私が妖精になるのは絶対間違ってる   作:ZeroRain

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すみません、前の更新からだいぶ空いてました。
スランプ気味で何も書けませんでした……。


尊き溢れる日常(1)

 ———【黄昏の館】

 

 僕達は今、【ロキ・ファミリア】の応接室に集まっている。と言っても集まっているメンバーは僕と僕の目の前に優雅に紅茶を飲んでいるフィンさん、そしてそんなフィンさんの後ろに立つティオネさん。

 

 何故人数が少ないかと言うと、それは依頼があるから居ないレフィ姉達は勿論、それに加えてリリやもう一人の人の改宗(コンバート)をする為に神様とロキ様が居ない事と、ガレスさん達は【ソーマ・ファミリア】関連でギルドに出掛けてるからだ。

 

「……【ソーマ・ファミリア】の件が予想以上にすんなりと通れたのはいいとして、まさかあんな方法でファミリアの脱退が認められたとは思わなかったよ」

 

 フィンさんは少し苦笑いをしながら先程あった出来事を振り返った。

 

「……はい、ですが団長、【ソーマ・ファミリア】の解体が実現出来なかったのは私としてはとっても悔しいのですが……」

 

 そう言ってティオネさんは悔しそうな顔を浮かべた。

 

「あのね、ティオネ。僕達はあのファミリアを潰すのが目的じゃ無いんだ。違法薬やさまざまな犯罪に手を出した【ソーマ】の団員を捕獲出来たのはデカいんだ、【ガネーシャ】にも恩を売れたしね」

「それもそうなのですが……」

「それに新しい家族も増えたんだ、まずそれに喜ぼう」

「はい……」

 

 そんなやり取りを終えて、今度フィンさんは僕を見た。

 

「それにベル、君としては大いに助かるんじゃ無いか? なんせリリルカ・アーデの為に用意したお金が丸々残っているだろ? 後は迷惑料の事もあるんだしね」

「そうですね、少し借金の足しになるのでとっても助かりました」

 

 そう、今回の件で【ソーマ・ファミリア】から迷惑料として500万ヴァリスを手に入れた、そこからに【ロキ・ファミリア】と山分けして、お互いに250万ヴァリスずつ入る事になった。

 

 ロキ様は少ない! と怒鳴ったが僕からすれば十分に多額なんだけどね、一応彼方の言い分は団長であるザニスがファミリアの資金に手を出し過ぎて支払う金がないとの事。ロキ様は現金以外だと出回る物よりいい【神酒(ソーマ)】を貰うらしい。

 

 今回の事件の原因とも言える、神々の飲み物、神酒。下界の人々である僕達はそれを一口でも飲むとその人生をぶっ壊す魔性の酒……らしい。

 

 実際に先程一杯飲まされた僕の感想としてはただただ美味しいだけの酒。一方、迷いも無くソレ(ソーマ)を飲んだ僕を見て全員が慌てたが何事も無く盃を空っぽにした僕を見て、ソーマ様を含めた全員が絶句したのがちょっと面白い。神様とかかなり心配していたが、「ただの薬でしょ?」って返したら「本当、君ってやつは……」て呆れながら笑った。

 

 フィンさんは僕の手にある物を見て再び話しかけた。

 

「まあ、それとは別に神ソーマが自ら君に【神酒(ソーマ)】を贈った時は本当に笑ったよ、欲しくてたまらない物がただで渡された時のザニスの顔は本当に最高だったよ」

「そ、それは何よりです」

「それでその神酒はどうするんだい?」

「僕一人で判断していい物じゃないので、みんなとの話し合いしてから決めたいですね」

「そうか、でもモノがモノだから十分に気をつけてね」

「はい、ご心配ありがとうございます」

 

 何を隠そうと僕の手にはソーマ様から贈られた正真正銘の【神酒(ソーマ)】があるんだ。うん、レフィ姉が帰ったら絶対どやされるね……。あと帰り道にロキ様が僕にべったりした理由の9割はこいつ(ソーマ)のせい。薬酒ならぬ厄酒、事件の原因だからある意味間違ってないか。

 

 僕達は話しているうちに扉が開いた、神様とリリが戻ってきたんだ。

 

「お待たせベル君」

「お待たせしてすみません、ベル様!」

 

 僕は戻ってきた二人に「おかえり」と返した。

 

 戻ってきた神様は僕の隣に座り、そしてその膝にリリを乗せて抱きしめた。

 

 一方、リリは恥ずかしそうに「へ、ヘスティア様ぁ」と顔を真っ赤にしながらもその膝から降りる事はなかった。

 

 フィンさんとティオネさんはそんな二人のやり取りをニヤけた顔で見守っている、多分僕もだけど。

 

 暫くするとロキ様が戻って来た。

 

 ロキ様の姿を見たフィンさんは軽く「おかえり」と微笑んだ。

 

「ただいま、フィン」

「彼は?」

「早速、嫁さんのトコに行った。それとあの子はもうレベル3になれるんやけど、とりあえず保留しといたわ」

 

 ロキ様の言葉を聞くとフィンさんは少しびっくりしていたがすぐ様に嬉しそうな顔を浮かべた。

 

「そうか、なら他のみんなとの連携や訓練が終えれば。予想より早く彼を遠征に連れて行けるね」

「せやな。まあ、あんま無理させんといて」

「勿論さ。後で彼の教育はラウルに任せるさ。ラウルとなら大丈夫だろう」

「そうやなぁ……」

 

 そう言いながらロキ様は僕の隣に座った、そりゃもうべったりだ。

 

「ベルた〜〜〜ん♡」

「……なんですか?」

「もう一口欲しいんやけどぉ〜♡」

「もうダメです、さっきあげましたでしょ?」

「いけずぅ〜」

 

 そんな僕とロキ様のやり取りを見た神様とリリは呆れた顔を浮かべた、「キミって奴は……」「またですか……」と言わんばかりの顔だね。

 

「……ロキ」

 

 フィンさんが静かにロキ様の名前を呼んだ。

 

「後でリヴェリアに報告するから、そのつもりで」

 

 フィンさんから無慈悲な一言。ロキ様は「勘弁しといて〜!」と泣きながら僕から離れた。

 

 神様は軽く咳払いをしながら、ロキ様とフィンさんをまっすぐに見つめた。

 

「ロキ、フィン君。改めて、礼を言う。君達のお陰でリリ君含めた子供達を助ける事が出来たんだ。本当にありがとう」

 

 そう言った神様を頭を下げた。僕とリリもそれに続いて頭を下げる。

 

 そんな僕達を見て、呆れたロキ様と苦笑いしたフィンさん。

 

「はぁ……もう何回も言うたけど、ほんまに気にせんといて。せやからこの話はもう終わり!」

「ははは、そうだね。もうこのやり取りは無しですよ、ヘスティア様」

「うぅ……わかったよ」

 

 それから僕らは他愛のない話をしながら時間を潰したり、リリが神様とロキ様の着せ替え人形になったり、ケイさんがリリの前にn回目の土下座したり、色んな事があった。

 

 だがそんな穏やかな時間に終止符を打ったのが、息切れしながら報告しに来たアキさんとラウルさんの姿だった。

 

 ベートさんが重体のレフィ姉を連れて帰ってきたと…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ———時が遡って、24階層

 

 

 

 

《ドサッ……》

 

『クハハハハッ!!! やった! やったぞ!』

 

 背後からそんな音が聞こえた、振り返るとそこには座り込んだクソエルフそして笑い狂った仮面の野郎が居た。

 

「一体何が……起きてやがる!?」

 

 不思議に他の狂った連中は立ち止まり、挙げ句の果てにモンスター共でさえもピクとも動かない。

 

 更にクソエルフの後ろを見ると駆け寄ろうとした数人を必死に止めた奴が居た。

 

「あ、あの子を助けないと! ドドン、いい加減に離して!」

「俺らを離せっての!」

「ね、ねえどうしたのドドン?」

「ダメ、危険、ここから、離れないと」

 

【ヘルメス・ファミリア】に一切の興味を持たずに仮面の野郎はただひたすらに狂う様に笑った。

 

「ベート!!」

 

 かなり離れたリヴェリアの声で我に返った俺はすぐ様に仮面の野郎の顔に蹴りを入れた。

 

 間一髪で回避されたが俺の蹴りは奴の顔を隠したその仮面を砕け散った。だが奴はクソエルフを連れて俺から離れた。

 

『やれやれ、貴様は空気が読めないのか?』

「んなもん知るか!! てめぇ、ソイツに何をやった!?」

『祝福さ』

「あ゛!?」

『私と同じような祝福を彼女に与えただけさ、元々は成長中の後ろの巨体に与えるつもりだったが、まさかこんな場所に、しかもアリアが居るこの場所に、彼女同様……いや、もしかしすると彼女以上に精霊に愛された人と出会えるとは思わなかった!』

「テメェは一体何を言ってやがる!?」

『クハハハハ! もう直わかるさ!』

 

 そう言って、奴の隣に座り込んでいたクソエルフはゆっくりと立ち上がった。

 

 そして立ち上がったクソエルフは今度ゆっくりと顔を上げた。

 

 だがその顔はいつものふわふわニコニコのうざったい顔ではなく。

 

 狂気に満ち溢れた笑顔と【深紅の瞳】で俺を見つめた。

 

 次の瞬間…………、俺の視界は紅の炎に包まれた。




ここまで読んで頂きありがとうございます。

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