私が妖精になるのは絶対間違ってる   作:ZeroRain

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久々の主人公な気がする!!


尊き溢れる日常(3)

 目が覚めるとふかいそこは見知った部屋だった。オラリオに来る前まで私が住んでいた家にある自室。

 

 体を起こしそのまま部屋を出た。部屋から出て周りを見渡すと使い慣れたテーブルや椅子に棚に並べられた英雄譚や手作り人形。床や壁にはベルの落書きもある。

 

「……何故実家? 私は先まで24階層に居たよね?」

 

 自分の記憶を照らし合わせても、何故自分がここに居るかは全くわからない。むしろ私の最後の記憶はあの仮面の男の攻撃をふさいだまでだった。

 

「うーん、やっぱりわからない……」

 

 あの後何が起きた? 誰かが叫んだのは聞いた様な気がする。でもそこまでだった……、もしかして私は大きな怪我を背負い、あの後村に返された? わからないなぁ……。

 

 しばらく考え込むと台所から美味しそうな匂いが漂う。それに気づいた私は自然と台所に足を運んだ。

 

「お爺ちゃんがご飯を作ってくれたかな?」

 

 しばらく会っていないお爺ちゃんに会えると思うとステップが徐々に軽くなる。

 

「お爺ちゃん、手伝うよー」

 

 そう言って私は台所に顔を覗かせた。けどそこに居たのはお爺ちゃんじゃなかった……。

 

 そこに居たのは…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【私】だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え?」

 

 私!? なんで!? どうして!? ドッペルゲンガー!? 死んじゃうの!? で、でも、幻覚かも知れない!! 

 

「あっ、起きたの?」

「ヒェ!?」

 

 は、話しかけられた!? やっぱり幻覚じゃなかった!! 

 

「フフッ、落ち着いて」

「うぇ!? は、はい!!」

 

 落ち着きなさい、落ち着きなさいよ。深呼吸深呼吸……。

 

「ふぅ…………」

 

 冷静になると再び【私】を見た。瓜二つかと思いきや、そうでも無かった。

 

 身長は私より高いし髪も私より短い、瞳は私と違って翠だし……何より耳が【短い】。つまりこの人は私と違ってハーフエルフ……。

 

「……あ、あなたは一体?」

 

 だから私は彼女に問いかけた。

 

「私? 私は■■ー■」

「え? な、何言ってるか聞き取れません」

「あっ、そっか。やっぱり無理なのね、なら仕方ない。私の事は適当に呼ぶといいよ」

「え、えっと……じゃ、じゃあ、お姉ちゃんとか?」

 

 ちょ!? 何言ってるの私!? いくら似てるからってお姉ちゃんは無いでしょ!? 

 

「へ?」

 

 ほら!! やっぱり困ってるでしょ!? もう! ばかばかばか!! 

 

「や、やっぱり無し「いい……いい響きね!! お姉ちゃんって!!」ほぇ!?」

 

 なんか急にテンションが高いよ!? 

 

「へぶっ!?」

 

 突然私は抱きしめられた。

 

「あぁ……可愛いなぁ、ずっと妹欲しかったんだよね! 私はいつも末っ子だもの。兄さんとかお姉様は確かに素敵な人達だけど、やっぱり私も下の兄弟が欲しいの!」

「お、おち、落ち着いて〜」

「ハッ!? ご、ごめんね、あんまりにも可愛くて」

 

 と言いつつ撫で始めるんですね。

 

「い、いいえ、大丈夫です」

「そっかぁ、よかった」

 

 手止めないんですね……。

 

「あ、あの……ここって私の実家だよね?」

「ん? 違うよ?」

「え、でも……」

「ここはね、あなたの心の奥底なのよ、まあ本来あなたはまだこの深層まで足を運べない筈なんだけど。ちょっとスキルの不具合があってね」

 

 何を……言ってるの? 

 

「す、スキルの不具合ですか? っていうかそもそもあなたは何者なんですか!?」

「お姉ちゃんだよ?」

「と、惚けないで下さい! ここが私の心だというならあなたは誰何ですか!? 私はあなたなんて知らないですよ!?」

 

 本当に訳がわからない!! 

 

 混乱し始めた私にかの……お姉ちゃんが再び頭を撫でた。

 

「とりあえず落ち着いて? 出来るだけ説明するから……」

「ほ、本当ですか?」

「まあ、と言ってもほんの少しぐらいなんだけどね?」

「全部じゃないんですか?」

「だって、今のあなたはまだ条件満たしてないし」

「条件?」

「まあ、色々あるけど、一番わかりやすいのは私の名前聞き取れないでしょ?」

「うっ……そうです……」

「その分、答えれる奴なら何だって答えてあげる! とりあえず、ご飯の準備するから座ってて」

 

 そういってお姉ちゃんは私の手を引き、そのままダイニングテーブルに連れてきた。私は言われるがままに座ったの確認するとお姉ちゃんは指を鳴らした。

 

《パチンッ》

 

 すると突然、私の前に豪華な料理が数多く並んでいた。

 

 でも……。

 

「指を鳴らせば出来るのに、なんで料理する必要があるんですか?」

「暇だからだよ?」

「暇って……っていうかここは心でしょ!? なんでご飯を食べる必要があるの!?」

「暇だからだよ?」

「どんだけ暇なの!?」

「そりゃもう……」

 

 だ、ダメだ。理解出来ない……。

 

 

 

 

 

《少女食事中》

 

 

 

 

 お、美味しい……実際に食べてる訳でも無いのに……なんか悲しいかも……。

 

 って違う! 

 

「ご飯を食べる場合じゃ無いよ!?」

「さっきまで美味しそうに食べてるのに?」

「うぅ……」

「フフッ」

 

 ダメだ、この人のペースに呑まれすぎた……。

 

「さてっと……、私の正体についてだったね?」

「ッ!? そ、そうです!」

「詳しくは言えないけど、私はあなたの力の根源の一つと思えばいいよ」

「……力の根源?」

「そう、あなたが会った事ある4体の精霊と同じ様にね」

「あの時の……4体の精霊……やっぱりアレは4大精霊なんですね……」

「あー、うーん、根本的にはちょっと違うけど。まあそういう認識でいいよ」

「で、では。あな「お姉ちゃん」……お姉ちゃんも精霊なんですか?」

「あははは、どうだろうね。でもごめんね、これはまだ話せないよ」

 

 そう言ってお姉ちゃんは微笑んだ。

 

「……では、現実の私は今無事何ですか?」

「いや、かなりマズイ状態だよ」

「なっ!? 一体何があったんですか!? 私の体に一体何が起きてるんですか!?」

「どこまで覚えてるの?」

「その……白い仮面の男の攻撃を受け止めた所までですね……」

 

 それを聞いたお姉ちゃん「あーそこまでなんだー」と手を叩いた。

 

「あ、あの後、私の体に一体何が起きましたか?」

 

 私の質問に対して、お姉ちゃんはまっすぐな瞳で私を見つめてこう言った。

 

「この体は今、狂気に堕ちた精霊に乗っ取られてる。その精霊は己の最強魔法を使おうとしたが、魔力不足で不発。今この体は精神疲弊(マインドダウン)なの……」

「じゃ、じゃあ、今は無意識と言うんですか?」

 

 その質問の答えはお姉ちゃんは首を横に振る動作だった。

 

「……意識があるんですか? 精神疲弊(マインドダウン)なのに!?」

「あの精霊に憑依されたあなたの魔力回復速度は異常だよ。たったの数秒で立てるほどの力を取り戻せたみたい」

「そ、そんな出鱈目な!?」

「うん、そう出鱈目だね。けどね、あなたの体はそれに耐え切れると思う?」

「そんなの無理に決まっています……」

「そう、だから今、私はあなたの内臓や心臓を集中的に回復させてる」

「い、今ですか?」

「どう? お姉ちゃん凄いでしょ!」

 

 そう言ってお姉ちゃんはドヤ顔で私を見つめた。

 

「あ、はい……凄いです……」

 

 体は乗っ取られて、今現在大暴れ真っ最中なんて……。他の人達は怪我しないだろうか? もしかしたら私が傷付けたかも知れない……。

 

「あれ? でもおかしい……私は状態異常無効を持っているんじゃ無いの? 持ってるのになんで乗っ取られたの!?」

「ようやく気づいた?」

「わ、私の状態異常無効は発動しないって言うんですか!?」

「発動はするよ? ただ、さっきも言ってた通り。スキルの不具合が発生していたの」

「不具合って言うのは?」

「本来、あなたはレベル2になったと同時に4大精霊と再び会う予定だったの。けど、彼らに会う前よりあなたは狂った精霊と遭遇した、してしまったんだ」

「狂った精霊に出会ってはいけなかったの?」

「ううん、将来は嫌でも遭遇するでしょ。でも今のあなたは彼らに対する耐性を持たないまま彼らと遭遇したのがいけなかった」

「それは何故? もしかして寵愛を受けてるから?」

「ううん、そうだったらおね……アイズ・ヴァレンシュタインもなす術もなく乗っ取られるはずだから」

「おね? 「気にしないで」……アイズさんも寵愛持ちなんですね」

「そう、彼女の場合はステイタスには出ないけど。風の精霊の寵愛を持ってるよ、私みたいに」

「……そうなんですか、では何故私だけそのまま体が乗っ取られたでしょうか?」

「だってあなた自身、レフィーヤ・ウィリディスと言う少女の体を乗っ取ったでしょ?」

「ッ!?」

 

 何故!? 何故!? 

 この事を知っているのはお爺ちゃんだけの筈だ!? 

 

「ほらほら、落ち着いて?私はずっとここに居るのよ?ずっと、あなたを見守ってるんだよ?」

「……で、では、あなたが、ほんものの?」

「ううん、それはあなたよ? あなたがレフィーヤ・ウィリディスなのよ? あの日、あなたと彼女は混ざり合って今のあなたになったの。ただ少し魂自体が体に定着してないだけ」

 

 混ざり合った……そう言われると朧げにだけど私はレフィーヤとしての記憶もちゃんと持っている。もちろん、■■としての記憶もちゃんとある……。

 

 ん? でも待って? 

 

「……定着してない?」

「そう、だから非常に不安定なあなたを守るため。レベル2に成れば、魂の定着の為の契約が行われる予定だったの」

「……では、もう手遅れなのですか? 私はもう、家族に会えないですか!?」

「そこは大丈夫よ、お姉ちゃんに任せなさーい!」

 

 なんだろう、その台詞を聞くと不安を覚える……。




ここまで読んで頂きありがとうございます!

ここに来て心の奥底に住むお姉ちゃんが登場。

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