私が妖精になるのは絶対間違ってる   作:ZeroRain

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それはキミのせいだからだよ。





活動報告にて二つ名のアイデア募集中です!


どうしてロキ様が死にそうなの?

 買った物を全部ホームに送った私達はそのまま黄昏の館に戻った。それからは私は隣にヘスティア様が監視する形でただただスクロールを書き続けた。

 作業にだいぶ慣れたおかげか、1時間以上必要だった時間も今やものの数十分で済ませる事が出来た。

 余談ですが多数のスクロールを書いたためかステイタスの魔力と器用の項目がグングンと上がった。

 

 そして夜になるとベル達が戻り、我々【ヘスティア・ファミリア】は貸し与えられた部屋の中でのんびりと夕食を楽しんだ。

 え? お昼にあんなにスイーツ食べたのに大丈夫なのかって? 

 いいですか、スイーツは別腹ですよ?

 それと偉い人は言いました、女の子のお腹は“神秘”で溢れている(ブラックホールで出来ている)と。

 

 夕飯を食べ終わるとベルは訓練所に向かい、入れ替わる形でティオナさんとティオネさんがやってきた。やってきた双子と一緒に私達は昼に買ったクッキーでお茶会を始めた。

 え? まだ食うのかって? だから言ったでしょ? ”別腹“(ブラックホール)だって。

 

 私とティオナさんが昨晩の続きで英雄譚で盛り上がったり、リリちゃんがティオネさんにフィンさんを何とかして欲しいと頼んだり、「あぁ、この紅茶は胃に染みるねぇ……」と呟いたヘスティア様が居たりなどなど多数多様な話題が小さなお茶会を賑やかせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして翌日になるとヘスティア様は私とリリを連れて、ロキ様とフィンさんが待つ応接室に足を運んだ。

 

「やぁ、おはよう、ほら、ロキ、君もだ」

「……あぁ……おはようさん」

 

 爽やかな笑顔で私達を迎え入れたフィンさんと状態が悪化して真っ青な顔をしたロキ様がそこに居た。

 

「おはよう、フィン君。…………それとロキ、大丈夫なのかい?」

「……もうあかんわぁ、……ウチはもうダメやわぁ」

 

 如何にも死にそうな顔でこちらを見つめたロキ様。そんなロキ様にヘスティア様は懐から薬が入っている瓶を取り出し、そのままロキ様に渡した。

 

「……あぁ……なんやこれ?」

「それはミアハが作った疲労やストレスに良く効く飲み薬だ、ボクも愛用しているから飲むといいよ」

「……ほんまにか? ……おおきになぁ」

「飲む時は、一回に一錠だけだぞ、それと薬がすぐ溶けるお湯で飲むのがオススメだ」

 

 ヘスティア様から注意を聞き入れ、ロキ様は弱々しい手の動きで瓶から薬を取り出した。

 

「はい、ロキ様。お湯、持ってきました」

 

 いつの間にかリリちゃんが湯飲みを持って現れた、ロキ様は「おおきにな、リリたん」と言いながらそれを受け取り、そのまま薬を飲んだ。

 

 そんなやり取りを一通り見ていると、フィンさんはヘスティア様に「申し訳ない、本当にありがとうございました」と頭を下げながら言った。

 

「いやいや、気にしないでおくれ。…………それに原因の一つはボクらなんだから」と言いつつ、私に視線を送ったヘスティア様。

 

 視線を受け取った私はそのまま頭を下げた。

 誠に申し訳ございません。深く反省しています……え? 信用出来ない? なんで!? 

 

「……ウチはしばらく聞くだけにしとくわ、ほな、フィン。任せたわ」

「ああ、任されたよ」

 

 ぐったりとしたロキ様から視線を外したフィンさんは私達三人を真っ直ぐな目で見つめた。

 

「……神ヘスティア。今回、僕たちの要望に応えて誠にありがとうございます」

「ああ、別に構わないさ、何故ならこの商談はボク達からすれば願ったり叶ったりだからね」

「そう言ってくれるとありがたいです。ではお互いは目的を理解しているから単刀直入に言います、今準備している遠征に向けてマジックスクロールを売って欲しい」

 

 フィンさんは真っ直ぐな目でハッキリと宣言した、それを聞いたヘスティア様は私に視線を送り、私はそれを小さく頷きで応えた。

 

「ボク達としては勿論大賛成だ。だがフィン君、わかっていると思うが、キミ達の遠征までにそんなに日数が残っていないんだ。あってもせいぜい今日含めて三日しかない」

「……ええ、勿論わかっています」

「なので、こっちからは発注制限を掛ける事にするよ」

「制限……ですか?」

「あいにくボク達が持っている在庫と言うべきなのが回復(ヒール)が15束そして解毒(キュア)が10束だけだ」

「ティオネからは聞いていたがまさかそんなに……」

「それ以外の場合は制限をかける事にする、例えばステイタス上昇(ブースト)は力、敏捷、耐久のみで多くても30束しか作れない」

「ふむ、して攻撃魔法の場合は?」

「レフィ君の魔法が深層に通じるかどうかがわからない為、今回で売るのは無しにして頂きたい。その代わりに試験用のスクロールを何種類か渡すので色々試して欲しい」

「なるほど、確かに万が一通じない場合問題になりかねないね、わかりました」

 

 ずっと黙っていたロキ様は突然声を上げた。

 

「纏まったのはええんやけど、レフィたん自身は喋らなくてええんかい?」

「ああ、確かに」

 

 ロキ様とフィンさんの疑問は最もだった。

 

「いいえ、今回の話は予め皆で決めた事ですから、予想外な話じゃない限り私は口を挟みません」

「そうかいな、ならええわ」

 

 私の返事に納得したロキ様は再びソファに身を投げ出した、薬で楽になってもやっぱりまだ辛いみたい。

 

「ならば、先程の条件を組み込んだ場合、僕達の要望リストはこれでお願いします」

 

 フィンさんは自分が書いたメモ用紙をそのまま私に渡した。

 

 えっと、なになに? 

 ・上昇(ブースト)系が各種類30束。

 ・回復(ヒール)が50束

 ・解毒(キュア)が30束

 ・可能であれば隠蔽(ハイド)を15束。

 

 上の奴は比較的に早く用意出来るけど、隠蔽(ハイド)は作った事ないから心配だなぁ。

 

「三日もあれば上の三つは用意できますが、隠蔽(ハイド)15束は流石に厳しいかと」

 

 正直に本音を明かした。

 

「やっぱり無理なのか……、わかった。では5束だけ頼むよ」

「そんなのでいいですか?」

「ああ、使う予定の場所は全員で突破するわけじゃないからね」

「わかりました、ではその通りに」

「次は値段の話だね、これに関しては僕の中で隠蔽(ハイド)スクロールだけ既に設定してある」

 

 今度はフィンさんの視線はリリちゃんに向けられた。

 

「では、【勇者(ブレイバー)】であるフィン様はいくらで支払う予定でしょうか?」

 

 リリちゃんはその視線を疑問で応えた。

 

「あぁ、隠蔽(ハイド)の一束を75万で買うよ」

「…………使い捨てにしては高すぎると思いますが?」

「普通ならそう思うだろうね。…………けれど51階層以降を味わったこの身としては、これぐらいの出費はお釣りが出る程安いと言えるよ」

「……それは、何故?」

「ああ、簡単さ。52階層踏み入れた瞬間生存確率がグッと下がるからね、僕達も何度かあそこで家族を失った。だから使い捨てで75万なんて”安すぎる“って言えるよ」

 

 フィンさんは目を閉じながら己の拳を強く握り締めた。

 

「……【ロキ・ファミリア】側が納得している場合はリリは何も言いません、では引き続き上昇(ブースト)系は一束で7万、回復(ヒール)解毒(キュア)は一束で8万でどうでしょうか?」

「なるほど、勿論交渉の権利はあるよね?」

「……ええ、勿論構いません」

 

 そこからフィンさんとリリちゃんによる値段の交渉が始まった。

 1時間にも渡る交渉の末は攻撃系のスクロールの実用試験に手を貸す代わりに上昇(ブースト)が一束5万ヴァリス、回復(ヒール)が一束6万ヴァリス、そして解毒(キュア)が一束7万ヴァリス。

 リリちゃんはその結果に納得して、予め用意した契約書に値段とマジックスクロールの数を記入した。

 ちなみにこの契約書はただの契約書なのでご安心下さい。

 

 お互いの主神が契約書にサインを入れたの確認してからフィンさんは手が空いている団員に声をかけ、足りない分の羊皮紙を買うように頼んでいた。

 

 私はそのまま部屋に戻り発注された分のスクロールを書き始めた。

 

 今日だけで1300万ヴァリスを稼ぐ事に成功した…………。

 

 これどう見てもレベル2の収入じゃないよね? 

 

 ちなみに【ロキ・ファミリア】のお金の心配をすると、フィンさんは笑顔で「君達のおかげでこの1週間でかなり余裕が出来たから心配しなくても大丈夫」って言った。話を詳しく聞くとどうやらリヴェリア様は樽一つを除いて全て手に入れた”神酒(ソーマ)“を売り払ったらしいからかなりの額が入った様です。

 

 

 

 

 

 

 

 

—————ダンジョン【中層】

 

「コイツも違うな……」

 

筋肉質な男が様々な魔物(モンスター)を次々と倒しながら主人の願いを叶う為の駒を探し回った。

 

そんな時に男の前には一匹のミノタウロスが現れた。

 

《ブ、ブモォオオ!!》

 

「ほう……力の差を理解出来たのか?」

 

男は自分が背負った大剣の一つをミノタウロスの方に投げた。

 

「貴様に決めた、さぁ、剣を拾え……」

 

《オォォオオ》

 

ミノタウロスは男の言葉を理解出来たか否か、投げられたその剣を拾いあげた。

 

「さぁ、構えろ。そしてあの方の役に立て」

 

《ブォオオオオオオオオ!!!》

 

その日からダンジョンの片隅にて一人の男と一匹のミノタウロスがひたすらに戦ってきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

—————再び【黄昏の館】

 

「グハァ!!」

 

今日も今日で僕はベートさんとの訓練に明け暮れた、そして一体何度目かわからないが今日も僕は地面に倒れながら大空を見上げた。

 

「何度言えばわかる!テメェの動きは単調すぎるんだよ!」

 

ベートさんは今日も僕を見下ろしながら怒鳴ってた、日々良くはなっているがそれでもベートさんの合格点から遥か遠く、今日も今日で僕はこの人に怒られる。

 

「———ちょっとベート!アルミラージ君は弟子なんでしょ!?もうちょっと優しく出来ないの!?」

「うるせぇ、バカゾネス!フィンの命令じゃなかったらコイツの訓練になんて付き合ってられるか!」

 

そう、事の始まりは数日前だった、レフィ姉が重体で運ばれたのを見て、姉の為にもっと強くならないといけないと感じた僕はフィンさんに鍛えて欲しいとお願いした。

 

そこで候補に上がったのはアイズさん、ティオネさんそしてベートさん。各候補と模擬戦をやった結果、アイズさんは早々候補から外された、最終的には戦闘スタイルが同じスピードタイプのベートさんが選ばれた。

一方、ティオネさんはどっちかと言うパワータイプなのであんまり僕の闘い方に合わないと言ったらしい、後からティオナさんから聞いたけど、フィンさんとの時間が減るの嫌がるから適当な理由を付けて候補から外される様に振る舞っただそうです。

 

そして決まったベートさんとはこうやって遠征までに早朝だけ教える事になった、そして気がつけば何故か夜遅くでも訓練に付き合ってくれる。

 

ああ、そういえばフィンさんは言ってたなあ、不器用だけど面倒見が良い人だと。

 

「おい、ウサギ野郎、立てるか?」

「は、はい!まだやれます!」

 

何故かニヤリと笑ったベートさん。終わったら「なんかいい事ありましたか?」とか聞いてみてもいいかも知れない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

聞いてみたら何故か殴られた………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして夜になると再び訓練の時間になり、けど早朝との違いは夜の訓練は己の力を限界まで振り絞って戦う事がメインになった。

そして全て出し切った僕は今、必死に息を整える事に集中していた。

 

「おい」

 

呼ばれたので視線を動かし、ベートさんの顔を見上げた。

 

「テメェはいつになったらアイツの真似事を辞めるつもりだ?」

 

あいつ?誰の事だろう?

 

「……あの頭のネジがぶっ飛んだお前の姉の事だ」

「……ああ、レフィ姉の事か」

「……ハッキリ言う、テメェの戦闘スタイルとその魔法の使い方はあんまり噛み合わねえ」

「………」

「魔法が似ているからってなんだ?いい加減もうアイツの真似は辞めろ」

「………」

「まずテメェがやるべき事は自分だけの魔法を探せ」

「……ませんか?」

「あ?」

「見つかるまで付き合って貰えませんか?」

「ハッ!フィンの指示だからな、付き合ってやるよ」

 

姉の魔法でもない、僕だけの魔法を……この手に。

 

 

 

 

 

 

 

 

そして数日が過ぎ、【ロキ・ファミリア】の出発の日になった。




ここまで読んで頂きありがとうございます。

「ムッ?ガネーシャの出番は終わりか!?」

帰って下さい。

「なんと!?ガネーシャ、超ショック!」














【君はなんの為に“ここ(オラリオ)”に来た?】







次回

冒険者(ベル・クラネル)


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