私が妖精になるのは絶対間違ってる   作:ZeroRain

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本編を書いてる時に急に思いついたお話でございます。

妄想全開です!

9/23: 少し修正を入れました。


英雄譚1 The Archer

 一昔の話をしょう。

 

 場所はとある辺境の村、ほとんどの者達が眠っているその夜に、一人の白髪の少年はお気に入りの本を隠れながら読んでいた。

 

 少年はその紅く輝く瞳を輝かせながら本のページ一つ一つゆっくりとめくった。

 

 その本はタイトルはアルゴノゥト(道化/■始■■雄)、決して珍しい物語ではない。むしろ誰もが知っている滑稽な道化の物語。騙され、利用され、そして誰もが指差して笑った道化の話。決して英雄の器ではない道化は笑われながらも笑顔で前へ進み、そしてその旅の果てには怪物(ミノタウロス)を倒し、囚われのお姫様を救って英雄になった物語。

 

 少年が知っている他の物語に比べれば決してカッコいい部類の物語ではない。何故なら肝心の一番盛り上がるシーンは道化一人で怪物(ミノタウロス)を倒した訳ではなく、まさかの自分が助けたお姫様に手伝って貰った上で倒す事になったのだから。

 

 最初は少年は祖父に文句を言った。

 

『英雄なら怪物(ミノタウロス)を一人で倒してこそでしょ!?』と。

 

 それに対して祖父はただただ笑いながら答えた。

 

『こやつにはこれが一番じゃよ。これこそがこやつらしさじゃからな。何にせよこやつはワシのお気に入りの英雄じゃ、こやつの様な英雄は早々にない。何度も読めばお前さんもこやつの良さがわかるはずじゃ』

 

 それでも納得行かなかった少年は祖父の勧めた通りにひたすらにこの物語を読み直した、そして気がつけば道化は彼の中で憧れの英雄の一人になった。他の英雄に比べると確かに派手な魔法や必殺技がないものの、それでも道化は他の英雄に負けないぐらい輝きを少年に魅せてくれた。

 

 挙げ句の果てに道化に憧れて剣を練習し始めた始末だ。

 

「やっぱり面白いなぁ、アルゴノゥトは……。僕も将来、彼の様な冒険が出来るのかな……。それでお姫様と……えへへへへ」

 

 少年が自分の妄想でニヤニヤしながら枕を叩くと。彼のベッドの下から寝言が聞こえた。

 

「おじぃちゃん……、また……のぞき……。かえったらおしおきだからね……。むにゃむにゃ……」

 

 少年は下のベッドを覗き見するとそこには気持ち良さそうに眠っている山吹色の髪を持つ小さなエルフの少女が居た。

 

 その少女は数年前に祖父が拾って以降、少年の姉になった人物である。普段は優しい人だが怒らせると物凄く怖い人でもある。

 

(……今の寝言は夕方におじいちゃんが村の娘達を覗いた時の事だよね)

 

 思い返すのは今日の夕飯に何故かあちこち傷だらけの祖父と終始笑顔の姉の姿だった、アレは間違いなく祖父が何かをやったと少年は確信したが。今この瞬間、祖父の怪我の理由がわかった。

 

(おじいちゃんもおじいちゃんで懲りないよねぇ、お姉ちゃんを怒らせるとろくな事にならないってわかってる癖に……)

 

 そう思いながらも少年の頭では豪快に笑った祖父が過ぎる。

 

(……毎回、怒られてる癖にいつも同じように『そこには楽園があるのに行かないのは無作法というものじゃよ!』って言うし)

 

 はぁ……。と溜息を吐いた少年は改めて読書に戻ろうとするが、姉を起こすかもしれないと思った彼は読書の場所を移す事にした。

 

(客間でなら他の本もあるし、あそこで読もう!)

 

 そうと決めた少年は再び下のベッドを覗き込んだ。そこには変わらずスヤスヤと眠っている姉が居る。

 

(……ゆっくり降りれば起きないよね)

 

 少年はそろりそろりと自分のベッドから降り、そして忍足で扉の方に向かっていた。だがここで不運にも少年は扉の近くにある机に小指をぶつけた。

 

「ッッッッ!!!!!」

 

 咄嗟に声を抑える事に成功した少年だが、今度は少年が手に持った本を先ほどぶつけた小指に落としてしまった。

 

「痛ッ!?」

 

 思わず大きな声が出てしまった……。しまった! と思った少年は直ぐにベッドの方に視線を動かした。

 

 そこには眠い目を擦りながらこちらを見ている少女が居た。

 

「どうしたの?」

「えーあーえっとー」

「おといれ? こわいならついててあげようか?」

「ちがうよ!?」

「じゃあ、どうして?」

「えっと……眠れないから本を少し読もうかなって……」

「そうなの? ……じゃあ、わたしもいくー」

「え!? いやいや、お姉ちゃんは寝てていいんだよ!?」

「でも、ひとりだとおといれいけないでしょ?」

「だからおトイレじゃないって!?」

「なんじゃ? こんな時間に騒ぎおって」

 

 そこに騒いでる二人(主に少年)を聞きつけた老人が現れた。

 

「あっ、おじいちゃん……」

「このこおといれいけないからいっしょにいこうってわたしをおこした」

「ちがうって!?」

「なんだ? トイレか? まったくお前さんは……」

「だからちがうってば!」

「じゃあ、どうしたんじゃ?」

「ね、眠れないからちょっと本を読もうかなって……」

「なんじゃ、そんなもんか」

「う、うん」

「そうなんだぁー」

「お姉ちゃんには言ったんだよ!?」

「そーなの?」

「ダメだ!? 睡魔のせいでふにゃふにゃでポンコツになってる……」

 

 このふにゃふにゃ姉は早く寝かせなければ! 

 

「ハハハハ! ならお前さん達にはワシがとっておきの英雄譚を聴かせよう」

 

 英雄譚と言う言葉を聞いた途端、少年は期待に溢れる瞳で祖父を見つめた。

 

「え、英雄譚! 今度はどんなお話!?」

「まあ待て、まずはこのふにゃ娘をベッドに戻す。英雄譚はそれからじゃよ」

「うん! わかった!」

「あーい」

 

 老人は少女をベッドに再び寝かせたら、今度は少年を自分の膝の上にすわらせた。

 

 膝に座った少年は期待でテンションが上がりっぱなしで仕方なかった。

 

「さて、今回の英雄譚はこの大陸とは違う大陸の話じゃよ」

「違う大陸?」

「そうじゃ、海を越えなければ辿り着けぬ遠い遠い場所の話じゃよ」

「そんな場所あるんだ……」

「ああ、あるんじゃ。そこにも英雄達が居た。理不尽相手に立ち上がる者達や怪物を倒した英雄などがな」

「アルゴノゥトみたいな英雄も居るの?」

「ああ、居たとも。だが今日はそやつの話じゃない」

「違う英雄の話なの?」

「そうじゃ、だがただの英雄じゃないんじゃぞ?」

「どんなの?」

「そやつの後に現れた英雄達はこう呼ぶんじゃよ…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 “勇者”とな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖

 

 

 舞台は神々がまだ地上に降りる前の時代、古代にあった国の一つじゃよ。

 

 遥か遠くにあるその国には一人のヒューマンの男がおった。その男はドワーフよりも頑丈、獣人より優れた身体能力を持ち、そしてエルフより優れた弓の名手じゃよ。

 

 その男の名はアーラシュと言う。

 

 なんじゃ? “勇者”なのに弓なのはカッコよくないじゃと!? お前さんはまだまだじゃのぅ……。とりあえずワシの話を聞いとけ。

 

 そのアーラシュが住んでいた場所は永らく戦争に巻き込まれたんじゃよ。

 

 なんじゃ? 戦争になった理由? ふむ、まずとある国の国王は民なんぞ考えずに己の我欲のまま好き勝手にやった暴君じゃった。その暴君はある日なんでも願いを叶える『精霊の聖杯』があると言う噂を聞いたんじゃ。その聖杯を手に入れたい暴君は己の国軍を動かし、聖杯があると噂される隣国の領地を侵略した。じゃが、噂の場所を手に入れても聖杯が現れないのじゃよ。そこで暴君はこう考えた、隣国の全て手に入れればいずれ聖杯は自分の前に現れるのでは無いかと。そこから暴君の侵略が激しくなった。

 

 その隣国こそがアーラシュが住んでいる国じゃった。

 

 無論、アーラシュの国の国王もそのまま己の国が荒らされるの見ている訳ではなかった。じゃが、暴君は文字通り一騎当千じゃった、そのせいでアーラシュの国の軍は成す術もなく蹂躙されておった。

 

 暴君の進軍は止まらず、そして気づけば、残されたのは王都のみとなったのじゃ。

 

 そこで勝ちを確信した暴君は王都の包囲が完成した日の昼方に、国王にとある賭けを投げ掛けたのじゃ。

 

『明日の朝方までにこの王都の隣にある山の頂きから弓矢を放て。そしてその弓矢が落ちる場所まで俺が持っている領地や富を全て貴様にくれてやろう。この賭けは貴様が信じている精霊達に俺が誓う、まあ出来ると言うのならばな? ハハハハ』とな。

 

 それを聞いた国王は嘆いた、『どうやればあの賭けに勝てと言うのだ!? あやつは我が国と我が民をなんだと思っておるのだ!? ふざけおって!!』

 

 そこでとある若者が声を上げた。

 

『ならばその役目は俺がやろう!』と。

 

 誰も彼もが声を上げた若者を見た。視線に晒された若者はニカッと笑い、続けて言ったのじゃ。

 

『あのイカれた暴君の賭けの相手はこの俺、アーラシュがやろう!』

 

 若者、アーラシュの言葉を聞いた国王は首を横に振った。

 

『ダメだ、将来のある若者であるお前にこの様な事をやらせるわけにはいかんのだ!お前は他の者達を連れて避難せよ!』

 

 国王の返事にアーラシュは笑顔で答えた。

 

『いいや、陛下ならわかる筈だ、俺以外にこの役目を成す事が出来る者は居ないと。ならば俺の命一つでこの国の未来が紡ぐ事が出来るのならば、俺は喜んで死のう!』

 

 アーラシュの覚悟に国王だけではなくその場に居た国民達までもが言葉を失った。

 

 そして苦い決断の末、国王は口を開けた。

 

『…………ッ!! ならば、我が国の最高峰の弓兵であるアーラシュに命じる! このふざけた戦争に終止符を撃つ最高の一矢をこの私に魅せてくれ!』

 

 国王の命令を聞いた国民達は皆、悲痛の表情浮かべた。だが当人であるアーラシュは満足そうにその命令を聞いた、そして彼は再び笑顔でこう言ったのだ。

 

『例えこの体が砕け散っても、俺はこの愛しい我が国の為に最高の一矢をこの国に魅せてやろう! だから下を向くな! 下を向いたままじゃ、俺の弓矢が見れないだろう?』

 

 そう言ってアーラシュは彼を匿う仲間達と共に山頂を目指した。彼らが進んだ道は決して楽な道では無かった、負けを恐れたか否か、暴君の兵士達が彼らの行く道を阻んだのだ。それでもアーラシュの仲間達は一人また一人、アーラシュの行く道を切り開く為に犠牲になったのだ。

 

 そして山頂に辿り着いた時には、アーラシュはただ一人になってしまった、だが彼は決して一人じゃない、彼の胸には散った仲間達の想いや愛しい我が国の悲願で満ちっていた。

 

 一人、山頂に立ったアーラシュは叫んだ。

 

『さぁ! 陽のいと聖なる主よ!』

 

 アーラシュの叫びで大地が震えた。

 

『あらゆる叡智、尊厳、力をあたえたもう輝きの主よ!』

 

 荒れ狂う風が止んだ。

 

『我が心を、我が考えを、我が成しうることをご照覧あれ!』

 

 あちこちからは神秘なる光が溢れ出した。

 

『さあ、月と星を創りしものよ !』

 

 一瞬にして雲が全て消え去った。

 

『我が行い、我が最期、我が成しうる “聖なる献身(スプンタ・アールマティ)”を見よ !』

 

 月が、星が、大地が、そして精霊達がこれから行われる事を見守っていた。

 

流星一条(ステラ)ァアアアアアアアアア!!!!!』

 

 大地から流星が打ち上げられた。尊く煌めいたその流星は空を切り裂きながら瞬く間に暴君の国の最果てまで届いた。

 

 そう、届いてしまったのじゃよ。

 

 只人であるアーラシュに、神器や聖霊の力を借りずに彼は成し遂げたんじゃ。ヒトと言う尊い可能性を聖霊達や天界に見守っておる一柱の神に魅せ付けたのじゃよ。

 

 思えばアレ程の胸の高鳴りはアルゴノゥト以来じゃったな。

 

 その後アーラシュが成し遂げた偉業は精霊達に認められ、精霊達の反感を買った暴君やその部下達は瞬く間に死んでおったのじゃよ。

 

 そしてアーラシュの国は現在も健在じゃよ。そして“勇者”アーラシュはその国では知らない者が居ない程のとっても人気な英雄じゃ。

 

 オラリオでは誰もが聞いた事がないじゃろうけどな、本当に残念と思っておる。

 

 ➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖

 

 

「—————と言うのがアーラシュの物語じゃ! どうじゃ? かっこいいじゃろ?」

 

 老人は少年に語りかけたが、当の少年は既に眠っていた。

 

 スヤスヤと幸せそうに眠っている少年に老人は優しく彼を彼のベッドに移した。

 

「お前さんもいずれは自分だけの冒険をするんじゃろう、それが“新しい”冒険かそれとも“前回”の続きなのかはワシにはわからんが…………だが願わくばその冒険の果てはワシがお前さん達の隣で見届ける事が出来る事じゃ…………」

 

 眠っている少年に優しく撫でた後老人は二人の部屋から出て行った。

 

「…………今度はどんな英雄譚を聞かせるのかのぅ」

 

 老人はニヤけた顔でそう言った。




ここまで読んで頂きありがとうございます!!

唐突な英雄譚ネタです!

Fate色がかなり濃いやつですね!

登場人物:

少年
白髪で紅瞳の少年、11歳。ウサギみたいで可愛いと評判。
将来バグウサギ。
アーラシュの話聞いた後はこっそり弓の練習し始めたのは内緒。

老人
真面目な時はカッコいいのに基本は下半身で物事を考えるジジイ。
今日の夕方に村娘達を覗きしていたのバレて山吹色の鬼にボコボコにされた。

お姉ちゃん
山吹色のエルフ少女、基本はしっかりしてるが眠いとボンコツになる。
将来バグるとかバグらないとか?
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