私が妖精になるのは絶対間違ってる   作:ZeroRain

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尊き溢れる日常(4)

「それじゃあ、やりますか!」

 

 若干ハイテンションなお姉ちゃんがそう言った。もうなんか色々あり過ぎてツッコむ気力が残ってない……。

 

「やるにしても、どうすればいいんですか?」

 

 私の中にある最もの疑問だ。魂を安定させるよ! って言ってもピンと来ないし……。

 

「説明してなかったっけ?」

「してません!!」

「そっか、ごめーん」

 

 あはははと笑う姉なる者(お姉ちゃん)を見て頭痛を覚える。これ、本当に大丈夫なの? 私、ちゃんと家族の元に帰れるの? 

 

「細かーいのは省くとして、あなたの存在を安定させるにはズバリ!! 4大精霊の誰かと契約する必要があるの」

「なるほど……って、はい!?」

 

 よ、よ、4大精霊!? な、なんかスケールが大き過ぎません!? 

 

「そ、そんな凄い存在と契約していいもの何ですか!?」

「確かに凄い存在だけど、今のあなたは彼らの寵愛を受けてるんだし、寵愛を受けてるあなたはもう仮契約みたいな感じなんだよね」

「そ、そうなんですか?」

「まあ、細かい事は気にしない気にしない」

 

 いやいや、そんな軽い感じで流して良い話じゃ無いでしょ!? と考えると彼女は笑いながら言った。

 

「では本契約を始めようか」

「えっ!? も、もうですか?」

「うん、早めにやらないとね、だって時間が経つにつれてこうやってこの深層に自我を保つのが難しくなるからね」

「……そんなにやばい状態何ですね」

「かなりね」

「だったらさっきご飯を食べる必要ないですよね!?」

「いやいや、あれは必要な行為よ?」

「ほぇ!?」

「あの食事には現在あなたを憑依している精霊を追い出す為に必要な魔力が込められてるからね」

「ほぁ!?」

「さっきから変な声しか出てないね」

「そりゃ変な声も出ますよ!? 気づいてない間に変なもの食べさせられたし!? 私大丈夫ですよね?」

「どこは心配ないよ、だって私はあなたの根源だもの、あなたに害を成すと私自身が消えるからね」

「そ、そうなんですか?」

「ええ、だから安心してね?」

 

 本当……目の前にいるこの女性は一体なんなんだろうか? 考えたら多分キリがない気がする。

 

「じゃあ、呼ぶよ?」

「は、はい!」

「本当はあなた自身に選べさせたかったけど、今回はそうも出来ないからごめんね?」

 

 そう言ってお姉ちゃんの拳に赤い魔力が溢れ始める、その赤い魔力からは暖かい雰囲気が出たがすぐ様全身を震えさせる程の威圧をだし始めた。暫くすると私の目の前には魂を燃え尽くせる炎の体現が現れた、あの謎の空間に出会った炎の竜。

 

 尚、お姉ちゃんはただ呑気に「相変わらずデカいね」と呟いた。

 

『ようやく、我を呼んだな。愛しい子よ』

 

 竜は目の前に立っていた私に話しかけた。

 

 

「あ、あなたは?」

『我は火を司る精霊、イフリート。此の名に掛けて貴様をまもr「はい、時間はないからそう言うのは飛ばしちゃってね」■■■■よ、貴様は空気を読むと言う事は出来んのか?』

 

 何やってるのこの人!? イフリート様の話をぶち切ったんだけど!? 

 

「そういう固いのはまた今度にしなさい、今は一刻も争ってるんだよ?」

『貴様が言うのか、貴様が。まったく、あの真面目で健気な少女が何故こうなったのか』

「大抵あなた達のせいだからね? あ、そそ、レフィーヤ。こいつらには様とかそう言うのいらないからね?」

「そんなの出来ませんよ!?」

「出来る出来る、何たってこいつらを呼び捨てしてる私がいるんだから」

 

 本当になんなんだこの人!? どこからそんな自信が出たのかな!? 

 

『構わん、好きに呼べ』

「か、軽いですね」

『我はそんなモノに拘らない、だからお前の好きに呼ぶと良い』

「わ、わかりました、では、呼び捨てさせて頂きます」

『うむ』

 

 軽いね、大精霊、心の器が広いってこう言う事なのかな? 

 

「ッ!?」

 

 突然お姉ちゃんの顔が険しくなった。

 

「イフリート! 早く契約を済ませて! 体を乗っ取った精霊が無理矢理上級魔法を使おうとしてるわ!」

『ムッ、其れはいかんな。愛しい子よ、本来の長たらしい手順は全て省く、こちらへ来い』

「え?」

「さぁ、行きなさい! 私は奴が使おうとしている魔法に干渉するから!」

「は、はい!」

 

 言われるがまま、私はイフリート様の元に駆け寄った。そしてイフリートの翼は私を包み込んだ。

 

「暫くそこに居なさい、そしたら契約が終わるから」

「こ、こんなんでいいですか!?」

「うん、だって儀式とか生贄とかそう言うのは実際いらないからね? ただ簡単すぎるから誰も信用しないけど」

「えぇ!?」

「あと血とか貰うと力が使える様になるけど。イフリートの様な精霊だと、血を貰った時点で体が耐え切れなくて死ぬよ」

「……」

 

 この人は……。

 

「……そんな顔をしないで、私だってやりたくないよ? でもこうしないとあなたも私も死ぬ、死んだらあなたはもう家族に会えないし、私も約束守れない」

「約束?」

「……そう、とっても大事な約束をね」

 

 そう言って彼女はとっても悲しい顔をしているがすぐにいつもの笑顔に戻った。

 

『終わったぞ』

 

 イフリート様はそう言って私を包み込んだ翼を広げた。

 

「こっちもね、威力や消費をギリギリまで削ったけど、それでも瀕死になる程のダメージは受けてるよ」

『……あの未熟者め』

「狂ってる精霊にそこら辺を求めるには酷よ?」

『……そうであったな』

 

 イフリートは目を瞑り、それと同時にお姉ちゃんは私と向き合う。

 

「準備は完了した、今からあなたの意識を戻すよ、あなたが意識を取り戻したら精霊は再び魔石に戻るけど、そこは気にしなくても良いよ」

「え、えっと……何から何までありがとうございます」

「良いのよ」

 

 また撫でられた。

 

 そして気づくと私の体が光出す。

 

「えっ?」

「落ち着いて、ただ意識の覚醒よ」

「ま、また会えますか?」

「ええ、もちろん」

 

 体が透け始めた。

 

「ねえ、最後に聞いて良いかな?」

「なんでしょうか?」

「……あなたが好きな英雄譚は何?」

 

 え? 英雄譚? そんなの決まってる……。

 

「喜劇の英雄譚、アルゴノゥト!!」

 

 それを最後に私の意識が再び薄れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『行ったか』

「……」

『此れからどうする?』

「……あなたは消えないの?」

『正式な契約したお陰で、此の場なら存在してる事は可能になった』

「……そう」

『もう一度問おう、どうする?』

「どうしようも出来ないよ、レフィーヤの器が完成しても、私の居場所はここしかないしね」

『やはり愛しい子に体を渡したのは後悔したのか?』

「……ううん、大丈夫だよ。さあ、部屋に戻って日誌の続きを書きましょうか」

『ああ、承知した』

 

 あなたはどんな物語を魅せてくれるのかな? 私は凄く楽しみ。

 

 あぁ、兄さん、やっぱり私はあなたの妹です。

 

「ふふっ、さぁ、綴りましょう、英雄日誌を」

 

 だって、かつてがあなたがやった事を、私もやってるんだから。




ここまで読んで頂きありがとうございます。

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