありふれてるだろ? 最後はこれは定番なんだろ!? なんで売れねえんだよ! と叫んだな」

「そうなんですか?」

「……あの時は既に売ってるなんて聞いてないし」

「あとアレもあるぜ旦那、入団すぐに俺TUEまったなしだ! とか言ってたぜこいつ。結局二年経ってもレベル1のままなんだけどな」

「そうだったな! ガハハハ!」

「……もう殺してくれ」

「そんなケイさんは何故急にパーティなんて組む事になるんですか?」

「……別に大した理由じゃないよ。むしろつまらない理由だ」

「……そうですか」

 

 それから誰もが声を出さなかった。静けさと彼らの足音だけが聞こえる。

 

 そんな静けさを打ち破るのはカヌゥだった。

 

「ケイ、そろそろいいか?」

「…………はい」

 

 カヌゥ達は足を止め、そして振り返った。少女はそんな彼らの行動に不思議に思ったのか。彼らに問い出した。

 

「あのぉ、どうしたんですか?」

「悪りぃな嬢ちゃん、ここまでだ」

「えっ? …………ハグッ!?」

 

 カヌゥは拳で少女の腹部を思いっきり殴った。痛みで少女は崩れ落ち、彼らを見上げた。

 

「な、何をするんですか!?」

「すまねえな、嬢ちゃん。10階層まで行く必要なんてねえからな、なんせ弟の遺品はここにあるからよ」

 

 カヌゥはマントの裏から漆黒のナイフを取り出した。

 

「そ、それは!?」

「見覚えがあるよなぁ? まあこいつの持ち主はもうこの世にいないけどよぉ」

「それを持っている弟とリリルカちゃんに何をしたの!?」

「これはお前の弟から取ったんだわ、あとアーデは俺らが殺った」

「そ、そんな…………」

「おい、レンダー、杖を取り上げろ! ケイ、お前は周りに警戒しろ」

「うっす」「……はい」

「……一体どうやってベルとリリルカちゃんを殺したの!?」

「お前の弟はオークにリンチにされたのは見たな、お前の弟のナイフを回収したリリルカは俺らの団長のザニスが用意した猛毒でちょちょいのちょいだな、ガハハハ!」

「カ、カヌゥさん。そこまで言わなくても……」

「おいおい、ケイよぉ。俺はこの嬢ちゃんの絶望している顔が見たいんだぜ? だから本当の事を言うまでだ」

「おい、ケイ。カヌゥの旦那に口答えはするなって言ってんだろ?」

「……!? す、すまん」

「俺の偉大だからそんぐらいは許すぜ、なぁケイよ。……所で最近嫁は病気だったな? 平気かぁ?」

「…………はい、最近安静しています」

「そっかそっか、急に倒れるなんて聞いたから大変だったなぁ」

「(ギリッ)…………うっす」

 

 拳を強く握ったケイとニヤニヤしながら少女を見下ろしたカヌゥ。一方、レンダーは少女から杖を取り上げようとしていた…………

 

 だが———

 

「アババババババ!!!」

「おい、レンダー!?」「ッ!?」

 

 奇声を上げながら倒れたレンダー、そして立ち上がる少女。

 

「ご協力ありがとうございます。ついでにギルドまで同行してくれると嬉しいですけど」

「あぁ!? おい、嬢ちゃん! お前、レンダーに何をした!?」

「何って、ただの防犯能力ですよ? 私が認めた物以外この杖に触ろうとするとこうなります」

「思った以上に厄介な奴だな、お前は!」

「仕方ないですよ、だってあなたは私の家族に手を出したんですから。ですからギルドに同行願います」

「ハッ! お前一人で何ができるんだ!」

「何が出来るって? これぐらいかな?」

 

 少女がそう言った瞬間カヌゥとケイは自分の足が凍りついて動けない事に気づいた。倒れているレンダーは既に体全体が凍っていて動けなくなっていた。

 

「……こ、これは!?」

「くそ!? なんなんだこれは!? おい! 俺たちを離せ!」

「離しますよ? ギルドへの同行を承知した場合ですけど」

「…………わかった俺は同行する」

「おいケイ! 巫山戯るな! ………………ヒィイイ!?」

 

 氷が既にカヌゥの下半身を覆われた。一方ケイの方は未だに膝下までしか凍っていない。

 

「わ、わかった! わかったから! た、頼むよ!?」

「はい、かしこまりました。同行ありがとうございます」

「…………チッ(いい、この氷が消えていれば鞄の中に有った魔剣を使って逃げればいいだけだ)」

「それじゃあ、助っ人をお呼びしますね。フィンさん、お願いします!」

 

 突然彼女の後ろから現れたフィンにカヌゥは言葉を失った。

 

 ここで彼は気づいた。手を出してはいけないモノに手を出してしまった事を。

 

 一方、ケイの方は目を閉じ、すべてを受け入れる事を示した。

 

 

 




ここまで読んで頂きありがとうございます。

どうでもいい裏設定:

カヌゥ
今回の主犯人。ザニスからの垂れ流しでリリが結構な財産を隠してるの聞いた、その情報料としてリリを捕まえてホームまで連れて帰って欲しいと依頼された。代わりに彼女の財産をすべて貰っていい。
狸の獣人
リリルカからの評価クズ狸

レンダー
強い奴に媚びるのが生き甲斐の小物。普段はカヌゥと二人のコンビで動いてるが。今回の依頼でソーマ内で特に優秀なケイの妻に毒を飲ませ、その解毒薬を報酬として彼を脅迫した。
髪型はアフロ
リリルカからの評価は三下アフロ

ケイ
転生者、神に会う事無く唐突にとある村の一般家庭に生まれた。俺TUEや知識チートに憧れて、オラリオに来てみてはいいが知識チートは全て神々がやったので特に成功する事無く挫折。まともなソーマの副団長に勧誘され、俺TUEを試みたが成長チートも無く強い魔法も無い、その代わりに反則的な感知スキルを手に入れた。
冒険者を始めて半年経った頃、とある屋台の従業員に惚れて猛アタックした結果二ヶ月前に無事結婚した。それからソーマを脱退するつもりで頑張っている日々が続いたら。妻がカヌゥとレンダーに衰弱の毒盛られて倒れていた、その解毒薬をチラつかされ仕方なく彼らに手を貸した。
リリルカからの評価偶に変な事を言う同僚のお兄さん(厨二病)

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