私が妖精になるのは絶対間違ってる   作:ZeroRain

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大変お待たせいたしました。
皆さんはもう最新刊読みましたか?私はまだ届いてすら居ません……。


剣姫を探して……(5)

 かなりの消耗を強いられていながらも遂に食糧庫(バントリー)に辿り着けた【ヘルメス・ファミリア】。ようやく到着した彼らが目にしたのは食糧庫(バントリー)の本体と言うべき結晶に纏わり付いた大きな花型モンスターだった。それだけでは無く、結晶体に寄生している花型モンスターをうっとりする表情で祈りを捧げた数十人の人々(狂信者)もそこに居た。

 

『ああ、なんて美しい!』

『これでわたし達の願いがもう直ぐ叶う!』

『我が神よ! これで貴方の無念を晴らす事が出来る!』

『なんてお美しい! なんて神々しい! 流石は我が神の意志!』

 

 狂信者の中に愛しそうに花型モンスターに抱き付いた者もいた、そして抱き付かれたモンスターはうんざりそうでその狂信者を殺し、そしてその体を食い散らかした。だがそれを見た他の狂信者は羨ましそうにその光景を見て、次は自分の番だと言わんばかりに順番を奪い合っていた。

 

 

 そんな信じられない光景を目の当たりにした【ヘルメス・ファミリア】は言葉を失った。

 

 それを見た小人族(パルゥム)の魔導師のメリルは震えながらその光景を見ていた。彼女の後ろに立っていたドドンはそんな彼女を優しく抱きしめた。

 

勇者(ブレイバー)】に憧れた小人族(パルゥム)の双子であるポックとポットも同様……いや、双子だけではない、他の団員達も同様にその理解不能な光景に恐怖を覚えた。

 

 団員達が混乱と恐怖に晒されてる間に、団長であるアスフィは冷静に状況を分析していた。

 

(……結晶体の周りに居る連中もそうだが、この空間自体は異常だ。この不気味な迷宮の壁から無数の食人花(ヴィオラス)が産まれている……ここが間違いなくあの化け物の巣穴と言うべきか)

 

 そしてアスフィはとある物を見つけた、それは……

 

(!? ……檻の中に入っている!? ……まさか、こいつらをオラリオ外に運ぶのか!? だがどうやって? いや……可能性があるとすれば……それは……『もう一つのダンジョンの入口』だ……)

 

(だがそれが現実だとすればこれは間違いなく我々の手に余る事件だ……まさか我々をここに送った男はこれを知って?)

 

 その時、考え込んでいるアスフィを現実に引き戻したのはルルネからの一言だった。

 

「ア、アスフィ! アレだよ! あたしが回収を依頼された『宝玉』だよ!」

 

 ルルネが指差した先にはとっても大事に置かれた不気味な宝玉があった。

 

「な、なんですかアレは!?」狼狽えていたエリリー。

「……き、気持ち悪いです!」顔を青くしたネリーはそう言った。

「…………!?」宝玉を見て絶句したドドン。

「…………ドドン?」ドドンの様子が可笑しいと感じたメリルがドドンを見つめた。

 

【ヘルメス・ファミリア】が再び混乱に陥っている間に、狂信者達は動き出した。仮面を被っている男が彼らに命令を下し、直ぐ様に彼らは迅速に行動した。

 

『我らの神の悲願を邪魔する奴らに死を!!』仮面を男は叫び出した。

 

『『『『『『『『『死を!!』』』』』』』』』その叫びに狂信者達が応えた。

 

『全ては我らの神の為に!!』男は再び叫び出す。

 

『『『『『『『『『我等の神の為に!!』』』』』』』』』

 

『これは聖戦だ!!』最後に男は高らかに叫び出す。

 

『『『『『『『『『聖戦だ!!!』』』』』』』』』

 

 そう叫びながら狂信者達は真っ直ぐに【ヘルメス・ファミリア】に突撃をした。

 

「ッ!? 各員! 戦闘準備! 奴らを迎撃します!」

 

『ハッ!!』

 

 こうしてアスフィ達と狂信者達の戦いの幕が開けた。

 

 

 

 

 

 

 

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「いやはや、こいつらは一人一人は大したものじゃないが、この数だけは流石に脅威だな」

 

【ヘルメス】所属のエルフであるセインはそう言いながら狂信者を次々と倒していった。

 

「セイン、軽口言わない! いい加減戦闘に集中して!」

 

 近くに戦闘を行なっているルルネはそんなセインを注意しながら彼と同様に狂信者達を応戦している。

 

「そう言うなルルネ、私がこう言う性格なのが君も知っている筈だ」

 

 優雅に笑いながら近くにあった狂信者の一人を組み倒した。

 

「ハハハ、どうだい? かの武神の技を見様見真似でやってみたが上手くいってるだろう?」

「はいはい、この擬似ヘルメス様。……いい加減真似る()が間違ってるって理解して欲しいんだけど」

「私の事はいいから、早く『開錠薬(ステイタス・シーフ)』を出しなさい」

「へいへい、わかってますよー」

 

 そういいながらルルネはポーチから開錠薬(ステイタス・シーフ)を取り出した。

 

 開錠薬(ステイタス・シーフ)は使用されるとその人物のステイタス・ロックが解除され、冒険者の生命線と呼べるべきステイタスの情報が丸見えになる。

 

 だがもちろんそのステイタスは誰にでも読める物ではない、ステイタスは神々の文字と呼べる神聖文字(ヒエログリフ)として刻まれる。だが彼らは【ヘルメス・ファミリア】、この手は得意としている連中である。

 

「へへへ、あんたらの所属を見せてもらいますよ」

「やれやれ、なんてゲスい獣人だ」

「あんたが言うなゲスエルフ」

「なんと!? 心外だ」

「どこがよ!」

 

 だがそんなセインとルルネの軽いやり取りは彼が抑えた男の一言によって終わらせられた。

 

『……神よ、この命を盟約に沿って捧げます』

 

「なっ!?」

 

 一足先に行動を起こしたのは男を抑えたセインだった。

 

「ルルネ、私から離れろ!!」

 

 彼は隣に居たルルネを突き離した、そしてその同時に狂信者は笑いながら自爆を行った。

 

『我が女神の名の元に!!!!』

 

 セインは爆炎に飲み込まれ、その場に倒れ込んだ。幸い即死には至らなかったがそれでも彼は直ぐ様に治療が必要な傷を負った。

 

「せ、セイン!!!」突き飛ばされたルルネの叫び声が響く。

 

 離れた場所から自爆を目の当たり他の団員達は狼狽えた。

 

「なっ!?」

「じ、自爆だと!?」

「そんなやべえもんを巻きつけてるのかこいつら!?」

「しょ、正気じゃねえ!!」

 

 感化された様に狂信者達は己の自爆スイッチを握り締めて【ヘルメス・ファミリア】の前衛に再度突撃を行った、だが今度は彼らは死を持っても悲願の邪魔している目の前にある連中を排除する覚悟が目に見える。

 

「こ、こいつら死兵だ!」

 

『神よ!! この愚かな連中に祝福を!!』

『ああ、女神よ!! 貴女の理想を理解出来ないこの愚者達に天罰を!!』

『愛しの女神よ!! この身は貴方の為にあります!!』

『この愚かな我が身に救済を!!』

 

 自爆に続きまた自爆。途切れる事のない狂気の果てに【ヘルメス・ファミリア】は逃げ惑う。

 

『そうだ!! 忠誠を!! 我らの尊い神の名の下にその忠誠を捧げよう!! その身を!! その魂を!! 我らの神の為だけにあるのだ!! ならば死を恐れる事などない!!』

 

『忠誠を!!』『祝福を!!』『約束された死後を!!』

 

「や、やべえよ!!」

「あんたらバカでしょ!?」

「なんなんだよこいつら!!」

 

 混沌と化した戦場に一角でアスフィは指示を飛ばした。

 

「ネリー! 一刻も早くセインにハイポーションを! 彼は最優先です!」

「ハ、ハイ!!」

「ドドン! メリルを連れてポーションがなくなってる団員に回復魔法を! 出来るだけ早く!」

「……!!」

「う、うん!」

 

(死に向かいながらも神を称える!? 死をもって神に忠誠!? これが彼らの神の神意と言うのか!? 彼らは私達の理解を超えている……)

 

 アスフィは苦しい表情で戦況を分析している、敵は彼らの予想を遥かに超えており、状況は悪化し続ける。

 

(な……なんなんですか!? 私達は一体何と戦ってると言うんですか!?)

 

『ふふふ、死兵達に気を取られてばかりではいけないぞ。お前達も忘れられては困るよなぁ? 食人花(ヴィオラス)よ』

 

 戦況が更に加速する。




ここまで読んで頂きありがとうございます!!


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